NEET株式会社でどんな経験を積んできたか
なかさん氏(以下、なかさん):いやなんだか……。それだけ持ち上げられると、プレッシャーもあるんですけど。でも、一応3万円と言えど、今までまったく(収入が)ゼロだったわけですから、それが自分の考えたことで稼げている。あとは、NEET株式会社って、なんだかんだで話題だけはあるんですよ。メディアやいろんなところから取材を受けたりもしていて、自分の考えをしゃべる機会はすごく多いんですよ。
若新雄純氏(以下、若新):いいね。
川畑翔太郎氏(以下、川畑):うん、うん。
なかさん:たぶん普通のサラリーマンより、自分自身の意見を言う回数や、まったく予備知識のない人に自分から会社のプレゼンをする回数は、めちゃくちゃ多いんです。だから、特殊な経験(が積める)。「それでなんにもならなかったらどうするんだ」とか、よく言われるんですけど、すでに十分経験を積んでいると思うんですよね。そういうことは自分の中で自信になっていると思います。
若新:いいねぇ。
川畑:なるほど。
森川剛氏(以下、森川):たぶんこれ、わりとしっかりやられて……。
川畑:そう、しっかりやってる。
森川:僕、ケンカをふっかけられるのかなと思ってて……。「お前らのおかげで食えてるわ、ありがとな」ぐらいの人が来るのかなと思ってたいんですよ。
(一同笑)
でも、やりたいことがちゃんとあって。
川畑:芯がすごくしっかりしていて。
若新:だけど、仕事の納期は本当に適当ですよ。頼んでおいたことをやってないとか、全員適当(笑)。それは、納期を守るために働いていない、ということによって問題にならないだけ。だから、なかさんがUZUZに就職したら、たぶん3日くらいで速攻でクビになる。
(一同笑)
川畑:「いないなぁ?」みたいな(笑)。
若新:うん。「もう来てないぞ」という感じになると思うので(笑)。考え方がしっかりしていることと、「会社で働く」というプログラムに馴染めるかどうかは、また別のことだとは思うんだけどね。なかさんはしっかりしてる、ってめっちゃ褒められてるから、UZUZに就職できそう? どう?(笑)。
川畑:いけそうですよね。
若新:出社時間は9時ですか、10時ですか。
森川:9時です。
川畑:9時からきっちり朝礼が始まります。
若新:じゃあ無理です、すいませんでした。
(一同笑)
森川:なんだかそんなにすごいバチッと(言っちゃって)、放送的に大丈夫ですか(笑)。
会社に所属して輝くタイプと、そうじゃないタイプの人間がいる
川畑:いや、大丈夫でしょう! 逆になんだかすごく……さっきの会社のくだりを聞いてて、ちょっと思い出したことがありました。「自分は、なんで会社に入って働いてたんだっけ?」と思い出したことがあったんですけど。
やっぱり、みなさんの話を聞いてると、なんだかんだで自分の芯がはっきりしていたり、やりたいことができるじゃないですか。会社に所属しなくてもやりたいことがある、というのはすごいなと思います。
僕は、小さい頃から「一生懸命にやるのは恥ずかしい」という感覚があって、(なにかを)一生懸命やったことがないんですよ。一生懸命やってる姿を見られたらやだな、というか。僕は、会社に所属していてなにが1番良かったかというと、強制的に「一生懸命やれ」というミッションが決まっているから、「一生懸命できる」という。
社畜感が出ていると思うんですけど、あれは、僕が会社に馴染んだ最初の理由だったなと思うので、そういう人もいるのかな、と思いました。会社みたいな枠組み(に入ること)のほうが、一生懸命取り組めたんですね。
若新:でも、それは素晴らしいんですよ。僕は中学校、高校と、部活を1年で辞めてるんですけど、部活を楽しそうにやれている人がマジでうらやましかったです。
(一同笑)
いや、本当に皮肉で言っているんじゃなくて。部活で、ちゃんと出番も回ってきて、すっごく楽しそうな人がいるじゃないですか。
川畑:はい。レギュラーとかですよね。
若新:レギュラーもあるし、先輩や顧問にも認められていて。僕はずーっと弾かれていたから、「自分はこんな軍隊的な人間じゃない」と思う余裕もなかったんです。「なんで僕は、みんながやれていることがやれないんだろう」と不安だったから。
やっぱりそれは、人間にはタイプがあるんです。上手に集団に入れて、そこで自分の役割や価値を発揮できる人もいると思うんですよ。そうすると役割も立場も保証されるし、給料まで保証されるじゃないですか。
川畑:うん、うん。
若新:それはやっぱり、税金を払うべきですよね(笑)。
川畑:そうですね、税金を払っちゃいますね。
社会に居場所がなくても、やりたいことを貫けるなら幸せ
若新:それは本当に素晴らしいものだと思います。本当はみんな、社会の中で自分の居場所や出番を作れるなら、やっぱりそれに越したことはないと思うんです。だけど、リレーや選抜では、足が速くないと選ばれないんです。
だいたい小学生とか、リレーに選ばれなかった子は、応援席で「僕は走りたくないし、応援席のほうがちょうどいいや」と言っていますけど、本当は誰だって心の中ではアンカーを走りたいに決まっているじゃないですか。
この世の中に、アンカーを任されたくない人なんていないですよ。だけどやっぱり、みんながみんなアンカーを走れるわけじゃない。だから、応援席は応援席なりの役割を探しているわけです。会社に入れて給料がもらえている人は、言ってみれば選抜リレーに出られているようなものなんですよ。
(一同笑)
川畑:けっこう走ってますよ(笑)。
若新:(普通のリレーじゃなくて)選抜リレー。選抜リレーに出る以上は練習も必要だし、「よーいドン」には間に合わないと。それは、朝9時に行かないとダメだよね。リレーで出発の合図に遅れて走っていたら、みんなが怒るじゃない。
「せっかく選抜したのに、なんでお前はスタートで遅れてるんだ」ということになるから。やっぱり、選抜リレーメンバーは9時には行かないといけないし、放課後の練習もしなきゃいけない。
脇本桃子氏(以下、脇本):アウターキーさんが会社に入りたくないのは、「週休2日がいやだ」ということもあるんですかね。
アウターキー氏(以下、アウターキー):結局、自分が自分でいられなくなっちゃうのがイヤなんですよね。なんと言いますか……。会社に自分自身がすべて奪われてしまって、気付いた頃にはなにもなくなっちゃうんじゃないか、という実感があるんです。
森川:まだ働いたことがないじゃないですか。そうなったら、辞めちゃえばいいんです。決めつけが先行していることが多いのかな。それでいいんですか。
アウターキー:まぁ、それは仕方がないと。
脇本:それで幸せなら、私はすごく良いと思う。いろいろやりたいことを貫いて幸せなら。
森川:僕も正直、そんなにおこがましく「救いたい」とは思っていないので(笑)。好きに生きればいいと思います。
炎上男氏(以下、炎上男):どうなんだろう。
今村邦之氏(以下、今村):「どうなんだろう」って(笑)。
(一同笑)
仕事は「will」「can」「must」のバランスでできている
炎上男:ペットみたいな人生でも、野生化して暴れる能力を持ったままペットになれる人と、ペットになったまま家畜化されちゃう人というような。そのへんでもタイプが違うんじゃないかなと思うんです。
若新:それは、さっきのリレーで言うなら、例えば選抜チームに選ばれるじゃない。そこで、「バトンの渡し方はこうしましょう」「走る順番はこうしましょう」ということを提案できる人(がいるとします)。そういうふうに、仕事の中で個性やその人らしさを発揮できるのは、圧倒的に実力のある一部(の人)だけなんですよ。
1年生で新規に選抜された下っ端のメンバーは、まず言われたとおりに走るしかないわけじゃないですか。会社を経営する立場からしても、めちゃくちゃ優秀で、本当にその人が自分で仕事を取ってきたり、作ったり、工夫したりできるくらいの価値を発揮できる人だったら、「お前らしくいていい」ということになると思うんですよね。
給料を払う側からしたら、「そこまでじゃないけど、まぁ仕事ができそうだから入れた」という人に対して、「野生のままでいていい」ということにはならないんです。会社の都合としても、野生の牙は抜きたいというか、社員全員が、「バトンの渡し方はこうしましょう!」とか言い出したらまとまらないので。
やっぱり、自分の判断や価値観で働ける人は、ごく一部しか認められていないんです。だから、それが難しいけどね。ギリギリ就職できても「入った以上はこうしてね」と言われるんです。やっぱり、経営者からしたらそうですよね。
今村:そうですね。逆にアドバイスというか、ご意見をうかがいたいことがあります。カウンセリングで、ほかの社員にもけっこう教えてるところなんですけど……。(仕事というのは、)will、can、mustみたいに「したい仕事、できる仕事、しなくちゃいけない仕事」の3つのバランスでできているよという話をしているんです。
入社した当時は「したい仕事」と「できる仕事」が少ないから、最初はいったん「しなければならない仕事」の割合が増えてしまうけれど、だんだん「できる仕事」が増えてきたら、一応、「やりたい仕事」もできるという順番にはなっている。
仕事をする以上、どうしてもお金をもらうためにやらなくちゃいけない「mustの仕事」が発生しますが、それ(バランス)はどんどん変わっていくよね、という話をよくしています。
mustをがんばり続ければ、やりたいことができるようになるのか?
若新:はい先生、質問です。そうだったらいいんですけど、もし世の中が、mustの仕事をしたあとに、その人が個性的な仕事をできるように作られていたら、みんながんばってmust(の仕事)を耐えると思うんですよ。
今村:はいはい。
若新:彼らが絶望している(ことの)1つとしては、「40年must(の仕事)をする人もいる」という。たぶん、多くの人は40年mustの仕事をしているんですよね。
川畑:確かにね(笑)。
若新:だから、例えばリクルートみたいに「7年must(の仕事を)やったら、8年目から事業部を任せられますよ」という会社だったら、「7年くらいがんばるか」となると思うんです。「入って2年目で事業部」(を任される)という人もごく一部いるけど、それって1万分の1人くらいの話です。
個性的な仕事ができると思われているリクルートでも、平均するとmust期間は7年くらいと言われてるんですね。会社の中で「mustをしばらくやったらその人らしく働ける」ということが機能していない気がする。
それが保証されていたら、3年くらいは耐えられると思うんだけど。みなさんが実際に(リクルーターに)ご紹介している会社で、mustを何年か我慢したら、その人らしく働けるようになっている会社は、けっこうあるんですか?
今村:そうですね……。例えば、本人はもともと営業がやりたい子だったんですけど、技術者として入って、技術をやりながら「営業したい、営業したい」と言っていたら、だんだん技術に詳しくなっていって、「そこまで知識があって営業したいんだったら、営業やれ」ということで回された人を見たりはしているんですよ。
その確率がすごく高いのかと言われたら、おっしゃるとおりで、確かにそんなに例が思い浮かばないなということもあるんですけど。そういう例を見ると、営業という枠組みに入っているので広いですけど、まだやりたい仕事に近づけているというか。
若新:いや、ぜんぜん今村さんが悪いんじゃないですよ(笑)。
今村:いやいやいや……。
(一同笑)
若新:(僕が)思うのは、インターネットが普及しすぎたせいもあって、事前にそういう事例を知りすぎてしまっていますよね。いろんな理由があると思うんですけど、世の中に希望があったのは、みんなが「知らなかった」というのは、希望を作る大事な条件だと思うんですよ。先が全部見えたら、希望はないじゃないですか。
川畑:うーん、確かに。
今の時代はすべてが見えすぎている
若新:全部が秘密になっていたら「もしかしたら!」と思えるかもしれないけど、ネットでは会社の転職情報サイトに会員登録をすれば、退職者の声なども全部が見られるようになっています。
(一同笑)
川畑:あれは最悪ですよね。(コメントを読むと)行きたくなくなるんですよね。
若新:そうそう。ああいうものがあるから終わっているわけです。全部が秘密になっていて「きっと入ったら希望があるに違いない」「あるんだ、あるんだ、あるんだ……」と信じていたからがんばれたと思うんですけど、世の中がスケルトンになりすぎて。
『サトラレ』という映画がありますが、やっぱり人間の心は聞こえないから、その人を「良い人かも」と思えるわけです。でも、人間の心が筒抜けになったら、もう終わりだから(笑)。やっぱり、筒抜け(になり)すぎだよね。(アウターキー氏に)ネットを見すぎだよ!
(一同笑)
だから、ネットは見せない、接続をさせない、という中国の政策は合ってる。日本人にしたら、「なんであんなに無茶苦茶な独裁国家が、クーデターも起こらずに成立してるんだ」と思うけど、やっぱり徹底した情報統制だよね。
川畑:知らないですもんね。
若新:外部とのつながりがない状態にすれば、「私たちは幸せなんだ!」って思えるけど、日本は情報アクセスが超自由だからヤバいですよ。もっとモザイクみたいなものが必要だったのに、無修正になりすぎました。
(一同笑)
川畑:モザイクは入ってます。
若新:モザイク入れるべきなんですよ!
諦めないために必要なのはやっぱり「欲」
脇本:さっきのmustの話なんですが、40年mustでやってしまう人は、「あ、僕はもうこんなもんだな」と思って、やりたいことを諦めてしまう人なのかなと思っていて。
7年間やって、どうしてもダメでも、やりたいことがあるんだったら転職をすればいいし、できることも多少は増えていると思うので、そこから挑戦すればいいかなと思っています。私は(前職で)けっこう大きい会社にいて、こう(背中を丸めて)働いているおじさんたちをたくさん見てきたので、「もう諦めてる人たち」かなと思うんですけど。
若新:なるほど。諦めないために必要なことは、やっぱり「欲」なんですよ。「僕はこんなもんじゃない」「僕はもっとできるはずだ」という。だいたい諦めて転職したり起業する人は、小学校のときに先生に「お前は自分勝手すぎる」と怒られてた人なんですよね。
(一同笑)
川畑:(今村氏を指して)まさに!
今村:いや僕じゃないですよ!
若新:なんか自分の周りを見てても思いません?
川畑:思います。これ(今村氏)ですもん。
今村:これって言うなよ! こっちに投げるんじゃない(笑)。
(一同笑)
若新:大企業に入っても、辞めたり起業する人は、だいたい小学生のときに先生に怒られていますよ。「お前はなんて自分勝手なんだ」と。
今村:はい、そういう思い出はあります。
若新:そうでしょ。遠足でも勝手に列をはみ出したり。
川畑:そうですね。
若新:一輪車とかも休み時間になる前に行って、空気がパンパンに入ってる良いやつを選ぶとか。「また〇〇君が良い一輪車選んでます!」って。
川畑:ズルいやつですよね!
若新:そうでしょう(笑)。多くの人は「自分ばっかり良い一輪車を選んじゃいけない」と思って我慢するんですよ。そういう子は先生から褒められて、「良い子ですよ」と言われて、親にも「キミは先生に褒められたよ」と言われる。そして、40年間のmust(の仕事をする)!
川畑:人生損してますね。
若新:ごめん、適当なこと言ったけど、ちゃんと修正してよ(なかさんに向かって)。
(一同笑)
炎上男:40年ずっと同じところにいられる人って、その会社が好きで、会社の権威にずっと従って、面倒くさいことを決めるような脳みその無駄遣いをしないで、ストレスなく生きていけて……。それって、けっこう幸せなんじゃないかなと。
今村:うん、それは思いますね。
川畑:やっぱりそういう人はいますよ。前の会社のおじさんたちの中にいました。
若新:リレーの選抜メンバーになれなくても、ツラいと思わない人もいたじゃない。そこは違い。別にリレーの選抜メンバーになるだけが人生じゃないから、ぜんぜんいいと思うんだけど、そこはいろんな人がいるよね。
努力して結果を出すことと、多数派になれることは別問題
森川:3人は学生時代も、いわゆる「あぶれてた組」だったんですか? さっき言った「おかしな上にあぶれてた組」の人はこう、ほかの人とは違うような。
(一同笑)
川畑:わかりやすい表現ね(笑)。
若新:いや、この中であぶれてたのは今村さんくらいでしょ、たぶん。
今村:な、なんで僕にくるんですか、それ!?(笑)。
(一同笑)
森川:あぶれなかった人は卒業と同時に就職をしていく中、3人は就職してないんですけど、どっち側だったんですか?
炎上男:僕は、小学校ではあぶれているような、いないような感じで……。
脇本:きわどい感じ(笑)。
川畑:どっち!?
(一同笑)
炎上男:きわどいところで。中学校もきわどいところで、高専に入ってすぐやめて、もう即あぶれた組です。引きこもりの人たちのセミナーに行ったら、中にいるのはおじさんたちばっかりで。「おめぇ家から出られるくせに、引きこもりセミナーにくるんじゃねぇ、この野郎」という感じで睨まれて……。
(一同笑)
森川:外に出ないとセミナーにも行けないから。
川畑:「おめぇもだよ!」って話だよ!
炎上男:そういったことが何回かあって……。ただ、コンピューターを扱っている会津大学というところに行って、『ファイナルファンタジー』のめちゃくちゃきれいなCGを見たんです。それで、「こんなのできたらリアルでカッコイイな」と思いました。
でも、「リアルだけだったら、なんだかおもしろくない」ということで、まったく(やる気が)出なくて。「あぁ、僕はここにいるべき人間じゃないんだな」と、そのときに薄々感づいて。
川畑:なるほど。
炎上男:(それで大学も)辞めて、あぶれてばかりの人生です。
(一同笑)
若新:普通の感覚で言えば、高専と会津大学に行って、勉強も十分努力して結果を出したと思うじゃないですか。だから、努力して結果を出すことと、社会で多数派に入れることとはぜんぜん別問題なんです。彼のように、望まずともはみ出していく人たちの居場所をどうやって作るかというのは、大事な気がしますよね。
川畑:なるほど。
自分のやりたいことをやるために「会社には入らない」
アウターキー:さっきの質問と多少ずれてしまうかもしれないんですけど。今までの話を聞いている限りでは、自分もひょっとしたら、会社に入ったら入ったなりで、なんだかんだ諦めずにやり続けられたかもしれないですね。3年間なのか5年間なのかわからないですけど。
ただ、少なくとも就活をしていた当時の自分は、「会社に入りたくない」という意識がまず最初にあったので、その時点でたぶん「会社に入る」という選択はできなかったと思うんです。その状況から今まで、要はゲームを作り続けてきたんですね。だから、「今それをやめたくない」という気持ちが強くあるんですよ。
今までやってきたものを今やめて、また1から新しく始めるというのは、ちょっとやりたくないんですね。そういう意味で、うまくいくかいかないかはまだ置いておいて、自分は就職はできないなと(思いました)。
今村:ゲームの開発って、今すごくニーズがあるじゃないですか。採用市場の中でもものすごく、ゲーム開発のニーズはある。もちろん「自分がしたいことができない」という思いもあるかもしれないですけど。
例えば、僕がゲーム開発会社の社長で、面接をして「実力もあるし、おもしろいかもしれん。すごく芯もあるし」と(思ったとします)。そうしたら「僕はこういうゲームを作りたい」と、まず自分が説明して、(社長が)「このゲームを作るにはキミの実力が必要だ、ぜひ助けてほしい」と言ってきたとします。その場合でも、「いや、僕のしたいこととは違うから断る」ということはあるんですか。
アウターキー:自分のやりたいことと違ったら、断ります。
今村:あぁ、なるほど。
アウターキー:ただ、それ以前にちょっと気になったんですけど、たぶん今の会社はすごくリスクを嫌うので、自分みたいな人はなかなか雇ってくれない可能性のほうが高いと思うんです。そこは(どうでしょうか)?(笑)。
なかさん氏:開発の事情をよく知っているがゆえに、そういうイメージ(がある)という。
アウターキー:そういうことになります。
森川:別に就職をしたいと思ってるわけじゃないんですもんね。そしたら、僕はしなければいいと思って。ゲームを作るというのは自己満足でいいんですか? それともお金を稼ぎたいんですか?
アウターキー:稼ぐことを。
いくらでもいいから、稼ぐという体験が大事
森川:今は実際にゲームを作って外部に折衝したり、押しかけるようなことはしていないんですか? そこはまだ(ゲームが)できあがってないから?
アウターキー:できあがっていませんけど、作り上げたものはネット販売を想定しています。
森川:じゃあ、ぜんぜんそれでやっていけばいいと思います。僕も自分がやらなくていい仕事はやらなくていいと思うんですね。基本は、いくらでもアウトソースしちゃえば(いい)。自分で営業活動をしたくなかったら、営業マンを掴まえてアウトソーシングしちゃえばいいと思っているので。
僕らも別に「ニート、就職しようよ!」とはまったく思ってなくて、好きに生きればいいと思うので。僕も正社員だけが正義じゃないと思うし、別に非正規でもいいと思っているので。ぜんぜん、そのまま生きていければいいんじゃないかな。
脇本:逆に、やりたいことがはっきりしていて羨ましいと思う人もいっぱいいると思います。
川畑:確かに。
若新:なかさんの経験じゃないですけど、なんとか最初の1万円を稼ぐところまでいけるかいけないかは、僕は大きいと思うんですよ。その金額がいくらかではなくて。
なかさんは最初、秋葉原の駅に看板を持って立って、1,000円をもらえた経験(※注:レンタルニートとして1時間1,000円で一緒に遊ぶというサービスを提供)がすごく大きかったんじゃないかと思うんだよね。どうだった?
なかさん:その頃はなんというか……。貪欲にやっていたなとは思いますね。その時は実家から秋葉原まで行くとなると、往復で1,500円も交通費がかかったんです。それを節約するために、昼に「なにか食おうかな、でもやめよう」って、なにも食わずに腹減ったまま、あそこに立ってたし。
そう考えると、やっぱり最初に(レンタルニートの)利用が入ったことと、ネットでたまたま広がったときに、やっぱり「自分の考えを実行に移してよかったな」という気持ちは強く沸きました。
森川:その原体験は大きそうですね。
若新:そうだね。だから、いくら稼げるとニートから脱却できたという話ではなくて、1円でも……まぁ1円って言うと変だけど、1,000円でも2,000円でもいいので、なにか自分のしたことが対価になった、という体験ができるかどうかは、けっこう大きい気がします。
その1個の経験があれば、あとはどちらを選ぶか。それでもやっぱり20万欲しいと思うのか、それを積み上げていって、3万、5万でもいいから、こういう働き方をしたいか。それはまず、1,000円を稼ぐところまでがんばりたいところだね。もう1,000円は稼いだの?
アウターキー:いや……どうでしょう。総額では稼いでるかもしれないです。
自分で種をまいて収穫することが、成功体験になる
若新:なるほど。最初に(自分が)納得できる売上を上げるところは、たぶんすごく大事というか。別に時代に関係なく、畑を耕していたような時代でも、最初に畑を耕して、次の春や秋に収穫できたというような、最初の収穫の体験がすごく大事な気がしますけどね。
川畑:なるほどね。
アウターキー:自分は、成功体験がぜんぜんないですね……(笑)。
若新:だから、最初の収穫の体験を積み上げていくことが大事だと思うよ。やっぱり、なかさんが今のかたちでも自信を持って、「僕はこれでやっていく」と言えるようになったのは、その収穫した体験があったからというか。
運やタイミングもあるんですけど、収穫の体験は大事ですよね。今就職して社員になっている多くの人たちの話を聞いていて思うことは、「自分のやった仕事に対してこの金額」という、最初の給料と対価のつながりがわかりづらいことです。そうじゃないですか。
今村:わかりづらい。
若新:せっかく毎月20万くらいもらっているのに、それが「なぜ収穫できたのか」というところ。自分で種をまいて収穫した体験がないままに、働いている人も多い気がするんですよ。
今村:ほとんどがそういう感じじゃないかと思います。
若新:そうですよね。そうすると、自分が稼いで得たという体験がないから、なんの価値があったのかと悩む人は多いと思うんです。だけど、なかさんがやったことは、明らかに本当に耕して、種をまいて、収穫したということ。1個目の実は不味かったかもしれないけど、「僕が作ったんだ」という体験があったことは、価値がある気がする。
今村:確かに。
若新:NEET株式会社も、カッコよく言うならば「全員が年収100円を目指す」みたいな(笑)。
(一同笑)
やっぱりそれは目指したいですね。「僕、(収入を)得たぜ!」という。それはもう別に、1円以上なら僕はいくらでもいいと思うんだけど。
川畑:なるほど。実はあと5分で終了という時間になってしまったので、今日はどんな感じだったかという感想をお願いします。最後、今村君からひと言。
今村:いや、若新さんのほうがいいんじゃないの?
川畑:(笑)。
若新:いや、どうぞどうぞ。
素直に「応援したい」と思えるニート
森川:じゃあ、僕からですか? 非常に素直に「応援したい」と思えたことがけっこう本音です。どっちのスタンスで来るのかなというところで……今日はこう、バトるのかなと思っていたんです(笑)。始まる前の打ち合わせで、「これはNGワードですか?」とか、じゃあ、僕はこれ言おうかなという。
(一同笑)
そんなことを思いながら(笑)。Twitterを通して見ている、芸人の(僕の)ところに来てるお客様もいたので、ちょっと「やったろ」と思っていたんですけど、こうやって話を聞いたら、けっこう「アツくていいなぁ」と。
素直に応援したいと思いましたし、また機会があれば、僕もいろいろやっているので、コラボしたり、とくにゲームなどはコラボしたいなと思ったくらいだったので、思いもよらない展開で、非常に良かったなと思います。素直に応援したいと思いました、という感じですね。
川畑:なるほど。
若新:じゃあ、あとで銀行口座をお伝えしたら。
(一同笑)
川畑:まずは1,000円ね(笑)。脇本さん。
脇本:そうですね。なんだか、すごく羨ましいなと思うところも多くて。それだけ「やりたい」と思えることが私にあるかと言うと、正直ないので、そこはすごく羨ましいなと思います。それを持っていることを「幸せだ」「ラッキー」だと思ってもいいんじゃないかなと思いました。私もすごく応援したいですし、勉強になりました。ありがとうございます。
森川:じゃあ、誰かと1回デートに。
脇本:あっ……ちょっとそれは、大丈夫。
(一同笑)
川畑:じゃあ、炎上さん。
今村:「炎上さん」って呼ぶんだ。
森川:最後は「ちゃん」ですよ。
(一同笑)
炎上男:本当にけっこう本音をいろいろしゃべりました。「ニート」という先入観や、本質的なことにいろいろ突っ込んだ話をしても普通に通るので、「世の中変わったなぁ」というのが今回の率直な感想ですね。
ニートに対する社会の目線は変化している
今村:僕は、このタイミングがいいです。
川畑:あ、このタイミングでお願いします。
今村:なぜ僕がこのタイミングがよかったかというと、(炎上男氏の話の)あとに話をしたいと思ったからなんです。最初に「ニートに対する社会的目線は変わってきているよね」ということがありました。
「(ニートに対するイメージは)今はポジティブで良くなったよね」という話があったので、僕もそう思うし、確かにそうだなというところがあったんです。でも、社会構造の話とか自分が話をしてるときに、アウターキーさんとなかさんが(笑)……終始、どちらかと言うと「うーん……僕はうまくいってねぇんだよ」という雰囲気を出してるので!
(一同笑)
川畑:対面で見ると、余計にそう見えたよね(笑)。
今村:そうそう。自分らしさを追及するために今の選択をして人生を過ごしてらっしゃると思うので、まわりからどう見られても、自分は自分だよということで、幸せ度が高い感じだったんですけど、なんだか……「うーん」(と見えたので)。
(一同笑)
最後に、そのへんはどういう感じなのかをお聞きしたいです。
なかさん:今日はUZUZさんとの対談なので、もうちょっとこういうタイプの人がいてということだったり、就活やキャリアカウンセリングの話をしてもらったほうが良かったかなと思いました。けっこうこっち(ニート)側がたくさんしゃべってしまったので、こんな短い時間だとなかなか足りないですね。
でも、テーマとしていた「ニートの悪いイメージを払拭する」ということに関しては、こっち側のメンバーも、けっこうしゃべりたいことをしゃべれたかなと思います。
森川:実際(イメージが)変わりましたもん。
川畑:うん。かなり変わりました。
アウターキー:質問に関しては、なかさんと同じなんですけど……結局、思いつくのはこのくらいしかなくて。みなさんにいろいろ話してもらって、前々から思ってはいたんですけど、やっぱり自分は大馬鹿野郎だな、と(笑)。
偏屈で、自分の意思をどこまでも貫き通して、どこまでも頑ななバカなんだなということはわかった上で言いたいんですけど、自分は「インテグレート・プロジェクト」を完遂させます。
一同:おぉー。
(一同拍手)
アウターキー:やり遂げます。
本人が納得できる仕事が生きがいにつながる
川畑:最後に、若新さんお願いします。
若新:はい。彼が言ったように、仕事における幸せとかやりがい、生きがいというのは、納得してやったかどうかが大きいと思うんですよ。なかさんがやっていた、秋葉原の駅前で看板を持って「1,000円で(自分を)レンタルします」というのは、(誰かに)やらされていたら最悪だと思うんですよ。
人に命令されて、「秋葉原の駅でこれを持って『1時間1,000円で、ニートです』って立ってこいよ」って言われたら、もう自殺したいくらいのブラック(企業)じゃないですか。
なかさん:あぁ。なんか「新人研修ですか?」とか言われましたね。
(一同笑)
若新:そうでしょ? あれがもし上司の命令で新人研修をやらされていたら、ブラックとかいうレベルじゃないですよね。でも、実は彼は僕から言われたわけでもなく、自分で納得してやりたくてやっただけです。だから、仕事内容がブラックかブラックじゃないのかということはないんですよ。
その人が納得して、自分で選んでやったかやってないかだけが、仕事の質に関わってくると思っているので。どんなに時給が低かろうが辛かろうが、本人が「おもしろい」と思って納得してやっていることに文句は言えないですし。NEET株式会社は、そういうものを探しているのかもしれないですね。
川畑:なるほど。本日は、NEET株式会社のみなさん、ありがとうございました!
(一同拍手)