マジョリティへの啓発、どういう方法がある?

瀬尾傑氏(以下、瀬尾):はい、では別の質問のある方、挙手をお願いできますでしょうか? はい、前のそちらの方。

質問者3:本日はいろんなお話ありがとうございました。私、実はNPO法人にもいて、その中で個人が輝ける多様な社会をつくっていくというのがあります。本当にまさに、この社会をつくっていきたいと思っているんですけども。

このLGBTの問題、見えないものが見えていないっていうことが、たぶん一番の大きな問題で。例えば、精神障がい者であったり、発達障がい者であったり、同じように性で見えないゲイであったりレズであったり。見た目は普通の男性、女性だけども、性的な指向が違うだけで差別をされてしまうというところが一番大きな問題だと思っています。可視化や言葉の定義をするにも、先ほどのお話にもあった教養がないと、まず理解されないと思うんですね。

私は総務部にいるんですけれど、ここにいるほとんどの方はメンタルヘルスという言葉を知ってると思うんですけども、うちの会社で「メンタルヘルスって大事だよね」と言うと「メンタルヘルスってなんですか?」から始まるんですよ。

だからそこの教養の底上げをしないと、そもそもLGBTの話につなぐことができない。じゃないと、見えないものが見えるような人材に育っていかない。そこの素養を上げていくためにはどうしたらいいのか。

とくに、柳沢さんがさまざまな会社で研修をされてるということで、どういう工夫をされているのでしょうか。先ほどのキラートークにも近い質問になるかもしれませんが、具体的にこんな講義をしていますなどありましたら教えていただきたいです。

もしくは、杉山さんの活動のなかで、啓発活動を一般の方にもできるようなもっとわかりやすいものを教えていただきたいです。あと谷家さんでしたら、普通の会社の社内で、普通の人たちに対する、マジョリティへの啓発ってどうするのかというところも知りたいです。よろしくお願いします。

カミングアウトしていない人も活躍できるようにするには?

瀬尾:いっぱい質問ありますが、もう1人聞きましょう(笑)。じゃあ、右側の女性の方。

質問者4:今日は素敵なお話ありがとうございました。実は私、主人がスペイン人で、そのいとこがゲイでオープンにしています。すごく楽しそうにしてるので、仲いいなといつも思っていたのです。また、私の家庭のなかでも、子どもに対する教育もかなり普通にしています。「彼はゲイで、こうだ」という会話があるので、子どもたちの刷り込みも普通になっているというところが、まず基本的に私はあるんです。

もともとナースで、HIVのところにいたので。自分に対して自信がなく、外に出せないでどんどん凝り固まっていく彼らを見ていました。発信されている方と、そうじゃない方の差がものすごいありすぎるなというところがあって。そこの底上げを、もっとしてほしいなと思うんですけど。

常に病気がついてくると、さらに表に出しづらいというところがあって。そのへんも、うまく介入していければいいなと思っているのですが。病気の要素がついちゃうとちょっと余計な話になって面倒くさいんですけど。その点も、社会の偏見もありつつなので、教えていただきたいです。

それから、実は今、自分のブランドを1つ立ち上げて、私もLGBTの活動をしている方をスタッフに雇わせてもらっています。ものすごく、感覚が鋭いんですね。アートな感覚でいろんなことをやってくれるので、会社としてはすごく役に立ってるというか、活躍の場がすごくあります。

みんなそういうふうに活躍ができればな、とずっと思っています。暗いところと明るいところなんですけども、そういう意味でいろんなことを教えていただけたらな、と思います。まとまりがなくなってすみません。

渋谷区の「同性パートナーシップ条例」で変わったこと

瀬尾:じゃあ、ちょっと時間がなくなってきたので、最後にお1人ずつ、会社でどうするということも含めて回答お願いできますでしょうか。

杉山文野氏(以下、杉山):はい。お2人から「底上げ」という言葉が出てきたかと思うんですけれども。底上げができて一番よかった例は、渋谷区の条例だったんじゃないかと思います。

実はあれ、僕も関わったんです。僕は女子大生時代にゴミ拾いのボランティアに参加していて、そのゴミ拾いの団体を始めたのが今の渋谷区長の長谷部さんだった。それで「仲間内にいるならなにかやろうぜ」と、つながってきたんです。

条例ができたことの一番大きな意味は、同性パートナーが何組かということではなくて、今まで「いない」という前提で会話をされてたものが「いる」という前提に変わったこと。「いる」という前提に会話が変わると、他の自治体も、企業も取り組みが加速したということがある。これからはみなさんも「いる」という前提で会話をしていただく。

じゃあ、「いる」前提になったときになにが変わるか? 例えば、女性を見たときに「彼氏いるんですか?」という質問が、「パートナーがいるんですか?」「恋人がいるんですか?」という言葉に変わる。

みなさんも「どんな異性の人が好きなんですか?」って言ったことも言われたこともあると思うんですけど、これって同性愛の人が「いない」という前提で会話が始まっているんですよね。異性愛限定ということで会話をしていたところを、「いる」という前提に変えると言葉遣いも変わってくると思うんです。

どんな人がいるかと考えていただく。少し想像力を働かしたコミュニケーションをしていただくというのが一番良いんじゃないかと思いました。ありがとうございます。

「マイノリティで活躍している人たちがかっこいい文化」をつくる

瀬尾:ありがとうございます。谷家さんお願いします。

谷家衛氏(以下、谷家):はい。いや、すごく難しい問題ですよね。マイノリティの人、LGBTの人のほうがクリエイティブというのは、平均すると正しい気がするんですよね。それはやっぱり、自分の個性を表わしているからで。病気とか、なかなか乗り越えられない暗い部分もあるんですけど。

だいたい、良いところと悪いところは反対側じゃないですか。だからその弱みを強みに変えるという感じで、マイノリティで活躍してる人たちをもっと表に出していく。

さっき文野くんが言っていたスターをつくるというのも含め、外人でもいいので。ティム・クックも、もしあのままカミングアウトせずにアップルを引き継いでたら、もっと批判されていたと思うんですよね。実は、今でも言われてるけど、カミングアウトしたことによってずいぶんマシになっていると個人的には思っています。

悩みをああやってありのままにみんなに表現するというのは、すごく評価されると思うんですよね。そういう人たちのほうがかっこいいという文化を、つくれないことはないんじゃないかと思っています。

過去、環境問題やオーガニックというのは、フライターグやボディショップとか、そういうのがかっこいいというとこから、変えていったと思うんですよね。だから、マイノリティで活躍している人たちがかっこいいというものを広めていくこと。それによって、けっこう、変えられるんじゃないかなという気がするんです。

東京オリンピックは世界に見本を示すチャンス

柳沢正和氏(以下、柳沢):はい。私はですね、なんでもこれが解決策かと言われちゃうんですけど、オリンピック、パラリンピックだと思っています。

東京オリンピックは、オリンピック憲章のなかに「性的指向・性自認に対する差別を禁止する」が入った後の、最初の夏のオリンピックになるんですね。すごくチャンスで、レガシーで、日本が世界に見本を示していく大きな機会になっていくと思うんです。

オリンピックのすばらしいところは、イアン・ソープも後からカミングアウトしていますが、そういう選手もいる。ボランティアもいるし、企業もあるわけですね。いろんなセクター、企業、NPOと一緒にやっていく。それはここのあすか会議にいらっしゃるみなさんが本当に得意なところだと思うので。

例えば、企業が街づくりをするとき、オリンピックのいろんな選手をウェルカムする環境をつくるときに、NPOと一緒にやっていくとか。そんなパートナーと一緒にやっていくというのが、大きな解決策かなと私は思っています。

もし、これが終わった後に、いろいろご興味がある方はぜひお声かけいただければと思います。これからいろいろ生まれてくることを大変楽しみにしております。

瀬尾:今日は、僕もメディアの人間としていくつも宿題をいただいたなと思っています。やっぱり啓蒙活動もすごく必要ですし、価値観の問題だとか、ヒーローをどうつくっていくか。そういうことで価値観もすごく変わると思います。あと、「ソジハラ」ですね。流行らせるようにがんばります。

ここに参加していただいたみなさんも、今日こういう話を聞いた、あるいは自分もこう考えたという話を、ここを起点に、ぜひ友達や家族や職場などで話していただければと思います。議論というか、世間話のなかででもいいので。そういう、キックオフの機会になったら、すごくいいなと思っています。

今日は3人のパネラーのみなさま、どうもありがとうございました。改めて拍手をお願いします。

(会場拍手)