アヴァンギャルドとはなにか？
カリン・ユエン氏：アヴァンギャルドは「前衛」、あるいは先鋒を意味します。軍隊では先方部隊の1つで、進路になにがあるのか地形を分析し、敵を見つけたりなどします。では、アートではなにを意味するのでしょうか？
みなさん、こんにちは。カリンです。Little Art Talksへようこそ。今日はアヴァンギャルドとはなにか、そしてアートの世界でなぜそれが重要かについてお話しましょう。
アートでは、アヴァンギャルドは名詞としても動詞としても用いられ、新しい、実験的な考えを導入するアーティストのことを意味します。例えば「ロシアのアヴァンギャルドのアーティストの作品」というように。しかしながら、「論争を呼ぶアヴァンギャルドの作曲家」というように、作品そのものを描写する際にも用いられます。
この用語は19世紀前半のフランスに、アートを言及するものとして最初に現れました。社会主義の先駆者の1人、影響力のある思想家アンリ・ド・サン＝シモン（Henri de Saint-Simon）は、科学者や産業資本家たちと同じく、アーティストたちを新しい社会のリーダーであるという考えを持っていました。
1925年に彼は以下のように書き記しています。「我々アーティストが、前衛としてみなさんを救うであろう。アートの力というのは非常に即効性のあるもので、大理石やキャンバスに記された新しい考えを広めることができるのである。アートにとって誇り高き運命は、社会全体に対して実証的な力と真の聖職的な機能を行使することであり、知的な力の前衛として前進することである」。
アヴァンギャルドの用語は近代芸術において人づてに伝播しました。以前にお話ししたように、近代芸術はいつ始まったかピンポイントで正確に設定するのは難しいのですが、この動画では、1850年付近、グスタフ・クールベのリアリズムの開始としましょう。
アヴァンギャルドの概念は、アートはアーティストの着想とビジョンの中にある独創性と質によって評価されるべきだ、という考えを基にしています。これは、伝統的な遠近法や肉付け、短縮法などの技法を拒否し、その代わりキャンバスの二次元性を強調し、複数のあるいは対照的な視点を用いた、キュビスムのような形態の革新も含まれます。
ほかのアヴァンギャルドのアーティストたちは、未来派（イタリアの機械文明を賛美した前衛芸術運動）や、デ・スティル（オランダの新造形主義を理念化したグループ）、シュルレアリスムのような強い社会的なプログラムを持っています。
彼らの先鋭的な性格は、既存の考えやプロセス、形態に挑戦し、しばしば論争とは無縁のものにしました。もしもみなさんが、近代芸術や、ポストモダン、現代という区切りに意味があるかどうか考えるのなら、それはアヴァンギャルドのアーティストは意図的にこのような伝統的な流派の思想に対峙しているからです。
この用語は、本来は19～20世紀のアートの革新的な手法を指していましたが、今日アート制作を表現する用語としてもいまだに用いられ、着想や創意の限界を推し進めています。
この動画が、アヴァンギャルドの意味について理解するために役に立つことを望んでいます。もし楽しんでいただけたなら、美術史に関する次の動画を制作するために、「いいね！」とチャンネル登録をお願いいたします。ご視聴ありがとうございました。また次回お会いしましょう。
