Visionalのトップは創業からどう事業を拡大してきたのか?

竹内真氏(以下、竹内):では僕が、替わりましてお話しします。ぜんぜん関係ありませんが、山本くんとは同じ大学の先輩後輩なんですよ。

小笹佑京氏(以下、小笹):そうなんですか(笑)。

山本正喜氏(以下、山本):電通大ですね。同じ学舎で。

竹内:電気通信大学の卒業生のCTOはいいかもしれない(笑)。それは冗談ですけど。

最初の頃は、まったく同じですよね。たぶんみんなそういうふうに、全部兼任で、しっちゃかめっちゃかでやっている中で、さらに採用もするので、スーパーハードワークをしながら、なんとかかんとか最初の組織を作っていくんだと思います。

僕も何個か事業を作ったので、0→1っぽいことを何回かはやった気はするんですが、初期でいうと、スピード感も含めてそのすべてにおいて、自分が信頼できるクオリティのコードが書ける人を見つけていたというのがすごく良かったなと思います。

CTOのみなさんだったらわかると思うんですけど、1人目のエンジニアや、小さなチームの最初のプロダクトでリードする立場になった時って、「よし、これまで培った俺の技術力の全部を注ぎ込んで最高のものを作ってやる!」と思うと思うんですよ。

その状態で、チームのメンバーのクオリティに対して不安があると、なかなか作る、細かく見るというところから逃げられなくなると思うんですよね。

2人目のエンジニアということでもありませんが、信頼できるエンジニアをつかまえられるかが、まず短期的にはすごく大事で、それができるようになるともう1個上から見られるようになります。

究極的に、エンジニアは金のなる木を作らないといけないわけですよね。資産を作っていると僕はよく言っています。すごく優秀な、年収1,000万円のエンジニアが「これまで培った技術力の全部を注ぎ込んで最高のものを半年で作ってやる!」って思って作ったら500万円のプロダクト資産なんだけど、同じものを年収500万円の人が100人月で作ると、ざっくり月収40万円×100で4,000万円になっちゃうわけなんですね。

そういうことになるんだけど、やはり早く安く、同じ資産を作れたら最高なわけで、自分がそれだけの能力があれば、自分が手を出したほうが早いんだけど、そうすると時間が取れなくなる。

感覚的に、たぶんみんなそこはわかっていると思うので、そこに、どつぼにハマるのが、最初は危ない。

採用していく中でも1人優秀な人がいると、いろいろなレベルの人をバンバン採用できます。そうじゃないと、プロダクトを見ながら採用する感じなので、けっこう詰まっていきます。

一番の問題は、そういうデスマーチに入っていくと、CEOとの距離が空いちゃうことです。自分はこんなにつらいのにみたいな感じで(笑)、一枚岩になれなくて、CTOが去っていくパターンがけっこうあると思います。

なので究極を言うと、余裕を持ちながら、「ビジネスとして成功するためのものづくりってどういう感じ?」と俯瞰する目線を持てるかどうか。そこから先は、どんどんどんどん数字ベースで判断していくほうに上がっていきます。

山本くんと違って、僕はCEOになるというよりは、事業別にCTOみたいな人を作っていって、自分のCTO業務を切り離していったことでここにいます。

フェーズの違う事業を1個の上場企業が抱えている状況では、やはり情報漏洩などのリスクをどう保全するんだというところでバランスが悪くなるんですよね。

俯瞰した立場から、上場企業たるクオリティを持ち続けるためのセキュリティの施策をしたり、プロダクトの品質がどうなっているのかというメトリクスを見続けたりなど、今はそんなことばかりやっています。

そこまでいくと、ものづくり観点ではつまらなくなってしまうので、最初のフェーズをすっごく楽しんだほうがいいよ。ぜんぜん違う話をしちゃった気がする(笑)。

小笹:(笑)。

山本:でも、めちゃくちゃわかります。ものづくりが好きで、エンジニアとしてコードを書くのが一番楽しいというのは今でも変わらないんですが、書けない立場になってきますよね(笑)。

竹内:そうですね。これはグリーの藤本さん(藤本真樹氏)とだいぶ似たような話で(笑)、フェーズというところが大きいかもしれないですけどね。最終的にはたぶんみんなそうなるので、最初の時期をぜひ楽しんでください(笑)。

竹内氏が投資家として見ているポイント

松田敦義氏(以下、松田):登壇者の方で、このテーマでなにかこれは言っておきたいみたいなのがありましたら。

竹内:僕ね、投資家視点での発言をなにもしていないんです(笑)。せっかくなので、1分だけいいですか。

小笹:はい、もちろんです。

竹内:実は僕は、個人としてエンジェルで出資するパターンと、会社の中の投資担当の人間としてマイノリティ出資するパターンと、あとMA(M&A)するパターンの3種類の立場があります。

エンジェルの時は、社長もしくは経営陣は、しつこくやり遂げそうかなという、死んでも死にきらない感じの人が好きだなと思って投資をしています。なので、あまりプロダクトは見ないです。

投資家として技術負債をどう考えているか?

山本:僕はM&Aだとものすごく技術DDをするのですが、DDのところもそうですが、「ソースコードを見せて」とはさすがに言えないし、出してくれないので、言語のバージョンやミドルウェアのバージョンやOSのバージョンをすごく見ています。

竹内:あぁ、そこ大事ですね。

山本:フレームワークのバージョンは何を使っているのかという話とか、なんでその状態になっているのかを説明ができるかとかはすごく見ていますね。

それがいいか悪いかじゃないんですよね。一定、負債を積んでもスピードを優先するのは必要なので、そこの考え方をどうしているかとか、それを許容しているかとか、そういうところを見ています。

小笹:なるほど、ありがとうございます。確かに先ほども、経営会議にそのイシューを上げられるかみたいなお話が、チームとしてのケイパビリティの1つに挙げられていました。その技術的負債に対する姿勢、データベースのリレーションは、当然、CEOが見切れない部分なので、そこの問題点をどう改修して、将来どうしていきたいのか。

裏側の設計も含めてCTOとVPoEでプロダクトのロードマップについてディスカッションされるというのは確かに健全な運営だなと思いました。ありがとうございます。

山本:技術的負債でいうと、シリーズA、Bぐらいから問題になってくるんですね。PMFしてガーッと大きくなってくるのですが、その時にCTOの役割は、半年ロードマップを止めて技術的負債を解消したいと経営会議を通せるかという感じです(笑)。

小笹:なるほど。

山本:CEOかCOOから、「ふざけんな」って言われるんですよね。半年も止めたら負けちゃうじゃないかというところを、「いや、必要なんだ」とやりきれるかどうか。

通すだけではダメですよ。「このままではサーバー落ちます」みたいな感じの脅しだけではダメで、中長期の成長にとってここで止まることが最善なんだというロジックを伴って、最終的には「私に懸けてくれ」と言って通していくタイミングが来るんですよね。

小笹:ありがとうございます。