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Re.25 エンジニアはどうやったら給料が上がるのか(全3記事)

普通のやつが普通のことをやっていても希少性は上がらない エンジニアとしてのレアリティを上げるために必要な考え方

Engineering ManagerによるEngineering ManagerのためのPodcast「EM . FM」。広木大地氏 、湯前慶大氏、佐藤将高氏が「エンジニアの給料」というテーマで語りました。全3回。前回の記事はこちら。

普通のやつが普通のことをやっていてもレアリティは上がらない

湯前慶大氏(以下、湯前):今のは、言ってしまえば、いい会社に入りましょうという話で、2つ目に給料を上げるために有効な手段は何かというと、やはり希少性を上げることなのかなと思います。

希少性の高いスキルを持っていることについては、何年前ですかね、及川さんがゲストに来ていただいた時に話しました。複数のスキルを組み合わせて、その掛け算のスキルセットを持っているということがけっこう大事なんじゃないかとおっしゃっていたかなと思います。あとは、さまざまなドメインの知識を持っていることも、重要なのかなと思っています。

その中で、エンジニアリングマネージャーという役割、エンジニアの中でマネジメントをやりたい人はけっこう少なくて、それが本当にできる人も、また少ないので、けっこう希少性が高いポジションの1つなのかなとは言えます。

このポッドキャストなのでややポジショントークは入っていますが、そういうのはあるのかなと思います。

前回、「EMのnextキャリア」のテーマで話した時に、広木さんも一番の戦い方をしないようにするみたいなことを話されていましたが、これも希少性を上げる生存戦略なのかなと思いました。どうなんですかね? こう言っていると、ちょっと打算的な感じがしすぎちゃいますけれども。

佐藤将高氏(以下、佐藤):(笑)。

広木大地氏(以下、広木):僕が繰り返しいろいろなところで言っているのは、「キャリアは情報量だ」という話で、情報量というのは、要はレアリティの対数表現なので、レアリティのlogを取ると情報量になるんですよね。

AというスキルとBというスキルを掛け合わせると、2分の1のスキルと2分の1のスキルを掛け合わせるので4分の1になって25パーセントになります。25パーセントで起こることとなると、ちょっとレアだよね。

さらに、10人に1人のスキルだったら、今度は40分の1になるから、2.5パーセントになる。さらに掛け算があると1パーセントしかなくなるので、対数表記するとどんどんbitが足し算されていくんですよね。

なので、自分のキャリアの情報量を増やしましょうという話をしていて、給料を上げるためにやっているというよりは、シンプルに需要と供給なので、供給量が少なくて需要があるものであれば物の値段は上がる。

その時に、供給がたくさんあることをやるのはやめましょうというのは、すごく資本主義的にはシンプルな話かなとは思っています。

ただ、「給料上げるぞ」というために別のことをそこまでやろうというよりも、「そこでみんながやりたがっていることをやらないほうがいいんじゃない?」というのは、僕がいつも言っていることです。

みんながやりたがっているということは、「それ、供給が間違いなく増えるじゃん」と思うんですよね。ということは、普通のことなんですよ。普通のやつが普通のことをやっていたら、それはレアリティは上がらないでしょう。

わざわざ普通のうちの1人になるために「今は、これが必要だ」「今は、あれが必要だ」みたいなものを起点に一生懸命追いかけていくんじゃなくて、自分がおもしろいから、「これをやっているのって、そんなにいないよな。でも、まぁ、いっか」と言ってやっているほうが希少なのかなとは思うんですよね。

例えば、HIKAKIN。ヒューマンビートボックスを新しくできた動画サイトに上げ続けるって、狂気の沙汰だったわけじゃないですか。

佐藤:なるほど(笑)。

広木:「何なの、この人?」って思っている人が大半だったと思うんですけど、ある種あるタイミングで需要に変わったのでマネタイズがあれだけできたと思っていて。

表面的に見えている、みんなが飛びついているものを一生懸命やることが、「給料上げる」だと思っちゃうと、「しんどい戦いになるんじゃないの?」と思うんですよね。

湯前:そうですよね。一時期のタピオカ屋……タピオカ供給量が増えすぎて、どこに行ってもタピオカあるけど、みたいな……ありますよね。

広木:そうなんですよ。

湯前:ただ、一定、供給されないと価値も評価されないという側面もありますよね。

広木:うんうん、もちろん、もちろん。需要が認知されないからね。

湯前:そうですよね。

広木:うん。

湯前:需要がこれから来るのを見てやるのも、それもそれでいいのかもしれないけれど、自分がそれが楽しいと思ってやっていて、それが結果的にヒットするのも、いい気もしますけどね。

広木:うん、そうですね。

エンジニア界隈がキャリアとお給料の話ばかりしているようになったらしんどい

広木:お給料を増やしたいなと思うのは、頻度と程度があると思うんですよ。誰しもが、お金がもらえたらうれしいっちゃうれしいじゃないですか。もらえないより絶対うれしいから。

でも、そのことばかり考えていても、「ちょっときつくないですか?」とも思うんですよね。ある程度若い時に生活を自分で立てていきたいとか、あるいは、起業するためのお金が必要だとか、結婚して子どもを養っていくためにお金が必要だとか、いろいろなことでお給料やキャリアについて考えることは、ぜんぜんあってもいいんですけど。

日がな一日、キャリアとお給料の話ばかりしている雰囲気に、エンジニア界隈がなると、ちょっとしんどいなって思っているんですよね(笑)。

我々ってお給料エンジニアじゃないじゃないですか。ソフトウェアエンジニアじゃないですか。

湯前:はいはいはい。そうですね。

広木:時々お給料エンジニアみたいな発言をしている人がいるなと思っていて、ちょっとだけしんどい、ちょっと関わりたくないなと思いましたので(笑)。

(一同笑)

湯前:最後に評価されるものであって、最初の議論の出発点というか、それだけがエンジニアではないというか。エンジニアはそこが出発点ではないですからね。

広木:そう思います。なんていうか、ほかの職種でもそうで、「この職種って儲かるんですよ」という話ばかりされちゃうと、ちょっとしんどいというか……HIKAKINが、「めちゃくちゃしんどいんだけど、YouTuberって儲かるんですよ」って話ばかりされていたら、たぶんYouTuberになりたいと思う人って少なかったんじゃないかなと思っていて。

楽しそうにやっていて、しかもお金も入ってくる。その中には、1つの厳しい戦いがあるんだけど、ああなれたら健全な競争の環境だからいいなとは思います。

そうじゃなくて、お金のために集まってきた人がお金の話をしているという界隈になっちゃうと、それってなんか違くないですか? みたいな感じになると思うんですけどね。

湯前:それは、そう思いますね。

分野の深みを持つために大事なのは、その分野に対する愛

湯前:やはり最後は、その分野の深みを持つことが希少性を上げる手段の1つと言えると思うんですけども。

結局、ふだんの業務において、「この専門性をどう深めていくのか?」みたいなところは、基本はここを意識して仕事をすることになるかなと思っていて、その結果、給料が上がるのかなと思いますね。

転職するとか希少性を上げるというのは、結局、分野を深めていった先にある話なので、やはりある程度の深さがないと、結局そこの限界は来てしまうものなのかなって思いますね。

僕的には、深みを増すためには、やっていることに対して、自分が楽しいと思えるとか、これをやったら会社が良くなると思えるとか、深めることによってなにかしらの給料以外のインセンティブをもらえている状態をどう作るかというところが、けっこうポイントになる気はしていて。

好きこそ物の上手なれという言葉があるように、結局、自分の強みとか、「こういうのをやってみたい」みたいな気持ちから湧き出てくるもので専門性を深めていくのが、けっこういいやり方なんじゃないかなと、僕は思っているんですけど。

広木さんと佐藤さんは、なにか分野を深めようと思った時に、どういうことをやっていますか?

佐藤:深みを持つとか、希少性を上げるというところで言うと、一番僕がやっているのはずっと考え続けることで、僕は、会社を始めてもうすぐ7年経つんですけど、エンジニア、特にIT、Webエンジニアについてずっと考えてきた7年間でした。どうしたら自分の職種であるエンジニアが良くなるのかとか、もしくは、面接で話したりとか、友人のエンジニアにどうなったら喜んでもらえるんだろうというのを、ずっと、なにかしら考え続けてきたんですね。

考え続けた結果、「あっ、こういうことをやったらその人たちはうれしいんじゃない?」みたいなことを思う瞬間がたくさん出てきたので、本当に、そのことについて考え続けるということをやってきたかなとは思っています。

自分の深めたいところに対しての愛が自分は人一倍強いんじゃないかなというのが、振り返って思うところなんですけど、愛があればなんとでもなる、みたいな感じの結論ですかね(笑)。

湯前:その分野に対しての愛が大事、いい話ですね。そういうのを考え続けているからこそ、プロダクトサービスに反映されていくのかな、というのを聞いていて思いました。

課題を解く手段、知識、背景に対する知見や経験が思考に“深み”をもたらす

湯前:広木さんはいかがですか?

広木:僕は「深める」というのが、そればかりやるという意味だとはぜんぜん思っていなくて。佐藤さんがおっしゃってくれたことに近いんだけど、ある課題について解こうとしている時に、解く手段はたくさんあって、そのために必要な知識、背景もたくさんあって。

それを知れば知るほど、学べば学ぶほど、トライアンドエラーをすればするほど、そこの知識、経験が、肉となって血となって、思考の深みが出てくるんだと思うんですよね。

そこを勘違いして、「俺はフロントエンドエンジニアだから、本当にフロントしかやらないんだぞ」とか「Reactをがんばっていきたいから、Reactしかやらないんだぞ」とか、本当にそればっかりやっていたら、その周辺にあるエコシステム以外のエコシステムについて目が行かなくなってしまって、今度は、そのReactのエコシステムの外側になにかを作ろうと思った時にできないし、問題解決の方法もたぶん少ない人になっちゃうと思うんですよね。

より問題を解くために必要な知識の幅が広いことや、考えたことによってたどり着けるものが多くないと、なかなか問題を解く力につながっていかないんだろうなと思っていて。

僕は、問題を解く力となる背景の思考パターンや知識というのが、エンジニアリングのスキルだと思っています。だから「俺は、スペシャリストになるから、マネジメント、ビジネス、経営のことを知らなくてもいい」と思う分には、勝手に思ったらいいかなとは思うんですけど、現実は、問題を解くのに幅広い知識が有効だし、自分が知らないことがあるということを知ることも重要です。自分が見えていない範囲のことを馬鹿にする傾向がある人もいると思うんですよ。

「自分はわかっている」と思っている。こういった人は、専門性を持っていたとしても問題解決ができない人になっちゃうんですよね。なにか特定の知識は持っているけど問題解決できない人になっちゃった時に、役に立たない人になる。役に立つ人は自然と給料が上がるし、役に立つべき場所に仕事を移していくことも自然にできると思うんですけど。

世の中の課題を解決しない人になると、仕方なくパーツとして動いてもらうしかなくなっちゃうんですよね。パーツとして動くとなると、身動きが取れなくなって、そこからの局所最適解になると思っているんですよ。

これは、マクロでもミクロでもそうで、市場のtemperatureが低い、つまり、「流動性が低いと、局所最適にとどまって給料が上がらない」が日本で起きていることだと思っています。

そもそも温度が高くなれば、ジャンプの幅が増えて、より最適なところにたどり着くケースが増えていくはずなのに、温度が低いから、「自分はこれでもいいんだ」って言って、改善しない状態でとどまってしまって、「給料が上がらない」になるんですね。

逆に、転職したら(給料が)上がるかもしれないのは、要は、転職すること自体が温度が上がる行為だからなんですよね。今の市場って、温度が上がっているから転職すると給料上がるんですよ。

逆に、そこの余白分、動かすための熱量そのものが機械学習的な意味で熱量が低い状態になっていると給料は上がらない。

単純に一時的に温度が下がっただけで、マーケットの解は動き続けているから、また温度が上がってきたら、全体の給料は上がるかもしれないと思っていて。

ともかく、そういったかたちで思考を深めていこうとなった時に、目の前にあるものもそうだし、広い範囲で自分が解きたい課題を見つけて、解いていって、意味のある人になりましょうというところがあると、キャリアは開けやすいのかなと思っています。

逆に、そうじゃないタイミングでとやかく言っても仕方ないじゃないですかと、個人的には思います。

湯前:なるほど。ありがとうございます。

(次回へつづく)

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