「複業OK」は差別化につながる
西村創一朗氏が説く、複業解禁のメリット

複業研究家・西村創一朗×ニート社長・UZUZ今村邦之対談!〜自分らしい「20代のキャリア」って?〜 #1/2

2018年7月12日、複業研究家として活動している西村創一朗氏と株式会社UZUZの今村邦之氏が、20代向けに複業を含めたキャリアについて対談しました。本パートでは、西村氏の生い立ちから学生時代の就職活動、リクルートエージェントを経て、複業研究家になるまでの経緯などを語ります。また、複業を認めたくない企業の誤解や不安と、解禁のメリットについて考察します。

複業研究家・西村氏の20代の過ごし方

今村邦之氏(以下、今村):さっそく始めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。西村さん、こんばんは。今日は複業と20代のキャリアについて、ざっくばらんにお話ししていけたらと思います。まず最初に、手短に自己紹介をお願いします。

西村創一朗氏(以下、西村):みなさんこんばんは、株式会社HARESの西村創一朗と申します。複業研究家というかたちで、本業を持ちながら複業を持って働く人を応援する仕事をしておりまして、先月30歳になったばかりです。

アラサーからついにサーになり、30歳になってしまったのですが、20代の方のキャリアを応援したいという思いを持っています。特に20代だと、どうしても会社の本業をメインでやらなくてはいけなくて、やりたいことがなかなかできないときがあると思います。

そんなときに「やりたいことを会社の外で複業としてやる、という選択肢があるんだよ」と、いろんなところで発信しております。本日はよろしくお願いします。

今村:よろしくお願いします。僕はちょっと、ニート社長はおいておきます(笑)。株式会社UZUZの代表を務めております、今村と申します。よろしくお願いします。

大学を卒業して1社目を離職した後に、次の会社の経営が傾き、最終的に自分自身が嫌だった、「第二新卒だとなかなか就職できない」ことを解決する会社をやろうと思いました。

今、創業7期目なんですけれど、7年間ずっと第二新卒者、既卒者だけに特化した就職支援を行っております。よろしくお願いします。

西村:よろしくお願いします。

今村:今日は「20代の自分らしいキャリア」というお題で、お互い20代のときにどんなキャリア形成をしてきたかをお話します。複業の話もありましたが、西村さんのメディアなどを見ていると、基本的に西村さんが成功しているかのように出ていますよね。

ところが、記事の内容は失敗のことしか書かれていない印象があります。なので、それを踏まえて20代のときにどんなキャリア形成を意識して動いてきたかをお聞きできればと思います。

西村:ありがとうございます。僕が20代の10年間を過ごして30歳になった間で、どの部分にフォーカスするのがいいでしょうか? 新入社員の頃か、就活生の頃なのか、どこにフォーカスして話すのがいいですか?

今村:西村さんが1社目にリクルートに入社された、ということまでは知っているのですが、そのあとは、どちらかというとリクルートさんで得た知識・経験が大きいと思います。

そのあとも大きく変わるかなと思っているので、今日は大学生の頃の就活環境や、1社目に入社して最初の浅い時期の葛藤についてお話を聞きたいなと思います。

第一志望の会社を決めたきっかけ

西村:ありがとうございます。まずは学生時代の就職活動について。そもそも、なぜ新卒でリクルートエージェント(現在はリクルートキャリア)だったのか、その辺からお話ししますね。

(東日本大)震災が2011年の3月にあって、その翌月、2011年の4月1日に当時のリクルートエージェントに入社しました。震災翌月だったので、入社式にもかかわらずリクルートの本社の会議室の一角で、しめやかに営まれる入社式からキャリアがスタートしているんです。

そもそも入社式が会議室なんて、大手企業らしからぬことですよね。他の下の世代だと、いい感じの場所、もっと(人数が)多いところだと、武道館などで入社式をやっていますが、当時は自粛ムードがありました。

そんなかたちで社会人になっているのですが、リクルートエージェントはずっと第一志望で、本当に念願叶って内定をいただき、入社に至りました。そもそもなぜリクルートエージェントが第一志望だったかについて、きっかけと動機をそれぞれ分けてお話しします。

きっかけでいうと、大学で最初に入っていたサークルが、めっちゃ意識高いので笑われると思うんですけれど、キャリアデザインサークルの「klu:(クルー)」という……。

今村:確かにちょっと意識高いですね(笑)。

西村:そうなんです。やっていることは、ビズリーチさん(の企業理念)で言う「Work Hard,Play SUPER Hard(ワークハード、プレイスーパーハード)」みたいな感じです。

今村:ビズリーチさんで言う(笑)。

西村:キャリアデザインなので、社会人のOB、OG訪問をしたり、実際に営業したりもしているんですけれど、それは半分で、残りの半分はひたすら飲んで遊ぶというコンセプトのサークルでした。

ただ、僕が大学1年のときに子どもができて、学生結婚をしました。大学1年生の夏休みの最後の日に子どもがいることがわかって結婚しているので、そのサークルはすぐに辞めているわけです。

「ごめんなさい、子どもができてサークルどころではないので辞めます」という感じでした。そこからはひたすら週5、6日でバイトをするという学生生活を送っていたのですが、いざ就職活動を始めるとき、大学3年生の4月くらいから就職活動を意識し始めるわけですよね。

そういうときに、僕の入ったサークルの部署の局長で、お世話になった先輩がいるんですが、彼女に就職の相談をしました。そうしたら「だったらうちの人事紹介するよ」ということで、大学4年の4月あたりだったので内定をもらって、そこがリクルートエージェントだったんです。

それで当時、さらに1つ上の先輩で入社1年目だった、採用担当のオオイさんという方とスタバでお茶をするところから僕の就職活動は始まっています。就職活動で最初に会った採用担当がリクルートエージェントだった、というのがきっかけですね。

“日本の人事部”ことリクルートエージェントへ

西村:動機でいうと、就職活動をするときに、よく「軸」と言うじゃないですか。何を軸にしようかなと考えたときに、もともと生まれ育った環境が母子家庭で、かつ生活保護を受けていたんですね。

要するに親が稼いだお金ではなく、世間の大人の方々が稼いでくださったお金から出ている税金で生きてこられたわけです。なので、社会に出ようと決めたその日から、「社会に貢献できる仕事をしよう」とずっと思っていたんです。

それで高校生のときは、社会に貢献するイコール公務員だと思っていました。「国家公務員は国民全体の奉仕者である」と憲法に書いてあるわけです。なので、「なるほど。社会に貢献するには公務員なんだ」と思って法学部に入ったわけですが、いろいろ紆余曲折があって公務員になることはやめました。

ですが、仮に民間で仕事をするにしても、何か社会に恩返しができる仕事がしたいというのがベースとしてありました。「社会に恩返しをすると言ってもいろいろあるけど、なにがいいんだろう」と考えていましたね。

大学2年の2月くらいから、ファザーリング・ジャパンという、父親の子育てを応援するNPOにジョインしました。当時「イクメン」という言葉を広告代理店と一緒に作って広めたNPOです。

そこで、子育てを全力でやりながら一方で仕事も一切妥協しない大手総合商社の部長とか、子会社の社長とか、いわゆる監査法人でバリバリ働いていますとか、経営者ですとか。仕事もバリバリ、子育てもバリバリ(やっている)という方たちを見て、すごく素敵だなと思ったんです。

一方で、子育てしたいけれど会社が残業残業で忙しくてできない、というパパたちが悩んでいるのを見て、「日本の働き方を変えなくちゃだめだな」と思っていました。なので、僕は働き方を変えることによって日本を良くする仕事をして、社会に貢献したいと思ったんですね。そんなときに出会ったリクルートエージェントは、ある種すごく大げさな表現をすると、日本株式会社という“日本の人事部”だと思ったんです。

日本にはいろんな企業が約400万社あります。400万社すべてではないかもしれないけれど、主要な企業、上場しているような企業やベンチャー企業の中で、リクルートエージェントが取引していない会社はほぼないと思うんです。

そこ(企業)に血液(人材)を供給している心臓がリクルートエージェントだとするならば、ここでなにかビジネス経験を積めば、日本の働き方を変えるような仕事ができるんじゃないかという仮説を立てて、リクルートエージェントに行きたいとずっと思っていました。これが動機の部分です。

失意の面接の後に、妻と子どもと水族館

今村:なるほど。就活の頃にそこまで言えたら、それは内定出るわ、と思いますね。起承転結ができすぎていて、「おわー!」みたいな(笑)。

西村:当時はそこまで言語化できてないですよ(笑)。当時を振り返って「そうだったな」という後付けのものです。

今村:そうなんですね! びっくりしました。すごい方がいるんだなと思いました(笑)。

西村:いやいや(笑)。だから、最終面接は「落ちた」と思いましたよ。

今村:ファザーリング・ジャパンなども思うんですけれど、子どもができたあとは、子どもと一緒に過ごす時間と仕事のバランスを取るのが難しいですよね。そういったことは、そのステージにいるときに気が付きそうなものなので、大体30オーバーの人たちがその境地に立って「これ(仕事と育児の両立)が重要かも」と言うのはわかるんですけれど、(当時大学生の西村さんが気づいたのは)ものすごく早い年齢の段階ですよね。

西村:まあ、子どもがいましたからね。それこそ大学1年で結婚して、大学2年の19歳のときに今の長男が生まれているんですよ。それで、たまたま日経新聞でファザーリング・ジャパンを知って、すぐ連絡して飛び込んで、という経緯です。

今村:それを聞くと、たくさん悩んできた末に、世の中で人材系ではトップのリクルートにストンと入っているので、素晴らしいですよね。

西村:結果だけ見れば、です(笑)。その分、お見送りもされました。僕が最初に最終面接を受けたのは、大学3年の12月25日、クリスマスでした。マクロミルというインターネットリサーチの会社がすごく好きだったんです。

その会社のサマーインターンに参加して、2週間がっつりインターンさせていただいて、そのときのメンターとは、それこそ先週もランチしたりするくらい本当にお世話になっていて大好きだったんですが、社長に最終面接で落とされました。

今村:そうなんですね。

西村:失意に暮れながら……。でも、その日は休みだったので、面接会場の品川まで奥さんと子どもを連れていって、面接中は(二人には)カフェで過ごしてもらって、面接が終わった帰りに品川水族館に遊びに行きました(笑)。

今村:終わりがいいですね(笑)。

西村:就活生らしからぬことをしていました(笑)。面接終わりに水族館に行く就活生は、たぶん僕くらいだと思います(笑)。

今村:だいたい、「あー……」と言いながら帰る人がほとんどですよね(笑)。

西村:でも、あまりに手応えがない面接だったので、落ち込んで品川水族館のことはほとんど覚えていないんです(笑)。それで案の定、年明けの1月7日だったかな、あまりにも選考結果が来ないので、人事部長に「落ちたんですか?」と聞いたら「うん」と言われました(笑)。

転機は入社3年目に始めた“複業”

今村:なるほどね~。ちょっと(話が)飛んじゃうかもしれないですが、そのときから働き方に興味があったから、リクルートが終わって(独立して)からも、さっき自己紹介されていた複業のほうに行ったんですか?

西村:そうですね。

今村:働いて、サラリーマンをやって、独立して……というよりは、自分の中である程度変わらぬ方向性を持って、ずっと10年なり過ごしている感じでしょうか?

西村:これも結果論でしかないなと思っているのですが、僕は入社3年目に複業を始めました。ブログというかたちで複業を始め、たまたまいろんな人に見ていただけて、月間20万ビューのブログになったんです。

今村:20万ビュー! ものすごく見られていますね!

西村:それで今村さんとも出会って、お仕事をいただけるようになりました。

今村:そうか、確かに。

西村:それで複業も順調になって、本業はもともと3年間営業をやっていたんですけれど、複業があったから、自分が希望していた新規事業開発部門に異動することができました。それで本業も新規事業開発をやって、複業もうまくいって、個人事業主から会社をつくるところまでいきました。

すごく順風満帆の中で、勝手に自由にやっていた複業が、後からたまたま世の中で流れが来たんですね。僕ももともと独立する気がなくて、そこで「働き方を変えることを仕事にしたい、働き方を変えることによって、社会に良いことを与えたいと思っていたな」と思い出しました。

働き方はいろいろあるけれども、複業を軸に据えて、本腰を入れてやってみてもいいんじゃないかなと思って、実験的に「複業研究家」と名乗ってみたんです。それが仕事になったら面白いなと思ってやってみました。

Twitterのアカウントに複業研究家と入れてみてツイートしていたら、たまたま国会議員の方に拾っていただいて、「詳しく聞きたいです」という感じでバンバン依頼が舞い込むようになったんです。「あ、いけるじゃん!」と思いました。

今村:なんか漢字が多くて読めなかったんですけれど、国のやつで、小難しい役職みたいなやつがありましたよね。

西村:あー! 「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」という、噛まずに言うのが難しいんですけれど、略称で「人材力研究会」と言うとわかりやすいですよね。

その研究会も、僕以外はみんな40~50代の重鎮で、唯一の20代最年少という非常に緊張するというか、恐れ多いような研究会です。それもありがたいことに、「複業と言えば西村」という第一想起というか、認知をしていただけたから、そういった場にも呼んでいただけたのかなと思います。

複業はなぜ普及しないのか

今村:複業に関して自分が思っていることをお話しするので、こういう考え方もあるんだなということでご留意いただきたいと思います。まず、人材業界やお客さん先を見ていて、極端に複業を可としている求人の割合がすごく少ないですね。「めちゃくちゃ少ない!」と思うことが1つです。

うちの会社でも複業をしている人はけっこういるんですけれど、基本的に会社の方針としては、複業は全然OKとして勧めているんです。それをなぜ経営的に可としているかの背景として、1つ目が離職率防止にかなり効くなと思っています。

ある程度スキルがついて独立するという選択肢も0or1(ゼロイチ)ではなくて、勤務しながらやることによって「この会社、そういうの認めてくれるからもう少しいよう」と思ってくれることも絶対(に退職の)抑止力につながっているなと思っています。

2つ目が採用力ですね。どちらが複業かはわからないですけど、2つうちの会社でやっていて……。(YouTubeのコメント欄を指して)「西村さん優秀です。」というコメントがきてます(笑)。

西村:ありがとうございます(笑)。

今村:そうそう、そう思っていて、複業の解禁は採用力もアップできるし、既存の(社員の)離職率も防げるんですよ。もちろん、複業でとんでもないことをやっていたらあれですけれど、「どこにデメリットがあるのだろうか、なんで普及しないんだろうか」と思っています。その辺に関してはどうでしょうか?

西村:ありがとうございます。まさに、今おっしゃっていただいたような複業のメリットはたくさんあります。例えば、退職防止につながる、離職率低下につながる、あるいは採用で魅力付けができて、より優秀な人が採用できる。複業解禁の7つのメリットとよく言いますが、メリットはたくさんあります。

一方で、デメリットはどのくらいあるのかというと、結論としては、デメリットはないんです。ただ気を付けなければいけないこと、リスクはあります。よく勘違いされがちなデメリットその1だと、複業を解禁すると従業員が転職してしまうんじゃないかということがありますね。

「複業良かれ」と言って、やらないといけないことを本業でやって、やりたいことを複業でやっている。そうすると、やりたいことをやる複業がうまくいったら「ごめんなさい、転職します」とか「起業独立します」とかで辞めてしまうんじゃないかという説があるんです。

これはあるかないか、0か1かで言ったらあります。当然あるんです。ただ、よくよく考えてみていただきたくて、「じゃあその人は、果たして複業を禁止していたら辞めていなかったのか?」という話なんです。

勘違いされやすいデメリット

西村:つまり、やりたいことが会社の外にあるときに、それはいったんやりたいと言っているけれど、本当にうまくいくかはわからないですよね。だったら、一度複業というかたちでやってみるとか、「複業で手伝ってみたら?」という提案ができるんです。

一方で、複業を禁止していたら、やりたいことを諦めてうちの会社に残るか、やりたいことを追求するために起業・独立・転職するかという2択になったときに、果たしてどれくらいの確率で、やりたいことを諦めて会社に残る選択をしてもらえますか? ということなんです。

なので「複業を解禁したら、起業・独立・転職が増えますか?」という質問に対して、もしかしたら増えるかもしれないけれど、それ以上にやりたいことをやるために転職されることを減らせるメリットの方が大きいので、「プラマイで言ったらプラスですよ」と答えています。

今村:なるほど、でも、それを言っても刺さらない……。まあ刺さらないと言ったら失礼ですけれど、とはいえ……というか。

西村:わかります。次は、勘違いされやすいデメリットその2です。情報流出が増えるんじゃないかということですね。例えば情報漏えいです。事実、昨年末に某ITコンサル企業の役員が社外に情報を流出したということで、日経新聞などに取り上げられていました。

これもさっきと同じで、「複業を解禁したら情報流出のリスクは増えるんじゃないか?」ということについては、増えるかどうかは正直わからないし、実例がある以上、可能性は0ではありません。

では、果たして複業を禁止している企業ではいっさい情報流出は起きていないのでしょうか? という話なんです。例えば僕が知る限り、某大手上場企業は複業が禁止されているケースが多いです。でも、そういう企業でも情報流出は起きているんですよね。

派遣社員の方が情報を持って逃げてしまうとか、退職のときに(情報を)持って逃げてしまうとか、いくらでもあるんです。そうであるならば、従業員の複業を認めたうえで、「情報を流出させてしまった場合は懲戒解雇します」と、しっかりルール作りをする方が安全なんです。

あとは働きすぎてしまうのではないかとか、いろんなことが懸念されるのですが、カウンタートークができるんです。全部「それは勘違いです」と言えるんです。ですが、実際に複業解禁に踏み切れない理由は何だと思いますか?

今村:ある程度事例ができたらついていくとか、一歩踏み出しにくいとかでしょうか? なんとなく恐怖感があってなかなか踏み切れない。でも、周りがやり始めたら一気に増えていくとか、そういう感じなんでしょうか。

複業に対する大企業の心理は「開国前夜の江戸幕府」

西村:おっしゃるとおりです。僕がよく言っているのは、今の複業解禁を取り巻く日本の、特に大手企業の心理は、開国前夜の江戸幕府と全く同じだという話をしているんです。

かつて江戸幕府は鎖国をしていました。鎖国することで外国の侵略から日本を守っていたんです。でも、開国をしたわけです。開国をするときに何が起こったかというと、「開国なんてした暁には日本が海外から侵略されるんじゃないか」あるいは「外国から輸入された商品によって日本の産業がつぶれてしまうんじゃないか」という意見が出ました。

尊皇攘夷ではないですが、「外国人は入れない、鎖国すべきだ、開国するな! 反対!」と言っていたわけです。ですが、それは開国によるメリット・デメリットを冷静に比較して判断するのではなくて、開国によってこんなリスクがある、という不安に襲われている状態なんです。

今の複業解禁における日本企業の心理的状態は全く同じで、いざ開国したら何も起きないし、むしろいいことばかりなんですよ。やれば気がつくんですけれど、やったらどうなるかわからないから不安、だからやらないという考えなんです。

これは複業解禁に限らず、あらゆる企業の意思決定において言えることですよね。例えば、Googleやいろいろな会社が、自社の情報管理をクラウド化、オンラインで管理できて、いつでもどこでもアクセスできるようにしましょう、と日々提案するわけです。

でも、なかなかクラウド化に至らないのは、情報が流出してしまうんじゃないかとか、ハッキングされるんじゃないかという不安があるからなんです。その不安に対して、いかに営業の人があれこれデータを持ってきて説明したとしても、「やっぱり不安なんだよね……」というかたちでなかなか踏み切れないのと、構造としてはまったく一緒です。

でも、横並び主義なので、例えば仮に自動車業界でトヨタさんが複業解禁しました、となったら一気に変わると思います。トヨタが変われば日本は変わる、総合商社が変われば日本は変わる、と思っているので、僕は「2020年までに複業禁止の会社を0にする」というミッションを掲げているんです。

それは、トヨタが複業を解禁するかどうかにかかっていると考えているので、2020年までに複業禁止の会社を0にするマイルストーンとして、2019年までにトヨタさんに解禁してもらうことが、僕の中での勝手な目標です。

今村:確かに変わりそうですね。

西村:そうですね。

今村:トヨタさん、お願いします!

西村:トヨタさん、(このYouTubeを)見てないでしょ(笑)。

今村:見てないか(笑)。これがやりたくてついついやってしまいました。すいません(笑)。

西村:見ていたら儲けもんですけれどね(笑)。

業界内で一番乗りする企業が恩恵を受けられる

今村:YouTube配信もそうですが、あんまり中小企業はそういうのをやらないですよね。ちょっと変だなとか、複業とかもそうですよね。みんながやり始めたら目立たなくなるんですけれど、みんながやらないうちにやれば目立つのにな、と思います。

西村:そうなんです。5年後は複業禁止の会社がほとんどないとしたら、複業OKが当り前の状態で、「複業解禁しました!」と言っても、むしろダサいですよね。

例えば、今ガラケーを使っている人が「スマホにしたんだよ!」なんて言っても「え……?」みたいな感じじゃないですか。何もかっこよくないし、何も新しくない。むしろガラケー貫いた方が、逆にかっこいいかもしれませんよね。でも10年前、iPhoneが出たてのときに「スマホにしたんだよ」と言ったら、めちゃくちゃかっこよかったわけです。

だから、業界の中で一番乗りで複業解禁した会社がその恩恵を受けられるはずなんです。横並びで周りの出方をうかがっているのではなくて、業界の中で一番乗りをしたほうがいい。

例えば、新生銀行さんが、銀行の中で一番乗りで複業を解禁して話題になりましたよね。あるいはロート製薬さんが、製薬業界の中で先陣を切って、去年複業解禁されました。そういうかたちで、全業界でこういうときにチャレンジするのは、必ず業界1位の会社ではありませんよね。

自動車業界であれば例えば日産さんが、とかですね。メーカーの中でも一番手ではなく二番手です。働き方改革でも、野村証券ではなく大和証券が最初にワークライフバランス系の施策を出して話題になったりしました。17時でPCが落ちます、ということをやっていましたね。

同じように複業においても、二番手三番手の会社さんが一番手の企業と差別化するために複業を解禁するという働きが今後広がってくると思います。僕はそこに期待しています。

ぜひ業界二番手、三番手の企業様がいらっしゃったら、お金なんかいっさい頂かずに全力で応援したいと思っているのでぜひ、と思っています。

過労・うつ病を招いた独立1年目の不安

今村:複業はたまたまと言ったら失礼ですけれど、多少追い風が吹きましたよね。

西村:吹いてきましたね。

今村:これはキラークエスチョンになってしまうのですが、西村さんの記事を見ていると、去年けっこう(複業支援を)やられたというのを拝見して、(それは)世の中でコモディティではないサービスだと思うんです。

複業自体がコモディティではないので、複業を支援するというと、そんな会社は世の中に存在しないですよね。発言というか、そういう中身自体は聞こえがいいですけど、実際に推進していく中で、トップランナーとしての痛みやつらさはかなりあったのではないかなと思うので、ぜひそのあたりも聞けたらなと思います。

西村:ありがとうございます。仮に複業に関するマーケットを“複業マーケット”と呼ぶならば、それはとても小さいと思うんです。どこまでを含めるかにもよりますけれども、トータルしても多分100億にもならないです。それこそ、ランサーズやクラウドソーシングの市場も複業マーケットに含めるのであれば、もう少し多いかもしれません。

いずれにせよ、複業マーケットはそんなに大きくないと思うんです。ただ、自分が経営しているHARESという会社を1000億円企業にしたいとか、100億円企業にしたいとはまったく考えていません。究極は、自分と自分の家族や関係者がご飯を食べられればそれでいいと思っていて、年間1億円でも稼げれば万々歳かなと思っています。

そういう意味で言うと、年商が1,000億円に到達しているわけではありませんが、生活が成り立つくらいには「複業といえば西村」とか「複業のことならHARES」と思ってくださっている方が増えてきています。スモールビジネスとしては非常にいいマーケットを見つけたなと思っていて、そこに関する悩みはまったくないです。

今村:そうなんですか!?

西村:ありがたいことにまったくないです。一方で、今回の話題とは少しずれるかもしれませんが、去年の1月に起業独立して、今2年目です。独立1年目に何が起こったかと言うと、昨日ビジネスインサイダーさんの記事にも書きましたが、うつ病になってしまったんですよ。

身体を壊して心を壊してしまったんです。何が起こったかと言うと、結果としては、もちろん忙しすぎて壊れてしまったということなんですが、なぜ忙しくなってしまったのかというと、不安なんです。

何に対する不安かというと、“現在不安”ではなく“将来不安”なんです。リクルートに勤めていて、会社員であれば終身雇用という時代ではないので、定年まで大丈夫というわけではなかったとしても、5年後10年後、よっぽどやらかさなければ生きてはいけるわけです。

今村:そうですね。

フリーランスや経営者を追い込む“将来不安”

西村:一方で起業というのはそういう道ではなくて、仮に今順風満帆だったとしても、5年後10年後、同じようにいろんなお客様からお仕事をいただけるかというとわからないですよね。

もっと先のことを考えると、例えば僕はもう家を買ったので、35年ローンを背負っているのですが、さらに子どもが3人います。今の時代、大学に行くことがすべてではないですけれど、果たして3人が「大学に行きたい」と言ったときに、満足に通わせて卒業させてあげられるだろうかと考えたら、やっぱり眠れない日々が続いたりするんです。

そして結果的に、不安を埋め合わせるために本来ならば受け入れなくてもいい仕事、断るべき仕事を「やります!」と引き受けて、不安を忙しさで埋めてしまった。結果的に週休3日と言いながら、休んでいる日も家で朝から晩までひたすら仕事をしているような感じでした。

今村:(仕事を)しているんですか!

西村:でも、そうなるんです。独立フリーランス、経営者の場合は、残業という概念がないじゃないですか。残業無制限なんです。なので、結果的に自分を追い込んでしまうのは、現在不安ではなくて将来不安ですね。

今村:なるほど。うちの面談でも話すんですけれど、「(仕事として)複業支援をしたい」という気持ちもあれば、「やらないといけない」という気持ちもある。そういうところをバランスよくやっていくのは、けっこう(大変さが)ありますね。

西村:そうですね。

今村:なるほど。確かにそうですよね。かなりエッジの効いた話です。

西村:(今村さんに)一方的にいろいろと聞いていただいたんですが、僕、本当は自分が話すよりは人の話を聞く方が圧倒的に好きなんですよ。なので、今度は僕から聞いてもいいですか?

今村:もちろんです。

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2 たった半年の職歴が「雲泥の差」になる現実 株式会社UZUZが挑む“職歴至上主義”の壁

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