マイクロコンテンツってなに?
内村史子氏(以下、内村):「テーマトーク」コーナー! というわけで。
髙橋正敏氏(以下、髙橋):はい。
内村:本日のテーマトークを発表したいと思います。本日のテーマは「マイクロコンテンツ」。
高橋:マイクロコンテンツ。
内村:マイクロコンテンツって、私はあんまり聞き慣れない……。
高橋:とりあえず、マイクロコンテンツのご説明をした方がいいんじゃないんですか?
庄司智氏(以下、庄司):マイクロ……ビキニ?
内村:はいはい。
高橋:マイクロコンテンツっていうのは、電子書籍とかでよく見るかもしれないですが「1話いくら」みたいな。要は全体から分割されて、こう……。
内村:1巻ではなくて1話ずつでいくら、みたいな。
高橋:という感じの認識を持ってもらえれば間違いないかな。最近だとiTunesとかで、アルバムでいくらで、1曲いくらみたいな、あれが、みなさんの中では、マイクロコンテンツの売り方としては正しいというか、オーソドックスなものなんじゃないかなと思います。
内村:なるほど。じゃあ、より細かく売るっていう感じなんですね。
高橋:そうですね。
内村:だから「マイクロ」。
高橋:そうそう。だから、内村さんのことではありません。
内村:ちょっと、これ以上細かくなったら、見えなくなっちゃうので(笑)。
身の回りにあるマイクロコンテンツ
内村:ライトノベルだと、あんまり今おっしゃられた「マイクロコンテンツ」があるイメージってないです。
庄司:あんまりないです。今のところ、まず1冊という感じで、1話だけ売るっていうのはあんまり今のところないと思うけど……。漫画は最近あるよね?
高橋:多いですね。漫画の連載をWebでやって、最新話と1話は無料だけど、残りはポイントとかコインとか。
内村:そうですね。月額制のところとかもありますもんね。
高橋:あります、あります。けっこうそういうのあるなぁ、と思っていて。あと、ゲームで課金するものも同じかね。
庄司:あぁ。
高橋:君らが大好きなやつだよ!
庄司&内村:はい!(笑)。
高橋:あれも1つのマイクロコンテンツの在り方ですからね。ゲームがあって、更にストーリーとか衣装とか、ボイス……声優さんのボイスも含めてですけど、課金をしないと手に入らないものを求めて、みんな課金していきますから。
庄司:コンシューマーゲームとかでもあるよねぇ。普通の本編とは別に、サブ衣装を。
内村:ありますねぇ。ダウンロードコンテンツとかはそうですね。追加でお金を支払って、新しく衣装を女の子に着せたりしますもんね。
高橋:厳密に言うと違うのかもしれないですけど。
内村:ちょっと違うのかもしれないけど、流れ的には似てますよね。
ライトノベルでも1話ごとに販売?
高橋:全体を切り売りするという感覚よりは、世界を広げる感じに近いのかなと思ったりします。ダウンロードコンテンツの場合は、ですけどね。電子書籍は、あんまり、こう……ラノベはないもんね。
庄司:そうね。近いものがあるとしたら、Webで連載してる作家さん達が、割と短めの1話、2話、3話で20話とかで連載して、結果的に1冊分……とかっていうのは、多いかもしれない。
内村:それは、Web独特なものなんですね。
庄司:そうですね、1章あたりがすごい短くて、今やっているWebからの書籍化担当作なんかも、ちょっと近いかもしれない。
高橋:なるほどね。僕、漫画が1話売りみたいなことを言うんですけど。そもそも僕らが子どもの時代、全部1話売りだったやん。っていうか、雑誌の連載をずっと追って、その雑誌を切ってまとめたりしてて。
庄司:かつては、単行本は高いから買えないけど、週刊誌を買って、それをとっておいてまとめて読む……みたいな。
高橋:そうそう。でも、単行本になると単行本の描き下ろしがあるから、それを保管するために買っちゃったりとかして。
庄司:追加コンテンツを。
高橋:そうそう、買っていた気がするんですよね。「だから昔からわりと変わっていないのでは」説が、僕の中にはあって。
意外と昔からあるマイクロコンテンツ
庄司:さっきの例でいくと、アルバムの中の全曲はいらないけど、この曲欲しいというのがあったら買いやすい。
高橋:そうそう、そうだと思う。
内村:確かに。
庄司:そういう買い方する?
内村:私はまとめて買っちゃいますね。ただ、シングルとかだと、歌の入ってないカラオケ音源は、抜きで買うとかはありますね。アルバムはアルバムごとで買っちゃいますけど。
庄司:漫画だとあんまりないかもしれないけど、音楽だと、アルバムの中でもこの曲だけ買いますってあるよね。昔は頭から聴くのが前提だったから、1曲目にこの曲を持ってきて、2曲目にこうで……っていう曲順の流れあったと思うんだけど。そこが個別売りになると、また変わってくる。
高橋:声優さんもなんかありそうですけどね。ファンクラブに入ったら、ボイスが聴けますよ。みたいなとかってありそうな。
内村:昔、まだガラケーだった時……有料で声優さんの着ボイスを落とせるとかはありましたよね。たぶんそれは月額ポイント制で「このボイスを落とすには、何ポイント必要です」みたいな感じだった気がするので、マイクロコンテンツなのかな。
高橋:かたちは変わってるけど、そういうの、けっこう昔からある気がするんだよね。
やっぱりエロは買ってしまう
庄司:ストーリーがあるやつだと、追っていかなきゃ途中だけ抜いてもわかんないけど。料理漫画とかで、1話読み切りのやつとかだと、けっこうなんとでもなるのかね。「肉料理編まとめ」とか……。
高橋:あー……あるのかも。一番オーソドックスなマイクロコンテンツのやり方って、僕らはできないんだけど、18禁のエロのやつがすごくいいんですよ。
庄司:ほう。
高橋:エロシーンの前で、止めるんですよね。
内村:あー、なるほど。
高橋:この続きを見たい人は……っていうのは、けっこうみなさんやってらっしゃってて。
内村:えー。
庄司:買っちゃうよね(笑)。
高橋:買っちゃう。
内村:なるほど、見たいから。
高橋:BLもそうな気がするんですよね。僕、スマホの漫画を研究してた時があって。「そこで止めんの!? ズルい!」みたいな時があるんですよ。
ついつい買ってしまうのはなぜ?
庄司:ゲームに限らず、電子版のバナーをクリックして立ち読みとかもそんな感じだよね。
高橋:うん。
内村:さっきのスマホゲームとかでも、1日5枚チケットをもらって5話分読めます、みたいなやつも、チケットがないとその先が読めなくなって。でも課金すればチケットが手に入るから、結局1日我慢して明日になれば読めるはずのものを、我慢できずにすぐ読んじゃうとかそういうことですよね。
高橋:そういうこと。
庄司:うんうん。
高橋:買っちゃう。
内村:それは、買っちゃいますねー。よく買ってました。
庄司:まるっと1作、まとめた額を出して買うより、ちまちまっとの方が、お金に対するハードルが……。
内村:そうですね、そうなんですよね。100円だしとか、120円だしとか、300円だしぐらいで、指紋認証でピッて終わっちゃうから(笑)。
細切れになることで支払いのハードルが下がる
庄司:僕の場合も、某ゲームの1日1回限定の90円ガチャ……普段は1回300円が、1日1回まで90円っていうのを毎日回してるんだけど。90円だって思いながらやってても、年間通すとそこそこの……。
内村:そうですよね。
庄司:お金を支払うことへのハードルが下がる……。
内村:そうですね。まとまっていくらって言われたら、払うのはちょっとってなるけど、ちょっとずつだったら……。
庄司:いい意味で買いやすい。
高橋:そういうのは、けっこうオーソドックスになってくるんじゃないかなとは思いますけどね。
内村:そうですね。
高橋:続きを読みたくて、バーって買っちゃった経験ってある?
内村:あります、あります。
庄司:電子の漫画ってそんな感じだよね。
高橋:そうなんですよね。
内村:そうですねー。「今、無料で全話読めるよ!」みたいのがあったりするじゃないですか。あれで読んでて、読めるところまで読み切ったあとに「もう、無理!」ってなって、「じゃあもう、そもそも本買うわ!」って、本買いに行っちゃったこととか(笑)。
高橋:あー! 一番いい読者さんですね。
庄司:そういう売りかたを考えるとき、編集として、ちょっと気をつけなきゃいけないのって、各話ごとの引き……終わりかたがすごい大事になるよね。
高橋:大事!
マイクロコンテンツ時代の編集術
庄司:例えば、1話から2話がぬるっと進むよりも、1話の引きでは、その時謎の人物が、ババーン! 2話では、ピンチ! ババーン! みたいな感じで……。
高橋:そういう風潮はあるのかもしれないです。とある大ヒットドラマのプロデューサーさんも、同じように、「話の辻褄が合わなくても、絶対に最後のヒキを優先させる」とおっしゃっていて。
内村:なるほど。
高橋:「なんで、こうなったの?」となっても、次の話で回想から始まってもいいんだって。物語上、ヒキにならないところで終わるよりは、そっちのほうが今は向いている、みたいなことを言っていて。
庄司:話の結論が見えてきた……。マイクロコンテンツ化時代の編集者は、1話ごとのヒキも大事に考えねばならない。
高橋:ヒキの強さって、重要だよね。
内村:そうですね。
高橋:この番組、大丈夫ですか? ヒキ……あんま強くなくないですか?
内村:おっと。
庄司:うわーっ!
(庄司氏、突然倒れる)
内村:えっ!?
高橋:いや、そういうヒキじゃなくてもいいんじゃない(笑)。
庄司:そうですか。
内村:今、何に引かれたんですか?
庄司:撃たれて死んじゃう、的な……。
内村:あー……はい。じゃあ、そんな感じで、お話は尽きないんですが(笑)。
庄司&高橋:(笑)。
内村:そろそろ、おしまいのお時間となります。
庄司&高橋:はーい。
内村:番組ではリスナーのみなさんからのお便りをお待ちしております。庄司さん、高橋さんへの質問も募集中ですので、みなさんよろしくお願いいたします。
庄司&高橋:お願いします。
内村:というわけで『庄司智のラノベ編集者NIGHT! SIN 』番組のお相手は……。
庄司:講談社ラノベ文庫編集部の庄司智と。
高橋:アフタヌーン編集部の高橋と。
内村:ナビゲーターの内村史子でした! それではまた次回もお会いしましょう。せーの。
一同:おやすみなさい。