ウェスチングハウスの買収をふりかえる
記者5:朝日新聞のオオシカと言います。綱川社長におたずねします。ウェスチングハウスを買収してまあ10年余り経ったわけですけれども、10年たってこういう事態になったわけなんですが、綱川さんとしてはウェスチングハウスを傘下に入れたこの10年間をどういうふうに総括しておられるか、まずそこを1点、確認させてください。
綱川:10年前のことについてはコメントできないんですが、今からこの結果を見て振り返ると、えー……非常に問題な判断だったなというふうには思うわけですけれども、当時としてはその時の判断であったんだろうというふうには思ってます。
記者5:それで、日本の会社である東芝が、ウェスチングハウス、元々BWRメーカーがPWRメーカーを傘下に収めるという再編だったと思うんですけれども、こういう事態になったわけですから、どういう点で問題があったか、どういう点でマネジメントができなかったか、あるいは、どういうところにウェスティングハウスの問題があったのか。そこはどういうふうにご覧になっていますか。
なんでこうなっちゃったのかっていうことですね、つまり。
綱川:本当にひと言でいうのは難しいと思うんですけれども、通常のガバナンスっていうんですかね、そのへんの意思疎通、経営に関する全般的なこと、ガバナンスということでひと言で片付けるのは難しいんですけれども、まあそういうことを中心にした問題だったと考えております。
記者5:なかなか日本の会社がアメリカの会社をコントロールできなかったということなのでしょうか。それともやっぱりそもそも技術的な基盤が全然違ったので、やっぱり無謀な買収だったというふうに言えるんでしょうか。
綱川:私、詳細はちょっとわからないのでそのへんのところはお答えを控えさせていただきます。
記者5:最後に今後どういうふうにスポンサーが選ばれていくのか、今後のウェスチングハウスの経営はどうなっていくのかというのは、どういうふうにご覧に、あるいはどういう手続きを踏んでそこが進捗していくんでしょうか。
綱川:裁判所の管理のもと、新しい体制で進めて事業を続けてですね、再建に向かっていくということであります。そのへんは我々は関与できないので、そういう方向でしっかりと再建に向かって進むことと思っております。
破産法申請の議論について
記者6:説明どうもありがとうございます。三菱UFJモルガン・スタンレー証券ミヤモトと申します。
まず最初に、2月のご説明の時に「WECのリスクの切り離しのご検討を……」という質問をした記憶がありまして、難しかった決断をなされたという点で、個人的にうれしく思っております。
質問3つございます。1点目が、チャプター11の検討・議論はされてきたと思うんですが、プロコン(分析)ですね。「チャプター11するべきである」「そうではない」といったところの、チャプター11を申請するリスクファクターとしてどんなことを議論されてきたか、いくつかコメントいただければと思います。
畠澤守氏(以下、畠澤):今のご質問、非常に難しいご質問だと思います。
当社の最初の冒頭の判断にいたった考え方を申し上げましたけれども、ウェスティングハウスグループの事業の再生、そして企業価値の最大化という観点で検討してまいりました。また2月あるいは3月にご説明した、海外事業のリスクを切り離すという、この2つがマッチするということでの判断ということで考えていただければと思います。
記者6:それに関してリスクファクターは当然あるかと思ったんですが、それについてなにか、どんな議論になったかっていうところをいくつかご開示いただければと思うんですが。
畠澤:今のチャプター11の件については、ウェスティングハウスの執行側が比較・検討、さまざまなケースを検討して、これでいきたいという提案をしてまいります。それに対して、ウェスティングハウスの取締役会として「これが最良であろう」とという判断をして決めました。
リスクファクターにつきましては、この件で今まで指摘されてまいりましたアメリカのAP1000建設プロジェクトのリスクについて、「このあとありませんか。もうですね?」というご質問に対して、「これは将来の部分の見積もりでありますから、その可能性というのも0には言えません」ということもご説明してまいりましたけれども、そこの部分をいったん確定するということを最大の評価ポイントとしているということであります。
記者6:わかりました。2点目なんですが、61億ドルの追加費用というのが、今回のウェスティングの悪化の理由だと思うんですが、この数字が連結上の御社の損失としてもいったん乗りましたけれども、今回チャプター11することによって、この61億ドルというのは、御社とはもう関係ない数字になったという理解でよろしいんでしょうか? それとも、再生計画の過程において、なにか御社が追加で負担するものがやっぱり出てくる可能性というのはあるんでしょうか?
畠澤:この件につきましても、今後、裁判所の管轄の下で評価してまいります。建設のプロジェクトを続けていくということで、将来コストのなかで6.1ビリオンというものをいったん認識したわけですけれども。そこの部分の扱いの評価。一方、私どもの東芝の立場で負っております親会社保証という部分の評価と。
ここの2つのを考えて、裁判所の管轄の下で、先ほど来申し上げていましたように、お客様とこのプロジェクトを続けていくという方向で、今、議論を始めておりますので、その方向性も、裁判所の評価を受けて、着地点を見つけていきたいと思っております。
記者6:確認なんですが、今回取った損失で、東芝としてはもう追加的に出るものは基本ないという理解でよろしいですか?
畠澤:そういう認識でおります。
2018年度末でどの程度回復するのか?
記者6:ありがとうございました。あと3点目。追加がないといって変な質問なんですが、カザトムプロムの10パーセントが仮にプット・オプションを行使された場合に、来年度どれぐらいの……今回の前提ベースでいったら、どれぐらいの追加損失というのが来期出てくる可能性があるかというのと。
もし可能であれば、来年度末、すごい気が早いんですけど、18年3月期末の株主資本はこの6,200億のマイナスからどれぐらい改善できるのか、なにかもしそのへんでヒントがあればコメントいただければと思います。
平田:はい、カザフスタンさまのプット・オプションについてはまだ……、来年、今年の10月ですかね。それが権利行使の時期でございまして、まだ先方さまからはなにも言われていないという状況でございます。
来年度、カザフスタンが出資している金額、これが当社の株主資本に効いてくるということで、今手元にある数字ですと、約1,000億弱くらいの数字が株主資本の減少要因になると思ってございます。もしプットが行使されたら、ということですけれども。
記者6:その辺もひっくるめて、東芝メモリーの売却で株主資本の来年度末はプラスっていうのが基本的な考え方でよろしいでしょうか?
平田:基本的にはそうしていきたいと考えてございます。
記者7:毎日新聞のカタヒラと申します。何点かおうかがいしたいんですけど、チャプター11の申請の非連結化のところでちょっとおうかがいします。
何人かの専門家の方のお話を効いていると、非連結化されるか否かで別の意見もおっしゃってる方もいらっしゃって、そこは何か判断のリスクというようなものはないものか、どうなのかっていう点と、公認会計士さんのほうで非連結化されるかどうなのかというのは来ているのか、どうなのかというのを確認させていただけますでしょうか。
平田:まず、基本的にはチャプター11によって、裁判所管轄になり、当社に支配権がなくなるということで。会計の基本的な考え方としては、非連結化になると会社側としては理解してございます。
今後4クオーター締める際に、監査人であるPwCさまと協議をしていきたいというふうに考えてございます。
記者7:PwCさんと、そこらへんの方針は示されているわけではないと?
平田:会社側としてのスタンス、ポジションは今、固めてございますが、ここから監査人さまにご評価いただくという段取りになっています。
記者7:わかりました。ありがとうございました。
黒字見通しについて
記者8:シティグループ証券、エザワと申します。1つめは親会社保証額。3ページめの下に書いてある5,600億円なんですけど、ここまでの報道、もしくは単体の有報に出ていた7,900億ぐらいなんですけど、これとの数字の違いの背景を教えてください。
平田:数字が減ってございますけど、1つは時間の経過とともに個別の案件が外れて、親会社保証が外れていってるというものがございます。
あともう1つはWECの借入に対する保証を行っていたものが、前の数字には入っていたんですけど、それが今実際、東芝が貸し付けるというようなかたちにここ数ヶ月で変わってございますので、むしろその金額は貸倒引当金のほうに行っているとご理解ください。
記者8:わかりました。もう1つはカザトムプロムは入っていないと思うんですが、IHIの株主資本を押し下げる影響、350億というのは、この総額7,200億のマイナスになりますよという話のなかには参入されているんでしょうか。
平田:その件は3月14日に見通しをレビューさせていただいた際にすでに織り込んでございます。
記者8:最後ですけども、6,200億の債務超過からなんでフラッシュメモリを過半数売却して債務超過をするという話になりますと、そんなに余裕がないように思うんですけども、今の財務のデザインとして、綱渡り的な状態でも今日の段階では仕方がないということなんでしょうか。
それともなにか、ここから何千億か黒字が18年3月末には作れるというような、見通しが他におありということがあるんでしょうか。
平田:もちろん17年度の期間業績をきちんと上げていくということでございます。フラッシュメモリのマジョリティの売却にはすごく大きな資産売却。もちろん個々には今後の事業に相対的に関連の薄い事業は売却していきますけど、一番大きいのはNANDフラッシュメモリのマジョリティ売却ということになります。
十分プラスになる計画
記者9:東洋経済ヤマダと申します。私も3点お願いいたします。1点目が、今の方に近いんですけれども、6,200億円からの、債務超過からメモリーの売却でプラスになるということなんですが、本日である程度、出揃ってると思うんですけれども、そこで十分なキャッシュインともに利益ともに、選べるだけの目処は立っているという理解でよろしいでしょうか。
綱川:全部のオファーが来たわけではないんですけれども、まだ一部しか来ていませんが、それに十分耐えるものは来てると認識してます。
記者9:その場合、これはいくらかによるんですけれども、それでも単にゼロ、マイナスだったやつがプラスになるというだけだと、ちょっとしんどいと思うんですが、どのぐらいまで行けそうということなんでしょう。また、先ほどおっしゃったように、来期はまた1,000億の少なくとも赤字だったり、リストラ等とかもあると思うんですけれども。
綱川:それは、外部資本の導入の金額次第ですけれども、その金額については、ちょっとお答えすることができません。先ほども申し上げましたとおり、十分プラスになるだけの計画であります。
記者9:わかりました。2点目がアメリカの四期についてなんですけれども、これはその、工事はまだ継続されるということですが、東芝としては、一切関わらない。放り出したという理解でよろしいんでしょうか。
畠澤:今回、チャプター11の申請の後、お客様と、工事の継続について議論してまいります。その方向で、議論してまいります。その間、外部の資金の調達と。DIP、DIPファイナンスというものを使いながら進めていくわけですけれども、その奥に、背後にですね、私どもの方の200ミリオン米ドルの分もつけるということで、そういう意味での貢献もしながら、AP1000の建設の部分を、前に向くという観点での貢献をしてまいりたいと思います。
記者9:すいません。あの、財務というか、お金の面と、実質の部分があると思うんですけれども。実作業のところ。実作業のところとしては、もう手を引かれるということですか。ウェスチングハウス、チャプター11後のウェスチングハウスおよび、例えばフルアーだったり、その他の建設会社でやっていくという理解でしょうか。
畠澤:2つありまして、1つは東芝が契約の下で受けている機器の据え付け等、供給等がございます。具体的には、タービン・発電機等は、東芝の者が、大型の機器として現場にこれから、物はもう現場に届いておりますけれども、それの据え付け・試運転・調整といったものもございます。また、大型のモジュール等の、私どもが納めた物も、まだ残っておりますので、そういう意味での仕事については、引き続き進めてまいります。
この事態を避ける術はあったのか?
記者9:お金の方なんですけれども、こちらも確認をさせて下さい。6.1ビリオンが、コストオーバーとして出ていて、これの負担を、ウェスチングハウスがするということだったと思うんですけれども、さらにそこの6.1で留まらないかもしれないということが、チャプター11に繋がったというふうに理解しておりますが。
そこの6.1というのはそのまま現に残っていて、それを一定程度埋める形で親会社補償があるという構図だと思うんですけれども、じゃあこの先に、東芝が手を引いて、今回、ある意味損切りをした中で、この先のコストオーバーが出てきた場合というのは、それは、もう電力会社で面倒を見るということで、一切その請求はもう回ってこないということで、いいんですよね。
畠澤:AP1000の建設契約当事者ウェスチングハウス。これが、仕事を進めるという義 務を今まで負ってきました。そして、今後チャプター11以降のアメリカのケースプロジェクトの進め方につきましては、裁判所の管轄の下、お客様、ウェスチングハウス、それから下請けのフルアー他関係会社、当社も含めて、進め方の協議を進めていくことになります。現時点で、それについて明確な方向・判断をお示しすることは難しい状況です。
記者9:ということは、万が一、親会社補償を超えてコストが増えてきた場合に、まだその分担を巡って、何らかの請求書が回ってくる可能性というのは、残っているという理解 でいいんでしょうか。
畠澤:契約の定めに基づいて、親会社補償を定めておりますんで、その範囲で留まるもの と理解しております。
記者9:わかりました。最後に1点だけです。先ほどの朝日新聞の方の質問に近いんですけれども、この10年間で、何か今の事態を避けられるようなことというのがあったんでしょうか。そういった、その、どこかの判断が、つまり、ウェスチングハウスを買った時点で、今の現在というのは決まってしまったのか、何かもし、たらればですけども、どこかで、何かこう、撤退というのを考えられた時というのを、今こう振り返ってみて、そういったチャンスがあったというような後悔というのはございますでしょうか。これは綱川社長にお願いしたいです。
綱川:申し訳ございません。私には、そこのところはわかりません。
記者9:わかりました。ありがとうございます。
今、東芝メモリーを売るのは正しいのか
記者10:東海東京調査センターのイシノです。昨今の御社の半導体メモリー(事業)に関する質問で、1点だけでけっこうです。入札の候補にもあがっていると報道されているMicron、SK hynixの時価総額は、今、両方とも3兆5,000億円になっています。今、東芝メモリーの入札価格は新聞によると2兆円と。
非常に短期間でメモリー事業の付加価値が急速にあがっていると思うんですけど、その意識が御社の中にはあるのか。これを2兆円相当で売ってしまうと非常に割安なような気もするんですけど。
もう1点は、為替の終わり方が110円ということで、前回の見通しでは100円で予測をされていたかと思うんですけど、110円の前提であれば、半導体メモリーの事業の利益というのは、どのようにガイダンスが変わるのでしょうか。
綱川:(メモリー事業の)価値というのは、少なくとも2兆円と。これだけ市場も増えておりますし、データセンター等々の市場の拡大のもとに企業価値があると考えております。
それから為替の点は、為替(影響)で輸出に振れることがありますので、10パーセント分粗利率が上がると考えております。
記者10:このわずか3ヶ月で各社とも1兆円ずつ時価総額が増えているんですけど、御社の認識として、価値が上がっているという認識があるのかないのかということだけまずは教えていただきたいのと、半導体(事業)の為替の換算で、1円変化すると、あるいは10円変化すると何億円のプラスになるのかを教えてください。
綱川:最初のご質問については、企業価値が上がっていると考えております。1円に対するインパクトは、今私はわかりません。
平田:半導体部分だけの為替の影響額は、わかり次第お答えさせていただきます。すみません。
記者10:ありがとうございます。
ショートのリスクは?
記者11:共同通信社のクボタと言います。3点ほど僕もお願いしたいんですが、まず債務超過は解消できるというお話があったんですけれども、それと別途、運転資金繰りがあるかと思います。この運転資金繰りは売却時期にも大きく関わってくるかと思うんですけれども、この運転資金に関する認識について綱川社長にお答えいただきたいんですが。
綱川:この運転資金につきましても、この売却、外部資本の導入、これは今、できるだけ2017年度中に黒字にしようと考えておりますが、それは抜いて達成すると考えております。
記者11:売却ができるまでの時期でショートする危険性みたいなことはありうるとお考えになっているんでしょうか。
綱川:そのへんは銀行さまのご協力を得て進んでいるということです。
記者11:先ほど原発のリスク遮断でリスクがなくなるとおっしゃったんですが、今後、損害賠償請求がされるリスクもあるかと思うんですけれども、このへんはどうお考えになられてるんでしょうか。
綱川:とくにないと考えております。
記者11:現在ウェスチングハウスの保有株式をかたちのうえでは持ってらっしゃっていて、連結としては外れたということなんですけれども、この株式は売却していくということでよろしいんでしょうか?
畠澤:株式の扱いにつきましても、裁判所の管轄のもとで再建手続きの承認・検討が進めていくなかでその位置づけが決まっていくというふうに理解しています。
記者11:売却によって御社に資金が入ってくるということは当然ありうるというふうに考えてよろしいですか?
畠澤:それは再建のなかで、ウェスチングハウス全体の価値を上げていくという一手段としてご質問されてるんだと思いますけれども、そのなかとして、ウェスチングハウスの価値が上がったものが私どもの債権なり親会社保証の負担の部分のところになにかしらの貢献があるというのは期待しておりますが、これもすべて今後進めてまいります裁判所の指導の再建手続きの承認のなかで決まっていくと思っております。
記者11:ありがとうございました。