CLOSE

脱ビルドトラップなプロダクトマネジメント組織(全1記事)

プロダクト開発で陥りがちな“アウトプット指標の甘美な罠” ビルドトラップにはまらないための組織づくり

ビビッドガーデンとベルフェイスのコラボイベント「脱ビルドトラップ toB/toCそれぞれのプロダクトマネジメント」。事例発表とパネルディスカッションを通して、各社が取り組むプロダクトマネジメントの手法と、いわゆるビルドトラップ状態を脱したプロセスなどの実例を話しました。株式会社ビビッドガーデンから登壇したのは、森洋一郎氏。脱ビルドトラップなプロダクトマネジメント組織づくりについて発表しました。

ビビッドガーデンに1人目のプロダクトマネージャーとしてジョイン

森洋一郎氏:私からは「脱ビルドトラップなプロダクトマネジメント組織」というテーマで、今日は話します。

最初に自己紹介させてください。「食べチョク」のプロダクトマネージャーの森と申します。僕は大学卒業後に福岡のSIerでエンジニアをするところからキャリアを始めました。その後オンライン英会話のレアジョブというところで2年ほどエンジニアをやって、その後3年、4年ぐらいプロジェクトマネージャーを経て、プロダクトマネージャーというキャリアになります。

ちょうど1年前、2021年8月にビビッドガーデンに1人目のプロダクトマネージャーとしてジョインしました。

今日は、ビルドトラップに陥らないための組織づくりと、私たちが取り組んでいるプロダクトディスカバリーチームの効果について話ができればなと思っています。

「食べチョク」のミッションは「生産者の“こだわり”が正当に評価される世界へ」

その前に「食べチョク」をご存じの方も、初めて聞いた方もいると思うので、私たちのプロダクト「食べチョク」について紹介させてください。

「食べチョク」はオンラインの直売所です。オンラインで直接消費者に注文をもらって、注文が入ったら生産者さんから直接お届けするという感じで、例えばメルカリさんのようなイメージで考えてもらえればいいのですが、注文が入ったら生産者さんが採れたての野菜や果物を梱包して、直接お届けする感じになっています。

今、全国で7,500ほどの農家さん、漁師さんに登録をしてもらっています。もともとは野菜中心でしたが、今は肉、魚、乳製品など、幅広い商品が掲載されています。

私たちは、「生産者の“こだわり”が正当に評価される世界へ」というミッションを持っています。既存の流通では、生産者さんは自分でなかなか料金設定ができなかったり、利益が30パーセントしかなく、結局、手間暇かければかけるほど儲からなかったりというところがあります。

でもやはりおいしいものや体にいいものを作りたいという思いを持った生産者さんがたくさんいるので、そういったこだわりの生産者さんに販路を提供するプラットフォームとなっています。

ここ数年ですが、流通額・生産者数が大きく伸びています。コロナがきっかけになっているところがありますが、2年で流通額は128倍、生産者さんも2年で10倍と、非常に大きく拡大しています。

ビルドトラップ=アウトプットで成功を計測しようとして行き詰まっている状況

今お話ししたとおり、急成長を遂げているのですが、こういった中でいかにビルドトラップを避けながらアウトカムを生んでいくかが、組織にとってもけっこう大きなテーマでした。

今回、脱ビルドトラップと銘打ってイベントをやっていますが、ビルドトラップとは何か? というところもあると思うので、あらためて定義について見ていきたいと思います。

ビルドトラップは、組織がアウトカムではなく、アウトプットで成功を計測しようとして行き詰まっている状況のことです。これはPM(プロダクトマネージャー)の多くの方が見ているであろう、オライリーの『プロダクトマネジメント』の最初に書かれていることですが、アウトプットで成功を計測しようとして行き詰まっていることを、ビルドトラップといいます。

そもそもアウトプットとは何か、アウトカムとは何か? アウトプットは、タスクだったりToDoだったり、リリースした機能の数がアウトプットの計測指標になります。

一方、アウトカムは何かというと、顧客の課題を解決できているか、お客さんが喜んでるかみたいなところです。結果的にそれが組織としてのインパクトを生み出すと、GENERATESと書いていますが、アウトカムが企業の金銭的な影響などを生みます。こういった流れになる中で、アウトカム、アウトプットのその先のアウトカムを見ているか、それともアウトプットを見ているかが違いとなるところかなと思います。

過去の自分も含めて、耳が痛い方もいると思いますが、振り返ってみると機能を作った数や、ベロシティが上がっていることはもちろんすごくポジティブなことではありますが、これだけで満足していないか? それは顧客に価値を届けられているのか? これをやはり問い続けることは、プロダクトマネージャーとしてすごく基本的なことでありながら、一番大事なことかなと思っています。

ビルドトラップが起こる原因とは?

ビルドトラップとよく言いますが、これがなぜ起こるのかもちょっと考えていきつつ、どうやって脱ビルドトラップしていくのかを見ていきたいと思います。

アウトプットによって計測するというのがあったと思います。アウトプットの指標は非常に計測がしやすいです。今週いくつリリースできましたとか、ベロシティがどれぐらい伸びましたとか、非常に計測しやすいものです。

また、努力、かけた時間、これらと比例しやすいのも指標になりやすい理由にあると思いますし、顧客の求めるものの解像度が高くなくても機能の数は出せてしまいます。

特にこの3つ目、顧客の求めるものの解像度が高くなくても出せるというところが非常に危険な罠の部分だなと思いますし、計測しやすく時間かけた、いっぱい出せた、やった! みたいなところがアウトプット指標の甘美な罠、これがビルドトラップだと僕は認識しています。

これをアウトカムにするためには、やはり顧客の解像度をいかに高めて、結びつけるかが大事だと思います。

計測しやすく、かけた時間によってアウトプットを出すことは悪ではありません。あくまで顧客の価値に結びつかないことが悪なので、このへんをやっていければなと考えて、改善をしてきてました。なのでビルドトラップにはまらないための組織づくりは、顧客の解像度を上げられる組織づくりだと思っています。

ビビッドガーデン開発組織の変遷

ビビッドガーデンの開発組織、プロダクトチームの変遷。これは僕が入社するちょっと前の話になりますが、企画に都度アサイン。よくあるかたちですよね。

そこからミッションベースのユニット。そこに加えて中長期で考えるプロダクトディスカバリーチームを加えたという変遷を辿っています。

個別の話をしていくと、施策アサイン型。よくあると思いますが、例えば企画を考える方がいて「これ○○がしたいんですよねぇ」と開発チームのリーダーや、カウンターパートの方に話をすると、「じゃあ○○さんが詳しいので、○○さんをアサインしますね」みたいに、開発チームは1つのチームになっていて、都度都度施策ごとにアサインされます。これがよくあるやり方だと思いますが、最初はこれでした。

早く動けるし、常に施策、「○○さんをアサイン」という感じでやるので、ある意味待ち状況は小さくしやすいのですが、やはりどうしてもチームでの学びや、知見が集約されにくいというところがあると思っています。

企画の人に関しては、知識が集約されるというのはあると思いますが、チームとして顧客の解像度を上げて、ボトムアップでアウトカムを作り出すというふうにはなかなかしにくいなぁということがありました。

チームのメンバーの数がかなり増えた中で、ミッションベースのユニット型に変えました。

例えば、顧客体験の改善をしようというミッションを持っているユニットや、生産者さんの体験を改善しようとか、物流の課題を改善しましょうというユニットで分けます。

その中にプロダクトオーナーがいて、エンジニアさんがいて、ここは一緒にアイデアを出しながらやっていきます。顧客の体験を良くするにはというところの知見が溜まっていったり、生産者さんのユニットに関しては生産者さんのナレッジが溜まっていったり、こういったことがやれて、特定ドメインの知識が集約されます。

「この企画がうまくいった」「じゃあこれを続けよう」「これがうまくいかなかった」「じゃあ次はこういうふうにしてみようか」と、チームの練度が上がりやすいなと、強く感じています。

結果的に顧客の解像度が高くなるし、チームメンバー、みんなの解像度は高い状態です。つまりボトムアップでアウトカムが出せる施策が生まれるし、そういう雰囲気が作れます。これはとても実感していて、うまくいっているなと思っています。

そこに加えて1つ課題があったので、プロダクトディスカバリーチームを設けました。これは、オライリーの『ユーザーストーリーマッピング』を参考にしました。

ユニットは、今スプリントとか次スプリントの中でどうやっていくかを見ていくのですが、非連続な成長のために3ヶ月先、半年先、1年先を見ていくのは、なかなかユニットでは難しかったので、それに関して常にディスカバリーし続けるユニットを設けました。

ディスカバリーチームは、顧客全体の解像度を上げて、それらの情報を集約・見える化して、さらに深く分析してノーススターメトリクスを見つけるということをミッションに持ち、中長期的な成長へのアプローチ、中長期的なアウトカムを見出すユニットをやっています。

ディスカバリーチーム新設により得られたメリット

ここにあるように、アウトカムを生み続けるにはやはり継続的なディスカバリーが必要で、左にあるようなたくさんのディスカバリーからデリバリーが生まれ、最終的には少ないかもしれませんが、確かに顧客の価値を届けるということをやっていく。このためにはやはりディスカバリーを常にやり続けることが必要だと思います。

メリットとして、やはり中長期的な視点に立って分析・施策出しができることと、一貫性のあるデータ分析ができること。データやインタビューの根拠がある中で、大胆かつ確度あるアクションが取れるというところ。これによって解像度を高めてアウトカムを生み出すというメリットが得られたと思います。

具体的にやっていることの一例です。プロダクトマネージャーがインタビューをやって、データアナリストがデータ分析をして、それをUXデザイナーがグラフィカルに、入ったばかりのユーザーはこういう人ですとか、ヘビーユーザーさんは、たまに買うユーザーさんは……と、かなり図示して見やすくなっています。

どこに情報があるかわかんないということがけっこう起きると思いますが、それが見やすくなりました。右側にありますが、ユニットの人たちも「僕らのターゲットはここだから、こういうユーザー層なのだ」「データ的にも定量的にもこういうふうに出てるんだな」というのが出せます。この分析の中でノーススターメトリクスを出して、具体的な戦略に結びつけていくということをやっています。

こういったことで脱ビルドトラップをやっていくし、現状アウトプットもかなりやっていますが、ビルドトラップにはまらず着実にアウトカムを生み出せていると思っています。

ディスカバリーチームを作ってみましたが、ここの効果もすごく感じているので、より大きな価値を出して顧客に価値を届けていきたいなと思っています。

そのためにはもっとプロダクトマネージャーの仲間が欲しいなと思っているので、今回の話を聞いて興味を持った人は、ぜひともビビッドガーテンのプロダクトマネージャーにご応募いただければと思います。ありがとうございました。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 今までとこれからで、エンジニアに求められる「スキル」の違い AI時代のエンジニアの未来と生存戦略のカギとは

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!