エンジニア採用における母集団の作り方
社外に“メッセージ”を伝えるためにできること

エンジニア採用パネルディスカッション――困難きわまる人材確保、だが成功する方針・施策とは #1/2

Developers Summit 2019
に開催

翔泳社が主催するソフトウェア開発者向けITカンファレンス「Developers Summit 2019」が2月14日~15日に開催されました。エンジニア採用パネルディスカッション「困難きわまる人材確保、だが成功する方針・施策とは」に登壇したのは、エンジニア採用の分野で活躍してきた3名。株式会社翔泳社IT人材ラボの市古明典氏をモデレーターに、エンジニア採用の今と知見を語ります。前半の本パートでは、採用の前段階における母集団の作り方と、各社の取り組みについて紹介しました。

提供:株式会社リクルートテクノロジーズ

エンジニア採用の秘訣

市古明典氏(以下、市古):ありがとうございます。

(会場拍手)

ありがとうございます。今日はお寒い中こちらのセッションに足を運んでくださいまして誠にありがとうございます。今回はエンジニア採用というテーマでセッションをやらせていただきます。

こちらに足を運んでいらっしゃるということは、多かれ少なかれエンジニア採用でお困りだったり、課題を抱えていらっしゃる方がお集まりいただいているのかなと思います。

実際、求人倍率もとあるサイトの調査によれば、先月は7倍以上出ていたりするくらい大変な状況です。ですが、そうした中でも優秀なエンジニアの方を採用することができている会社さんも存在しています。

今日はエンジニア採用において成果を上げてらっしゃる3社に起こしいただき、自社の採用の知見を共有したいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

最初に簡単に自己紹介だけいたします。私は翔泳社でIT人材ラボというメディアをやっている市古といいます。

IT人材ラボはエンジニアの採用や育成、活用、評価。そういったキーワードでやっているメディアです。現在1年ほどみなさまに支持をいただいるメディアの編集長でございます。よろしくお願いいたします。

続いて松尾さんから順番にご挨拶をお願いいたします。

リクルートテクノロジーズの採用の軌跡

松尾奈美氏(以下、松尾):リクルートテクノロジーズの松尾と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。簡単に自己紹介ということで、会社の説明からさせていただきます。弊社はリクルートが2012年に分社化をしたときにできた会社です。リクルートグループのIT専門機能を横断的に担っている会社です。

社員数は設立当初は150名でしたが、今は900名弱ということで急拡大している会社です。コーポレートスタッフを除くとほぼ全員がエンジニアです。UX、アプリ、ミドル、インフラ、セキュリティ、ビッグデータ等、多くの職種のエンジニアが所属しています。

私の仕事は、去年までの4年間で中途エンジニアを年間100名採用するということで、非常に苦労しながらやってきました。現在は異動して、広報コミュニケーション組織として組織活性や社外PRを担当しております。

どういったことをしてきたかということですが、実は設立当初は本当に知名度がありませんでした。設立したばかりの頃は会社の独自のカルチャーもなく、応募者の方に伝えるものがないということで非常に苦労しました。

そこで採用の前に、組織の魅力づくりや、組織が何を大事にしていて何をPRするかというところで、現場の役員の方とタッグを組んでやってきました。時間はかかりましたが採用の手前の魅力作りや発信が大事だったので、そういったお話もできたらと思っています。

私も採用から広報に軸足を移して、広い意味での採用活動をやっております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

経営からみたエンジニア採用

市古:小野さんお願いします。

小野和俊氏(以下、小野):セゾン情報システムズとアプレッソの小野と申します。よろしくお願いします。

セゾン情報システムズは、SIをやっている部署とHULFTなどDataSpiderも作っているパッケージ・サービスの部門があります。社員は800人くらいで、そのうち500人くらいがエンジニアです。

アプレッソは2000年にはじめたベンチャー企業です。今はM&Aでセゾン情報システムズがアプレッソの100パーセント株主なので、セゾングループという感じです。こちらは50人くらいで、ほぼ全員エンジニアという規模感でやっています。

私自身は99年にSun Microsystemsという会社に(入社しました)。Javaを作っている会社ですね。今はFacebookの本社になっているアメリカの本社で少し仕事をしたり、向こうでJavaやXMLの大学院の授業をやったりしました。

それで日本に帰って来て、24歳でアプレッソを起業して、今もこのアプレッソの社長もやっています。そして、アプレッソを買ったセゾン情報システムズの常務CTOもやっているという感じですね。

エンジニアの採用についてはこのあと詳しく説明しますが、先ほど松尾さんが言っていたことと結構近くて、ドーンとエンジニアの応募の波が過去に何回かありました。

ベンチャーを立ち上げたとき、「こういうことがやりたくて立ち上げたんです」というメッセージに共感してドーンと応募が来たり。あとは今でこそ当たり前ですが、2008年くらいにTwitterで募集をしたら、当時はやっている会社があまりなかったので、おもしろいということで1ヶ月で30人くらいドーンと応募が来たりしました。

あとはWantedlyが出たばかりのころに使って、何を大事にしているかを書いたら「共感しました」と言って来てくれました。そのあたりで来てくれたのが、人数もそうですが質的にすごくいい人が来てくれました。今日はそういったことをお話しできればと思っています。よろしくお願いします。

(会場拍手)

市古:三木さんお願いいたします。

三木明氏(以下、三木):あ、1人だけ色違くてすみません。

(会場笑)

こんにちはーっす!

参加者一同:こんにちは!

三木:すごくいっぱい人集まっていて超緊張してます。あと、こんなにすごい人と一緒にパネルディスカッションができるなんて嬉しいです。

threetreeslightというハンドルネームで活動しています、Reproの三木明と申します。見ていただいたとおり、やたら立ち上げてはやたら失敗してきたおじさんですね。スタートアップの失敗してきたおじさんなので(笑)、成功談もあるんですけど失敗談もいろいろ話せるかなと思います。

そんな僕がいるReproは、164人くらいの規模で、37人くらいデベロッパーがいる感じです。だいたいがリファラルという感じでエンジニア採用をやっています。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

母集団を形成するために

市古:ありがとうございます。さっそくディスカッションを始めたいと思います。テーマの1つ目は自社にどう応募してくれるか。要するにどうやって自社に興味を持ってもらって、応募してもらうかというところまで話です。母集団形成と言ったほうがいいかもしれません。

もう1つは、応募したあとの話です。応募者の中でこの人がいいとか、そういった判断をどうやって見極めたらいいのか。そのあたりの課題感でやっていこうと思います。

ただ、この2つは当然採用プロセスの中ではつながっているので、今日の話の中でシームレスにつながって渾然一体となるとは思いますが、一応指標としてこちらを掲げさせていただきました。

最終的に一番みなさまがお困りなのは、やはり母集団形成ではないかと思います。そのあたりについて、広報をやられている松尾さんは、経験談やよかったことを教えてください。

松尾:職種によっても差がありますが、リクルートの中でセキュリティ組織を新しく立ち上げるところで新たに採用したことが3、4年前くらいにありました。「リクルートでセキュリティできますよ!」と言ったら来るかなと思ったんですけれども、はじめはぜんぜん応募が来ませんでした。

セキュリティもいろんなところで募集がある中で、やはり差別化というか。この組織はほかの組織と違って一体何を大事にしていて、立ち上げるからにはどこを目指して、そのためにはどういったものを求めていて、こちらは何が約束できるかということがないと、表面的に口説いて入っていただいても「なんかちょっと違うじゃん」みたいなことになります。

ですので、遠回りかとも思いましたが、役員の方とそこから作っていきました。役員の方も講演に出たり、ブログですごくPRをしていただいて、1年くらい経つと、どんどん人が来るという循環ができました。

少し遠回りに思われるかもしれませんが、先ほど小野さんもおっしゃっていたとおり、この組織は何を大事にするのか。そういった部分を作っていくのが大事だったと思っています。

市古:最初にブランドを作るのはなかなか時間もかかるし、手間もかかるし、負荷もかかるので大変なことだと思います。スタートアップをたくさん作ってこられた三木さんはブランドをたくさん作り直してきた経験があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?

母集団形成のためのブランドの作り方

三木:母集団形成のためのブランド作りという感じですよね。いや~みんな、つらいでよね。

(会場笑)

超つらいと思うんですよ。母集団形成をするために、一番最初は友達を頼るしかないんですよね。でも友達に頼るにしても、「友達誘ってくれよ」「え、いいけど、どう口説く?」みたいな話になります。なのでなるべく武器を与えるということをめちゃめちゃがんばります。

今Reproはけっこう武器があるので楽なんです。例えば「1日あたりのユニークユーザーのアクセス数は2,000万超えてます」とか「AI使って成果出してます」とか「月間40億以上プッシュ配信してます」とか。そういう武器があるんですけど。

そういう刺さる武器をリファラルとか友達誘ってもらう。ブランディング作りのために武器を作るのが大切でした。何回か失敗して、今はすごくうまく行っていると思います。

市古:それは実績が伴ってきて、それがそのままブランドにもつながっているというそういう感じですかね?

三木:実績はなくても、いかに夢というか、その人にとって魅力的なことを正しく語れるかということですね。「これやったら絶対おもしろいでしょ」「これおもしろいよね?」「あ、おもしろいって言ったよね!?」「じゃあコミットするよね?」みたいな感じですね。

(会場笑)

市古:確かに(笑)。そうおっしゃられたら「そうだ、そうだ」ってなりますよね(笑)。

実績のない企業がエンジニアを採用するためには

市古:先ほどもそれに近いことを小野さんがおっしゃっていましたがいかがでしょうか?

小野:最初にアプレッソを立ち上げたとき、誰も会社名を知らない状態でした。やはり同じような苦労があったんですよね。うちの場合も同じように、今なら「5年連続日本でナンバー1です」と言えるんだけど、当時はなにもないところにどうやって共感して入ってくれるのか、ということはありました。

僕らの場合、僕がアメリカで仕事していたときに日本に帰ってきて、エンジニアリングの現場ですごく思ったのが、美しいソースコードを大事にしなさいということです。納品はできて一応テストも動くという感じでした。ですので、いろんな意味で美しく作るということを大事にするような開発をしようということをメッセージしていました。

そうしたら、ペアプログラミングをやることでコードの品質を上げようと社内で提案したんだけれども「それやったら人月が2倍になるだろ」と却下されて絶望したSIer出身の人が「共感しました」って言って応募してきてくれたりとか。

強烈な実績があれば「あ~知ってます」って感じだと思いますが、まずは自分たちが何を大事にしようとしてるのか。まだ始まってもないわけだから実績なんかないんだけれど、どこにこだわってやっていこうかとしているか、それだけだと思います。

それがちゃんとアピールできて、そうすると業界全体に共感を生まれてソーシャルでも拡散したりして。僕らの時代でははてなブックマークがいっぱい付いたり。そういったことで人がいっぱい来たりしたので、やはりメッセージが大事なのかなと思いますね。

市古:リクルートテクノロジーズさんの場合、セキュリティのエンジニアさんを集めるのに苦労されたということでしたが、セキュリティって実績はないじゃないですか。「トラブルに対峙しました」って、「トラブルがあったのかよ!」みたいな話になっちゃうので(笑)。そのあたりはどうやって魅力作りをしましたか?

松尾:実績がないというか立ち上げたばかりなので、先ほどお2人がおっしゃっていたようにどこを目指すのかということををまず作りました。ある種ムーンショットではないですが、当時「3年後に日本一のCSIRT組織を作る!」と当時の担当役員が言っていました。

まだ仲間がいないところから、それをやるために社員の方にどういったものを約束するかということで、当時役員がずっとセキュリティエンジニアとしてキャリアを積んでいく中で、自身の課題感の中でセキュリティエンジニアが幸せになれる組織というのはこんな組織なんじゃないか、と考えた内容を組織の方針として反映したのです。

そして自身のキャリアと紐づけて、幸せになるためにはこういったことを約束します、みたいなところを打ち出していきました。それがすごく共感されて。そこからスタートしました。

市古:再度繰り返しになりますが、実績があったほうがもちろん説得力はあるかもしれないですが、やはり何をしたいのか、何のために自分たちの技術、スキルが求められているのかがはっきり熱を持って伝わってくる。そこのメッセージが刺さるというのは、いずれの方も共通のお話なのかなと思います。

いかにしてメッセージを届けるか

市古:次はメッセージの届け方についてです。

三木:大切ですよね。

市古:そこをどうやったのか。三木さんはどんなかたちでやられていますか?

三木:メッセージの届け方って誰が伝えるかという部分にかなり依存すると思います。まず、人事担当者の人は届けられないと思ったほうがいいです。無理です。諦めてください(笑)。

(会場笑)

人の“一緒に仕事したい要素”というのは、おそらく一緒に仕事する人、事業ドメイン、やっていること、あとお金だとしたら、人事がいじれるのは金だけなので「金で叩く!」しかできないわけですね。そんなのは人事がいくら語れると思っても現場感ないので語れません。

なので現場の人間や創業者メンバーなど、そういう想いが超強い人にがんばって語ってもらうのが僕はベターだと思います。僕はそういうことを自分で伝えないと会社が潰れるので、潰さないために必死でしたね。

市古:なるほど、それはすごく必死になりますよね。アプレッソさん、セゾンさんでは今はどういったかたちでやられていますか?

小野:いくつかの段階はありますが、まずアプレッソのときは本当にまだ誰も知らない状況だったので、まさにブログを書いたりしました。セゾン情報システムズで言うと、ある意味老舗のSIerみたいな感じなわけです。

そうすると、ブログを書いて「これに共感しました!」という人がいっぱい来るというより、どちらかと言うと求人票を書いて人事経由で来る人のほうが割合として多かったです。

ブログみたいなソーシャルなメッセージの伝え方以外にも、セゾン情報ならではのフォーマットにしたがったメッセージの伝え方もあると思います。例えば今は「技術は大事にしよう」ということをアプレッソでもセゾンでも一貫してやっています。セゾン情報の新卒の人って、実は半分くらい高専から来ていただいています。

三木:嬉しい!

小野:高専卒ですもんね。例えば高専だと推薦という仕組みもあったりするので、先生としては、大切に大切に育ててきた教え子を送り出す会社がどんなことを考えているのか知りたいと言ってくださるんです。

そういうところで、例えば私がCTOとして出て行って、どんなことを大事にして作っている会社かということを先生にお伝えするとか。他にも、高専のプログラミングコンテストの審査員を3年連続くらいやっています。

そういう機会では、審査員の方はけっこうビジネスモデル的な観点で「これは誰をターゲットとしていて、ペルソナは誰なの?」と方が多いんですが、僕は完全にコードを見て、「この行すげぇかっこよかったです」みたいな(笑)。あの人は本当にコードを見てるとか、そういうことで技術を大事にしていることを伝えるとか。

飛び道具的に、例えばブログで言えば読者がたくさんいないと使えないから応用の可能性が低いやり方になってしまいますが、求人票を書くような通常のプロセスの中でも、メッセージの伝え方はあると思うのでやってます。

現場とタッグを組んで一緒にやる

市古:ありがとうございます。リクルートさんはいかがでしょう? もちろんリクルートさんは自社でも届けるツールやサービスはされているわけですが、テクノロジーズさんとしてはどのように届けていますか?

松尾:職種やフェーズにもよるので、やり方は変えながらやっています。さきほど三木さんがおっしゃっていた人事は……(笑)。

三木:すみません(笑)。

松尾:私も人事だったんですけど(笑)。それはあるなと思っています。やはりエンジニアの方は、一緒に働く方をすごく見ています。私はコーポレートスタッフとして何を心がけていたかと言うと、いかにエンジニアの方と強力なタッグを組んでやっていくかということですね。

やはり会社の規模が大きくなっていくと、どうしても人事と現場の間にだんだん壁ができてきます。初めは現場に足繁く通ったり、その後はチャットでのやりとりなどを通じて意識的に距離を縮め、なくしていくことを心がけました。

あとは、仲間内でリファラルで伝えていくのがいい職種もあったりするので、そういった場合では現場の方にブログに書いていただいて、それを拡散いただいて、そこから広げていくということもやりました。キーポイントはいかに現場の方とタッグを組んで一緒にやるかというところでした。

市古:よく聞く話として、とくにエンジニアさんの価値観やエンジニアにとって良い環境とはどういったものかということは、人事の方も勉強して感じ取ることはできると思いますが、それでも100パーセントというのはなかなか難しいのかなと思います。

やはり現場の方に協力いただいてどんなメッセージにするのかは、おそらくエンジニアさんに手伝っていただかないとなかなか動いていかないのかなと思います。

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1 エンジニア採用における母集団の作り方 社外に“メッセージ”を伝えるためにできること
2 自社とのマッチングを見極めるために––理想のエンジニア採用を実現するために大切なこと

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