グロービスの開発組織づくり

末永昌也氏(以下、末永):みなさん、こんにちは。グロービスから来ました末永と申します。まず、グロービスという会社ご存知の方?

(会場挙手)

ちらほらいますね。エンジニア界隈だとだいぶ知名度が低いので、どれぐらいいるかなと思ったんですが、いらっしゃるようでよかったです。

グロービスの開発組織は最近できたばかりなのですが、今勢いよく伸びてるところなので、どんな開発組織でやっているかを、少しご紹介できればと思っています。

キャリアミートアップなので、私のキャリアを少しご紹介しようかなと思います。

私は1社目でHR系のベンチャーに入り、そこから教育のほうに少し興味が出まして、共同創業というかたちでスタートアップを少しやってました。

その後、グロービスへエンジニアの組織がまったくなかった状態で入社し、グロービス経営大学院に自身も通ってる1年生ということで、事業をやりながら学校に通っています。他に、子供もいまして、毎朝娘を保育園にデプロイして、会社に通って、夜は学校に通うという、そんな生活をしています。

グロービスについて、簡単にご紹介をさせてください。どんな会社かというと、「経営に関するヒト・カネ・チエの生態系を創り、社会に創造と変革を行う」ということをビジョンに掲げている会社です。

ご存知の方はグロービス経営大学院を一番知っている方が多いかなと思いますが、入学者数が10年間でだいたい10倍ぐらいに増えている日本最大のビジネススクールを運営しております。

それから、グロービス・キャピタル・パートナーズというベンチャーに投資をするグループ企業があったりとか、あとマーケティングとかファイナンスとか、そういった本ですごくメジャーになってるMBAシリーズという書籍を出版したり、ヒトの領域とカネの領域とチエの領域でがんばっている会社になります。

数字では、現在のグロービス経営大学院は今年の入学者数が800人を超えてるような状態です。

経営大学院への年間の国内の入学者数の合計はだいたい2,600人と言われているので、かなりのパイを占めてるようなかたちになります。現在は学校以外にも法人研修として、企業の研修プログラムを提供してるんですけど、これまでに研修プログラムを提供した方は累計で100万人を超えています。

あとは、キャンパスも東京・大阪・名古屋・仙台・福岡・オンラインと、あとは横浜、水戸、シンガポールにも特設キャンパスを置いていて、国内だけでなく海外にも展開をしている会社になります。

ベンチャーキャピタルでは、150社ぐらいの会社に投資をしていて、IPOまでいったところも30社というところで、こちらも非常にがんばっています。

本もだいたい300万部ほどぐらい売れており、いろいろな領域でヒトが育って社会に影響を与えるというところに非常に重きを置いている会社になります。

EdTech領域に注力

そんな中で、私たちはEdTechの領域をやり始めました。教育はこれまですごくレガシーな領域でした。教室にみんなが集まって、対面で授業をするところが多かったので、学ぶ場所や時間や費用に、だいぶ制約があったんですよね。ただ、学ぶ場所については、グロービスはオンラインで授業を提供しているので、解消されましたが。

グロービス経営大学院は修士課程(MBAプログラム)なので、大きな投資が必要、になります。大学院に行く前にもっと気軽に経営の知識をインプットでき、ビジネスを学ぶきっかけづくりができればと考え、動画コンテンツの配信を進めるために、テクノロジー部門が立ち上がりました。

僕らは「グロービス学び放題」というサービスを始めました。

月額1,980円で170ぐらいあるコースが動画で全部学べると。マーケティング、会計、ファイナンス、それからリーダーシップ、そういった経営学が学べるというところでやっています。

大学院のほうも、もともと印刷したテキストを教材として配布していたんですが、ちょっと前に「教材を持ち歩かなくても、スマホやタブレッドで気軽に読めるようにデジタルで提供しよう」ということに方針転換して、教材をデータ化しました。グロービス経営大学院の授業はディスカッション中心なのですが、議論に必要な基本的な知識は事前にインプットしておくために「グロービス学び放題」のコンテンツを予習教材に入れ込むという取り組みが始まっていて、大学院での学び方も変わってきています。

ちょうど今月(注:イベント開催は2018年7月)、英語の動画でビジネススキルを学べるサービスとして、「GLOBIS Unlimited」をスタートさせました。

もう1つ、教育の課題では、さっきは費用や時間の制約があったという話でしたが、もう1つはデータなんですよね。学校教育ってデータが取れていないところがすごく多かったんですが、これからはデータ活用でビジネスをやろうとしています。

1人の受講者がいろんな学習サービスを使えるような状態をつくっているんですけれども、それらのデータをすべて1ヶ所にストックしましょうと、「LRS(Learning Record Store)」と書いてありますが、学習データをすべて取りためるということを、グロービスは本気でやっていこうと思っています。

そのデータを、受講者自身にフィードバックしたり、教材、教育のコンテンツ自体にフィードバックしたり、そういったところを一生懸命進めているような状況です。

ただ教育だけに留まるのではなく、人事とITの掛け合わせはHRTechと言われますが、その領域にしっかりと絡んでいこうと思っている状態です。こういったところが、僕らが今取り組んでいる教育、Education×Technologyのサービスになっています。

たった1人で開発組織を立ち上げ

続いて、開発組織の変遷です。私が入ったのが2016年の9月なのでまだ2年経ってない状態なんですが、開発組織は40名を超えるぐらいの規模に成長することができました。

これ、入った当初はすごかったんですよ。僕、渡されたのがLet's noteのすごく軽いやつ。「これ、営業さんのやつだよね」って思いながら、やり始めたんですけど(笑)。GitHubアカウントもなくて、そこをつくるところから始める。そして、社内でシステムをつくっている部署はあったんですが、基本的にベンダーを使うという発想しかないので、「エンジニアって何?」みたいなところから入っていったようなかたちになります。

そんな中で、やっぱり一番立ち上げに便利なのってRailsだよねというところで、僕らのメインサービスはRailsモノリシックなかたちで開発をしています。

もう1個、さすがに1人だったのでちょっとつらいなって思って、最初はオフショアを使い始めました。そこでいきなり10人規模の開発チームができて、だいたい4ヶ月ぐらいでサービスを立ち上げました。

そして、ようやく僕らが手を触れる……、僕らがいじれるようなプロダクトができました。そうなってくると、どんどんフリーランス中心に移行していきました。今、フリーランスの方ですごく動いてらっしゃる方が多いので、そうした本当に優秀な方に入ってもらったのが一番大きいきっかけだったかなと思っています。これまでにCTO経験者も4人ぐらい、僕らのサービスには関わってくれています。

そんな中で、優秀なフリーランスの方が集まりつつ、正社員も集まってきて、今は40名規模の開発組織になっています。だいたい20人ぐらいが正社員で、残りの20人ぐらいがまだフリーランスの方に活躍いただいているようなところになっています。

今日はQiitaさんのイベントなので、QiitaのOrganizationを貼っ付けたんですけど(笑)、ここで僕らは一生懸命技術発信もしていますので、ぜひ見てみてください。

組織づくりで起こった問題

そして、やはり2年弱で40人ぐらいの組織になっていくと、いろんな問題が起こってきたので、徐々に徐々に良くしていったような経緯があります。

なにも考えずに普通に組織運営をしていくと、ミーティングの部屋が足りないみたいな問題が普通に出てきます。そして、あまり生産的ではないミーティングも出てくるので、スモールチームを中心に設計をしてきました。

それから、専門のSREとか、カスタマーサクセスグロースチームみたいなところで目的が明確になれば権限をそちらに渡せるので、そういったかたちでできるだけ個々人が動きやすいようなかたちを中心に、組織設計をしてきています。

一番最初につくったサービスは、やっぱりRailsのモノリシックなシステムなんですが、データビジネスというところは、完全に認証の基盤やデータ基盤を分けていて、マイクロサービスのようなかたちで構成をしています。

バックエンドはRailsエンジニアが多いのでRailsでやっているんですが、フロント側はReactを使ったり、最近のトレンドを取ってきてる状況です。

そして、無事にMacBookProと大型のディスプレイも用意できたので、開発環境としては非常に良いかたちになったかなと思います。

あとは、エンジニアとしてのキャリアパスを考えて、テクノロジー職という専門職の職掌をつくって、人事制度を変えたりして、社内の中での「エンジニアって何?」というところは、しっかりと整備ができてきているような状態でもあります。

全部は網羅できていませんが、ザッとこんなかたちで開発してますよということをまとめました。

基本的に使っているものは、そこまでモダンなかたちでもないとは思いますが、まあ、枯れた技術や、開発がしやすい技術、今のトレンドは取ってきてるかな、と思っています。

はい。もちろんQiita:Teamさんも非常に使わせていただいています。僕はドキュメントを本当に残す文化があって、Qiita:Teamさんは本当に便利だなと思ってます。

グロービスが大切にしていること

僕らが大事にしている組織文化、これはもともとグロービスの組織文化になりますが、性善説に則った「自由と自己責任」、それからオープンということが、本当に組織文化として根付いています。

会社としては、リモートワーク・フレックス・副業みたいなところは、自由と自己責任に則ってぜんぜんやっていっていいですし、カンファレンスや書籍もしっかり買って、学んだ内容をしっかりとチーム内に還元する、オープンにしていくという文化が非常に強いかなと思ってます。

やはり教育をメインにしてる会社なので、成果を出すことも大事だし、それ以上に組織が学ぶということをすごく大事にしている会社だと感じているところです。

これは最近、海外のカンファレンスなどに行った際の写真です。

SXSWに行ったりとか、WWDCに行ったりとか、……あっちはRubyKaigiかな、今年はこんなところに行ってきました。

自由と自己責任という観点では、やはり時間の管理は不毛だよね、というところはあるので、合理的ならどんどんやって、という文化です。ただ、そこには自己責任は伴うので、しっかりとやる意味を考えながらやっているような状態です。

開発文化としては、チームWayみたいなところは一応用意をしています。

僕ら開発者としては、非常にやりやすい言葉をしっかり決めてやっているようなかたちで、やはりデータドリブンとか、ユーザセントリックみたいな話はすごく大事なので、意思決定する時にはそういった言葉がよく出てきます。

あと開発フローはだいぶ自動化ができているかなと思っていて、基本的に新しい方入ってきたら、Dockerでバコッと環境が立ち上がったり。そしてプルリクを送ると、HerokuのReview Appsというものによって勝手にHerokuの環境が立ち上がります。プルリクごとにそういった環境が立ち上がるので、ビジネスサイドの人に「この機能見てください」というかたちで見ていただいたりと言った自動化ができています。

基本的に、プルリクを送ってマージするみたいなところでやれば、自動で回るところは非常に多いかなと思っています。まだまだできてないところはありますが、こういった自動化が好きなエンジニアもいるので、そのへんは進んでいるようなかたちかなと思います。

社内の課題もテクノロジーで解決しようと進めています。これまでエンジニアがいなかったので、レガシーな部分というのがだいぶ残っていて。それを改善していくのがなかなか楽しかったりもします。

たとえば今、「目安箱プロジェクト」ということで、会社の中で「これを改善したい」という要望を集めて、会社の中をテクノロジーで解決する、ということをやっています。

また、グロービスに入ってくるような方は教育が好きな方が中心的に入ってる方が多いので、すごく自主的に勉強会が開催をされています。最近はGraphQLやReact系が人気ですが、そういった勉強会が開かれています。

今週の真ん中ぐらいに「グロービスもくもくし放題」という、「グロービス学び放題」をもじったもくもく会をやり始めたので、よかったら遊びに来ていただけるとうれしいです。

アジアNo.1のEdTech Companyへ

本日はキャリアイベントということで、採用の要件についても少しだけご紹介させていただきます。

Railsがバックエンドとしては中心になってきていているので、テストまでしっかり書きたいRailsエンジニアさんや、Reactも今すごくきれいな構成でできているので、SPAをしっかり構築したいようなReactエンジニアさんに入ってきてもらえるといいなと、思っています。

インフラも基本的にはコードで管理してるところが多いので、Infrastructure as Codeみたいなところをやりたいような方や、自動化が好きなQAエンジニアさん、機械学習系のエンジニアの方に入ってきていただけるといいなと思っています。

グロービスの開発組織はまだできたばかりなところが非常に多く、最初の半年間は僕1人で正社員でやってたようなかたちだったので、組織をつくっていきたいというような方。もしくは教育をテクノロジーで解決したいという方には、非常におもしろい環境かなと思っているので、ぜひご興味あればお話できればなと思います。

今、僕らが目指してるのはアジアNo.1のEdTech Companyです。海外展開も含めてやっていますので、これから2、3年、すごくおもしろいフェーズになってくるんじゃないかと思います。

エンジニアメンバーも2人来ていますので、ぜひお話ができればと思っています。ありがとうございました。

(会場拍手)