2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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ハワード・シュルツ氏(以下ハワード):どうだったかな?
ジェームス・オトゥール氏(以下、ジェームス):素晴らしかったです。これ以上に素晴らしいものは、あなたの本くらいでしょう(笑)。あの本は本当に劇的だった。芸術作品と言ってもいい。そんな本はあまりない。本当に素晴らしかったです。
この本の中で「規律」という言葉をずっと使っていたと思います。スターバックスは「規律に基づいた成長」が必要だと言っていました。過去のCEOも規律については多く語っていますが、ここまで成功させたのはスターバックス以外にはないでしょう。どうやってこれを達成したのでしょうか?
ハワード:株価を保つために、成長は必要です。しかし多くの企業、特に急成長している企業は前しか見ません。過去は振り返らない。爆発的に成長していたときのことを振り返ってみると、深刻な間違いを犯していることもあります。だから過去と未来を両方見ることが大切です。
そのためには、投資の際に厳しいガイドラインを敷くことが必要です。我々は、店舗以外にも新しいビジネスモデルを作っていました。もう二度と同じ過ちを犯さないことを学びました。
ジェームス:成長ということで言えば、中国は急激に成長していますよね。90年代にアメリカではどんなことをしましたか?
ハワード:私たちが中国に展開してから、12年になります。今ではおよそ800の店舗があります。中国でのチャンスは、地元の中国のチームによって実現しています。実は中国での成長は、アメリカの1,000店舗に対して、年間100店舗に留まっています。
中国の成長の可能性は計り知れないものです。そのためこれから何千もの店舗を出店していこうと考えています。しかし、あまりにも急激な成長は破綻をもたらすことを、私は過去から学びました。確実に最も利益を上げることができる市場ではあるので、ゆっくりと成長させていこうと思っています。
ジェームス:スターバックスが急成長した後、あなたは一度スターバックスを去っていますね。今回と前回でどんな違うことをしましたか? 人々を前とはどう違う風に育てたのですか?
ハワード:前のことについては個人的に責任を負わなければなりません。雇用したCEOは、素晴らしい人物でした。
私は次のスターバックスのCEOは、社内から出すべきだと考えています。スターバックスの企業の価値を内側から理解している人物が必要なのです。ある一定の期間をかければ教えられるというものではありません。
私の間違いについては私は責任を取らなければなりません。問題を解決しなくてはならない責任があると思っています。
ジェームス:CEOの仕事のひとつは、人を昇進させることですよね。どうやって彼らを成長させ、昇進させるのでしょう?
ハワード:今仮に、CEOを新しく決めるとしましょう。その人には、だいたい4ヶ月現場で働いてもらいます。私たちが実際に何をしているかを知ってもらうためです。4ヶ月です。4週後には、みんな出ていきたいと思いますが、なんとか耐えます。彼らは地位が欲しいからです。
4ヵ月を終えた後、彼らは何か大きなことがしたくてたまらなくなっています。でも私は彼らにこうアドバイスします。私たちはあなたとあなたの才能を信じたから雇いました。決してなにか大きなことをしてやろうとは思わないでください。
スターバックスの文化は他より優れているとは思いませんが、ユニークではあります。文化そのものが、人を選ぶのです。合わない人は自ら辞めていきます。私たちはそれを何度も何度も見てきました。会社の中の全ての人間が、新しいものと同様に、自分たちより先にあったものへのリスペクトと文化的な感性を持つことが大切です。
私たちは、シニアチームにローテーションをさせる規律が必要だと思っています。私の直属の9人が会社にいる期間は、2年未満です。信じられますか? 私たちはその初期段階にいるのです。しかしこれは、彼らが何を信じるのかの問題です。私たちは二極化した視点を持っているのです。
ジェームス:未来についての質問です。あなたが今後何年スターバックスにいるかを聞きたいのではありません。あなたは57歳です。現代においてはあなたはまだ子供とも言える年齢です。私もたったの57歳だったら、と思うんですよ(笑)。
シアトルにはビル・ゲイツという偉大な先例がありますが、あなたはもしかしたらそれ以上かもしれないキャリアを築きました。今後、他になにかしたいことはありますか? 今までやったことのないようなことをやりたいという気持ちはありますか?
ハワード:正直に言って、これからのスターバックスには私はもう責任を持てません。私がスターバックスを去る時がきても、今以上になにか大きいことをするつもりはありません。それに私たちがこの数年したことよりもっと重要な仕事もありません。
ジェームス:いくつかのインタビューで今までとは違う種類のリーダーになることについて話していますね。今までのリーダーとしてのあなたは失礼ですが、やや短気な印象がありました。
ハワード:私は今も短気ですよ(笑)。
ジェームス:今は前とはどう違うのですか? リーダーとしてどのように変わったのですか? 古いハワードと新しいハワードとの違いはなんですか?
ハワード:今までと違う部分より、今までと同じ部分を話した方がわかりやすいかもしれません。
私がスターバックスのインスタントコーヒーの開発チームと会議をしたとき、私は真っ先に開発にどれくらいかかるかと聞きました。彼らは2年半と答えました。私はこう言いました。「クソッタレ!」
(会場笑)
ジェームス:それはちょっと短気ですね(笑)。
ハワード:2年半も待てません。iPodは1年半で開発されました。私はこの商品を1年半以内に市場に出したいと言いました。実現するために何が必要なのかを聞き、どんな障害があるかを聞きました。全てを調達し、障害は取り除きました。結果、1年半より短い期間で市場に出すことができました。もちろん彼らには、地位と報酬を与えました。
私は人は自分で思っているよりずっと大きくすごいことができると思っています。そして人は、自分より大きなものの一部になりたいと思っています。私はこれはそのいい例だと思いました。私は危機的な状況において前と同様短気でした。実際、2年半も待つ時間はなかったのです。
ではどう変わったか。会社を設立することは、私や私のリーダーシップの手に余るものでした。私の周りには能力のある人がたくさんいたわけではなかったし、いても彼らに払えるお金はありませんでした。だから世界クラスのチームを作り、コンセンサスをつくり、よく議論しました。
私はすべての答えを持っているわけではありません。むしろ他の人に任せて投げ出したいくらいでした。しかし同時に誰かが方針を決めなければなりません。そして誰かが責任を持ってその方針が間違っていたと認めなければなりません。
本にも書きましたが、私は大きな大きな間違いを犯しました。私は「銀の弾丸」を探していたのです。私はそれを見つけたと思い、カリフォルニアに行きました。それは大失敗でした。私はそのとき大きなことを学び、スターバックスVIAを全く違う形で作り上げました。私はすべての答えを持ってはいません。今はそれをよくわかっています。
ジェームス:こう言った人がいました。ハワードはいいリーダーになる方法を今も学んでいる。でも彼がどうやって学んでいるかわからない。どうなんですか? 失敗から? 人に意見を聞くことから? 何から学んでいるんですか?
ハワード:まず私は頻繁に他の人に電話しています。私より賢い人に。彼らがどんな視点で動いているのかを知るためです。危機に瀕していたときに、私はいろいろな人に電話してきました。誰から学ぶことができるかわかりません。
ミラノへ行ったとき、ナイフを売っている食器屋に立ち寄りました。私は自分を商売人だと思っています。商売人であるということが持つ意味も深く理解しているつもりです。
私が入った店は今まで見た店の中で最高でした。ぜひ店長に会いたいと思いました。その店は100年続く店で、店長は創業者の息子で、85歳で英語が話せないと聞きました。私はその人に会いたいと言いましたが、店の人はダメだと言いました。
そこで私はイタリアの知人を見つけ、ミーティングをセットアップしてもらいました。その人は私に「15分あげよう」と言いました。土曜日の朝、彼に会い、15分話しました。その4時間後、私はローマ教皇の足元にいるような気持ちでした。まさにマスターです。彼はその1店しか持っていません。彼は私に通訳を通してこう言いました。「君はいくつ店を持っているんだ」。
(会場笑)
ジェームス:ぜひその場に通訳としていたかったですね(笑)。
ハワード:私はとても恥ずかしかった。恥ずかしさのあまりほとんどささやくように言いました。「17,000です」。通訳が17,000と言いました。そうしたら彼は「アメリカっていうのはなんて国だ」と言いました。
(会場笑)
ジェームス:あなたに起きた変化について、もう少し聞きたいと思います。あなたはよく「規律」と「バランス」という言葉を使いますね。利益を得ることと価値をつくることのバランスについてよく語っています。より健康的な商品を作ろうとしたり、パッケージについて環境保護に取り組んだり……いろいろな仕事をしてきましたね。そうした社会的な任務の他に、今後はどんな展望を持っていますか?
ハワード:まだ数えきれないくらいたくさん、やらなければならないことはあります。でもやりたいときにやりたいことすべてができないことも分かっています。
私がいたどの市場でも会社全体でのミーティングがありました。つい2時間前にもありました。質問もします。その中である質問がありました。質問するのを止めてほしいというのです。質問しないで考えていることを言ってほしいと。私たちがいい仕事をしていないならそう言ってほしい。不満を言ってほしいと。そのひとつの質問で、私は心を開きました。
私たちは完璧な会社ではありません。より上を目指さなければなりません。目の前には問題が山積みになっています。
例えばコーヒーの値段です。コーヒーの値段はここ20年の中で1番高くなっています。この問題は解決しなければなりません。それと同時に、私はすべてのスターバックス従業員に高い給与を提供したいのです。それにかかるコストもわかっています。
他にも同時にしたいことが山ほどあります。コーヒーを買いつけることは、移民やその子供たちの生活とも関わっています。学校を建てたいと思っているんです。私たちはルワンダ政府と深く関係しています。彼らのコーヒー産業を立て直すのも、膨大なお金がかかります。こうしたことを同時に判断していかなければなりません。
株価だけを気にするメンタリティーは、残念ながら長持ちしません。私たちはそのバランスを作ろうとしています。応えられない期待はさせないこと。でも社員が家に帰って誇りに思うことができる会社にもしたい。でも最も重要なのは、社員が会社がいいことをするというリーダーシップを信じることができるということです。やりたいことすべてができないにしろ、です。
ジェームス:カトリーナのあと11,000人をニューオーリンズに連れていったとき、あなたは危機の中心にいたわけですが、そこへ行った全員に一日中ボランティアをさせたわけですよね。それは難しい決断ではありませんでしたか?
ハワード:難しい決断ではありませんでした。むしろ簡単なことでした。たくさんのリソースを割きましたが、得難いものが戻ってきました。それは、他の人のためになにかすることの喜びです。従業員たちの心に響いたのは、私のスピーチではなく、その3日間の行動でした。危機の中で、自分のことではなく、他人のことを考えられるようになったのです。
私たちはみな覚えておかなければなりません。私たちの仕事はただレジを打つだけではありません。いいビジネスとは、人のために何かをすることなのです。
ジェームス:いいことをする、ということについて、あなたは本にも書いていましたね。「リーン・マネジメント」という言葉を使っていたと思うのですが、これは実際にどのように役に立ったのですか?
ハワード:実は最初、私はこうした考え方を信じていなかったし、反対さえしていました。私は社員が答えを持っているだろうと思っていました。リーン・マネジメントが我々にもたらしたものは、オペレーションによって高い成果を出すということです。
カウンターの裏で、お客さんによりよいものを提供する。一度この秘密を暴き理解すれば、文字通りお金の節約になりました。社員を力づけるために、道具があれば自分たちで工夫するのです。これは魔法のようでした。
ジェームス:ではちょっと意地悪な質問をしましょう。スターバックスは創業から40年経ったわけですが、スターバックスにそんなに時間を取らせたのはなんなのでしょう?
ハワード:私たちの罪は、自分のことしか考えていなかったことです。自分を過信したことです。最初に言ったように、会社の成功が仇となったのです。同じことはもう二度と起こらないことを保証します。
ジェームス:ビジネス教育について考えたとき、本当に正直に言えば、それほど大きな仕事は成し遂げられていないと言えるでしょう。まだ解決できていない問題があります。
今この学校で、私たちは未来の経営者を育てるために努力しています。このカリキュラムについて、どう思いますか? 何かやるべきでないことは、あるいはやるべきことはあるでしょうか? あなたの経験から、私たちが学ぶべきこととはなんなのでしょう?
ハワード:今、私は全ての質問に完璧に答えられることを期待されています。しかし私は答えを持っていません。私はビジネススクールには通っていませんし、ビジネスの学位もありません。先週ハーバードで話したとき「あのハーバードにいるんだ!」と少しいい気分になりました(笑)。
まあそれはともかく、これはとても大切な質問だと思います。ビジネススクールに通っている今の若者は、キャリアを作りたいのではなくお金持ちになりたいのではないかと思います。お金を持つということは、決して心を満たす道のりではありません。そのためビジネスばかりを学ぶのではなく、バランスよく総合的に学ぶべきだと思います。
自分がここにいる理由について考えて欲しいのです。金持ちになるためではありません。誰かを幸せにするためにここにいるのです。それができれば、成功することができるでしょう。
ありがとうございました。
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