知っておきたい風邪薬の科学

オリビア・ゴードン氏:ああ、冬。木々の葉は落ちて、吹く風は冷たい……寒い季節の到来です。冬の不快な咳が出たり、鼻がグズグズしてきたら、たぶんみなさん温かいスープを飲んでティッシュの箱を抱え、お気に入りの風邪薬にお世話になりますよね。

風邪薬には、シロップに錠剤、スプレーなど、風邪のありとあらゆる症状に対応するものがあって、どれもすばらしい化学が関わっています。

でもその苦いシロップを飲む前に、知っておいたほうがいいかもしれないことがあります。それは、ありとあらゆる風邪薬は、みなさんが思っているほどには効果がないということです。

風邪は、私たちがかかる感染症のなかでも最も一般的なものに挙げられますが、200以上の異なるウィルスが原因となるため、これまで風邪に対するワクチンは基本的には開発できていません。

ですので、いま私たちができる最善策は、その症状と闘うことです。風邪の症状のほとんどは、ウィルスそのものによって起きているのではなく、身体がウィルスを退治しようとすることで生じています。

風邪を引くと、サイトカインといった炎症性タンパク質が放出され、免疫細胞に対して問題解決に取り組むよう伝えます。問題の解決法は主に、血管を拡張させることで、感染と闘う白血球がより動きやすいようにします。

残念なことに、鼻の内部では、そうした血管の拡張が組織の膨張やうっ血につながってしまいます。また、サイトカインは食道にある痛みの受容体に作用するため、喉の痛みを引き起こすことがあります。

神経系では、さまざまな神経が刺激されることがあり、鼻水やくしゃみ、咳の原因となります。どれもこれもとくに楽しいことじゃないですよね……というより、むしろひどいものですよね。

それで私たちは、こうしたいろいろな薬を考え出して、できる限り退治しようとしてきたわけです。

みなさん、鼻が詰まったときには、すっきりさせるために、おそらく鼻炎薬を手に取るでしょう。プソイドエフェドリンはなかでもよく鼻炎薬に使われているもので、Sudafed商品の鼻詰まり薬やAleve Dといった薬に使われています。プソイドエフェドリンは炭素環に窒素や酸素などの他の原子の錯体鎖が結びついたものです。

鼻の内部の受容体と結合することで詰まりを解消し、それによって血管周囲の筋肉が緊張し、サイトカインによって引き起こされた過剰な血流を抑えるのです。

しかし残念なことに、プソイドエフェドリンには興奮誘発作用があるため、不眠症や緊張感、めまいを引き起こしたり、心拍数に影響を与えたりすることもあります。

さらには、(アメリカのテレビドラマ)『ブレイキング・バッド』のようにメタンフェタミンの不法製造にも使われてきたため、薬局の専用医薬品になっているというわけです。

フェニレフリンも似たような薬で、Sudafed PEという製品などに使用されています。しかしこちらはメタンフェタミンの製造には使用できないため、プソイドエフェドリンよりも簡単に入手できます。

ですが、いくつかの研究が明らかにしたところでは、フェニレフリンにはプラシーボ(偽薬)程度の効果しかないようだということで、あまり作用効果がないといえるでしょう。もしもフェニレフリン薬があなたのお気に入りの鼻炎薬だとしたら……残念でした。

咳止めは脳を騙している?

風邪のなかには、胸部の詰まりや咳を引き起こすものもあります。そうした粘液を取り除くため、多くの薬剤には去痰薬が含まれており、あの緑っぽい素敵な痰を吐き出すのに役立ちます。

最も一般的なものは、グアイフェネシンと呼ばれる炭素環と酸素、窒素、炭素原子の錯体鎖の結合体で、Mucinexという製品などに使われています。

グアイフェネシンのそうした作用の理由について完全にはわかっていないのですが、肺を覆う粘液の主タンパク質成分の1つであるムチンという物質の生成を抑制するのではないかと考えられています。特異性細胞による粘液の上部への移動、体内からの排出を容易にするのです。

ただ、これは実験室での研究結果にすぎません。

実際の患者において、グアイフェネシンはたしかに粘液を薄めるように思われるのですが、肺から除去するほどの効果はないようです。いくつかの研究がありますが、呼吸器感染症のある被験者においてプラシーボ以上の改善がほとんど見られませんでした。

でも少なくとも、何かしらの役には立つということですね。

さて、あなた自身、そして周りの人にとっても最も不愉快な風邪の症状……それは長引くひどい咳じゃないでしょうか。咳の緩和には、Robitussinなどの多くの薬があり、デキストロメトルファンといった咳の抑制剤が含まれています。

デキストロメトルファンや類似の分子は、4つの炭素環と酸素、窒素の原子でできています。高い中毒性のある鎮痛剤であるモルヒネから抽出されるものですが、風邪薬に使用される量ではモルヒネ同様の乱用を招くような可能性はありません。

こうした分子の作用について100パーセントわかっているわけではありませんが、働きかけているのは呼吸器系ではなく、脳のようです。

デキストロメトルファンは服用されると、血液脳関門を渡ります。血液脳関門というのは、脳の血管内にあるしっかりと織り込まれた網状の細胞で、血管が細菌や感染から守っています。そして、デキストロメトルファンがいったんそこにたどり着くと、さまざまな受容体に影響を及ぼします。

咳の抑制は、デキストロメトルファンがNMDA、シグマ-1、そしてセロトニンと呼ばれる神経伝達物質の受容体と結合することによって行われるものだと考えられています。というのも、それらと結合する他の薬物にも咳の抑制効果があるようだからです。

主な仕組みとしては、脳に喉のかゆみは存在しないと思い込ませて、咳をする必要がないと思わせるのです。

そしてまた、最近のいくつかの研究では、デキストロメトルファンは、少なくとも子どもには実際にそれほどの効果がないとされています。とはいえ、多くの研究は信頼性に欠けるようなのですが。

しかし、風邪薬以外ではいくつかの用途があります。神経系統に影響を与えることから、いろいろな疾患への使用について研究がなされています。例えば、アルツハイマー病の不安や感情の動揺の治療もその1つです。すごいことですよね。

それでも、効果的であろうとなかろうと、こうした薬はすべて、風邪の症状のみに対する治療薬で、どれも実際にウィルスの撃退を助けたり、免疫システムを高めたりするのに役立つわけではありません。眠りやすいようにするくらいでしょうか。

最終的に、風邪を治すことができるのは時間です! でもうまくいけば、こうした薬が、風邪が去るまでの間を楽にしてくれるでしょう。

今回のSciShowをご覧くださり、ありがとうございます! 市販薬以外にも、ビタミンCや亜鉛が風邪を治すなんてことをお聞きになったことがあるかもしれませんが……それは本当じゃありませんよ。