CLOSE

深津貴之氏に聞く、AIはエンジニアをどう再定義するのか(全1記事)

生成AIは脅威か相棒か? 深津貴之氏に聞く、エンジニアと生成AIの付き合い方

「ChatGPT」を代表とする生成AIが盛り上がっている今、エンジニアやプログラマーにとって、生成AIは脅威なのでしょうか?それとも新たな相棒なのでしょうか? 今回は、株式会社THE GUILD 代表/note株式会社 CXOの深津貴之氏に、エンジニアによる生成AIとの付き合い方についておうかがいしました。

noteと生成AI

ーーそもそも深津さんが生成AIに興味を持ち始めたきっかけってなんですか?

深津貴之氏(以下、深津):2022年の5月、4月ぐらいからいろいろと自分で「Discord」とかいろんな場所をうろうろしていて、その頃はまだDiffusion Modelとかのほうをメインでやっていたんですけど、そういう画像生成AIとか生成AI系が、どうも全体の大きな流れとしてオープンになっていきそうだぞというか、オープン開発が進んでいるぞみたいなのがあって。

もともと僕、生成AIそのものは注目していたんですけど、基本あのあたりの生成AIって、でかい企業とでかい企業がデータで殴り合うもんだという前提だったので、あんまりそこは僕には関係ないところなのでコミットしていない方針だったんですけれども。

そういう、オープンになっていろいろ触れるようになってくるんだったらば、けっこう世の中の構造も変わるだろうと考えて、もう少し真面目に勉強し始めたのが2022年の5月ぐらいからですかね。

ーー深津さんが生成AIをnoteに組み込もうと思ったきっかけはどこらへんにありますか?

深津:単純に新しい技術で、なんか変わるんだからやらないと、コミットしなきゃ駄目だって話だと思います。ちょうどnoteの社員からもタイムリーに提案があがったので、即採用しました。

これは会社の方針じゃなくて僕個人の方針ですけど、問題が顕在化してから騒ぐのが嫌いなんです。なので、問題が顕在化した時には準備が終わっているほうが好きなので、早めに張ったほうがいいものは早く張ろうよっていうのは、よく思っています。

ーーnoteでジェネレーティブAIを導入した時に、文章の完全生成まではやらないという話でしたが、あらためて、なんでそこをやらないかというところを教えてください。

深津:「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」がnoteのミッションなので、noteで作るのは始められるようにする機能か続けられるようにする機能だったんですね。

(AIは)初めての、文章を書くのが苦手な人が書きやすくなるための機能で、自動化する機能とか創作を始めないための機能を作るのは別にnoteの仕事ではないので(笑)、という感じでしょうか。

ーー文章の生成AIのところは、どんどん今発展していっていくかなと思っているんですが、文章生成AIがこれからどこまで発展していく、あるいはどこがゴールのようなものはどこにあるのでしょうか。

深津:人間と同じ知性が中間目標で、人間を超えた知性が最終目標なんじゃないですかね。

ーー先日の深津さんのTwitter(現X)をちょっと拝見していて、人間の知性みたいなところの話が載っていて。なんか、「既存のものからデータ生成するだけで、新しいものを生み出す能力がないっていうロジックがよくわからない」っていうところの話が、あぁ、確かにと思ったんですけど。

深津:というか、既存のものの組み合わせで新しいものが生まれないという概念がよくわからないんです。生物の話と一緒で、生物だってTとGとAとCの4つの情報でできていると思うんですけど、「TGACの組み合わせで新しい生物は出てこない」とか言ったらおかしくないですか。

たぶん、モノを作ったことがない人はそういうことを考えるんじゃないかとは思いますけど。

エンジニアと生成AI

ーーところでここからが本題なのですが、生成AIのほうでコードが作れるようになってくると思うんですが、そうなった時に、エンジニアの役割っていうのはどういうふうに変わっていくと思われますか?

深津:技術課題を解決する人というのは、特に変わらないと思うので、技術課題のレベルが変わるだけなんじゃないかとは思います。

ーーそこでいうと、もうプログラミングをする人、いわゆるプログラマーの仕事自体はなくなりますか?

深津:プログラマーという概念がプログラミング言語を使う人から変化する可能性は高いでしょうね。人間の言語で命令を出すような仕事に変わるんじゃないですか?

ーーそうなった時、これからプログラマーになりたいって思った時に、これから学ぶべきことっていうのは、命令の出し方みたいな話ですか?

深津:プログラマーになりたい人っていうのは、なにがしたいのかをまず聞きたいですね。キーボードを打って、PythonとかBASICを書きたいっていうのだったら、なくなる可能性はありますし。

問題を構造化してそれを解決するための設計をして、それをコンピューターに指示出ししたいっていうなら残るだろうし。

ロングタームでいえばなくなるか、マイナーな調整部分の部分が増えてくるんじゃないですかね。

それは今だって、車があっても歩きたいとか、コンロがあっても自分で火をつけたいっていう話と変わらないと思うので。

ーー今度、ちょっとエンジニア文脈でいうと、エンジニアは、これからの生き方として、プロダクトを作るという目的に対して、AIを今から積極的に学ぶべきものと思われますか?

深津:そうですね。特に学ばない理由はないと思いますけれども。

ーーその際には、どういうふうに学べばいいですか?

深津:とりあえず使うのがいいんじゃないですか。

ーーでも、今はいろいろなAIが出てきていて、それを全部端から使うようなイメージでやったほうがいいですかね。

深津:まず第1フェーズはそれでもいいんじゃないかと思います。まず広さ探索をして次に深さ探索をするといいんじゃないですかね。

クリエイティブと生成AI

ーーちょっと一般的な話になっちゃうかもしれないですけど、AIを使うことに対する危険性とかいろいろ言ったりする人たちもいると思いますが。深津さん的にはどう思われますか。

深津:あらゆる技術はリスクがあるので、ヘッジをすべきだと思います。

ーーそれは、例えば倫理的なところですか。

深津:倫理とかもそうだし、使用した時のフェールセーフもそうだし、エラーが起きた時もそうだし、張った時にどういうリスクがあって、張らない時にどういうリスクがあるみたいなのを精査してっていうところ。リスクアセスを最初にしたほうがいいでしょうね。

ーーちょっとエンジニア文脈から外れちゃうかもしれないんですけど、今、文章や画像、それこそ今作曲とか、本当にクリエイティブなところにAIがどんどん入ってきていると思うんですけど。

例えば作曲とかって10秒とか20秒、下手すると1分ぐらいで曲が作れたりしちゃうと思うんですけど、そこに対して今度、聞く側とか、あるいは小説もそうですけど、読む側とかはそれなりに時間がかかるわけじゃないですか。

ということは生まれるほうがどんどん速くなってくるフェーズになってくると思うんですけど、それって今後どう処理されていくのでしょう。

深津:昔は書籍の執筆1冊に5年とか10年とかかけたりしていたのが、印刷で短くなりましたっていう話の延長ではあるので、それそのものは短くなるでしょうねっていう感じだと思います。

駄目な作品は全部、AIが先にボツにして、人の目に触れないようにするとかは考えられます。

AIがジャッジするか、人間がジャッジするかわからないですけど、文章が下手なのをボツ、なにを言っているかわからないのをボツとかやって、品質保証されているのはこのリストですよ、品質保証していないのを欲しければこっちに10億個あるけど好きなのを探してもいいですよ、みたいな感じ。

それって、もうTwitter(現X)とかにすでについている機能じゃないですかね。「駄目なツイートは出ないですよ。みんなが求めている人気のあるツイートが出ますよ」って。あれが延長するんじゃないですか?

ーーなるほど、記事とかも今、レコメンドが当たり前になってきているから、自分に都合の悪い記事は出てこないことが多くなってくるかなっていうところにはなってくると思うんですけど。音楽も、自分の好きな音楽だけが、よく言われる偶発性というのはもうどんどんなくなってくるっていうことですよね。もう自分の好きなものしか聴かない。

深津:そこはちょっとよくわからないですね。それは単に僕がAIに対して、みんなと話題をどれぐらいシェアしたくて、みんなとどれぐらい話題を無視していいから自分だけのものを欲しいか、それをオーダーすればいいだけだと思っているので。

グルメレビューサイトで「Aさんと一緒に会食するので、僕のアレルギーや好みと、Aさんのアレルギーや好み、両方バランスが取れた店を教えてください」っていうのと変わらないと思いますけどね。

生成AIは脅威か相棒か

ーー最後にお聞きしたいんですけど、ジェネレーティブAIが、どんどん発展していって、どんどん脅威になっていく可能性があるものなのか。それとも、文明が進歩していくための相棒になるものなのか?

深津:技術は技術であって方向性ではないので、良いことも悪いことも100倍になるっていうことでしょうね。

ーーなるほど。わかりました。AIが人間の能力を超えるかについてはどう思いますか。

深津:AIの性能限界を人間と等しくする合理的な理由は特にないので、人間よりも各種性能は高まるのではないかと思います。意図的に規制しない限り。

別に、手を2つに限定する必要はないし、目も2つに限定する必要はないし、みたいなことと一緒なので、人間に似せて着地をする必要は特にないかなと。

ーーなるほど。ただロボットの中にも、要するに人間に似せて作るロボットがあるじゃないですか。人間を模倣する理由ってなんでしょう?

深津:模倣したほうが売れるか、させようとしている人の創造力が少ないか。あるいは、ロマンチシズムとかそういうのか、どれかではないかなと思います。

ーーなるほど。それはやはり、AIもそういうことですよね。人間の模倣をさせようとするっていうのは、人間であってほしいと思っちゃうということなのか……。

深津:思っちゃうか、単に中間ゴールの志が低いか。

ーーなるほど、もっとゴールが大きいところにあるかないかの違いということですね。

深津:そうだと思います。

ーーありがとうございました。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 今までとこれからで、エンジニアに求められる「スキル」の違い AI時代のエンジニアの未来と生存戦略のカギとは

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!