要件定義でぶつかるジレンマ、トリレンマ

橋本将功氏(以下、橋本):みなさんこんにちは、パラダイスウェアの橋本です。

中島大輔氏(以下、中島):中島です。

古長谷莉花氏(以下、古長谷):古長谷です。

橋本:「だれプロラジオ(「誰も教えてくれないプロマネのコツラジオ」)」第33回は……。

古長谷:「こうすればうまくいく!要件定義のコツ」です。

橋本:要件定義はみんな悩んでるポイントかなと思いますが、要件定義のコツって何ですか? 古長谷さん。

古長谷:今、本当に困っている。

橋本:リアルタイムに(笑)。

古長谷:うわっとオーダーが来て、ざっくり見積もりをくださいと言われることがすごく多いです。そこの見積もりを作っていくためには、ある程度の要件定義をしていかなきゃいけないというジレンマが。

橋本:見積もり立てるために、「これこれを決めてください」と言うと、「いやいや、ネタ元がないと決められない」みたいな話になって、「ネタ元を作るんだったら契約発注してください」みたいな(笑)。

古長谷:そうなんです。

橋本:このトリレンマは日常的にメチャクチャあります。ただ、これってすべてのプロジェクトにおいて言えることなんですよね。だから、そこのジレンマ、トリレンマをどうやってハレーションなく、できるだけ進めるかというのは、けっこう重要なポイントです。

でも、これはみんな悩んでいると思いますが、僕も毎回わりと本当に深刻というか、メチャクチャ考えるところで、けっこう大きいプロジェクトだと夜中の3時とかに考えていたりするんですよ。

プロジェクト初期段階の正解の要件は誰も見えていないので、PM(プロジェクトマネージャー)が引っ張らないといけないんですよね。だけど、自分が出す方向性が正しいのか正しくないのかは、わからない。

古長谷:不安です。

橋本:いつも腹に黒いものが溜まるんですよ(笑)。不安の塊みたいな、溜まるフェーズがあるんですよ。ある程度進んだ要件定義がひっくり返ることもあるし、これはいつひっくり返るかがわからないんですよね。だけど、スケジュールと予算が決まっているから、やり切らないといけなくて、そのしんどさをずっと抱えていくのがPMだったりもします。それで、どうすればいいか。

要件定義のコツその1 「まずは全体の輪郭を作ること」

中島:僕は要件定義をやるパートの人間ではないので。

橋本:でも、要件定義を横で見てるじゃん。

中島:もちろん、見ています。

橋本:うまくいく要件定義とそうじゃない要件定義に何か違いがあったりしますか?

中島:すごく抽象的な喩えになっちゃうんですが、デッサンとか彫刻とかみたいにまずざっくり形や陰影を作っていく。最初からビシっときれいに線を引いちゃダメなんだなって思うんですよね。

橋本:正解だと思いますよ。

中島:そうですか⁉

橋本:まず全体の輪郭を作る、まさにそれです。これをけっこう飛ばしちゃうんですよ。例えば、「サイトを作ってください」とオーダーが来るじゃないですか。そうすると慣れていれば慣れているほど、サイトのディテールを決めにいっちゃうんですよね。

だけど、突き詰めていった時にお客さんが考えている内容って、もしかしたらサイトじゃないかもしれないんですよね。アプリかもしれないし、深掘りしていかないと、できた時にどうしても「いや、まぁ、うーん……」みたいな感じになっちゃう。

中島:だから、耳のディティールからものすごく細かく書いちゃうと、ダメなんですよね。

橋本:出ちゃうと直せないので。前回「絵にすることです」という話をしたと思うんですが、まず「ざっくりこういうことですよね」というのをちゃちゃっと描く。僕は「cacoo」というサービスをめっちゃ愛用しているんですが、オンラインで図が描けるサービスを使うと、言っていることってこういうことですよねと、30分くらいでパパッと作れるので、それを繰り返していくと、みんなの意識も揃うし、要件定義で今ここの議論をしていますね、とできる。

要件定義ですごく失敗しがちな話として、要件定義はすごく大事だから、会社の役員とか社長とかが出てきて、要件定義に入ってもらうんだけど、「デザインのボタンの色がね」みたいなことを永遠にやっていて。

中島:「この角の丸みがね~もうちょっと」とか。「それはあとでやります……」。

橋本:そういう話を整理しておかないと、偉い人のこだわりポイントに終始して、「いやいや、システム連携のところがぜんぜん詰められていないんだけど、要件定義終わっちゃう」という感じになっちゃうので。「デザインはこの要件定義である程度決めるにしろ、ここですから」という話をしておかないと、行方不明になっちゃうんですよね。

古長谷:絵の伝え方もドキュメントで箇条書きにしているとイメージがつかないので、それこそ「マンモスプロジェクト」のプロジェクトマップで、「こういう流れでこのカテゴリがありますよ」と見せないと、全体像がつかめなかったりしますよね。

橋本:プロジェクトマップを使ったのはそういう経緯ですね。

要件定義のコツその2 「叩かれることを恐れない」

中島:要件定義で一番難しいなと思うポイントって、最初は真っ白じゃないですか。真っ白なキャンバスに何かを描くのってすごく大変なんですよね。

橋本:そこがすごく大変なんですよ。

中島:何かが書いてあれば、「ここがこうですね」とか言えるんですが、何もない状態から「どうぞ書いてください」と言われるとすごく難しいから、PMはそこのゼロイチの最初のところをやる仕事なんだなというのは、近くで見ていて思いますね。

古長谷:要件定義の苦手意識って、おっしゃるとおり、描いてから変な話に叩かれることに意味があるのに、叩かれることに落ち込んじゃって、嫌だなってなっちゃいますよね。

中島:プライド高かったりすると、またキツかったりもするんだろうしね。

橋本:正解を出さないといけないと思っていると、それはしんどいし、完璧主義者だと厳しいですね。僕は、昔完璧主義者だったので。

中島:わかる。でも俺もそういうのありました。デザインも60パーセントぐらいのものをポンポンと持って行って、「これで叩いてください」って言うほうがいい。あまり作り込みすぎるとね。

橋本:あと作り込みのところでもあるんですが、たたき台と資料は、たたき台っぽく作らないと完成系だと思われちゃう。これはけっこう裏技みたいな気がします。

中島:ありますよね。

橋本:コンサルタントは資料を完成形っぽく作ってくるんですよね。

中島:バキッとしているんですよね。

橋本:パワポとかでね。そうなると受け取る側も、「あれ?これでフィックス?」となっちゃうので。

中島:受け取ってからけっこうバタバタしちゃうんですよね。「これでフィニッシュされたら困ります」みたいな。

橋本:だから、まず全体の輪郭から入るというのがメチャクチャ大事ですね。要件定義というのは、勤務一覧とか、画面制御とか、メチャクチャいろいろあるんですが、まず全体をつかむというところからアプローチをしていかないと、微細なところで時間を使ってしまって、行方不明になる。これは本当に鉄則です。

正解を出すのではなく牽引役になるのがPMの仕事

橋本:では、要件定義をうまく進めるコツのポイントですね。1つ、全体の輪郭から合意を作っていく。できるだけ早い段階で絵に落としていく。

橋本:心構えとしては、叩かれることを恐れない。というか、「これはたたき台です」という体で、きちんと出すことが大事。

中島:「叩いてください」と出すのが。

橋本:「ご意見ください」と言う。正解を出すことがPMの仕事ではなくて、牽引役みたいなものがPMの仕事なので、そのスタンスが大事かなと思います。

では、「だれプロラジオ」第33回は。

古長谷:「こうすればうまくいく!要件定義のコツ」でした。

中島:この動画が良かったと思ったら、グッドボタンとチャンネル登録、ぜひよろしくお願いします。

橋本:お願いします。

中島:それではまた次のどこかでお会いしましょう。ご視聴ありがとうございました。

橋本:ありがとうございました。