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『“偲び足りない“が生み出した葬儀・お別れのフリースタイル』 ~鎌倉新書×カヤック対談セミナー~(全5記事)

なぜ面白法人カヤックは葬儀業に参入したのか? CEO柳澤氏が語る“自宅葬”の可能性

葬儀・埋葬・供養の専門展「エンディング産業展2017」で、鎌倉新書×面白法人カヤックの対談セミナーが開催。「“偲び足りない“が生み出した葬儀・お別れのフリースタイル」というテーマで、新しいお別れのかたちを提供する2社がこれからの葬儀のあり方について語りました。

カヤックはなぜ葬儀業界に?

土屋敏男氏(以下、土屋):続いてカヤックの柳澤さんに、自宅葬儀社のスタートアップのお話をしていただきますけど、共感する部分なんかを、みなさんぜひ一緒に入っていただいて、いろいろフォローしてください。

柳澤大輔氏(以下、柳澤):僕のほうからは、会社の思想的なところですかね。結局その馬場さんと出会って持ち込んで……。

土屋:ていうか、カヤックってねえ、「面白法人」(笑)。

(会場笑)

柳澤:そこの話をしたかったんです。会社って、「組織」とか「人事」っていう組織戦略の観点と、「どういう事業をして、どうやって事業を伸ばすか」っていう事業の観点と、2つの観点がありますけども、カヤックって組織先行型の会社なんですよ。

もともと大学の同級生3人で集まって、感覚とかスタイルとか目指してる方向とか美学とかが似てるメンバーが集まって、そこから何するかって決めるんですよ。なので、「なぜやったか」って聞かれると、「馬場さんに出会ったから」っていうのが最初のスタートなんです、本来は(笑)。

それで、「何か一緒にやったらおもしろそうだな」っていうところからスタートしてるのが正直なところなんですけど、そのなかで組織の観点から話したときに、これは1つヒントになると思うんですが、「葬儀業界の方々がやってて一番楽しいのは、自宅葬だ」って馬場さんが言ってたんですね。

「お客様の満足度が非常に高くて、すごく感謝してもらえて、これはやってて本当に気持ちがいい」と。だから、なぜこの事業をやりたいかっていったときに、これは組織の観点からすると「いいメンバーが集まる」っていうことですから。このサービスをしっかりビジネスにできれば、きっといい葬儀業界の人材が集まるビジネスになりうるし。

我々は「面白法人」ってつけましたけど、おもしろく働くと、きっと最高の職場になるからおもしろいものが生まれる、という観点で「面白法人」ってつけてました。その観点に着目すると、「きっとここに特化すると良いことがあるんだな」と。組織人からするとそういうところから入ってるんです。それが1つ目の思想ですね。

事業の観点からいくと、我々自体がいろんなビジネスをやってるんですけども、クリエイター中心の会社なんです。クリエイター300人の会社なんで、そこの技術力とかデザイン、クリエイティブの部分が優勢になりうるかっていう観点で見るんですよ。

そのときに、葬儀業界のチラシ1つとってみても、あんまり「格好いい」とか「雰囲気が良い」とか、そういうデザインにこだわってるところがほとんどなかったので。ここをしっかりやることでいい可能性があるんじゃないかって。

実際、1年やってみてそれがどこまで……っていうのはまだなんとも言えないんですけど。ただ、チラシを見て頼む方、「雰囲気がいいから」っていう方はアンケートでは多いので、ある一定量クリエイティブが機能してるんだとわかりました。そこはまずポイントの1つとしてある。

事業としてどこでオリジナリティを出すか

もう1つは、我々自身が「面白」ってつけてるので、非常に「ユニークである」ということを重視している。事業として、どこで切って、オリジナリティを出すかっていうのを考えるんです。

例えば、脈々とやってる「ホームページの制作」という仕事ですけども、最初は町のホームページ屋さんで「なんでもやります」っていうところからスタートしましたが、今はとにかくおもしろいものだけを。SNSとかで「バズる」って言い方しますけど、とにかく、話題になってシェアされる仕事しかやってないんですよね。

主に広告・キャンペーンの仕事をやってるんですけど、そういうことに特化してノウハウが溜まっていくので、「とにかくバズる」っていうことに特化していくんです。

ちょうど葬儀の1年前に立ち上げた結婚式の事業もやってまして、これはどんな提案をしたかというと、「プランナーのマッチングセンター」なんです。国内最大級の結婚式プランナーを抱えていて。

ゼクシィが一強ですけど、ゼクシィが「式場カタログ」なんです。それとは別で、「プランナーカタログ」という言い方をしていましたけど、プランナーの登録サイトがあって、「こういう結婚式がしたい」っていうのをしっかりと診断して登録すると、プランナーが提案してくれてマッチングするという。唯一なんですね。

そういうプランナーのマッチングが、もしかしたら今後、葬儀にもありうるかもしれないです。こういったお別れ会みたいなものが主流になってくると、葬儀プランナーが提案してマッチングされる、というシーンがあるかもしれないです。

こうやって特化することでビジネスとしてやっていくなかで、「どこで切るか」というときに、「自宅葬」という切り方が1つ、馬場さんの話を聞いた後で。

「自宅葬」と「家族葬」はやっぱり似て非なるもので、小さい組織にしていくっていう意味では同じなんですけど、思い入れがやっぱり……。「自宅葬」という言葉を使うのは微妙に切り方が違うと思うんです。

そのなかで、家に思い入れがあるという人。鎌倉は持ち家率7割で、家々で終末医療を進めているなかで、「自宅葬」という切り方で切っていくことは1つ、鎌倉で立ち上げるには良いんじゃないかなということで、その場で打ち合わせして、最初の持ち込みのその日に「鎌倉自宅葬儀社」って名前が決まったんです。「これでやってみようか」って。

土屋:馬場さんがプレゼンして、っていう?

柳澤:馬場さんが「自宅に特化しよう」って。それで、すぐさま「鎌倉で商売、よさそうだね」ってことで。鎌倉の持つ響き、「『メーカーズシャツ鎌倉』がいい」とかっていうふうに……たまたま今日も鎌倉新書さんっていう(笑)。

(会場笑)

なぜでしょうね、たまたまなんですけど。どういう経緯でこうなっちゃったかわかんないですけども(笑)。

土屋:鎌倉地域のキャンペーンじゃないですもんね。

柳澤:そうですね、なんでだろう(笑)。それで、その持つ響きと、自宅で良質な……決して安い、小さくしていく葬儀の「お金かけたくない」って方向を狙うってことではなくて。しっかり必要なものには(お金を)かけて、でも無駄なものにはかけない良質なもの、という意味で。

全体で見ると会館葬が増えてるわけですから、自宅に原点回帰してるんじゃなく、逆に行き過ぎた、都会の感度の高い人のほうがどっちかというとマイノリティですよね。

そっちのほうなので、「そんなに広がりがなさそうだけども、きっと喜ばれるサービスになるし」っていうことでスタートしたというのが、今の2つの考え方と、カヤックが一緒にやらせていただいたところです。

コンセプトを理解してくれる人が「ファン」に

土屋:わかりました。今、柳澤さんから、そんなに伸びないというか、感度の高い人たちという話がありましたけど、これは実際に事業をやられてる馬場さんと堀下さんにお聞きしたいと思うんですけども。このあたりの手ごたえですよね。まだ始まって間もないとは思うんですけど、じゃあ馬場さんから……。

馬場:はい。ちょうど今日で1周年が経ちまして、手ごたえとしては、問い合わせはかなり来てます。事前予約がだいたい60くらいあるんですけど、施行数は売上につながってしまうので非公開とさせていただきたいんですが、間違いなくニーズはあります。

土屋:事前予約っていうのは、「これから死んだときには頼むね」っていう人ですね。

馬場:そうですね。60代くらいの方が。今そこはまったくマネタイズにはつながってこないんですけど、そういった声はかなりいただいています。

土屋:実は僕もこのインタビューさせてもらったあとに、事前予約をしております。

(会場笑)

土屋:私の葬儀は自宅葬儀の方式でよろしくお願いします。

馬場:はい(笑)。あとは、医療従事者の方とかにも営業行くんですけど、そういった方たちにすごく印象がいいというか。葬儀社が病院とかそういったところに営業行くと、やっぱり怪訝な顔をされるんですけど、そういったクリエイティブの部分でしっかりとしたものを見せると、すごく理解をしていただける。

先ほど事例のビデオを見ていただいたんですが、ケアマネージャーさんが紹介してくれたんですね。そのケアマネージャーさんって、ただ名刺交換しただけの方なんです。提携をして、なにかその……言い方は悪いですが、バックを……葬儀社さんならわかると思うんですけど、病院へ行っておむつを買ってあげたりとかそういうことをするんですけど、そういったものではなくて、コンセプトを理解してくれて来てくださった方がすごく多くて。「ファン」になってくれるんですよね。

今回のビデオの土田さんなんかもそうですけど、葬儀が終わった後も何度も連絡をしてくれて。実は今日も午前中にドライアイスの交換に行ってきたんですけど、そのお客さんが自宅葬をしたくてWEBで調べたら、うちのホームページを見ていただいて。「これ探してたんだ!」って言ってくれて。

「ファン」というか、僕と向いてる方向が一緒なので、見積もりや打ち合わせをしていく段階で、すごくストレスなくできる、ということがあります。

あと、1週間かけることによって、毎回僕がドライアイスを交換しに行くたびに、思い出の写真が家から出てくるんですね。(遺品の)整理をしていて。そういったかたちで通夜に思い出の写真を飾るだとか、いろんなことを葬儀に盛り込むことができるということがあります。

「これをやりたかった」という声が増えている

土屋:堀下さん、いかがでしょうか?

堀下:さっきカヤックさんのお話で「やってて一番楽しいと思えます」というのがあってすごく印象的だなと思ったんですけど、まさに同じ感覚なんですよ。やってて非常に楽しいです。

その「やってて楽しい」というのがお客様にも伝わっているし、お客様から「やってて楽しい」をいただいているなというぐらい、やっぱりすごく感謝をされるなと思います。

鎌倉新書は、お葬式の斡旋の紹介事業をやっていますし、一般的な家族葬のお客様の声とかをいろいろ聞いたりもするんですが、自分たちが入っていくのもあるんでしょうけど、非常に満足度が高く、120パーセントぐらい「よかった!」って必ず言ってくれる。それが非常にやりがいになっていますし、それを伝えていきたいなというのは思っています。

まだまだ世の中でわからないことがいっぱいあるので、わからない人はいっぱいいるんですけど、実際やってみてわかったらすごく「いい」と言っていただけます。そこはとても自信を持ってやれるし、これがどんどん増えていけば、必ず「やりたいな」と思うだろうと。私自身も実際にやってほしいし、すごくやりたいと思います。

最初は例えば旦那さんを亡くした方とか、親族を亡くした方だけだったのが、恩師が亡くなった方とか、○○が亡くなった方という、そのパターンが増えてきています。

それを事例として見て、自分事にして、「ああ、これやりたかった」というのが増えてきているので、いろんなパターンの方がやりたいだろうなというのは思っています。それをどう顕在化してみせられるかができれば、すごくいいサービスになるんじゃないかと思っています。

土屋:まず、数というよりもやっぱり一つひとつのことをやったときの喜ばれ方に、すごく手応えを感じていらっしゃるという感じだと思うんですが。

僕も、2012年、2011年に亡くしたりとか。まあこのへんの変わり方ですよね。市場と言ったらいいのかわからないですけど。このへんがこれからどうなっていくか。

ただ、そのなかで、堀下さんも安曇野を提案しようと行き着くまで。依頼者はやっぱりそこまでやってくださいとは言わないでしょうし。

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