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片付けパパ対談【特別編】豊かな人生を過ごすための「投資」&「交渉術」 ~チャンスを逃さず信頼関係も育むコツ~(全3記事)

交渉で「落としどころを探る」という考えは捨てるべき プロが教える、チャンスを逃さない条件交渉のコツ

ビジネスにおいて、チャンスを逃さず行動しつつ、クライアントとの信頼関係を育むにはどうしたらいいのでしょうか。本イベントでは、株式会社ビジネス交渉戦略研究所 代表取締役の生駒正明氏が登壇。本記事では、元商社マンとして1万件以上の交渉を成功させてきた同氏が、交渉前の準備の7ステップを解説します。

交渉は準備が9割

大村信夫氏(以下、大村):次のチャートは、本の中でも書かれた「交渉準備の7ステップ」ということなんですね。いや、まさに「交渉は準備が9割」。

生駒正明氏(以下、生駒):そうそう。例えば目的の明確化ってあるんですけど。目的というと、普通、企業で言えば利益を稼ぐことがまず頭に浮かぶじゃないですか。でも「果たしてそうですか」ってことなんですよ。ケースバイケースですよね。例えばどこにでもある製品だったら、買うほうからしたら安けりゃいいじゃないですか。

でもある程度限られているところしか作れないような商品とか部品だった場合は、価格じゃなくて、そこと信頼関係を築いて、契約を結んで、長期的に仲良くやりましょうとなる。そうすると今度は、利益よりもパートナーシップを結ぶことが第一の目的になるんです。

そういうケースもあるんです。だから大きい企業の場合は、そこをちゃんと共有していかないと、「こっちは利益を稼げばいい」とか「こっちはもっと付き合いたいんだ」とか。大きい会社同士でいろんな部署があるとそういうことが起きますよね。だからそこをまとめておきましょう。

大村:なるほど。事前に交渉する側もされる側も、何が一番いいんだろうなというのをお互いに持っておきながら(交渉する)。

生駒:そうです。だから相手の重要度もそうだし、相手の持っている商品とか製品の入手のしやすさ、しにくさもあります。たぶん相手が販売先だったら、売る力がある・ないでも違うし。あと重要なのは、目標の設定ですね。

目標というと最高・最低みたいなものを考えるんですけれども、だいたい価格の目標を決めてしまう。価格は大事ですが、価格以外の目標っていっぱいありますよね。同じ物を売るにしても、1万個売るのと1,000個売るのは違うじゃないですか。それを価格から入っていくと間違えてしまいます。

僕はけっこうセミナーでも言っているんですけど、価格交渉のポイントは価格以外にあるんです。数量、納期、品質、いろんな要素が組み合わさって最後に価格が出てくるわけですよ。

大村:QCDですよね。クオリティ、コスト、デリバリー。

生駒:あとは契約期間とか、決済条件もそうですよね。デリバリーが月に1回なのか週1なのかもそうだし。

大村:あとは在庫責任とかをいろいろ考えて決めなきゃいけない。

生駒:そうそう。そういうものをひっくるめて決めなきゃいけない。

大村:なるほど。これがもう端的に「いかに相手から安く仕入れればいいか」みたいになっちゃダメなわけですよね。

「落としどころを探る」という考えは捨てる

生駒:そうそう。だからよく「落としどころを探る」という言い方があるじゃないですか。私は基本的にはそういう考えは持たないほうがいいと思っているんです。落としどころを探るっていうのは、向こうからも全部条件が出た、こっちからも全部条件が出た。じゃあどこでやろうかというところで初めて「落としどころを探る」と言えるわけです。

ところが相手からのいろんな条件を引き出す前に落としどころを探っちゃうと、もっと引き出せたのにってことがある。最後まで諦めずに、そういうことを探りましょうよと。

大村:なるほど。まさに傾聴というか、聞き出すというところですよね。

生駒:聞き出す。例えばこの本を1,000円で買うか、1,500円で買うか。その落としどころとして、1,250円だと発表するじゃないですか。

でも、この本の交渉をしているんだけど、実は(僕の本が)もう1冊あるんですよ。それと抱き合わせでどうだっていう発想があったら、また変わるじゃないですか。だからこの本に関して、1,500円とか1,200円とか1,000円とかで落としどころを探ろうかとやっていても、実はこの本以外の要素も持ってきたらまた違う。

あるいは、この本の話をしているんだけど、「じゃあセミナーをつけましょうか」となると、また条件が違うじゃないですか。いろんな条件をつけた上で最後の落としどころを探らなきゃいけないんだけど、条件でもキリがないじゃないですか。

だから基本的には落としどころを探るという考えは捨てて、ギリギリまで条件を引き出す。こっちもギリギリまで出せるものは出すっていうふうに考えればいい。

大村:それこそお互いに何が一番ハッピーかを考えていく作業だと思えばいいんですよね。だから、相手を打ち負かすとかそういうのではなくて。いかに良い関係性とか条件になるかを、お互いに歩み(合い)ながら、聞き出しながら組み立てていくという。

生駒:そうですね。

大村:こういうことをもう20年ぐらい早く教えていただければ、僕も今、変わっていたかなぁと思っちゃいました。

相手のニーズに「自分の強み」をどう合わせるか

生駒:これは実践のほうなんですけど。傾聴とか質問とかで信頼関係を作っていきましょう、相手のニーズをここで確認しましょう、把握しましょうということなんですよね。基本的にニーズとは、相手にとって「欲しいものの獲得」か、「困り事の解消」なんですよ。

そこに自分の強みをどう合わせられるかで、準備の時は選択肢の準備だったんだけど、実践だから選択肢の提案になってくるわけですよ。

初めに準備しておくんだけれども、やり取りを重ねるにつれて、「あ、この人はこっちにもっと困ってるんだから、こう言ったほうがもっとはまるな」とか。そういうふうにちょっと切り替えて提案したり、臨機応変にやっていく。

大村:やっぱりキャリアコンサルタントの思考が入っているなぁと思ったのは、いかにその相手の状況を把握するかかなと思いました。ビジネスは違うのかなと思っていたけど、まさにビジネスだなと思います。

生駒:そのとおりです。だから傾聴から始まるんです。傾聴と質問で信頼関係(を築く)。そこからの話ですよね。

大村:なるほど。それがこちらの本(『なぜかうまくいく交渉術』)にまとめられているということですね。

交渉する前に「代替案」を決めておく

生駒:あとは、この前の準備のところだったかな。ステップ6に「BATNA」とあるんですけど。これは「Best Alternative To a Negotiated Agreement」。いわゆるその交渉が決裂した時のベストな代替案を、交渉する前にすでに決めておきましょうということなんです。

このお客さんがダメだったら次のお客さんに行くんじゃなくて、自分の本命のお客さんに行く前に、2番手3番手のお客さんとちょっと話をして、そのニュアンスを聞いておくとか感触を聞いておいた上で行くとか。

大村:なるほど。それがあれば「これがダメでもこう」みたいな。副案があれば、ちょっと余裕を持って交渉ができることもあるんですね。

生駒:あと、スペックを変えるというのもあるんですよね。ある食品メーカーがゴマドレッシングを売っていたわけですよ。でも原材料の一つである食用油の値段が上がってしまって、そのまま使っていたら商品の価格が上がってしまうから、お客さんが離れてしまう。

どうするんだという時に、本来だったらもっと安く買えるその油を提供するサプライヤーを探すんですけど、一番良いところと付き合っていたから、そんな先はないと。じゃあどうするんだというと、スペックを変えることを考えるんです。

食用油の量を減らして、その代わり他の調味料を入れる。ゴマドレッシングの風味、風合い、味が残るようにして、そこでは差がないように仕上げれば原材料が多少変わっても問題ないよね。とやるのも1つのBATNA(代替案)なんですよね。

だから交渉というのは、いかに引き出しを多く持つか。あとは相手に、いかに状況によって提案していくかの組み合わせですよね。

大村:なるほど。

「ただの良い人」で終わらせない譲歩のコツ

生駒:あと、こちらが出した要望を取り下げるのが、譲歩じゃないですか。だから交渉というのは、要望と譲歩。これらの自分と相手の組み合わせなんですよね。

大村:うーん、押し引きですよね。引くところや押すところを組み合わせるんですね。

生駒:よくあるんですけど、例えば相手からこちらが要望したことは難しいと言われる。「じゃあそれは譲歩します」と終わっちゃダメなんですよ。こちらが譲歩したんだから相手にも譲歩を1個求めなきゃいけないんです。ただ譲歩するだけだったら、良い人で終わっちゃいますから。日本人って(そういう人が)けっこう多いんですよ。

だから「これは譲歩したんですから、そちらもちょっと何かお願いしますよ」というかたちで持っていかないとダメなんです。

大村:なるほどね。

生駒:そのためにはやっぱり選択肢をいっぱい持っておくのがいい。だから要望も優先順位を決めていくんだけど、譲歩もレベルを決めておくわけです。初めに譲歩すべきような条件とか。あるいは自分が本当に欲しい条件を呑んでくれているんだったら、2番目に譲歩していいものとか、どんなことがあっても譲歩しないものとか。そういうのを決めておくということです。

大村:そういう意味では、やっぱり準備が9割だし、ロープレとおっしゃいましたけれども、こちらの材料も整理し、相手が言うであろうこともある程度準備しておくということですね。

生駒:そうですね。だからロープレの場合、上司の方がアドバイスをくれるかもしれませんけど。そうするとマックスがその上司の交渉になっちゃうわけですよね。スポーツでもそうなんですけど、コーチが言うことがマックスになっちゃうわけです。それ以上のやり方がありますよねというところは、やはりその専門家(のもと)で学んでやらないと難しいかもしれない。

要するに、気づかないと難しいんです。気づくと「あぁ、こんなことか」と(いうことが)けっこう世の中にあるじゃないですか。そういう部分でも違いますね。

大村:生駒さん、ありがとうございます。

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