PR2025.11.27
数理最適化のエキスパートが断言「AIブームで見落とされがちな重要技術」 1,300社が導入した「演繹的AI」が意思決定を変える
コピーリンクをコピー
ブックマーク記事をブックマーク

沢渡あまね氏(以下、沢渡):傳さん、ネガティブ・ケイパビリティって、私とこの企画の話をする以前には聞かれたことってありましたか?
傳智之氏(以下、傳):はい。主にXでちらほら目にすることはあって、定義も一応わかるはわかるけど、ちょっとぴんと来ないのかな? というような概念でしたね。
沢渡:ありがとうございます。おっしゃるとおりで、私もネガティブ・ケイパビリティに出会った時、なんとなくわかるけどフワッとしているなと思ったんですね。
主に日本では、どちらかというと精神医学や心理学の先生が最初に意味付けをされた背景がありまして。これはこれですばらしいことなんですが、「では、それを日々の仕事やビジネスにどう応用したらいい?」というところは、私もなかなか腑に落ちていない部分がありました。
ゆえに今回は、「ビジネスのシーンや、私たちの日頃の仕事に関係する意味に置き換えたらどうだろう?」ということで、この本を傳さんと一緒に共創しました。
「ネガティブ・ケイパビリティとは何か?」諸説あり、さまざまな意味付けがされているんですが、この書籍では画面のとおり「すぐ解決しようとしない行動特性および能力」と定義して話を進めています。
ネガティブ・ケイパビリティみたいなことを言うと、「そんな、また横文字を使いやがって」って、面倒くさいことを言ってくる人たちもたくさんいます。
「それくらい自分で調べて学びやがれ。そんなことを言っているから日本は沈むんだよ」って言いたくもなったり、自分のポジティブ・ケイパビリティの部分も出そうになるのですが、そこはグッとこらえて(苦笑)。
沢渡:周りの方に「日本語で言え」とか「また英語の小難しいことを言うな」という顔をされるのであれば、日本語の格言で言いかえてみてください。ネガティブ・ケイパビリティは日本の格言でも意味付けされています。
例えば「急がば回れ」(笑)。目先の成果を出すばかりでなく、すぐに解決したい気持ちをこらえて、急がば回れ。または「急いては事を仕損じる」なんて表現もある。傳さん、3つ目をちょっと読んでもらっていいですか?
傳:はい。「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」。
沢渡:そう。おっしゃるとおりです。プレイングマネージャーなど、「自分でやったほうが早い」と言って、任せたふりをして任せたメンバーから仕事を取り上げて自分でゴールを決めちゃう。まさにこれですよね。
確かに手っ取り早いんですが、それをやってしまうといつまで経ってもメンバーや後任が育たないですよね。あるいは、あなたもマネージャーとしてマネジメントする機会や能力を失ってしまいますよね。
ゆえに、早く行きたければ1人でゴールを決めるのもよいのだが、組織とともに遠くへ行きたければみんなで行く。ポジティブ・ケイパビリティ、すなわち目先の成果をすぐ出す呼吸はいったん改めましょうね、ということが言えると考えております。
ここでぜひみなさんに振り返ってほしいんです。スピード優先、目先の成果、効率性優先、「それ、儲かりまっか?」などを優先するあまり、うまくいかないと思っていること。関係性がぎくしゃくしているなとか、あるいはみなさんの心が痛むなとか、大なり小なりさまざまあると思うんです。
仕事とプライベートのいずれでもかまいませんので、「うまくいかないと思っていることはありませんか?」と、ぜひ振り返りながら、ここから先の話を聞いていただきたい。あるいはみなさんが職場に帰った時に、何かのタイミングでこのような問いを投げかけてほしいと思うんですね。
私たち一人ひとりのペイン・痛み、あるいはその逆でワクワクでもいいです。「こういう環境になったらもっと私はワクワクできる」とか「メンバーが明るく楽しく自信を持って仕事に向き合うことができる」でもよいと思うんですが、ぜひ自分自身のペインや生きにくさに正直になっていただきたいと思います。
沢渡:ここからはまずは序章で、「ネガティブ・ケイパビリティとは何ですか?」の解説です。書籍にも書いてありますが、考える軸となる比較の図がありますので、簡単に見ながら次に駒を進めたいと思います。
ポジティブ・ケイパビリティ、ネガティブ・ケイパビリティの特性比較の図を序章でも示しています。左がポジティブ・ケイパビリティで、すぐに、効率優先。右がネガティブ・ケイパビリティで、じっくり答えを出していこう、焦るな。この行動の特性を示しています。
長いので2ページに分けているんですが、傳さんはこの表を見て、「ここが気になる」「ここ、アイタタタ」とか、あったりしますか?
傳:(笑)。気になると言えばどれも気になるところはあるんですが、「対話」ですかね。対話って、意外とするようでしない。1on1とかの機会があっても、対話になっていないとかね。
あと、対話というものをしている実感がなかったり。「そういうものに時間を取ること自体が面倒くさい」とか「時間がかかるから」ということで、なんか敬遠されがちな組織はけっこうあるんじゃないのかなと思います。
沢渡:おっしゃるとおりですね。1on1ブームですけれども、対話らしきものは行われているが、実際は一方的に自分たちの組織の「べき論」を押しつけるだけ。あるいは個の主張をしているだけのような場もあるわけで、対話らしきものは行われているが、結局は何も解決しないし、不快感しか残らないし、一方的な押しつけしかないよねという職場はたくさんあると思うんですね。まさにおっしゃるとおりです。
では、対話って本当にできているんだろうか? そもそも対話を成り立たせるためには能力開発しなければいけないのではないか? このような次なる問いが立つのではと思います。
ちなみにみなさんに注意いただきたいのが、決めつけている図ではないということです。この図は私たちが400以上の組織を見て、「ポジティブ・ケイパビリティが優位と思われる行動特性はこっちじゃないかな?」「これはネガティブ・ケイパビリティではないかな?」と、便宜上たたきとして当てはめているだけです。
人によっては「いや、むしろこっちは逆なんじゃない?」というところはあると思っています。これはまさに「余白重視」と書きましたが、余白を持ちながらみなさんなりの意味付けをする行為です。建設的なクリティカルシンキングでの、「いや、これはもしかしたら違うんじゃない?」といった意見や議論も大歓迎です。
この図はあくまでも二項対立をあおるものでもなければ、決めつけるものでもないです。ただ、「どちらかに偏りすぎていて、うまくいっていないのではないか?」という問いを立ててほしいと思います。
沢渡:次のページもいきましょうかね。ポジティブ・ケイパビリティが優位な組織、ネガティブ・ケイパビリティ優位な組織で、このような違いもあるのかなと思います。傳さん、こちらはいかがですか?
傳:そうですね。もともとのネガティブ・ケイパビリティでよく言われる、「答えはやがて現れる」という不確実性に対するもやもやみたいなものって、なかなか耐えにくい人がけっこう多いのかなと思います。
沢渡:ありがとうございます。おっしゃるとおりですね、すぐに答えが出せない、すぐに解決できないのは気持ち悪い。こういう感情は「あって当たり前さ、にんげんだもの」だと思うんですね。とりわけ、すぐに成果を出すことが正義の畑で育った人たちほど受け入れ難いと思うんですが、まずはそこは違うという考えを受け入れていく。
もう1つ別のベクトルがあると思っていて、すぐに答えが出せない状態を楽しむ、という発想も大事だと僕は思うんですね。この書籍の中でも後半で出てくるかな? 偶然の出会いや偶然の発見を楽しもう、大切にしようということを、実は僕が今書いている別の書籍でも説明しているのです。
私たちも経験があると思うんですが、何か仕事に取り組んでみて、もともと計画された答えはまだ出ていないのだが、意外な収穫があったことってあると思うんですよね。「こういうやり方もある」と、わかったり。
例えば、最初は20代の若手に向けて作った商品があったとして、蓋を開けたら50代に売れた。別にこれは失敗でも何でもなくて、向き不向きがわかったという事実です。このような、「意外な収穫を楽しんでいく」発想で、さまざまなバリエーションの答えを楽しむ文化、行動も育んでいきたいです。
これはイノベーションの話にも当てはまります。イノベーションって予定調和では面白みがないし、計画どおりやるだけでは生まれにくい。人のエンゲージメントも上がりにくいという調査結果もあったりします。
沢渡:意外な発見や意外性によって、人のモチベーション、エンゲージメント、あるいは世の中の人たちを感動させるものが生まれる。イノベーションや新規事業とネガティブ・ケイパビリティは実は相性がいい。本書ではそのような説明もしています。
このような特性の比較もしつつ『「すぐに」をやめる』の第1部では、「ネガティブ・ケイパビリティ欠乏症」がもたらす職場のもやもやと、なぜそれが問題なのかをストーリーと解説でつづっています。
ストーリーは、まずはみなさん自身が「えっ、これって問題なんだ?」と思えるものもあると思いますが、ぜひ読みながら「おやっ?」と思ってほしいんですね。あるいは周りの人たちに「おやっ?」と思うきっかけを作ってほしいんです。
そのくらい私たちは悪気なく、ポジティブ・ケイパビリティ重視の行動、思考にまみれてしまっている。そこを、まずは1回「おやっ?」と思う。自分たちのやり方をメタ認知、客観視することが大事だと思っています。第1部では打ち手は書かずに、事象と、なぜそれが問題になり得るのかの問いを立てるところにとどめて書いています。
傳さん、いかがでしょう? これを見て、「ここが気になる」「一番グサッと来る」「ここが読ませどころ」みたいなものがあれば、いくつかわちゃわちゃ(トークを)やっていきましょう。
傳:やはり5つ目の「テレワーク原則禁止」は、ちょうどこれも2024年の秋か冬ぐらいに大手(企業)さんの話で話題になって。
沢渡:そうですね。
傳:ちょうど本の編集しながらのタイミングだったと思うので、「あぁ」と思いながら読んだ記憶があります。
沢渡:ありがとうございます。「テレワーク原則禁止! 副業なんてもってのほか」という5つ目のストーリーは、まさに「ネガティブ・ケイパビリティがなさすぎではないか?」という視点で書いています。
もちろん、そのような文化を完全に否定するわけではなく、組織のフェーズや回しているビジネスモデルによっては合理性がある部分もある。あるいは対面でやったほうが、確かに短期的な成果が出しやすい部分があるのも承知の上です。
沢渡:一方で、「大切なものを失いすぎていませんか? チャンスを逃していませんか?」という話もここでしています。特にこの「テレワーク原則禁止、副業禁止」を大都会や東京などの企業でやられすぎると、どんどん地方に人が来なくなる。
例えば地方在住や、地方に移住してそこからフルリモートワークなりハイブリッドワークで能力を発揮する人たち。(この人たちが)東京の企業に対して能力も発揮しながら地域に足を置くことによって、アフターファイブや副業で地域の企業の課題解決を手伝ったり。あるいは地域にいることによって、地域にお金が落ちる部分は多分にありますから。
このように、まさに両輪を回す。都市と地方の両輪を回している方が、せっかくテレワークや副業で盛り上がってきたのに、(東京の)自社の成果を出すためだけに、また東京に人と能力を全部かき集められる。
地方創生2.0と言われている文脈において、私たちも浜松、豊橋、愛知県設楽町、中山間地ほか地方都市で事業展開や共創を実践している立場においても、この風潮にはイエスとは言えない。その思いも込めて筆を走らせました。
「自社の目先の成果を出す上では、自社さえ良ければいいのかもしれないけれども、ここから先のさまざまな社会課題、あるいは本人のウェルビーイングや地域の経済成長を考えた上でも正解なんですか?」という問いも立てながら、ネガティブ・ケイパビリティの観点で物申しています。
ちょうどこの週末に私はFacebookとXで次のような書き込みをし、反響を得ました。(今後)地方創生ブームになると、地方創生の補助金に群がる東京のコンサル企業などがいっぱい出てくると思うんです。
かたやそういう会社の中には、「原則出社に戻します。テレワークは禁止。地方の人は辞めていただくか、あるいは東京に転居いただくか」など身勝手なことをやっている会社もあります。もうね、そういう会社に地方創生の仕事を発注しちゃ絶対にダメだと思いますよ。(視聴者の中に)行政の方がいらっしゃれば、みなさんも正しい見る目を持ってくださいね。
傳:言っていることとやっていることが一致しない、みたいな。
沢渡:そうですね。
続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。
会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。
すでに会員の方はこちらからログイン
名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!
スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ
この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします