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『“偲び足りない“が生み出した葬儀・お別れのフリースタイル』 ~鎌倉新書×カヤック対談セミナー~(全5記事)

「葬式=お坊さん呼ばなきゃ」の常識が変わる? 故人との“お別れ”をプロデュースする鎌倉新書の試み

葬儀・埋葬・供養の専門展「エンディング産業展2017」で、鎌倉新書×面白法人カヤックの対談セミナーが開催。「“偲び足りない“が生み出した葬儀・お別れのフリースタイル」というテーマで、新しいお別れのかたちを提供する2社がこれからの葬儀のあり方について語りました。

葬式とは違う「お別れ会」のニーズ

土屋敏男氏(以下、土屋):それでは続きまして、鎌倉新書さんの「Story」の紹介をしていただきます。堀下さん、お願いします。

堀下剛司氏(以下、堀下):堀下です。「Story」のご紹介をさせていただきます。「Story」というのはお別れ会のプロデュースサービスなんですけども、お別れ会といえば、みなさんがよく知ってるのは、芸能人の方が亡くなったときにテレビでよく見るお別れ会が一般的かなとは思います。著名人の方がするお別れ会っていうのを、一般の方でもできるようにしていこう、というのが大きな考え方です。

「Story」という名前を付けまして、お別れ会のプロデュースサービスを始めたのが、1年半ぐらい前、2015年の11月になります。我々鎌倉新書、けっこうインターネットでの集客が強みになっているので、インターネットのサイトを立ち上げまして、2015年11月に「お別れ会」「Story」としてバーンと出したわけなんですけども。

お別れ会って芸能人の方がやるのは見るけど、自分たちでお別れ会をする、っていうのは世の中にまだないので、あまり「お別れ会」という言葉を検索してくる人も少なかったんですね。なので立ち上げた2015年には、やっぱり1日にほとんど集客がない状態。誰も来ないので、当然お別れ会をしたいという人もいないという状態で。しばらくはずっと……ゼロ、ゼロ、ゼロというかたちで進んでたんですね。

その状況で、プロモーションや販促をいろいろした結果、少しずつ増えてきました。ある時に「ひとつじゃあお別れ会をしたい」というところでお客様のプロデュースをさせていただきまして……そこから始まって、1年半経ちます。

去年1年間はある意味トライアルで、一緒に作り上げていくというところだったんですけど、今年から「もう少し本格的にやろう」ということで私が事業責任者にならせていただきまして、やっているところです。

去年よりはかなり問い合わせも増えてきました。ホームページに事例を載せてもいい、というお客様がいらっしゃる場合には掲載させていただいているので、その事例も少しずつ増えてきて。事例を見ていただいたお客様がまた、「お別れ会をしたい」ということでお問い合わせいただく。少しずつ、この流れになってきています。

「お別れ会をしたい」という方が増えてきているのも、けっこう必然性があるな、と肌身に感じています。最近のお葬式がどんどん小さくなってきていて、家族だけでやる家族葬がどんどん増えてきている、というのもあると思うんですけど、お別れ会を我々にお問い合わせしてくる方々は、「大切な人が亡くなって、お葬式に行けなかった」という人がけっこういます。

それで、行けなかったどころかお葬式をやったことすら知らなかった、というところで「お葬式、呼んでくれなかったのね?」って来たら「ごめんなさい、ちょっと家族でやっちゃったんです」みたいなかたちで、終わってしまっていることもよくあったんです。

でも本当にお世話になった人なので、せめてお線香でもあげたいとか、お別れをやりたいんだけどな、という方がけっこういるというのが見えてきました。

もちろん家族の方は家族でお葬式をするんですけど、その外だけれど、関係が深かった方が、「お別れをしたい」とか「偲びたい」っていう気持ちを持っていく場所が、どんどん小さく、なくなってきているな……というのが感じているところです。

その「『偲びたい』気持ちを持っていくところがない」というところに、「お別れ会があります」と我々が提供させていただいて、そこに1つのマッチングが生まれているな、と思っています。

「こんなに自由にやっていいのか」

で、「お別れ会」っていうのはなんとなくわかるけど、実際に何をしていいのかがぜんぜんわからない、というのをけっこう言われます。どこでやっていいのかとか、何を着て行って、どんなことをしてお金をどこから集めてどれくらいかかるのか、とかまったく想像がつかないんですよね。

そういう中で、「お別れ会」を例えばインターネットで検索したときに、我々の「Story」というサイトがヒットして、それを見ていただいた方が「こんな自由にやっていいのか」とけっこうおっしゃっていてですね。

事例を出していい、っていうお客様には、実際当日にどんな空間でどういう語り合いがされていて、どんな表情でお別れ会をされていたか、というのを時系列で写させていただいているんですけど、それを見たお客様が、「お葬式なのか?」みたいな空間になっているし、笑顔といいますか、笑っているような写真もあるし、「そういうのっていいんだ」とびっくりされる、というのはけっこうあります。

実際の事例として見ることによって、「こんな自由にやっていいんだ」というのと、亡くなった人をそうやって、人生の流れとして偲べるんだ、というところに共感をいただいて、「これだったらちょっとやってみたいな」ということでお問い合わせをいただく、というのが増えてきている気がします。

土屋:実際にやられた事例のスライドがあるんですよね。

堀下:そうですね。いくつか事例があるので、2つほど見ていただきます。

1つ目が、屋外でやったんですね。普通お葬式やお別れは室内でやりますが、屋外でやりました。おばあちゃんのお別れ会なんですけど、おばあちゃんのゆかりの場所の野原で、おばあちゃんの好きだったことをやって、そうしておばあちゃんを偲ぶことで、残された家族が繋がっていると。

(映像が流れる)

土屋:いいですねえ。

堀下:おばあさんの子どもさんが3人ほどいて、そのお孫さんもいて……毎年安曇野に家族みんなで行ってたんですね。おばあさんが亡くなって安曇野に行かなくなった。となったら、みんなが散り散りになっちゃって、離れたように感じたと。

なので一族の結束をもう1回、お婆さんを偲ぶことで再出発したい、というところから、みんなでおばあちゃんが好きだった野原で摘んだ草花を使ってリース作りをやろう、っていうのがこのお別れ会です。

土屋氏がライフビデオを作ったきっかけ

もう1つが野球で、これはお父さんが亡くなられて、奥さんが主催者です。50歳くらいの旦那さんがガンで亡くなられて、余命が半年だと。非常に仲の良かったご夫婦なんですけど、旦那さんが、「僕がガンでどんどん体が弱っていく。すると君は悲しいだろう、辛いだろう」と。「最後の最後に死んで、辛くて仕方なくてボロボロになってる時に、お葬式で君の姿を見せたくない。周りの人にそんな弱った君を見てもらうのは嫌だ。だから家族だけでいいよ」と言ったんです。

奥さんが「でもみんなにお別れ言ってもらいたいでしょ」って言った時に、「じゃあお別れ会は、半年ぐらいしてちょっと元気になったときにやろう」って言って、やったんです。

土屋:葬儀は本当に家族だけでやって、半年後にこれをやって。

堀下:そうです。

(映像が流れる)

堀下:「プレイボール!」のかけ声と共に、始球式で開会したんです。キャッチャーで受けてた子がご長男さんで、ピッチャーで投げてたのがお父さんの大親友だったんです。野球一家なんです。ずっと野球やってて、お父ちゃんが少年野球の監督で。お子さんも野球やってて、女の子のお子さんにも野球をさせてたりするほど、野球一筋。

その一家にとって、野球の始球式を伝えるっていうのがものすごく意味があることだ、というので、奥様にすごく感謝をいただけたのが非常に良かったです。

あと、最後笑顔になってましたけど、最後に微笑みで終わる、っていうのが非常に1つ大きな特徴です。また後でお話ししますけれども、そこが「Story」です。

土屋:というかたちで鎌倉新書さんの「Story」の事例をご紹介いただきました。

今の「Story」のお話ですごく「おお、わかるなぁ」って思っていたのは、2011年に実は妻のお父さんが亡くなりまして。もう84歳だったんですが、急死でした。70歳で東証2部の会社の役員をやっていて引退して、もう十何年経ってるということで本当に内々でやりました。

そうしましたら、その後に会社の方からご連絡があって、前に四十九日に来ていただいた時に「知りたかった、教えてもらいたかったな」っていうのをすごく言われまして。実はその時に会社の方から聞いたお話を、ちゃんと本人から残してほしかったな、という思いが……僕が2011年、次の年に日本テレビの中で作ったライフビデオという会社です。

ですから、残された者のために「本人の口から自分の人生を語って欲しかった」という思いが、ライフビデオという会社を作ったきっかけなので、今の話はすごく一連のことで「わかるな」と思っていました。

ということでですね、ちょっと私の方のライフビデオのビデオもあるので、これも見ていただきたいと思います。

(映像が流れる)

土屋:ライフビデオの事例がいくつか入ったビデオを見ていただきました。2012年に作って、いろんなかたちで作らせていただきました。ご本人が語る場合、それから亡くなっている場合はご家族とかが語る場合とか。いろんなかたちで人生のビデオというのを作ってきました。

実はそれでうちの父親のものを作ったんですが、その父親は去年の4月に亡くなりまして。その時のお葬式で通夜、葬儀を葬儀場でやったんですが、その時に流させていただいたものがこちらです。

約15分ぐらいの人生のビデオだったんですが、そういう意味では、今回のテーマになっている「偲ぶ」ということをやれたのかなと思っております。

各社、鎌倉自宅葬儀社と「Story」のご紹介をしていただいたところで、これからディスカッションに入っていきたいと思います。

「お坊さんって本当に要るんですか?」

実際に私も2011年と2016年に父親を2人亡くしているので、葬儀というかたちが……まさに今日いらっしゃってる方々もそうだと思うんですが、いろんなかたちで本当に変わっている。それから、先ほどもインタビューの中にありました「直葬」というものが非常に増えている。そういう意味では、非常に「偲ぶ」とか「見送る」、「葬儀」というものの過渡期、変わり目に来ているのかなと思います。

こういう状況の中で、各社サービスを始めたきっかけをお聞きしたいと思います。まず、鎌倉新書の清水社長。「Story」を始めたところをお話しいただけますか。

清水祐孝氏(以下、清水):私どものお葬式のポータルサイトがございまして、そこでコールセンターに電話がかかってきますが、「お坊さんって本当に要るんですか?」「お坊さん、なしでも大丈夫でしょうか?」という問い合わせが年々増えてきています。

あとは、もう「直葬で」っていうリクエストがあります。住所を聞いたら田園調布高級な住宅街の人が! 経済的に困っているから直葬にしよう、というのはわかりますが、まったくそうじゃないような人が直葬を選ぶのはなんでだろう、と。

価値が伝わっていないことや、あとは少々知識がない。葬儀社さんになにか言われて高額になることを恐れて、「いやウチなんて本当にもうこじんまりしたもので……」と、先に予防線を張ります。お金はないわけじゃない。

こういう方々にどのように価値を提供したらいいのか。この「Story」の動機は、俗っぽい話で恐縮ですが、「このままだったらこの方、15万円か20万円で終わっちゃうな」と。もしこれが98歳だったら話は別ですが、70代とか80代の人はその後の人間関係がおありです。そういう方々にアクセスをしよう、というところがスタート地点です。

多くの方は「お坊さんを呼んでやらなきゃ」と思い込んでいますが、その思い込みから解き放たれてる人が徐々に増えてるな、と。

先ほどの鎌倉自宅葬さんのビデオでもありましたように、亡くなった方がどう思ってるかわかりません。残された方にとってどんな価値が必要かと思った時に、「家族だけではなく、家族以外の人たちも含めた学びの場」「人の死を見て自分の生を考える重要な時間帯」だと考えてています。やはり、そこは可能な限りきっちりやっていただいた方が良いと思っています。

ただし、「従来の宗教儀式的なものはだめよ」という人たちが一定数いらっしゃるなと(笑)。そういう方々に、自由な形式の別れの場を提供する必要性を感じました。

最初は葬儀社さんに行って提案しましたが、葬儀社さんがあまり乗ってきていただけないところがありました。我々はそういうこと専門じゃありませんが、当面自分たちでやっていくしかないな、ということで、「Story」というブランド名をつけて始めました。

ある程度浸透してきたら、プレイヤーの方々にもやっていただけるんじゃないかな、というところで今やっているというのが現状でございます。

土屋:日本の社会状況が変わってきているんですね。親と子どもが別々に住んでいることと、超高齢化社会になって、社会から離れてから長らく経って、その生前の関係を子どもが知らないまま、突然の死を迎えざるを得ない、みたいな状況が、いろんなことで関係しているのかな、と思います。

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