「人生を“打開する”好奇心の持ち方」

吉田将英氏(以下、吉田):改めましてみなさん、金曜日の夜にも関わらずけっこう集まっていただきまして、ありがとうございます。

鈴木裕介氏(以下、鈴木):ありがとうございます。

吉田:吉田と申します。いつもは広告会社で働いているんですけど、今日はこっちの話(「人生を打開する好奇心」の持ち方)をしたいなと思いまして。もともとのお友だちということで鈴木裕介先生にお声がけして、2人でイベントをしたいなと思って企画させていただきました。認識合っていますか?(笑)。

鈴木:合っています(笑)。

吉田:ではさっそくなので、話を始めたいと思うんですけども。金曜日の夜なので、僕らもそうだし、オーディエンスのみなさんも、一週間お疲れさまでした。

鈴木:お疲れさまでした。

吉田:(笑)。あまりバリバリに「何かプレゼンをぶっかまします!」というトーンのイベントにはならないかもしれないんですけど、始めたいと思います。タイトル「こんな時代だからこそ考えたい 人生を打開する好奇心の持ち方」ということで。なんですかね、打開すること(笑)。

鈴木:打開。

吉田:やはりしんどいじゃないですか。コロナもあって。

鈴木:そうですね。打開。

吉田:時代もね、いろいろ移り変わりの激しい中で、それを好奇心で打開するというのはどういうことだ? と。「人生を好奇心で打開できる」って、あまり言われたことがない日本語かなと思うんですけど。裕さん、なんか思うことあります?

鈴木:好奇心って「その影響力がけっこう軽視されている部分はあるな」というのがあって。僕、心療内科医なんですけど「好奇心というものが命をつないだな」とか「本当に好奇心というのが、この人の人生の打開の起点になっているな」と思わざるを得ないことというのが、やはりあって。

本当、今を生きるとなった時に、実はけっこう大きなテーマになってくるんじゃないかな? と。「打開」って、ちょっと言葉が強かったかもしれないなと。

吉田:まあ、まあ(笑)。

鈴木:今日、たまたま『スプラトゥーン』のTシャツ着ているんですけど(笑)。

吉田:(笑)。

鈴木:打開というのは『スプラトゥーン』の頻出語なんですよ。敵にエリア取られている時に。

吉田:そうか。出ちゃったワケですね。

鈴木:そう、そう(笑)。

吉田:『スプラトゥーン』出ちゃったと。

鈴木:『スプラトゥーン』の言葉出ちゃった。

なんで今、好奇心の話をするのか?

吉田:そんな、実はゲーマーな裕先生と今日はお話したいと思うんですけど。「なんで今?」ということでいうと、やはりコロナもそうですし。コロナがなくても、いろいろ世の中には辛いこととか納得いかないことも、多かれ少なかれあるし。人によっては、プライベートな個人的なことで悩まれていたり苦しまれていたり、裕さんのクリニックにもそういう患者さんがいらっしゃっていると思うんですけど。

僕はそういうビジネスの世界から、ちょっと思ったことをメインに話そうと思っているんですけど。裕さん、何で今なのか? というのは、そういう感じですかね。

鈴木:そうですね。たぶんそれぞれ「なんで今?」というのはあると思うので。

吉田:そうですね。自己紹介は後でちゃんとするんですけど、これ(スライドを指して)、大分、昔の写真なんで年齢詐称感が半端ないんですけど(笑)。

鈴木:ちょっと前なんですか?

吉田:ちょっとね(笑)。「なんでこの2人で話すのか?」というと、ハッシュタグ風にいうと(スライドを指して)こういうものなんですけど。こんなハッシュタグで合っていますか?

鈴木:そうですね。SNS(笑)。

吉田:フォロワー2万人。

鈴木:いやいや(笑)。SNSか。まあまあ、そうですね。

吉田:Twitterでも何かそういう、誰かの救いになるようなツイートをされていたり、けっこうあれで救われている人とかいるんじゃないかな? と思って。いきなりハッシュタグ風に書いてみたという感じなんですけど。

鈴木:なるほどね。ありがとうございます。やはりそういうの、他の人から見ないとわからないことが多いですね。「自分のハッシュタグが何か?」というのって。

吉田:僕もこれ、あまり相談しないで勝手に書いた感じなんですけど(笑)。僕は広告代理店の会社員をやっているので、広告とか企画とか。あと人に物を伝える仕事というのも、やはり何かして欲しくて。「物を買って欲しい」とか「サービスを使って欲しい」とか、そういうためにアプローチをするんですけど。

結局、その動きをしてくれるかどうかのトリガーって「好奇心を引き出せるかどうか?」だったりするので。やはり仕事柄、人様の好奇心を扱う……というか考える機会はあるかなとか。そういうことで、細かい話は後でちゃんと自己紹介しますけど。なんとなくお医者さん、心療内科医のプロフェッショナルとしての裕さんと。ビジネスの現場でわりと好奇心を実務で扱っている僕と。みたいな、そんなコンビで話すと。

鈴木:ということですね。

吉田:はい。

鈴木:「何かを好きになってもらうこと」を仕事にしているワケじゃないですか。すごいことですよね。「好きになれない」とか「深く好きになれないことが辛い」「好きなものが見つからないのが辛い」というような中で、そこをプロとしてやられているというところ。本当に聞きたいなという感じですよね。

吉田:いやいや。話せるかどうかがんばらないと、という感じなんですけど。ちょっとテーマがテーマなので、もちろん言えないこと、言いたくないことを書けというわけではもちろんないんですけど、もしよかったら疑問とかお悩みとかご意見とかを(コメント欄に)書き込んでいただければ。

後半、Q&Aセッションのお時間取っているので、この際だから僕でもいいですし裕さんでもいいですし「私の悩みを一緒に考えてほしい」みたいなことでも、いいかもしれない。もしよかったら、チャットを書いていただければいいかなと思います。

心療内科医であり、コンサルであり、ゲーマーでもある鈴木氏

吉田:最初は「お前ら何者だ?」ということを(笑)。それぞれ簡単に何者だというのと、このテーマに際して、どういうことを心に置いているかというのを、一人ずつ簡単に導入で話そうかなと思うので、まずは鈴木先生。

鈴木:はい、よろしくお願いします(笑)。“先生”とかいわれても、アレなんですけど。メンタルヘルスが好きな内科医、心療内科。あと産業医といって、企業の中で健康管理とかメンタル管理とかにコミットしているお仕事とかもさせてもらっています。

千葉県出身、高知大学を出ました。秋葉原で小さいクリニックをやっています。saveクリニック。saveというのは、ゲームがすごく好きなのでsaveポイントのsave。ここから「復活の呪文」じゃないですけど、安心とか回復の拠点みたいなのになってくれたらいいなということで、名前にしました。

吉田:いいネーミングですよね。

鈴木:あと一応、前々職とかの兼ね合いで、キャリアコンサルタントの資格を持っていたりとか。その前はマネジメントを勉強したり、普通の企業のコンサルタント、医療系のコンサルタントの会社にいたんですけど。今日は僕、イベントの登壇が2個目で。

吉田:お疲れ様でございます(笑)。

鈴木:(スライド資料が)堅い感じになっていますけど。朝の登壇は、エンジニア向けで。「秋葉原のゲーマー診療内科医が伝えたいメンタルヘルスのメッセージ」みたいな感じだから。

吉田:キャッチーなタイトルですね。

鈴木:(スライドの右下を指して)ここにゲーマーとしての情報が出てきちゃうんですよ(笑)。

吉田:出てきましたね。

鈴木:『スプラトゥーン』が本当に好きで(笑)。今日の朝に見てきたら(プレイ時間が)2,920時間なんで。僕が今までやったゲームの中で、一番長いなという感じ。

吉田:凄まじい時間ですね。

鈴木:なんだけど、最高位の「ウデマエX」まではまだいかない。

吉田:(笑)。

鈴木:主な使用ブキは、パブロ・ヒューを使っています(笑)。

吉田:(『スプラトゥーン』の)3が出るというニュースがね。

鈴木:3のニュースが出てね。もう爆上がりしましたよ。本当に。

吉田:もうちょっと先ですけどね。

鈴木:ゲームのアップデートも久しぶりに入って。これが本当にいいアップデートで。

吉田:(笑)。

鈴木:任天堂が本当にいい仕事しているから「俺もがんばんなきゃ!」という気持ちになりましたね。

吉田:(笑)。みなさん、このゲームに生かされている感じ。「これが好奇心です」みたいな。

鈴木:(笑)。

吉田:あとでそういう話になると思うんですけど、やはり真面目な人とか、外聞気にする人に限って「大人にもなって、ゲームって恥ずかしいな」とか「本当は趣味なんだけどあまり他所で言えない」「『ゲームかよ』とか言われたらどうしよう」とか、そういうのよぎると思うんですけど。プレイ時間をバンと出す。

鈴木:確かに。信頼失うかもしれないですね。

吉田:そんなことはないと思うんですけど(笑)。

鈴木:3,000時間近くやって、ウデマエ最高位いっていないというのは「こいつ、さてはうまくないな」みたいなのとかもあるんですけど(笑)。

吉田:なるほどね(笑)。

鈴木:自分よりうまい人がいても「自分がそれを好きだ」ということは変わらないので。

吉田:それはポイントかもしれないですね。あとでそういう話にもなるかもしれませんが。

「死にたい」まで思わないが「“明日”は別に来なくてもいい」

鈴木:僕の視点から見ているものというのは……一応、心療内科医なので、メンタルヘルスに仕事としてというか、私的に関わるようになって10年くらいになるんですけど。本当に最近、特に多いのが不登校の子とか、ちょっと複雑な事情のある家庭を拝見することがあって。

そういう人たち、子たちとかが「生きる気がしない」とか「生きているのがつまらない」とか「何の意味があるんだ」みたいな。そういう悩みというか、悩みというほどの情念もないような。ライトで薄い、エネルギーがちょっと足りないというか少ないという。

吉田:“酸素が薄い”みたいなね。

鈴木:そういう状態。こういう苦しさというのは、すごい現代的だなと思うんですよね。こういう人がもっと増えてくるだろうなと、今、思うところがあると。

吉田:「生きているのが辛い」ということとも、またちょっと違うということですよね。

鈴木:そう。「死にたい」というところまでではないけども「“明日”とか別に来なくてもいいのに」というような。

吉田:なんかちょっと、空虚な感じがするというかね。

「退屈」という現代的な悩みを突破する、カギとしての好奇心

鈴木:これは僕の前の本『NOと言える人になる~他人のルールに縛られず、自分のルールで生きる方法~』で書いたものなんですけれども。

NOを言える人になる 他人のルールに縛られず、自分のルールで生きる方法

「『退屈』が不幸のはじまり」というテーマで、退屈というのが現代のテーマになるのかなと思っていて。

社会が豊かになり、命の危険がないことが当たり前になってくると「生きること」それ自体の意味を見つけることが難しくなる。これって、先進国共通の課題というか。バートランド・ラッセルが「人々の努力によって社会がよりよく、より豊かになると、人はやることがなくなって不幸になる」と主張するワケですね。

社会に“大きな穴”が空いていないんですよね。革命を起こさないといけないようなこともないし、大きなやり甲斐のあるような“社会の穴”って、だいたいもう前の世代の人たちが埋めてくれているワケで。そういった時に、自分がこれをより良くするために人生を捧げようと思えるような「大義」というのは見つかりにくいだろうな、と。

そうなると、生きるモチベーションを自分で見つけるしかないんだけど、不登校の方とかがお母さんと一緒に(クリニックに)来たりするんだけど「この子『(自分には)生きる意味なんて無い』なんて言うんです。何か言ってやってください」とかって言われるんですけど「……そうですねぇ」と。

吉田:(笑)。

鈴木:「生きる意味を見つけるの、実は難しくないですか? お母さん」って(笑)。

吉田:ちょっとね。

鈴木:「的を射ていることを言っているな」と思う話はするんですよ。これってやはり、すごく現代的な悩みだなと思うワケです。(スライド指して)「人類の罪の少なくとも半分は、退屈を恐れることに起因している」。いい言葉だなと。やはり退屈って、キツイなと思うんですよ。空虚とかね。

吉田:一番辛いかもしれないですね。

鈴木:という中で、実際、好奇心が人生の突破口になっているんじゃないかな? と思うことは、ちらほら散見するなと思うんですよね。