2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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鈴木裕介氏(以下、鈴木):(「好奇心が人生の突破口になっているんじゃないかな? と思うことは、ちらほら散見する」という話に続いて)これ、僕の『メンタル・クエスト』という本の終わりに書いていることなんですけど。
ある患者さんのエピソードですよね。普通に読んでいいですか?
吉田将英氏(以下、吉田):はい。ぜひ。
鈴木:わりと最近の話。R氏の話ですね。もともと「まったり死にたい勢」だったR氏は、仕事のストレスもあいまって「がっつり死にたい」状態で僕のところに訪れた。人生のコントロール感というのをあまり持ったことがなかった。「あまり出せはしないだろうな」と思ったけど、一応持たせた診断書をうっかり職場に出せてしまったので、やることがなくなっちゃったんですね。
一週間くらい泥のように寝た後、やることがないのでNintendo Switchを購入して、実況動画とかを見てただけだった『ゼルダの伝説』の最新作をやり出した、と。初めて「やってみたい」という気持ちになったからということですね。
景色が綺麗すぎてすごい感動した。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の景色、本当に綺麗です。
吉田:(笑)。
鈴木:アクションゲーム初めてだったみたいですけど、最終的には、ライネルというめちゃ強い中ボスがいるんですけど、あれを野良で狩れるようになっていた。逸材である。
あっという間にクリアしてしまったので『ゼルダの伝説 夢を見る島』という、昔のセルダのリメイク版を推薦した。それも一瞬でクリアしちゃったので、坂口恭平さんの『cook』という本があるんですけど、それをお勧めしたんです。
初めて自分のための料理をし出した。とても気分がいい。「野菜を切っている感じ、心が落ち着く」、五感が動いていく感じですね。ついでに『スプラトゥーン』も勧めておいたと。僕、大好きなので。今、初心者のボールドマーカーという、エイムのいらないブキですね。
吉田:(笑)。
鈴木:突っ込んで特攻するだけという、あまり考えなくてもいいブキを持って、Cマイナス、一番下のランクの高い壁に挑んでいる。そんなこんながあり、R氏の抑うつスコアは人生で一番低くなっていて「ゼルダの新作が出るまでは、死なないでいられそうだ」というふうに今、言ってるというようなこと。
吉田:なるほど。
鈴木:後日談がありましてね。この人、いまわりと元気で。
吉田:素晴らしい。
鈴木:さっきの『スプラトゥーン』だとAランクまでいって。「デュアルスイーパー」っていう、つよつよなブキをもってやっていますね。やられたら「クソっ」とか言って。
吉田:このエピソード、何が救いになるかわからないといったらアレですけど。この方の場合はNintendo Switchが、一歩踏み出してちょっとずつ這い戻っていく一歩目がそうだった、ということですもんね。
鈴木:うん。世界とのつながりの希薄さが、やはり生きるのがつまらないと(感じる原因になる)いうのはすごいあるけど、なにかしら“フック”が掛かって、それがだんだん何本も何本も掛かっていくと、ちょっと楽になってくるんですよね。「生きるのがつまんない状態」って辛い状態なんだけど、それが緩和されてくることはあるのかなと思います。
鈴木:一応は医師でもあるので、好奇心にまつわる研究とか、いくつか知見としてシェアをしようかなと思うんですけど。さっき言った、何が起こるかわからないという話。クランボルツの「計画性偶発性理論」というのがあって、18歳の時点でなりたいと思っていた職業についていた人の割合って、2パーセントしかない。
吉田:2パーセントなんですね。なるほど。
鈴木:そう。今のキャリアになっている、今のキャリアに行き着いた理由の8割は「偶然の出来事」で形成されている、ということがインタビューで明らかになったワケですね。
だとするならば、偶然の出来事というのを利用して、キャリア形成の役に立ててやろうと。そういう意図のもとに、あとから見て「あ、あれは転機だったな」と思うような偶然の出会いとか出来事とかを、むしろ引き当てる。引き寄せるように働きかけていくといいんじゃないか。そういう主張ですね。
そういった偶然を引き当てるために必要な要素のうち、大きなものが「好奇心」である、というようなことです。何があるか、どこから転がるかわからんというのもあるし。でも「ある1つのものとの出会い」とか「ある1人の出会い」とかで人生が転がることって、すごくあるなと思うんですよ。
吉田:うん、確かにね。僕のこの『仕事と人生がうまく回り出すアンテナ力』という本は、4年前か5年前に、ここに移転する前の前の(当イベント主催の)B&Bさんでイベントした時に、そこに来てくださっていた編集者の方が僕に目を付けて「本を書いてみませんか?」と言って出せた本なんですよ。
鈴木:うん。
吉田:なので“B&Bきっかけ”で出せた本をテーマに、再びB&Bでイベントができているので。「故郷に錦」じゃないですけど。
(一同笑)
吉田:うれしく思っております。
(一同笑)
鈴木:そこにつながりみたいなものを感じるといいですよね。
吉田:そうそうそう。
鈴木:なんか「生きている物語」に納得感が深まるというかね。
吉田:偶然なんだけど、必然っぽく思えてくるみたいなね。
鈴木:そう、そう、そう。
吉田:それは思いますね。
鈴木:ちょっとマニアックなんですけど、カシュダンという人がいて。
吉田:これは知らないですね。
鈴木:好奇心にはいろいろあるんですけど、こういう5側面があるよというので。どんなタイプの好奇心かを、5つに分けたワケですね。
Joinus Explorationというのは「探求」。自分を成長させることにすごく貪欲で、学びそのものが快楽、楽しいという好奇心があります。「欠落感」というのは、問題を解決したいんだけど必要な情報がない。足りないなということで、足りないものを補いたいということでの知的好奇心。
3番目が「ストレス耐性」といって、新しいものをどんどん取り入れていこうということに対しての不安がすごく少ないことが「ストレス耐性が少ない」。そういうのを積極的に取り入れて活かそうとするような、そういう好奇心。
次に「社会的好奇心」というのは、主に人ですね。周りの人を人間観察して、どんな思考とか行動を取ろうとしているのか観察をして、知ろうとするという好奇心。5つ目が「高揚感を追求する」。スリル刺激なんですけど、真新しく強烈な体験をするためにリスクを負うことをいとわないという。けっこう快楽追求型みたいな、そういう好奇心。だいたいこの5側面あるんじゃないかと、この人は言っています。
これ、続きがあって。この5つの好奇心の側面を元に「好奇心クラスター」と呼ぶ、4つのクラスター分類をしたんですよ。
だいたい全部高いなというタイプの人たちを「ファッシネイティッド(Fascinated)」。魅了されている。好奇心に魅了されている勢。この人たちは一番所得階層が高いし、一番教育レベルが高いし、一番幸福度も高いというのが出ている。
吉田:好奇心と比例するというワケですね。
鈴木:一番右の「アヴォイダース(Avoiders」)。すべての好奇心側面が低い人たちのこと。回避者、回避する人たちと分類しているんだけれども、最も好奇心が薄くて自信がなくて、学歴も低くて収入も低いという傾向があって。最もストレスを感じていて、困難な状況をどんどん避けていく傾向にあった、という結果があります。
吉田:それぞれ5つの種類の、凸と凹がパターンがあるということなんですね。
鈴木:そうですね。
吉田:なるほど。僕は「エンファサイザー(Empathizer)」な気がしますね。
鈴木:(笑)。
吉田:ストレスとスリルが低い。けど、他はまあまあ高いかなみたいな。ビビリで、ちょっと恥ずかしがり屋。
鈴木:(笑)。
吉田:気がしますね。
鈴木:僕は「ファッシネイト(Fascinated)」されてちゃっている気がしますね。
吉田:ファッシネイトされちゃっている。なるほど。
鈴木:あと、これはわりと医学的な、瀧(靖之)先生のやつ。
好奇心と脳。知的好奇心が高いほど脳萎縮は抑制されるとか、趣味とか知的好奇心を持つことが、認知症のリスクを下げるとか。そういうようなことが言われているねという話。いろいろあって、どうも好奇心って「人生によさそうだな」という(笑)。
吉田:お医者さん的な(笑)。「体にいいよ」みたいな。
(一同笑)
吉田:なるほどね。なんとなく「わかっていた気」になっていたことが“お医者さま切り口”からお話いただいたかなと思ったんですけど。この後の話にあるかもしれないですけど、こういう話を聞くと「やはり好奇心は持つ“べき”なんだ!」みたいになっちゃうと「べき」とか言った時点で、好奇心の本質が「ああ……」みたいな気もして(笑)。
「持たねばならない」みたいに「やはり好きなことってなきゃいけないのかな?」とか、そうなっちゃうと、またアレなのかなと思ったりする部分もあるし。裕さんの本の中で「やりたいことヤクザ」という言葉が。
(一同笑)
吉田:「お前のやりたいこと、なんだよ?」みたいな。「お前の夢は何だ!?」みたいな、その「〜ねばならない」にならないで。本当にピュアなやつで。内側から持つというのが、すごく難しいなと思うんですよね。
鈴木:そうなんですよね。「ねばならない」になると、出し入れしなきゃいけないものみたいな感じになっちゃうんですよね。本来は自然に出てくるものなんだけども、やはり環境に対しての感受性が高い人ほど周りの様子を見て、その場に一番適しているというものだけを出そうとするワケじゃないですか。
そうなると、自分の本当の内面から出てくるものって、見えにくくなるよなと思うんですよね。そういう警戒をしなくていいような場所を持つことというのが、すごく大事なのかなと思います。
吉田:まさにこの本で「信頼と安心の違い」みたいなことを書かれていて。僕、それを読んで、自分はたぶんメンタルモデルがわりと「警戒」というか(笑)。
先に「世の中には悪い人がいっぱいいるんだから気を付けなさい」みたいな、そういうところがもしかしたら強い。だから、好き勝手振る舞うというのに、一歩ステップが入っちゃうというか。そういうことがあるかもな? なんて。
鈴木:だいたいそういったものって、学習で身につくじゃないですか。やはり好き勝手に生きて、痛い目見させられたことだと思うんですよね。
吉田:学習したということですよね(笑)。
鈴木:やはり、押さえつけてくるような環境があったとは思うんですよね。
吉田:なるほどね。そうそうそう。僕、子どもが去年生まれて、もうすぐ9ヶ月になるんですけど。そういう意味では学習中なんで、今、何でも口に入れる期なので(笑)。彼は痛い目というのがゼロベースだから。
鈴木:Full of curiosity.
吉田:そう、そう(笑)。いろいろ反省するというか、なんか学びますもん。彼から。世の中に対しての姿勢を。
鈴木:だから、好きなことがないとか好奇心がないっていうけど、最初からなかったワケでは、絶対ないってことなんですよね。赤ちゃんの頃ってめちゃめちゃ主張していたはずだし、めちゃめちゃ言ってたはずなんです。「ミルクをよこせ」とか。
吉田:(笑)。
鈴木:「オシメを替えろ」とかニーズがあったはずなんだけど。「それを、おいそれと発することが好ましくないんだ」という学習をしていくワケですよね。
吉田:なるほどね。
鈴木:そうなってくると、周りの人に配慮して。社会の中で生きるためには、ある程度それをしないといけないということがあったとしても、期待から外れることが過剰な恐れになると、やはり好奇心というのは見えなくなるよなと思うんですよね。
吉田:じゃあ、どうやったら「キュリオシティ(curiosity)」に戻れるか? というか、獲得するというよりは、中に本当はあるものなのかもしれないのでね。
鈴木:再発見していく、ということだと思うんですけどね。
吉田:今日話せればな、なんて思っております。質問も来つつありますけど、後で区切りがいい時にお答えしようかと。ありがとうございます。
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