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こんな時代だからこそ考えたい「人生を打開する好奇心」の持ち方(全11記事)

仕事・私生活ともにありがちな、好奇心に求める“元本保証” 「それ、やる意味あります?」「もしつまんなかったら嫌」の思考

ライフワークとしてメンタルヘルスに取り組み、執筆や講演、SNSでの情報発信を積極的に行うかたわら、キャリアコンサルティング技能士資格も持つ、心療内科医の鈴木裕介氏。そして、広告会社で人の好奇心を刺激するクリエイティブ開発に従事するかたわら、若者研究や「物事を好きになる気持ち」について研究する『考好学研究室』を主催する吉田将英氏。そんな両者が登壇されたイベント「こんな時代だからこそ考えたい『人生を打開する好奇心』の持ち方」の模様を公開します。

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世の中の大半の問題は“関係性”に原因がある?

吉田将英氏(以下、吉田):やはり僕、プランニングする時、企画する時に大事にしていることは、(スライドを指して)これなんですけど。「関係性」がうまくいっていないことが、ほぼだなと。「Aが悪い、Bが悪い」とかじゃなくて「AとBの折り合わせが悪い」んじゃないかとか。

「売り上げが下がっているのはどうするんだ」とか「ビジョンが浸透していないんだ。社員がぜんぜんうちの会社を愛していないんだ。どうするんだ」というのは、どっちが大事なんだじゃなくて、絶対関係があるんだから。関係性がうまくいっていないんじゃないか? とか。

だいたい「あいつが悪者だ」みたいなハッキリとした悪者が1人いて、そいつをやっつければなんとかなるというワケには、なかなかいかないじゃないですか。

鈴木裕介氏(以下、鈴木):ですよね。

吉田:びっくりしたんですけど。最近の『アンパンマン』って、もうストーリーがすごいじゃないですか。映画版に、バイキンマンが善悪に一瞬悩んで、アンパンマンに手を貸そうかどうか葛藤するみたいな話が確かありました。

鈴木:(笑)。

吉田:そういうストーリーにまでなっているんだ! みたいな。「勧善懲悪アンパンーチ!」で終わると思っていたら「ツンデレのバイキンマンが、最後ちょっと助けに来て、共通の敵を退けました」みたいな。劇場版なんですけどね。

鈴木:ああ、映画版のジャイアンみたいな。

吉田:そうそう(笑)。ちゃんと世の中って「善悪の捉え方」がちょっとずつ進化しているのかもなとか、ちょっと余談ですけど思ったりね。関係性だなと思っていて。

会社の未来の、例えば「中期経営計画を考えろ」みたいな仕事も、結局は企業と未来の関係性。「社会がこうなった時、この会社どうありたいのか?」みたいなことだし。社内の人間関係みたいなのも「若手の離職率が上がっちゃってどうしましょう?」みたいな、結局、若手の中だけに問題を探していってもやはりダメで。経営者と社員の関係性として捉えるとか。

モノも結局、モノだけで見ているとよくないよとか。「モノからコトへ」とか、よく言いますけど。結局、商品と人の心理の関係性で考えないと、なかなか成功しないなといつも思いますし。若者研究も、やはり若者だけ見るんじゃなくて、彼らを取り巻く社会との関係性なのかな? なんて思っています。

「公私の折り合わせ」の中で“やりたいこと”で苦しむ人は多い

吉田:関係性の……さっきの「フックがかかる」(という、鈴木氏の話)。「社会とフックがかかっていれば、なんとか踏みとどまって生きようと思える」という話もしていたと思うんですけど。企業の中の社員も“フック理論”だなと僕、さっき聞きながら(思っていた)。「会社にフックがかかっている気がしない」みたいな人は、残念ながらいっぱいいる。

鈴木:そうですね。噛み合っていないというやつですね。

吉田:噛み合っていないとか「俺の意見をぜんぜん取り合ってくれない」とか「やりたいことを聞きもしてくれないと」いうようなこともあれば。もっとそもそもパッシブというか、まだ自分側から芽がうまく出せなくて「やりたいことがなくて凹みます」というこのコメント、僕もすごく聞いて。

大学生もそうだし、企業の人も。企業人がこれ言うだけ、まだ腹が座っているほうで。やりたいことがないという状態にすら気付かなくなって「そういうもんじゃない?」みたいになっている人も、もちろんいっぱいいるので。

鈴木:隠すのうまいですからね。

吉田:そうですね。

鈴木:そういう「悲しいな、辛いな」というのを隠して適応する人、本当に上手ですからね。

吉田:人間だし「出さないほうが大人だ」「真っ当だ」みたいな感じも、まだまだあるじゃないですか。最近だとオーセンティック・リーダーシップみたいな「職場であまり公私を分けずに、自分らしさをむしろ出して振る舞ったほうが、業績も出る」みたいな(笑)。そういう話も、わりと海の向こうとかだとけっこう広がっているっぽいですけどね。『一兆ドルコーチ』なんて、けっこう売れた本もそういう話だったと思うんですけど。

まだまだやはり公私の折り合わせとか、その中で自分がやりたいことで苦しんでいる人はいるなと思います。

好奇心を導入して、いろんなことを探索しないといけない

吉田:やはり今、裕さんが言ってくださったみたいに、人から「これやれ、あれやれ」と言われたことを一生懸命やるのも、局面では大事な、必要なところもあると思うんですけど。それがやはり含有率100パーセントになると、だんだん「あなたがやりたいことは何?」とか「そもそも何でこの会社に入ったの?」とか、そういうことがわかんなくなっちゃったり。

あるいは「仕事はもう別にいいんだ。俺は土日の趣味に生きるんだ」という、そっちがあるんだったらまだそれでもいいかもしれないですけど。それもろとも、やらないといけないことをこなすだけで日々日々終わっていって、大学の同期だったやつのSNS見たら、めちゃめちゃ活躍している(笑)。そういうツイートとかしてて焦るみたいな。「俺は何をしているんだ。こんなところで」みたいな、そういうことがあるんですけど。

でも、最近だと企業側の文化とか……要は不確実で未来が見通せなくて「既存事業の延長線上だと、うちは売りが立たないから、まったく新しい可能性を会社として模索せねばならない。おい、お前考えろ!」みたいな(笑)。

そういうことがあったりすると、やはり先輩もそれまでのやり方も当てにならないみたいになっていて「言われた通りにやったのに、みんなで遭難する」みたいな(笑)。それは、実はリーダーもどっちに道が開けているかわかっていないみたいなことが。

鈴木:見えていないですよね。

吉田:そうすると、やはりみんなの好奇心を導入して、いろんなことを探索しないといけないと思うんですけど。「探索は無駄なことだから、ここを掘れ!」というふうに、やはり既存事業で成功した会社ほどバイアスがかかっていたりして。

そういう、一見すると名のある会社だったり、社会的に有名、良さそうだと言われている会社の人に話を聞くと、けっこう逆に辛そうみたいなことが(笑)。

鈴木:いやぁ、本当。

吉田:あったりするのかな、なんて思いますね。

「それ、やる意味あるんですか?」という“好奇心の元本保証病”

鈴木:前職の時に、新規事業の開発のところでアドバイザリーみたいな偉そうなことをやったんですけれども。

吉田:(笑)。

鈴木:「いつリターンが出るんだ!」みたいなところになっちゃうんですよね。

吉田:見返りというかね。

鈴木:出ねぇよ!

(一同笑)

鈴木:そんな出ねぇよ。ヘルスケア、そんな甘くねぇよ。

吉田:(笑)。

鈴木:という感じで。

吉田:確かになぁ。まさに好奇心に“元本保証”を求めちゃう感じというか。「元取れるんですか、これ?」みたいな。

鈴木:そうなんですよね。

吉田:仕事もそうだし。例えば「土曜の午後が空いたら何しようかな?」と思った時でも、ちょっと新しいことやろうとした時に「つまんなかったら嫌だな」とか「それで時間とお金無駄にするの嫌だな」とか。

鈴木:そうなんですよね。

吉田:思っちゃいますよね。

鈴木:リサーチ、探索にコストがかかるということで、そこにリソースが割けない。探索できるほど元気じゃないという状態だと、やはり遅かれ早かれ、ドン詰まっちゃうというのはあるんですよね。すごく大きいと思う。

吉田:だから、個人も会社もそうかもしれないですよね。そんなことを目の当たりにしつつ、僕も偉そうに「俺はそうじゃない」みたいに聞こえるかもしれないんですけど、めちゃくちゃそうなりがちで。特に20代の時はここで書いた側にいたし、その“好奇心元本保証病”みたいなのは、それこそ「それ、やる意味あるんですか?」とかっていう(笑)。

鈴木:(笑)。

吉田:「やる意味は、やってみないと見つからないんだよ!」みたいなことを先輩が言うと、なんか逆に「わー……この人、ファジーだな」。

鈴木:(笑)。

吉田:って思ったりとか。「若いのに何だそれ?」みたいな、今思えば。

鈴木:その時に会っていたら、仲良くなっていないし。

吉田:そうですね(笑)。

鈴木:(笑)。

吉田:「チッチッチッ」ってたぶん言われたり。「そうじゃないんだよな」みたいな(笑)。そんな感じだったと思いますけど。

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