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こんな時代だからこそ考えたい「人生を打開する好奇心」の持ち方(全11記事)

「最初は面倒でも、やってみると楽しい」パターンを生む “好奇心の初速”と“新しい領域への探索コスト”の重視

ライフワークとしてメンタルヘルスに取り組み、執筆や講演、SNSでの情報発信を積極的に行うかたわら、キャリアコンサルティング技能士資格も持つ、心療内科医の鈴木裕介氏。そして、広告会社で人の好奇心を刺激するクリエイティブ開発に従事するかたわら、若者研究や「物事を好きになる気持ち」について研究する『考好学研究室』を主催する吉田将英氏。そんな両者が登壇されたイベント「こんな時代だからこそ考えたい『人生を打開する好奇心』の持ち方」の模様を公開します。

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入院で味わった、無限の「何もすることのない時間」

吉田将英氏(以下、吉田):(スライドを指して)去年僕、入院したんですよ。

鈴木裕介氏(以下、鈴木):へえ。

吉田:というと「COVIDか?」みたいな感じ、空気になるんですけど。COVIDではなかったんですけど、2週間くらいかな。最初の5日間、6日間、熱が下がらなくて。39度5分ずっとパーンって出て「しんど!」みたいな。

何もできない、動けないし、ご飯も最初は食べられないし。あんなに無限の「何もすることのない時間」を、久々というか初めてに近いぐらい過ごして。良くも悪くも、考えごとしちゃうワケですよ。熱が高くて寝付けなくて、夜も2時、3時、4時みたいにグルグルしまくって。

だけど、沈んだ時期もあったんですけど、最終的にはいろんなことが1回ストップになったおかげで、本当に大事なことの優先順位がすごい付いたんですよ。それまでは、頭の中を蚊が飛んでいるみたいな。いろんなやらないといけないこととか情報とか、他の人のSNSとか(笑)。そういうものが「ワーン」とずっと飛んでいて。

「あれやらなきゃ、これやらなきゃ」。やらなきゃならまだいいんですけど、全然関係ないことまで勝手に関わりに行って腹立てたり。「あれ、けしからんよな!」とか(笑)。「あなた関係ないじゃない」ということまで蚊を飛ばしちゃってたのが、一気にスッキリして。ありがたさとか、親がだいぶ助けてくれて何とか入院できたというのもあったんで。「親ありがたい」とかいって、夜1人で泣くみたいな(笑)。

(一同笑)

吉田:どうした? みたいな。急に大学のサークル時代のLINEを掘り返して、LINEをし出すとか。「こいつちょっと様子がおかしい」とか思われながらも。でも、通っておいてよかった。こんなこと言うと「『入院してよかった』とは、心配かけて何事だ!」とか言われそうだけど、今となってはよかったんですよ。通っておいて。

体が疲れている状態だと、五感が働かなくなってくる

吉田:子どもができて、今35歳なんですけど。これぐらいのタイミングで、あれだけまとまった時間を半強制的に得られたのはよかったな、とか思うので。こういう立ち止まって考える。立ち止まったから、ウィル・パワーというんですかね。“好奇心HP(ヒット・ポイント)”が。

鈴木:HPが。

吉田:MP(マジック・ポイント)かな(笑)。使うという意味では、MPかもしれないんですけど。

鈴木:CP(キュリオシティ・ポイント)にしましょうか。

吉田:キュリオシティポイント。そう。

鈴木:暫定的に。

吉田:いらんことにバンバンバンバン変な魔法を唱えて、CPがなくなっていた状態から「いいからお前、寝ろ」みたいな感じで(笑)。宿屋に2週間押し込まれて、CP満タンになったら、やはりやりたいことを思い出せたんですよね。

鈴木:いやぁ、まさにそうなんですよ。「情動が動く」というのって、ある程度、やはり体が疲れていない状態じゃないと起こらないんですよね。「うつになったら、ご飯おいしくなくなる」という話とかあると思うんでけど、そういうの似ていて。五感が働かなくなってくる。

あまりに辛いけどやることをしないといけないから、心に麻酔かけながらやるみたいな感じになると、そんなの好奇心どころじゃないワケですよね。

吉田:そういう意味では、体を止めて、頭もある意味止めて。

鈴木:休むことって、確かに必要なのかもしれないですね。まずは。

吉田:そう。「いいから寝ろ」じゃないけど(笑)。

「好奇心の初速」をあげるためのアレコレ

吉田:それでやはり(スライドの「好奇心の初速をあげよう」を指して)この言葉が復活できた。

これ、裕さんにも本の中で僭越ながら引用してもらったんですけど。初速、最初の動き出しというのが。僕は元来、慎重なほうだし、様子見ちゃったり。面倒くさがりで、ものぐさで「いいや、今度にしよう」みたいにすぐなっちゃうので。戒めで、これは僕は自分に課す言葉ですね。

鈴木:「敢えての」ということですよね。

吉田:「そういうタイプ」というワケじゃなくて。ちょっと行ってみたいとか、ちょっと食べてみたいと思った時に、パッと動けるように。もともとこういうのが得意じゃないから、それができるように自分に準備をいっぱいしてあげようというのが、この『アンテナ力』で書いた準備の仕方なんですけど。

仕事と人生がうまく回り出すアンテナ力: 人、情報、チャンスが集まる仕組み (単行本)

今日も久々に下北沢に来ましたけど。下北沢での「好奇心の初速」を上げるために「Evernote」にいろいろ下北沢で過去に気になったことを、メモ魔で何とか解決するという感じで。

鈴木:真面目!

吉田:自分を信用していないからね。

鈴木:これは本当に参考になりますね。

吉田:「下北沢」で検索すると「鶏そば そると」って、すぐ出てくるワケですよ。

鈴木:はい、はい。

吉田:じゃあちょっと、そると食ってから行こうと。うまかったですね(笑)とかね。それがないと、ボケーッと行って「ああ、ちょっと早く着いちゃったな。でも終わった後だと夕飯食えるお店、全部閉まっているしな。どうしようかな。うーん、マクドでいいか」みたいな。別にマクドを否定したいワケじゃないけど。

鈴木:(笑)。

吉田:そういう時に、僕は勘だけで「あ、なんかここおもしろそう」といって入れるタイプでは(ない)、そういうの得意じゃないと自分でわかっているので。そういう自分の扱い方として、技というか道具をわりと使って。でも、この言葉を大事に。

結局、面倒でもおっくうでも、行ってみると楽しかったりするというのがあるので。その乗り越え方だな、なんて思っています。

鈴木:すごくいいですよね。好奇心ってとても感覚的で、動物的なものだと思われているけど。「好奇心を何とか上げて、発揮させてやろう」という意図の元にメモするみたいな。

吉田:そうですね。

鈴木:ガリ勉メソッドじゃないですか。

吉田:いやあ(笑)。そうですね。ガリ勉メソッドですね。

鈴木:真面目にコツコツと。言ったら、努力ですよね。

自分の乗せ方、自分の上げ方、自分のその気にさせ方

吉田:僕の尊敬する同世代に(ANZEN漫才の)みやぞん。同期というか、タメなんですけど(笑)。

鈴木:(笑)。

吉田:知り合いではないんですけど、みやぞんがロケとかで大変な目に遭っている時に「自分の機嫌は自分で取る」と言っていて。超名言だと思ってメモったんですけど、僕はそれをやっている感じですね。

やはり彼が言いたいのは、機嫌が悪いとか気が向かないとか、それは尊重したほうがいい気持ちかもしれないし、さっきの「いったん寝ろ」という状態のアラートかもしれないですけど。ただただダラダラしちゃうみたいな(笑)。そういう時は、やはり“自分の乗せ方”というんですかね。自分の乗せ方、自分の上げ方、自分のその気にさせ方みたいな。

鈴木;そうですね。

吉田:ことはやっているかもしれないですね。

鈴木:結局は“神降り待ち”みたいなところがあるかもしれないけど、その「好奇心とかやる気の神が降りてくるための祭壇を綺麗に」みたいなことは、コツコツやって磨いたりしているという。

吉田:お待ちしております。いつ降臨いただいても、お迎えする準備はできていますというね。

鈴木:そういうことですよね。工夫のし甲斐があるということで。

吉田:そうなんですよね。

「好奇心は『やったことあること』の先にしかない」

鈴木:僕、まーさん(吉田氏)が言ったやつで今でも覚えているのが「好奇心は『やったことあること』の先にしかない」ということ。これは本当に名言だなと思っていて。

吉田:そうなんですよね。

鈴木:経験がないことに興味って、持ちようがないんですよね。読んでもいない、思いつきもしないものに興味持ちようがないんだけど。やったことの半歩先にあったり、カスッていたりする領域に、初めて「興味を持ちうる可能性」が出てくるということだから。やはり(新しいものを)めくり続けるということ、探索のコストを取り続けるということが、打開のためには必要なコストにはなってくるんだろうなと思うんですよね。

吉田:僕、学生の時バンドやっていたので、未だに音楽は聴くんですけど。Spotifyのビックデータの結果かなんかだったと思うんですけど「人間って35才を超えると、それまで聴いてこなかった音楽のジャンルを探索する率がめちゃ減る」という。

鈴木:ああ!

吉田:要は、その人にとっての懐メロに閉じこもって、(35才になった)とたんに開拓しなくなるらしくて(笑)。

鈴木:閉じていこうというやつですよね。よくキャリアで言われるような「30代まで広げて、そこからは収束していこう」みたいなところにも、あるのかもしれないですけどね。

吉田:音楽なんて、別に食べ物よりもダメージ少ないじゃないですか。食べたことない新しいもの食べて大変な目に遭うよりも「ちょっと耳がうるさかった」ぐらいの探索コストしかないにも関わらず、Spotifyを見ていると、結局、いつも東京事変に行ってしまう。

鈴木:(笑)。

吉田:「やはり間違いないな、東京事変は」みたいな感じで(笑)。「また奴は東京事変に帰っていった」みたいな。東京事変はいいバンドですけど、そういうことってすごくあるなぁなんて思って。

なので「めくる気持ちのコストだけでも、初速をあげる」というのは、僕はそういう意味で言っているので。どうしたらいいか? なんて話もちょっとしたいなと思っています。

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