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「すべての牛をインターネットに」 牛群管理アプリFarmnoteが示す、IT×農業の未来

牧場の生産性を支援するアプリ「Farmnote」で、スタートアップ界の登竜門「Launch Pad」の第3位に輝いた、株式会社ファームノート代表・小林晋也氏が登場。受賞後に行われた入賞者インタビューでは、優勝を逃した悔しい思いと、自らのプレゼンテーションを振り返りました。(IVS 2014 Fallより)

牛群管理スマートフォンアプリ「Farmnote(ファームノート)」

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):3位に入賞されましたファームノートの小林さんです。まずは、おめでとうございます。

小林晋也氏(以下、小林):ありがとうございます。

佐俣:拍手ありがとうございます。率直な今のお気持ちを教えてください。

小林:99%悔しいだけですね。

佐俣:おっ! なるほど。1位を取れなかったことが悔しいんですね。

小林:そうですね。

佐俣:1位を取りに?

小林:それしか考えてなかったんです。この事業自体がなかなか人に理解してもらいづらい。特に農業はどう成り立っているのか、そこを伝えるのが相当難しいなとは思ったんですが、それをやってこそ男だろうと思いやってみたんですが、ちょっと力及ばず……。

佐俣:すごいですよ。みんなインターネットの起業家の方なので、正直純粋なインターネットサービスのほうがやっぱりパッとわかるじゃないですか。

でも途中から牛のスライドの連続にぐいぐい引き込まれていくのが、僕も見ていて空気でわかったので、やっぱりすごいなと。

小林:ありがとうございます。

佐俣:改めて小林さんの自己紹介とファームノートの事業の概要を簡単にいただいてもいいですか。

小林:私自身は北海道の帯広市出身でして、祖父の代まで両親とも農家だったのですけども離農して北海道帯広市というところに引っ越して、僕が帯広で生まれた。それから機械の商社に入りまして、全然関係ないべアリングとかですね(笑)。

佐俣:牛もインターネットも関係ない?

小林:全然関係のない機械を売る仕事をやっていたんです。それから2004年に株式会社スカイアークというITベンチャーを帯広で立ち上げまして、それはどちらかというとBtoB向けのWebのインテグレーションみたいな形の会社でしたので、なかなか地元帯広で仕事というよりは、ほとんどのお客様が東京でした。

ですので、実際本社が帯広にありながらも、東京に10年出て行ってやっていたのが現状です。去年の11月に株式会社ファームノートを改めて立ち上げまして。

それも結局、自分たちの持っているWebやITの技術というのが、地元のためにならないんじゃないかと今までずっと思っていたのですけど。

意外にもたまたま牧場の人から何件かお問い合わせをいただいて、現場を見せていただいたら、なんてやりづらい仕事の環境なんだろうなと率直に、失礼ながら思いまして……。

農業ITに感じた可能性

佐俣:じゃあ、きっかけは本当に農場を見て、現場を見てやらなきゃと思ったんですね。

小林:そうですね。それで我々の技術というのが、ここで役に立つじゃないかと思ったのが、ちょうど去年の7月位だったんです。それから寝ても覚めても牛を調べてみようということで。

この業界1つすごく良いのが、ほとんどデータ化されているんです。何もかも。市場の規模だとか出荷高だとか、あとは牛の生産性を見るための数値だとか。

そういうのを全部見て、このビジネスに市場性があるのかというのをひたすら1、2ヵ月位そればっかりやっていて、8月位にいきなり事業計画を書いたんです。

わからないまま。そのまま牧場の方にお伺いしたら、これはやるべきだと皆さんに言っていただいたので、11月に会社を作ったというのが現状です。

佐俣:なるほど。去年の11月に作って、ほぼ1年経って、何でLaunch Padに出場しようと思われたのですか。

小林:私も10年IT企業経営していてIVSは知っていましたし、特に札幌で開催されるときは、知り合いの社長とかが「北海道で飲もう!」みたいな感じで、IVSはこういうイベントなんだっていうことをいろいろ聞いていましたから。

そこでスタートアップの登竜門みたいなイメージがあったので、ここは「挑戦しなきゃ!」ということで申し込んだ形です。

課題はプレゼンの見せ方

佐俣:なるほど。今回、予選会が大接戦だったんですけれども、結構いろいろフィードバックをもらったと思うんですよね。IVPの田中さんとか小野さんとかアドバイスされていると思うんですが、どういうアドバイスいただいたのですか?

小林:事業の内容自体のアドバイスというよりは、プレゼンの流れ、要は6分の中で何を伝えなきゃいけないんだ、というところの優先順位というのが正直自分ではわかっていなくて。

それでぶつけていったら、1番重要であるプロダクトを早くしたほうが良い、前座が長すぎるということなのですけど(笑)。

佐俣:つまり酪農の問題みたいなところですか?

小林:そうです。問題点を言い過ぎた。

佐俣:なるほど。

小林:問題を言うことはよかったと思うんですけれども、確かになと。今まで自分自身でプレゼンの順番をそんなに考えたことなかったんですけれど。

流れですね。順番というか、課題から繋げていくということは考えるんですが、なかなかそこを短くするという考え方はあまりなかったんですよ。

佐俣:捨てていくって難しいですからね。

小林:これに気づいて、僕自身は昔からプレゼンはずっと写真でするやり方が定着していたんですけれど。

6分で写真だけでは無理だなということも、やっぱり動画とかあったほうがいいよということをアドバイスいただいて、かなり動きのある、短時間でイメージを伝えられるものは出来たんじゃないかなと。

佐俣:6分間で伝えなきゃいけないことがあまりにも多い中で、削って削って確かに刺さるものがあった。その結果があって、多分入賞になったと。

小林:ありがとうございます。

佐俣:おめでとうございます。じゃあ実際に審査通って、昨日京都入り?

小林:そうですね。

佐俣:IVSの会場着くじゃないですか。そういう意味では純粋に初参加ということですね。

小林:はい。

優勝しか頭になかった

佐俣:会場に来たときどんな気持ちでしたか?

小林:実は、何も感じないで帰りました。そのまま。むしろどこに意識があったかというと、優勝しか意識がなかった。

会場で受け付けをして、ちょっとふらふらしてみて、だめだ、と。その後パーティーがあったと思うんですけれど、パーティーに出るか出ないか悩んで。

ビジネスを進めるならパーティーに出たほうがいいかなと思ったんですが、それじゃない、と思って急いでホテルに帰りまして(笑)。

佐俣:これはストイックさの鏡ですね。

小林:いやいや(笑)。

佐俣:交流している場合じゃないと。

小林:そうです。

佐俣:優勝だと。

小林:それで行ったので、今日は交流しかないかなと思ってます(笑)。

佐俣:なるほど。この後は交流し放題ですね。

小林:そうですね。

佐俣:今日、先程これで2時間位前ですかね? プレゼンされたのが。プレゼンしたときは、どういうお気持ちでした?

小林:全然関係ないですけど、プレゼンするときは前のモニターを見て何が写っているかが見えるじゃないですか。

佐俣:見えますね。

小林:僕の立ち位置が悪くて見えない(笑)。

佐保:なるほど(笑)。

小林:どうしよう、左上向こうか、でも左上向いてプレゼンしたらダッセーよなとか、そんなことをずっと思っていました(笑)。

佐俣:自分はしゃべっているのだけど、遠くの意識で「これ立ち位置おかしいな」とか?

小林:どうしようかなとか。むしろそこもどう見せるかしか考えていなくてですね。

佐俣:多分、練習しきっているので体が反応して動いちゃうんですね。

小林:そうですね、もう勝手に。

佐俣:でもやっぱり入賞される方は、大体そこまでやりきっているので、ボクサーが意識失っても殴り続けるみたいな。

小林:(笑)。

佐俣:多分それぐらいの状態なんですよね。

小林:多分そうだと思いますね。

内容を伝えきれなかった悔しさ

佐俣:すごいな。プレゼン終えて3位と言われたときは、気持ち的には?

小林:ショックでしたね。

佐俣:「なんでだよ」みたいな? 「まだ呼ぶなよ」?

小林:まだ呼ぶなという感じは、そこまで言うとちょっとおこがましいと思うんです。そこまでは思っていなかったんですけれども、呼ばれたときに、やっぱり自分の一番気にしていたところが、多分伝わらなかったのかなと思ったんです。

なかなか身近じゃないものを伝えることがすごく難しいとさっき話しましたけど、そこが一番引っかかっていたんです。

プレゼンの出来とか綺麗さとかはうまくいくんじゃないかなと思ったんですけれど、一番重要である「おっ、このビジネス伸びるんじゃないか!」ということが一番伝わらなきゃいけないと思うんですけど、それができなかったのかなと、聞いた瞬間に思ったんですね。

佐俣:なるほど。

小林:結局悔しかったのが、自分自身が引っかかっていることがあって、この場に出てしまったことがすごい気になっていて、「あー、やっぱりか」と思ったんですね。

佐俣:ここからリベンジというか。正直僕も全然酪農のことわからなかったんですけれど、今回まず圧倒的に知名度が上がるじゃないですか。

一気に知名度上がって、ここからこの後、会場で交流とか名刺交換とか沢山来ると思うんですけど、今回のLaunch Padの出場と入賞を通じて、どういう事業に未来が見えてきたと?

小林:自分の困っているときに助けてくれる人が出てくる環境は、人と人が繋がっていくということが重要だと思うのですけど、僕自身、実は10年間の一番の反省が、一匹狼で会社を大きくしようみたいな。

自分が先頭にみたいな思いがすごく強かったんですけれど、今回ファームノートの事業を始めて、それこそ今回プレゼンの写真とか動画とか、牧場の方に協力していただいていますし、そうやって沢山関わってくれている人。

助けてもらうということが重要だっていうのは、ファームノートの事業をやって特に思ったところだったので、今回こうやって名前を少し出させていただける、そしていろんな方と交流をして、この事業を動かしていければなというのは感じました。

佐俣:なるほど。そういう意味では嬉しさ喜びみたいなものを伝えたいのは、そういう方ですかね。

小林:そうですね。応援していただけたので。自分自身には納得してないですけれど、結果としてはご協力いただいた皆さんには少しお返しできたかなと。

佐俣:最後にそういう皆さん、に生放送で映るので、カメラ目線でメッセージをいただいてもいいですか。

小林:農業自身をどうしていこうというところは、いま農業の現場の若手の方々で真剣に考えてトライされている方が沢山いらっしゃるんですけれど、そこの力になれるものっていうのは、新しいイノベーションがなかなか生まれてきていないというのが現状だと思います。

手前味噌かもしれませんが、いま農業ITと呼ばれているもので、我々のように農家さんの側に寄り添い、何が課題かということと、我々が持っている最先端の技術がどう交わってお客さんのところに貢献していくかということが、なかなかまだ出来ていないのではないかと思います。

一番重要である食の仕事をしているという自負もありますので、我々みたいな会社があるのだということを知っていただいてご協力もいただきたいですし、一緒にチャレンジする人もどんどん増えてきたら、僕らは嬉しいかなと思います。

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