サイボウズ株式会社が主催する「Cybozu Days 2024」。同イベントでは、全国の
kintoneユーザーの中から選ばれたファイナリストたちが活用事例を発表する「kintone hive tokyo vol.20/kintone AWARD」が行われました。本記事では、桜和設備株式会社の清水敦氏が、Excelモンスターとの戦いやカルチャーの変化、kintoneで全部門の業務の効率化・デジタル化の実現までのさまざまな工夫を明かしました。
ガス工事の現場管理一筋40年のキャリアに訪れた「転機」
清水敦氏(以下、清水):ついに始まりました、トップバッターです。桜和設備の清水と申します。よろしくお願いいたします。
自己紹介です。清水敦、62歳です。名古屋からやってまいりました。私の職歴は、ガス工事の現場管理一筋で、40年行ってきております。kintoneと出会うまでは、システム開発などの経験はございませんでした。
プライベートです。千葉県は浦安市によく出かけております。今年の7月に新しくできたファンタジースプリングスホテルに宿泊いたしまして、新しいエリアを満喫してまいりました。最高でした。
会社紹介です。桜和設備株式会社と申します。私どもは都市ガスのガス設備配管工事や、ガス機器の販売・設置などを行っております。
では「ひょんなことから始まる夢物語」、まずは現在の当社のkintoneの状況からご覧いただきます。このように全社に全部門でkintoneを配備いたしまして、さまざまな業務でkintoneを利用し効率化・デジタル化することができました。
大先輩のやり方を変えない空気と、モンスター化したExcel
清水:では、4年前。kintoneを導入する前に時を戻してまいります。そこには、昭和からずっと同じやり方をやっている社内業務がたくさんありました。
紙だらけです、手書きがいっぱいあります。パソコンはほぼExcelのみです。紙とExcelですので、まったく情報共有されません。
あちこちで同じような仕事や重複作業を山のようにやっておりました。時は令和2年でございましたけども、私どもの会社では、昭和94年を迎えておりました。
昭和から脱却できない理由その1、「大先輩から教わった仕事のやり方は変えてはいけない」という空気が流れております。誰も変えようとしません、昭和のままです。
そしてもう1つが、Exceler(エクセラー)と言われる人たちの存在。Excelerというのは、Excelをどんどん自分勝手に変えてしまい複雑化していき、モンスター化させて、自分でしかわからない方法で仕事をしている。いわゆる属人化を加速させている人たちの存在でありました。
kintoneで壊れたExcelをアプリ化
清水:そんな昭和な日々が続いていたある日、ある時、あるひょんな出来事が起きます。そのExcelerが使っていたモンスターExcelがついに崩壊いたします。使えなくなりました。
そこに偶然居合わせた富士フイルムさん。「なんとかなりませんか」と相談したところ、「kintoneでこのExcelを再現できますよ」と。
「じゃあ、すぐそれを持ってきてください」と、この壊れたExcelをアプリ化するということで、私たちのkintoneの歴史がスタートいたします。
それを見ていた私。kintoneというものがやってきた。あの壊れたモンスターExcelを再現してサクサク動いている。そんなものを使わない手はないということで、経営層を説得しまして、まずはガス事業部内でのkintoneの採用が決定しました。
そして富士フイルムさんにお願いし、7つの業務をアプリ化するということで作業が進んでいきました。
すると、あの人たちがザワつきだします。「kintoneなんてやめてください」「そういうものは会社に合いません」「失敗しますよ」「どうせ無理でしょ」と、こんな言葉が飛んできます。
そしてあのExcelerたち。Excelが壊れてkintoneを入れているというのに、「僕たちはまだExcelを使う」と言い張ります。でも、この人たちを巻き込んでいかないと、昭和からの脱却はできないのです。
業務アプリにデータを入力する「入口は一つ作戦」
清水:そこで考えたのがこちら、「入口は一つ作戦」。こちらはそれぞれの業務アプリにデータを入力する際に、まず入口となるアプリを作りまして、そこに共通するデータを入力いたします。
そこからアクション機能、ルックアップ機能を使い、それぞれの業務アプリにデータを流し込んでいく。それで全体でアプリが連携し、ネットワークとしてうまく稼働するだろうという考えで、このかたちをとりました。
出来上がった入口のアプリがこちらです。このように各業務アプリの関連レコード一覧を並べて配置をいたします。
そうすることによって、この画面から「この現場で今何が起きている・できていない」「いつやっている」「誰がやっている」「いくらでやっている」などなど、現場のストーリーが見えてくるようになります。
そしていよいよ、業務アプリが完成してきます。紙とExcelでは想像ができなかったkintoneの世界を、彼らは目の当たりにします。
そして触っていきます。操作をしていきます。彼らからこんな声が聞こえてきました。「これは便利」「使えそうだ」と、前向きな言葉をいただくことができました。
社員みんなの心をつかんだ「夢のシステム」
清水:それよりも彼らの心をつかんだのが「仲間と仕事でつながれる」。業務そのものを仲間とシェアできる、共同で仕事ができるというkintoneの特徴を、彼らは理解してくれました。
それによって抵抗していた人も含めて、kintoneをみんなが受け入れてくれるということができまして、「入口は一つ作戦」、大成功ということでございます。
実はこの形、ある場所と同じ構造になっておりました。そうです、私がよく行くあの夢の国と同じ構造です。入口は1つです。そして今日、この会場、同じ形。入口1つです。私は今、お城の下に立っております。
そして、これにちなみまして、この私たちの夢のシステムをこう呼ぶことにいたしました。「桜和設備ノーコードランド」。
(会場拍手)
ありがとうございます。この時点で私たちはkintoneの本質を理解いたします。ノーコードで、専門的な知識がなくてもアプリが作れる。
「じゃあどんどん作っちゃえ」と、もう富士フイルムさんにお願いしなくてもできるんだということで、少しずつスキルを積み重ねながら内製化を実現できました。
お問い合わせフォームもデジタル化
清水:そして4年が経過いたしました、今現在。私たちのノーコードランドは、全社に展開をいたしまして、このようなかたちになりました。いかがでしょうか。なぜか入口が1つ増えてます。
ここで少しお話を変えたいと思います。私たちは、日々たくさんのお客さま、いわゆるゲストをお迎えしております。
さまざまなお問い合わせをいただいているんですけども、それを24時間自動で、デジタルフォームを使って受け付ける。その仕組みを作ろうということで、トヨクモさんのFormBridgeを採用いたしました。
これも自分たちで設定を行い、その仕組みを作り、運用を開始することができ、お客さまに喜んでいただくことができました。
実はこれ、キャストである我々従業員、特にkintoneユーザーを持たない現場の職人のような社員からの紙の社内申請や報告を、デジタル化することができたわけであります。
社員のプライバシーを守ったkintone
清水:その一例をご紹介いたします。今私が着ているユニフォームですけれども、年に2回社員に支給しております。
これ(ユニフォームの支給希望)を募集する時、昭和から当然紙です。ずらっと名前が書いてあるところに自分の希望する品のサイズを記入して、順番に回覧して回していく。そして、最後は担当者が手で集計。
これをFormBridgeに置き換えることによって、社員はスマートフォンを開き、所定の項目を入力し、自分の希望する品とサイズを選択し送信します。すると一覧表が自動的に出来上がり、集計も自動でできます。「すごく便利ですね、いいですね」と大好評でありました。
すると、ある社員からこんな声が寄せられます。「紙回覧の時は、自分の服のサイズを記入するのに、とても抵抗があったんです。でもkintoneになって安心することができました」。
この声を聞いて、私たちは初めて今までとんでもないことをやっていたと気づきました。体の、服のサイズを書かせて回覧している。
でも、私たちは昭和からずっとこのやり方をやってきたので、誰も(問題に)気づきませんでした。kintoneが気づかせてくれました。従業員のプライバシーを守ってくれました。そんな事例でございます。
難病の社員もkintoneの知識を活かして活躍
清水:続きまして、また従業員のお話になります。4年前にkintoneを導入した時から、彼は私と一緒にあのExcelerと戦い、kintotneの定着に非常に尽力してくれた仲間の1人です。
しかし、彼は3年ほど前に難病を発症してしまいます。視力がどんどん落ちていきました。そして、ついにはパソコンの画面も認識できなくなるまで視力が落ちてしまいます。
でも、彼はここから這い上がってきます。スクリーンリーダーと言われる、パソコンの情報を音で取得することによって、彼はパソコンを操作する技術を身につけました。kintoneの知識も大変豊富です。
そして何より最もすごいのは、彼はkintoneの中の情報を逐一耳だけで調べ回っていきます。彼は、誰も気づかないようなちょっとした変化なども見逃しません。
そうすることによって、放置していたら大きなリスク・トラブルに発展しそうな事案を回避します。彼は数々のファインプレーを見せてくれております。彼こそが、我々ノーコードランドのメインキャストという立場でございます。
そしてある日、彼は私にこんな話をしてくれました。「僕はkintoneに助けられました。もしkintoneがなかったら、この会社でkintoneが幅広く採用されていなかったら、僕はこの会社に残れなかったと思う。kintoneのおかげで、自分の活躍する場所を見つけることができました」。そう語ってくれました。
そして今日この会場に、kintoneの開発に関わっている事業者のみなさま、たくさんお見えかと思います。どうか彼のような人をはじめとするすべての人たちに優しく、そして夢と希望あふれるkintoneの開発を進めていただきますことを、お願い申し上げる次第でございます。
最後です。夢の国を作ったウォルトさんの名言、「夢の国は永遠に完成しない」。「成長し続けるのだ」というこの言葉を、私たちのkintoneに置き換えて、最後のメッセージとさせていただきます。
kintoneで作った夢のシステム・アプリは永遠に完成しない。想像力を活かし、常に古いものを改良し続けていく。環境の変化とともに形を変えていけるのがkintoneであります。ありがとうございました。
(会場拍手)
パートナーへの委託から自力でアプリを作れるように
司会者:ありがとうございました。ではさっそく質問をさせていただければと思います。
本当にたくさんのアプリが御社の中で生まれていたかと思うんですが、もともとはパートナーさんに構築を依頼されていました。そこから自分たちでアプリを作っていく流れになった、大きなきっかけはおありになったんでしょうか。
清水:まずは富士フイルムさんにお願いしなくていいということは、お金がかからないんですよね。ですから「もう自分たちでやっちゃえ」ということで。
特にExcelでやっている仕事をkintoneに置き換えるのが基本なので、いろんな人のところに行って、Excelを開いていたら「何やってるの?」みたいな(感じで聞くんです)。それで「これをkintoneに置き換えようよ」というノリでやっていったら、たくさんのアプリが出来上がったというかたちです。
司会者:地道な声かけと、あとは実績ももちろんおありだったというところなんですね。ありがとうございます。「kintoneノーコードランド」はいつからご存知だったんですか?
清水:(今年のCybozu Daysのテーマが「東京ノーコードランド」だと)発表されて、まさかまさかでした(笑)。
司会者:なんという、奇跡の一致ですね(笑)。
清水:まさかのこのかたち、というので驚きました(笑)。
司会者:(笑)。ありがとうございます。清水さんのご登壇、以上となります。ありがとうございました。
清水:ありがとうございました。
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