
2025.02.26
10年前とここまで違う 落とし穴だらけの“ERP to ERP”基幹システム刷新が抱えるリスクと実情
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鈴木一成氏:もう1つのPMにとっての悩みは、時間がない中でどうやって良いドキュメントを速く書くか、ということだと思うんです。
PMだと日々いろんな仕事があるので、たぶん自分の3割ぐらいの時間の中でこういうドキュメントを書かないといけない。その中で、どうやって時間を見つけてやるかということで、ここに「7つのステップ」とあるんですが、お伝えしたかったのは「書くことにもプロセスがある」ということです。
例えばコーディング。エンジニアに関してもコーディングは仕事の一部だけであって、その前にはいろんなプランニングと、最後にQA、品質保証やバグの対応といったものがあるように、書くことにもプロセスがあるということです。ここでは、個人的に私が大事にしている7つのステップを紹介したいと思います。
1つ目です。「個別レビューを設定する」とあるんですが、言い方を変えると「早く書いて早くフィードバックをもらう」です。まずは読み手を個人名で意識した資料にすることで、読み手の関心事を踏まえた資料にしやすくなる。
また、紙に落とすと人は急に真剣になるという傾向もあります。やはりこれは、人が話しながら考えられることには限りがあるからだと思うんです。
あとは、人の意見を完全に予見するのは難しいので、とりあえず60点のドキュメントで議論することで、お互いの時間をムダにせずに済むかなと思います。
おすすめのやり方としては、フィードバックをもらう時に効果が高いのは、議論の領域に詳しい人と、議論の領域をまったく知らない人。この2種類の方々にフィードバックをもらうことで、前者は自分の思考の欠陥を指摘してくれて、後者は自分の表現を改善するヒントをくれます。
次です。レビューの日時が設定できたら、次は論点・仮説を考えながら材料を集めます。例えば「○○市場への参入をすべきか否か」という論点があったら、それをここにあるようなサブ論点にいくつか分けて仮説を考えますよね。
仮説を考えると、自ずと必要な成果物のイメージも湧いてくるので、そこでどんな材料が必要なのかがわかって、場合によっては誰の協力が必要かもクリアになります。例えばデザイナーの協力が必要とか、財務の協力が必要という場合は、その時点で必要な材料を仕込むことができます。
3つ目です。これは個人的な私のおすすめなんですが、書き始める時になんでもかんでもうまくやろうとすると筆が進まなくなっちゃうので、難しく考えずにとりあえず書き殴る、書き始める。そうすることで、いくらかの達成感を得ることができるのかなと思います。
この時に、特にデータとかを参照せずに「XX」「YY」とか仮の数字を入れて、言いたいメッセージに集中すると、さらに効率が上がるかなと思います。
4つ目が「構造を整える」です。先ほどお伝えしたようなSCQAやピラミッド構造、それから意思決定の基準の明確化。そういったものを通じて構造を明確にします。
5つ目は、ここまで来たらそれぞれのアイデアを文章に落とし込む。気に入らない文章や表現で詰まったら、とりあえずそれをハイライトするなどして一度置いておくと、詰まらずに前に進めていいのかなと思います。
6つ目は、容赦なく削る。「一言一句自問する」とあるんですが、ここはけっこう大事です。上手に添削できるか否かでドキュメントの質は大きく変わるので、ここに時間を投入するのは非常に大事です。
例えば、あいまいな表現を避けて数字で語る。それから文章はできるだけ短く、切れるなら切る。あとは、ムダな言葉はすべて削る。その文字を消しても意味が伝わるなら、それは要らない。そして専門用語は避けて、使う必要があるものはきちんと辞典をつける。最後に、素人でもわかるか想像するということです。
こういったことをきちんと怠らずにやることによって、ドキュメントの質はかなり磨きがかかって、大きく変わると思います。
最後に、いろんな添付資料です。先ほどの論点・仮説のところにあったような成果物でドキュメントに加えるべき資料を添付すると、ビジュアルにも説明がつく資料となります。
最後です。手短に、PMが書く最も価値が出る3種類のドキュメントについて触れたいと思います。
1つ目は提案書です。Amazonではこれを「PRFAQ」「プレスリリースとよくある質問」と呼んでいます。左側にあるような「5つの顧客の質問」は、顧客は誰で、彼らの問題は何で、解決策は何か、なぜこの方法が正しいのか。あとは、どんな顧客体験を提供して、どうやって成功を定義・測定するのか。
こういうものに答えた上で、それをプレスリリースにすることによって、顧客視点に立って未来のローンチを想像する。ローンチした時の顧客のメリットだったり、その時に感じることを社内で擦り合わせることができるツールです。詳しくは私のWebサイトに記事があるので、そちらを見ていただければと思います。
それから2つ目がプロダクト戦略です。ビジョンを実現するプロダクト戦略なんですが、これはなかなか容易ではなくて。よくある失敗として既存の延長線上に過ぎなかったり、取り組みが多過ぎて結局できなかったり、日々の活動と紐づいてなかったりといった問題があります。
良いプロダクト戦略というのは、超長期を見据えた上で、今年・今週注力すべきことを明確にしてくれるものである必要があります。例えば構成例として、右にあるようなところをきちんと書くと、大きなビジョンから「今日、何をすべきか」までがきちんとつながる資料になるのかなと思います。こちらも、よろしければ私のWebサイトの記事をご覧ください。
最後がエスカレーションです。「他のチームと行き詰まったら、PMが上手に上層部を巻き込もう」とあるんですが、複数チームが関わると対立が起きることは多々あるかと思います。
変なことではなくて、プロジェクトの方向性について意見が割れているとか、キャパ不足で必要な協力が得られないとか。そういった場面で、PMは最も全チームの視点が見える立場にいるので、そういう時に上層部を上手に巻き込めると価値が出るのかなと思います。
エスカレーション資料の構成例に関しては右側にあるような内容になるんですが、こちらもよろしければ記事をご覧いただければと思います。
最後に書いたんですが、Yコンビネーターの共同創業者のポール・グレアムさんの言葉をシェアして終わりたいと思います。彼は「あと20年ぐらいで、文章力のある人がほとんどいなくなってしまう」と言っているんですね。AIに頼れるようになって、AIでまあまあの文章が書けてしまうから。
でも、冒頭でお伝えしたように、書くことは考えるために最も大事なスキルだとすると、特にチームの成功に責任を持つ我々PMたちは、書くスキル・考えるスキルを磨いていかないといけないと思います。
今日お伝えしたコツやステップも参考に、今後みなさんと書く技術・考える技術を高めていければ幸いです。今日はどうもありがとうございました。
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