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山本一太の直滑降ストリーム@Cafesta ゲスト:礒﨑敦仁 慶應義塾大学准教授(全5記事)

「金正恩は“わざと”太っている?」山本一太氏と北朝鮮ツウの礒﨑氏が半島事情について議論

自民党のトーク番組「CafeSta」内のコーナー、「山本一太の直滑降ストリーム」。今回は、慶應義塾大学准教授の礒﨑敦仁 氏が登場。本パートでは、北朝鮮の事情に精通する礒﨑氏と山本氏が朝鮮半島の問題について議論しました。

朝鮮問題に詳しい礒﨑氏が登場

山本一太氏(以下、山本):いろいろイシューを絞ってしていこうと思うんですが、その中でひとつ参考にしたい本がですね、ちょっとありますかね、これなんですよね。

2003年に書かれた本でもちろん礒﨑先生もご存じだと思うんですが、タイトル『ウォー・シミュレイション 北朝鮮が暴発する日』。東京グランドゼロ、ウォーシミュレイション。北朝鮮が暴発する日ってことで。

当時、経済庁の研究所のリサーチャーだったマイケル・ユー、韓国の研究者だと思います。それとヘリテージ財団の研究員だと思いますけど、デクスター・イングラムさん。

この2人が共著で書いたウォー・シミュレイションが(発売されたのが)10数年前とはいえ、非常に説得力をまだ持つんで、改めてやりたいと思います。

もうせっかく先生に来ていただいたんで。時間なので、ここで一気に朝鮮半島問題に突っこんでいきたいと思います。それではご紹介したいと思います。慶應義塾大学准教授の礒﨑敦仁先生です。どうぞ。

(会場拍手)

礒﨑敦仁氏(以下、礒﨑):よろしくお願いします。

山本:先生、急にお招きして、ホントにすいません。歌を歌ったりして大騒ぎして、なんつー番組だと思っていらっしゃると思いますが。

礒﨑:直接電話いただいたので、ちょっと驚きました。

山本:申し訳ありません。

礒﨑:直々だったものでお断りできない、しづらい感じでしたね。

山本:申し訳ありません。やっぱり(断り)づらかったんだ(笑)。

礒﨑:いやいやいや、そういうことではないんですが。

山本:今日は先生の北朝鮮の本もね、実は読ませていただいて。

礒﨑:ありがとうございます。

先生はかなりの北朝鮮ツウ

山本:こんなに北朝鮮のことをよく知っている方がいるのかと思ったんですけど。先生はソウル大学博士課程にいかれてるんですね。

礒﨑:これ途中でやめてしまってますけど、ソウルにいまして。そのあと外務省の専門調査員で北京に三年間(にいました)。

山本:北京にもいて、すごいなあ。

礒﨑:ちょうど小泉総理の訪朝があった時期ですね。実はそのあと2015年から今年(2017年)の3月まではワシントンD.C.に2年間いたっていう。

山本:じゃあアメリカの見方、中国の見方、韓国の見方、北朝鮮の見方。全体を俯瞰してみられるということですね。

礒﨑:本当は北朝鮮に行って、北朝鮮でそれがわかれば、それに一番越したことはないんですけども。

北朝鮮に行くのは非常に足かせになると申しますか、北朝鮮に行ったからといって政治がわかるわけではないです。ですから、周りから攻めざるをえなかったんですね。

山本:なるほど、なるほど。噂に聞いたところによると、礒﨑先生はかなり若いときから平壌放送を聞いていたという噂なんですけど。

礒﨑:それ、そういう方多いですね。最近、そういう学生さんが多いですけれども。

山本:けっこう平壌放送聞いている人多いんですか?

礒﨑:そうですね。平壌放送とか、牡丹峰(モランボン)楽団が好きだとか。

山本:えー! マニアの世界ですか?

礒﨑:そうですね、朝鮮クラスだとかいったりしているらしいです。私が本当に関心を持ったのは中学生に入ってからですね。

中学生の時は周りがスポーツやっていたり、なにか別のことに興味があるときに、1人で朝鮮中央放送を聞いてましたので。

山本:みんながスポーツやっているときに、先生は朝鮮中央放送を聞いていた。あれ? 朝鮮語? 

礒﨑:日本語ですね。

山本:あっ、日本語のも。

礒﨑:対外宣伝のために各国これやっていますので。

山本:そうですね。日本語放送もありましたもんね。

礒﨑:今はインターネットもありますから、そういう趣味を持っている人同士でつながりができるんですけども、当時はけっこう寂しいというか1人で(いました)。あまり面白い少年時代ではなかったかもしれないですね。

山本:あっ、なるほど。すっげー面白い(笑)。みなさん、北朝鮮問題じゃなくて先生の半生を語っていただきました。30分ほしいところですけども。あっでもモランボンとか、平壌放送とか好きな人たちのグループがあるんですね。

礒﨑:今はそうですね。今はインターネットでつながりができやすいんだと思います。

山本:「モランボンはここがいい」みたいな。

礒﨑:好きというか、関心がある。という言い方の方が語弊がないと思うんですけど。

山本:すみません、あまりに面白すぎるんですけど、そこにいっちゃうとそれで終わっちゃうので。

金正恩の人物像は一体

今日いろいろお聞きしたいことが山ほどあるんですが。北朝鮮問題が日本の安全保障における最大の懸案であるということは、言を待たない。

トランプ大統領も「最大の優先事項だ」と言っているわけなんですが。我々がいつも思うのは、金正恩委員長はどういう人物なのか? 

実は金正恩をとりまく体制っていうものはどういうものなのか? 先般、武貞秀士教授にもここに来ていただいて(話を聞きました)。

金正恩委員長の話をちょっとしたら「『金正恩はパラノイア(注:偏執病)だ』というのはとんでもない話だ」と。

「そう言った瞬間に、医学の世界の話になってしまう」と。「そこは非常に戦略的な人物だ」と。この不思議な髪形をした方を、先生はどう(見てらっしゃいますか)?

礒﨑:せっかく私どもの本を褒めてくださったんですが、わからないんですよ。わからないなりに論理を組み立てなくてはいけないんですけど。

わからないということには、理由があります。金正日国防委員長については、よく考えると実はよく知っていたんですよ。

すし職人の藤本健二さんとか、殺された金正男さんとか、おばさんの成恵琅(ソン・ヘラン)さんとか、さまざまな人の証言があって。

それをクロスチェックしていくと、金正日の人物像ですとか、金正日総書記国防委員長の政策決定過程がそれなりにみえてきた。

しかしそれに匹敵するような、第1級の金正恩氏に関する証言って、まだゼロなんですね。昨年、韓国に亡命して話題になりました駐イギリス公使、朴大使。彼も金正恩委員長には会ったことすらないわけですよね。それでもメディアに出て発信していると。

証言がない。というところは、正直申し上げて「わからない」と申し上げざるをえない。しかし、この5年半あっという間に、金正日国防委員長が亡くなってからの動きを見てみますと、不自然さを感じない。

つまり金正恩委員長は、倫理的にほめられたものではないし、肩を持つわけでは決してありませんが。自分の権力を守るためにどうすればいいのか、自分の権力を強化するためにどうすればいいのかっていうのを、必死に歩んできた5年半であったようにも思いますね。

山本:なるほどね。その話で言うとね、4月30日だったか、トランプ大統領がなんかのインタビューでね、金正恩委員長について聞かれて。

まあ英語の表現ですけれども「He is smart cookie」と言ったと。

「smart cookie」、新聞で見たら「賢いやつだ」(という意味)だったんですけど。「cookie」がちょっとバカにした言い方らしくて。「けっこう狡猾だなー」みたいなイメージがあるらしいんですが。

考えてみたら、先生がおっしゃったように、16年間政権の座にいた金正日委員長がああいうかたちで急に亡くなって。それにも関わらず、政権があんまり揉めずに一応移行して、さらにこの5年半、これだけの権力を維持している。

政府側近たちの実像を推測

たぶん周りにいる人たちって、ほとんど怪物みたいな人だと思うんですよね。70、80歳の軍部の人って。すごい人でしょ?

礒﨑:怪物という表現はよくわからないですけど。

山本:怪物って、海千山千のすごい人たちでしょ? その人たちのなかで権力を維持していってるっていうのは、それなりの戦略っていうか、優れたものがあるんですか?

礒﨑:戦略、そうですね続伸的なものかどうかってのはわかりづらいですが、しかし建国して70年近く立っている体制ですから、時が経てば経つほど盤石になっていくっていう側面はあるわけですよね。

30年前。1970年代から80年にかけて、2代目の金正日氏が出てきたときには、世界史上初めての社会主義体制における世襲が実現した。

「なぜ平等で公平であるはずの社会主義で世襲なんだ?」。

って中国からも批判をされたわけですよ。しかしそういうものを乗り越えて、北朝鮮なりの論理を構築していった結果が、今に至っているわけですよね。ですから、「若くて無名で実績がない」と当時は言われましたけども。

金正日国防長官が彼を後継者指名したんなら、それは当然だよなと。それを受け入れられる素地はできていたと考えられますね。

山本:そうすると、武貞先生なんかもおっしゃっていたように、いわゆる、アメリカのヘイリー国連大使が言ったように、パラノイアじゃなくて、きちんとした戦略感を持った政治家だと考えた方がいいんでしょうか?

礒﨑:まだまだ時期尚早だと思います。

山本:時期尚早。

礒﨑:私が金正日国防委員長と異なると思うのは、金正恩委員長のスピーチとか談話とか、そういったものを分析するのが私の仕事ですが、実は100本ぐらい出てるんですよ。

かなり多くの1万字ぐらいの演説も複数出ているわけですから。

それをみていると、トランプ大統領ではないですけれども、こっちにいったかと思ったら、急に(逆の)こっちへ吹っ切れていく。つまり「韓国を攻めてやるぞ」っていうようなこと、もう少し穏やかな言葉なんですが。

しかし、金正日国防委員長よりはかなり強い言葉で言いつつ。しかし突然、「首脳会談をしてみようじゃないか」みたいなことも言うわけですよね。かなり極端なかたちであっちにいったり、こっちにいったり(している)。

そして政策変化のスピードも早い。っていうのが非常にこれが若さからくるものなのか、パーソナリティによるものなのかわかりませんが、せっかちな印象ですね。

山本:あーなるほど。

金正恩の肥満体型は意図的なもの?

余談ですけど、この体型。お父さん(金正日)に似せるために、わざと太っているのかわかりませんが。

韓国の国家情報院かなにかに、確か出てきた情報の中に「この体型だと10年以内ぐらいに非常に深刻な心臓血管系の病気になるんじゃないか」とか言われていて。

(過去には)ちょっと足を引きずったりしていたりとか、あるいは1週間に2回ぐらい暴飲暴食しているんじゃないか、みたいな話があるんですけど。ここらへんは事実なんでしょうね? わからないけど。

礒﨑:これはわからない。政治学とはまったく関係ないですけど、自分の経験から照らして、暴飲暴食をしているんだろうなとは思いますよ。ただそれは、私自身も体重の増減がありましたので。

山本:自分の経験と自分の意見とを結びつける。

(会場笑)

礒﨑:政治学とはまったく関係ないですから、すいません。笑いながら。申し訳ない。

山本:面白い。

礒﨑:面白くはないです。しかし最初、2012年に金正恩氏が初めて演説したころ、5年前ですね。そのころは明らかに金日成主席に似せようとしていた。

例えば、金正恩委員長が演説をしているときに朝鮮中央テレビのアナウンサーが「若き日の金日成主席に似ています」。こういうアナウンスを流すわけです。

明確に似せようとした。これは戦略であって。しかしここまできると急に体重が増えたってことがみえてますね。

山本:首のとこまでこうなってますからね。

礒﨑:そこまで似せる必要があったのかなって思いますね。あくまで印象論です。

山本:なるほどね。

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