「シリョサク株式会社」が運営しているチャンネル『シリョサクTV』では、パワポ資料の作り方から仕事をおもしろくするポイントまで、ビジネスに役立つコンテンツをお届けしています。本記事では「頭がいい人」に共通する考え方や、仕事ができる人になるためにおすすめの習慣を紹介します。
ビジネスにおける「頭の良さ」とは

豊間根青地氏(以下、豊間根):今日は「頭がいいってどういうことか?」に関して、私の持論を述べたいなと思っております。
岩本紘佳氏(以下、岩本):はい。
豊間根:やっぱり、頭が良くなりたいじゃないですか。
岩本:なりたいです。
豊間根:私、こう見えて東大を出ているので比較的頭がいいですけども、単純にお受験的な、偏差値が高いみたいな意味より、もうちょっと仕事というか、僕の思っている頭がいいってこういうことだよなという持論を、僭越ながら展開させていただきたい回でございます。
岩本:はい。
豊間根:結論に近いんですけど、結局ね、具体と抽象の行き来を適切にできる人が、頭がいい人だと考えています。

これは1個の具体と抽象の行き来の切り口でしかないけど、例えば「こんなことがあったなぁ」という、日々起きた事象・物事から、抽象的な法則とか概念とか、目に見えない本質を抽出して噛み砕いて。それをさらに違う具体に落としていくとか、あるいは抽象的な概念を具体的な細かい話にして実現していくとか、細かく実行していくとか。
逆に言うと、目の前の具体的なものだけじゃなくて、そこから抽象的なエッセンスを抽出する。これをぐるぐる高いレベルでできている人が、頭がいい人だなと思っているんですね。
岩本:確かに。
豊間根:ただ、この説明自体がめっちゃ抽象的なので……。
岩本:具体が欲しい(笑)。
抽象化ができる人は、法則を見いだせる
豊間根:もうちょっと具体的な話をすると、例えば具体化ができないと、自分のいる世界しか見えなくて成長できなかったりするんですよ。
例えば、とあるリスさんが「僕はどんぐりを巣穴に貯めています。冬でも食べ物に困らなくてすごくいいですよ」って言ったとするじゃないですか。
それを聞いたとある原始人が「いやいや、俺はふだんマンモスを倒して肉を食ってんだよ。お前はどんぐりだから貯められるかもしんないけど、肉なんてすぐに食べないと腐ってお腹が痛くなっちゃうだろうが!」「あいつとは違う、俺には貯めるって概念はできない」というふうに、自分の見えている世界しか見えないと、人の意見を取り入れられないんですよ。
……ということで、この人は、具体と具体でしか比べられない、抽象の世界に行けないから、他の具体を取り入れない。自分に関係ない情報としてシャットアウトしちゃうんですね。

一方で、抽象の世界に行ける人は、隠れた法則を抽出できるんですよ。確かに肉は腐っちゃうけども、じゃあ腐らない状態で(保存するにはどうしたらいいか)。例えば動物を飼ったら、それはある意味貯めるということで、「それならできるんじゃないか」って思ったりするかもしれないわけですね。
というふうに、具体と具体で比べるんじゃなくて、一度、抽象的な目に見えない概念。物をそのまま使うんではなくて、貯めておいて少しずつ使う概念を取り入れて、「自分の場合だったらどうかな」と考えると、他人の意見を柔軟に取り入れて、成長できるわけですよ。
依頼を見るか、課題を見るか
豊間根:成長できる人とは、ある意味、抽象化ができる人なんですよね。
もう1個の例なんですが、「依頼を見ている人」と「課題を見ている人」という概念があると思っています。例えば、とある人に「包丁でじゃがいもの皮を剥いてくれますか」という依頼をしたとするじゃないですか。
依頼する人の頭の中には、例えば「18時までにカレーを作りたいんだよな」と。カレーを作るためにはいろんな工程があって、その中でじゃがいもの皮を剥く。たぶん道具として包丁を使うんであろう。ということで「包丁でじゃがいもの皮を剥いてくれない?」って言ったとするじゃないですか。
岩本:はい。
豊間根:その時に、具体的に言われた「包丁でじゃがいもの皮を剥く」ところしか見てない人は、もし台所に包丁がなかったら、「あ、包丁がない。だから剥けない。あざした!」ってなっちゃうわけですよ。
この人って、もう具体しか見てないんですよね。「じゃがいもの皮を剥いてください」という具体の依頼しか見てないので、見えない世界を見ていないわけです。
一方で抽象的な、見えない世界が見える人は「じゃがいもの皮を剥いてくれますか」って言われてるんだけど。
(依頼する側の立場に立って考えると)「みんなが帰ってくる時間を考えると、17時までには材料の下準備を済ませたくてお願いするのであれば、例えば時間がかかりがちなじゃがいもはあらかた終わらせておきたいから、とりあえず包丁でじゃがいもの皮を剥いてくれますか」みたいな背景があったりするわけですよね。
具体と抽象の行き来ができる人こそ、頭のいい人
豊間根:ちなみに、依頼側がこれをちゃんと言語化したほうがいいという話もあるんだけども。とはいえ、もちろん依頼される側の気持ちとしては、この全体像と背景の中でこのタスクをたぶん依頼されてるんだなっていうところまで見ると。

包丁がなくても「じゃあ、そもそも剥いてあるやつを買ってきますよ」とか「もうレトルトで済ましてもいいんじゃないですか」とか「皮を剥かなくても食えなくないですけど、剥かなきゃダメですか」とか。あるいは「とりあえずじゃがいもは置いといて、お米だけ炊きましょう」みたいに、自分が言われた目の前の、具体のタスク以外にも攻めていけるんですよ。
というふうに、自分が人の意見を聞いて、あるいはいろんなものを参考にして成長できることを増やすとか、仕事をお願いされた時に、それに対して提案するとか成果を出すあらゆるシーンにおいて、具体だけを見るのではなく、一度、抽象の世界に行く。
さらにその抽象的な話だけを言うんじゃなくて、具体的にタスクに落として実行して前に進んでいくという、この具体と抽象の行き来ができるかどうかが、僕は頭の良さだと思っているんですね。
岩本:はい。
具体の幅、抽象の高さという思考軸
豊間根:この話を踏まえると、頭の良さには2つのパラメーターがあるんです。幅と高さなんですね。

幅というのは具体をどのくらい知ってるかなんですよ。狭い世界しか知らない人って、裾野が狭いので抽象レベルが上がっていかないんです。
でもその幅が広くても、具体だけはやたら知っている人。「めちゃくちゃ資格を持ってます」とか「勉強オタクです。でも成果出したことはぜんぜんないです」みたいな人って、幅はあるんだけど高さがない。
幅を作った上で抽象的なレイヤーに話を広げて、かつそれをちゃんと具体に落として実現できる、これは高さがあるということなんですよね。
この幅と高さがあって、具体と抽象の行き来をぐるぐるできる人が、僕は本質的に頭がいい人だと思っているし、そういう人になりたいと思っています。

じゃあそういう人になるにはどうすればいいかというと、それこそ抽象的な話なんですけど、まずはやっぱりね、問いで思考を深めるのが大事なんです。目の前にある物事に対して「具体的には?」「要するに?」。「具体的には?」は具体。「要するに?」は抽象化ですよね。
あと、「それはなぜ?」が具体化。「だから何?」は抽象化なんだけども。というふうに、目の前にあるものをそのまま捉えずに、「要するにどういうことなんだろう」とか「なんでこうなってるんだろう」とか「もっと深く掘り下げたら何になるのかな」みたいに、日々疑問を持って思考を深める習慣をしておく。
新しい知見に触れて幅を広げる
豊間根:さっきの例からもわかるとおり、見えない世界に行かなきゃいけないんですよね。目の前にあるものをただ捉えるだけでは抽象化できないので、本質的にはどういうことか、裏にどういう法則が隠れているのかを常に見に行く努力をしなければいけない。
見えない世界は当然、見に行かないと見えないので、努力をしなきゃいけないんですね。これが問いで思考を深める、高さを出す話。
幅を出すという話はインプットの動画でも話したんですけど、なんでも貪欲に吸収することなんですよね。
本を読んで勉強するとか資格を取るとかそういうことだけじゃなくて、映画を見るとか旅行に行くみたいなものもインプットなんですよね。人の話を聞くとか、ふだん接さない人と話すことも全部インプットです。
とにかく自分の知っている世界を広げる努力をすることが、具体と抽象のピラミッドを高くするための有効な方法として働くと思っています。だからいろんなものに興味を持つことが大事。
思考し続ける実務家を目指そう
豊間根:最後が3つめの軸。やはりアウトプットを繰り返して、行動して成果を出していかないと、考えているだけじゃダメなんですよね。ピラミッドが重なっていくみたいな概念だと思っていて。奥行きを作ることも大事です。
思考の世界だけで満足するんじゃなくて、実務家になっていくことが必要だと思っています。……っていう抽象的な話をしてみました。
岩本:(笑)。
豊間根:ただ『シリョサクTV』は資料作成を中心に話していますが、抽象化と具体化がふんだんに取り込まれていることがわかっていただけると思います。逆に、他の仕事から資料作成に考え方を活かすこともできるので、ぜひこの3つを意識いただきたいなと。
岩本:はい。
豊間根:……ということですけども。ヒロカさん、若手社会人としてどうでしょう。
岩本:そうですね。あまりこういう考え方をしたことがなくて、さっきの軸と高さのところは、けっこう腑に落ちたなと思っています。
自分の周りでも「賢いな」というか、「この人は頭がいいな」とか「仕事ができるな」と思う人って、確かに高さも幅も奥行きもある人が多いなって、頭の中に思い浮かべながら聞いてたんですけど。そういったところの努力は続けていかないといけないなぁと思いました。
豊間根:間違いないです。僕もぜんぜんまだまだなんでね。これをやらなくていい人はいないので、常にやらなきゃいけないですし。具体と抽象と言えば、この細谷(功)さんの著作、その名のとおり『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』。これはもう全人類が読むべき。具体と抽象に関する聖書みたいなもんなんで、必ず読んでください。
岩本:はい。
豊間根:この動画を見た人は、全員読んでください。
岩本:(笑)。
豊間根:ということで、みなさんも3つのポイントを意識して具体と抽象の行き来をして、頭がいいと周りから思われるような、いい仕事をできる人になっていきましょう!