「一生懸命に考えたはずなのに、提案が通らない」──そんな悩みを抱えるビジネスパーソンは少なくありません。本記事では、シリョサク株式会社の豊間根青地氏が問題解決のフレームワーク「あげよう」を紹介。4つのプロセスで説得力のある提案を導き出すノウハウをお届けします。
提案する時のキーワード「あげよう」
豊間根青地氏:どうも。シリョサクのトヨマネです。みなさん、提案していますか? 仕事をしていると提案が求められるシーンってよくありますよね。でも、「なかなか自分の提案がうまく通らない」「あの人の提案はスイスイ通るのにぜんぜんうまくいかない」。そういうお悩みを持っている方もいらっしゃると思います。
この動画では、提案が通る人はどういう考え方で組み立てているのか。提案とはそもそも何なのかということを簡単にご説明したいと思っております。

まず結論から言います。提案で大事なのは、「あげよう」です。「あげよう」をきちんと意識して組み立てることが提案を通す一番の秘訣です。この「あげよう」が何なのかはこのあとお話していきます。
提案とは「問題解決」
提案とはそもそも、あるべき姿と現状とのギャップを明らかにして、それを埋めようぜということ。これが提案なんですね。

「今ってこうだけど、こういう状態になったほうが良くね?」「こっちに行こうぜ! 一緒に行こうぜ!」というのが提案なんですね。これ、言わば問題解決です。コンサルの人がよく言う問題解決をしようぜということが提案なんですね。
提案とは、要はお医者さんみたいなものです。現状が「体調が悪いです」と。それに対して「元気もりもりのほうがいいよね。じゃあ治療しようぜ!」というのが提案であり、問題解決なんですね。
問題解決とは、要するにあるべき姿と現状とがあって、そこのギャップが生じている要因を特定して、解消するための打ち手をぶつける。この4つの要素が問題解決の全体像なんですね。

これを略して、あるべき姿、現状、要因、打ち手の頭文字を取って「あげよう」という略語です。これは我々の造語です。覚えやすいので略しているだけなんですけど、呪文のように唱えられることがキーワード作りですごく重要です。
あるべき姿→現状→要因→打ち手
さっきのお医者さんの例でいうと、まずあるべき姿を定義します。「仕事に支障が出るから少しでも早く元気になりたいですよね」と。
現状はどうか。診断の結果、「どうも胃に何か不具合がありそうです」と。なんか体調悪いんだよね〜だけじゃなくて、どこに問題があるかをちゃんと把握しにいきます。
胃に何か問題があるって、どういう問題があるの? なんで問題が起きているの? といったら、胃の中で炎症が起きているっぽいですねと。かつ、「炎症はなんで起きているの?」「飲み過ぎのせいですよ。お酒を控えて、このお薬を毎食後にちゃんと飲んでください」と。
「ちゃんとやって、2週間後にまた来て本当に良くなっているか確かめましょうね」というプロセスをお医者さんは踏むわけですね。まさにあるべき姿、現状、要因、打ち手というステップを踏んでいました。

ということで、ざっくりあるべき姿を定義する。現状を正しく把握する。そのギャップが起きている要因を深掘りして、それを解消できる打ち手を策定して、きちんと実行しきる。この「あげよう」を適切にできているのがいい提案であり問題解決なんですね。
これをきれいに示すと、相手が「確かにそれいいですね! 一緒にやりましょう」と言ってくれる。これが提案が通るということなんですね。
「あげよう」が適切でない例
一方で、これがなかなか難しいわけですよ。提案が通らないんだよなぁと思っている人はいろんなパターンがあるんですけど、「あげよう」が適切でないせいで通らないんですね。

例えば、打ち手の決め打ち。これはめっちゃ多いです。やる前提で打ち手の話しかしていないから、なぜいいのかがわからなくてやりましょうとならない。「この業務改善ツール、なんか良さそうなので導入しましょう!」「それ、何がいいの? 今のどういう数字がどう良くなるの?」というのがわからないよねとか。
ほかにも短絡的な発想。問題の本質的な原因というのを考えずにわかりやすい打ち手を思いつきで提示しちゃっている。「採用の申し込みが少ないので、採用サイトをリニューアルしましょう」「採用サイトをリニューアルしたら、なんで採用の申し込みが増えるんですか? それは認知施策になるんですか?」みたいなことが起きるわけですね。
提案の根拠は客観的・具体的に
ほかにも、独りよがりな分析。主観的で客観的な根拠がない。「弊社は全体的にDXが弱い感じがするのでDX推進部をつくりましょう」「いやいや、DXが弱いってどういうことやねん? 何をどう判断して、DXが弱いと判断したの?」みたいなことが起きちゃうとかですね。
あとは、ふわふわ解決策。具体的に何をするかがわからない。あるいは、打ち手を考えるための打ち手になっている。「定例会議を導入して、PDCAサイクルを回していきましょう」「いやいや、PDCAサイクルを回すって具体的に何をするねん」みたいなことがよく起きちゃうわけですね。
「あげよう」の4つが適切でないから、何が良くなるのかがわからない、なぜ必要なのかがわからないから提案が通らないわけです。これは社内に対しても、社外に対しても、お客さんに対しても一緒です。すべての「これやろうぜ」という提案には必ず「あげよう」が適切に含まれている必要があるわけですね。
現状と原因を分析してから考える
こういうふうによくあるNG例をいくつか紹介したんですけど、圧倒的に一番多いのは打ち手思考、打ち手の決め打ちです。あるべき姿も現状も要因もちゃんと考えず、いきなり打ち手を話してしまう。「なんかよくわからんけど、これをやりましょうよ」ということを持ってきても、それをやる理由がぜんぜんないんですね。
あなたってこうあるべきですよね。でも現状こうですよね。そのギャップってこういう原因で生まれて、それを解決できるのがこの打ち手なんです。というふうに説明されないと、人は「やろう」ってならないんですね。
言い方を変えると、打ち手は最後の最後に出てくるものなんですね。あるべき姿を目指すための道具としてその打ち手がある順番が正しいのであって、打ち手が先に来るのはありえないんです。

例えば、いきなり手術をする医者です。さっきのお医者さんで言えば、「なんか具合悪いんですよね〜」という人に対して、「わからないですけど、とりあえず手術しますか! 腹かっ捌いてから決めましょう!」とかね。
「効くかわからないですけど、この薬とこの薬、なんかかわいいので飲んでみます?」とかね。「気持ちの問題かもしれないですね。旅行に行ってみましょう」ってね。とりあえず旅行を提案してみるみたいな。いや、メンタルの問題ちゃうやろというようなことが起きちゃっているわけですね。
お医者さんで例えたらどう考えても意味わからないのに、我々は提案をする時についついこれをやっちゃうんです。
目に見えないものこそ意識する
打ち手思考(になってしまう)というのは、しょうがないです。なる! これはもう人間の性。なんでかというと、打ち手って目に見えるからなんですね。我々人間は目に見えるものを信用しちゃう癖があって、打ち手は目に見えるんです。ウェブサイトを作ろうぜとか、ツールを導入しようぜというのは目に見えるわけですね。
一方で目的とか原因みたいな抽象的な概念って目に見えないので、すぐ忘れちゃうんですね。じゃあどうしなきゃいけないかというと、我々は常に目的やあるべき姿、要因みたいな、目に見えない抽象的なものを見ようと意識することが必要になります。
人間は絶対、打ち手思考になるんです。だから我々は放っておくとすぐ打ち手思考になるものであるという認識を持って、「あ、今打ち手思考になってたな」ということに気づける状態になることがすごく大事なわけですね。
「打ち手思考」から「あげよう」へ
ということで、今日は提案を通すための4つの要素「あげよう」について解説しました。あるべき姿とか現状、要因、打ち手という概念は別にぜんぜん新しいものではなく、非常に古典的なフレームワークではあるんですけれども。
こういうふうに覚えやすい言葉に略して、呪文のように唱えまくって、「打ち手思考にならない」と考え続けることが、あなたの提案を通すためにはすごく有効に働くはずです。「あげよう」を意識して、ぜひみなさんも提案をぶっ通してみてください。