次世代の変革をリードする20~30代のハイクラス向けキャリアアップ支援サービス「MELIUS(メリウス)」のマネジメントセミナーに、元マッキンゼーで現在はMELIUS事業責任者を務める田中直道氏が登壇。プレゼンテーションのコツや質を高めるための具体的なTipsを解説しました。
前回の記事はこちら プレゼンテーションのコツ
田中直道氏:ここからは、いよいよストーリー伝達、つまりプレゼンテーションのフェーズに入ります。ここに「プレゼンテーションのコツ」と書いてありますが、心構えから具体的なTipsまでお話しします。
まず1つ目は、沈黙を恐れないということです。これは基本的なことですが非常に重要です。私自身、早口になりがちなタイプですが、早口で話して得することはほとんどないと感じています。自分が思っているより1.2倍くらいスローに話すつもりで、落ち着いて話すことを心がけましょう。
早口になると、話が整理されていない印象を与えるだけでなく、「そして」「あの」「えー」といったフィラー(つなぎ言葉)が増えてしまいます。これらのノイズは聞き手にとって負担となります。むしろ、沈黙を恐れず、次に言うべきことを考えてから発言するようにすると、聞き手にも自信を持って伝わります。
伝え方がプレゼン成功に与える影響
次に、堂々と話すことです。これには身振り手振りを活用して、話のポイントを強調することも含まれます。よく知られているカリフォルニア大学の研究では、「プレゼンにおける印象の55パーセントは見た目、38パーセントは声、そして言葉自体の内容はわずか7パーセント」という結果が示されています。真偽はともかく、見た目や伝え方が非常に大きな影響を与えることは確かです。
そのため、ジェスチャーや声のトーンなど、伝え方に注意を払うことが重要です。ただし、これだけに偏らないようにしてください。中身、つまりプレゼンの内容そのものも非常に重要です。マッキンゼー時代も、伝え方の工夫を行う一方で、この「言葉の部分」、つまり提案内容やその論理性にこそ最も力を注いでいました。
クライアントが本当に求めているのは、提案の中身です。伝え方を磨くのと同じくらい、提案内容そのものをしっかりと作り込むことを意識しましょう。そして、もう一度強調しておきたいのは、伝え方が印象を大きく左右するということです。
どれだけ内容を練り込んでも、伝え方が適切でなければ、聞き手に意図した通りに伝わらないことがあります。したがって、伝え方にも意識を持つことが重要です。
話の流れが明確になり、聞き手が理解しやすくなるフレーム
3つ目のポイントは、結論から話すということです。これは、まさにピラミッドストラクチャーを意識した話し方になります。ピラミッドストラクチャーの上段から順番に、要点を最初に述べ、それを支える理由や具体例を順に説明していくのが基本です。
「要点->理由->具体例->要点」という形式は、PREP法(Point、Reason、Example、Point)とも呼ばれ、プレゼンや説明の場でよく使われます。このフレームを意識することで、話の流れが明確になり、聞き手にとっても理解しやすくなります。まずは、ピラミッドストラクチャーの上段から話し始める習慣を身につけることが大切です。
4つ目のポイントは、自分にコルセットをはめることです。人間は意識していても行動に移すのが難しいため、あえてフレーミングを用いて自分を縛る方法です。例えば、「理由は3つあります」や「結論から言うと」というフレーズを使うことで、自分がその形式で話さざるを得ない状況を作ります。
これは一見、自分にプレッシャーを与えるように思えますが、話をスムーズに進めるためには有効な手段です。特に、マッキンゼー時代にはOJTや入社前研修でこのようなスキルが徹底的に叩き込まれました。
私が受けた入社前研修では、英語を使ったプレゼン研修がありましたが、そこで「結論から話せていない」とすぐに「ストップ」と指摘され、やり直しをさせられました。さらに、「えーっと」や「あの」といったつなぎ言葉を使うと、また「ストップ」と言われるため、非常にストレスの多いトレーニングでした。しかし、こうした厳しい指導を通じて、結論から話す習慣が身につきました。
壁打ち相手なしでできるプレゼン練習法
壁打ち相手が常にいるわけではないと思うので、プレゼンの練習を自分で行う場合には、録音して自分の話を聞いてみることをおすすめします。自分の録音データを聞くのは、最初はなかなか苦痛かもしれません。しかし、これを行うことで、自分の弱点や改善点が明確になります。
例えば、どのくらい「えーっと」や「あの」といったフィラーを使っているか、話すスピードが適切か、内容がわかりやすく伝わっているかなど、自分では気づきにくいポイントが浮き彫りになります。自分の話を客観的に評価するために、録音を活用するのは非常に効果的です。
また、私が新卒で入社した際には、先輩からOJTの一環でプレゼン後に詳細なフィードバックをもらいました。プレゼンが終わった直後にメールで大量のフィードバックが届き、その中には「えーっと」を59回言っていた、といった具体的な指摘が含まれていました。
こうしたフィードバックは、他者から指摘されることで初めて気づくことも多いです。しかし、もしフィードバックをくれる人がいない場合には、自分で録音を聞いて改善点を確認するという習慣をつけるだけでも、プレゼンの質を大きく向上させることができるのではないかと思います。
少し駆け足になってしまったかもしれませんが、最後までお聞きいただきありがとうございました。