2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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茂木健一郎(以下、茂木):その、ドキュメンタリー映画って、どうなんですか? 悪魔との取引じゃないけど、それは、どうなんですか、それって?
佐々木芽生氏(以下、佐々木):じゃあ、事実を無視して、エンターテインメント性を……。
茂木:事実を無視というか、事実があるというよりは、撮る側の切り取り方で事実のある一面が見えるということだから。どうなんですか?
佐々木:日本では、やっぱり『ザ・コーヴ』が出た時に、「これはドキュメンタリーじゃないんだ」っていう議論がすごくあって。隠し撮りしてるし、ドキュメンタリーとしてこれは非常に一方的だし、だから「ドキュメンタリーじゃないから、もういいんですよ、観なくて」みたいな話をもういろんな人から聞いたんですけど、やっぱりそこがすごく違うなと思っていて。あれはドキュメンタリーとして、世界が認めた映画なわけですよね。まぁ、よくも悪くも。
茂木:いちいちタテついてごめんなさい、「世界が」認めたんじゃなくて、アメリカのアカデミーが認めた……。
佐々木:でも世界中のいろんな映画祭でも賞を獲ってますから。ヨーロッパでも。
茂木:いや、今日のテーマがテーマだけに、「世界が認めた」とかいう言い方を安易にされがちなんですけれども、「世界」って別にひとつじゃないですもんね?
佐々木:まぁそうですよね。国際社会が、って言うと……。
茂木:いやいや。
(会場笑)
佐々木:じゃあ、どう言えばいいですか?
茂木:わからない、だから具体的に名前をあげればいいんじゃないですかね。アカデミー賞と、あといくつかの国際映画賞が。
佐々木:たくさんの国際映画祭が、何ダースっていう映画祭が賞をあげちゃったわけですよ。
茂木:「=世界」ではきっとないでしょうね。だから、それを夏のコミケに持って行って観せても、コミケの来場者の支持は得られないと思うんですけれども。
すいません、今日の僕の前提というか、僕の中では、アカデミー賞のオスカー像、これはすごいですよ。ですけど、それとコミケのサークルっていう、5,000円出して売ってる同人誌の作品のクオリティは、俺の中ではどっちが高いかはわからないというところに僕は生きてるんですよ。わかります?
アカデミー賞だからって偉いとはぜんぜん思ってないんですよ。どちらかというと、アカデミー賞ってクオリティの低い作品が多いなって思っていて。最近ちょっと上がってきてますけど、アメリカの作品も。なんか別に、アカデミー賞だから偉いっていう前提がないんですよ。
佐々木:そうですね。偉いっていうよりも、影響力がすごいですね。
茂木:影響力って、でも例えば「小錦は体重が重い」みたいなそういう話だから、クオリティの話ではないので。だから我々は気をつけないと、つい「世界が認めた」って言いがちなんだけど、それってもっとバラバラなんじゃないですかね?
佐々木:バラバラではあるんですけれども、(アカデミー賞は)声が大きいですよね。あの主張は声が大きい。だからいかにも世界、例えばアメリカ人全員がああいうふうに考えてると思われてしまう。だから日本でも、「捕鯨は日本の伝統だ」って言ってる人たちの声が大きいので、日本人ってみんなそういうふうに考えてるんじゃないかって思われてしまう。
茂木:ですから、声が大きい人たちがすべての代弁者じゃないというリテラシーは、今いろんなところで求められているんじゃないんですか?
佐々木:求められてると思います。そして逆に、例えば太地町は特にネットメディアのなかで……。あの映画を見ていただくとわかるんですけれども、漁師さんたちはもうソーシャルメディアもやらないし、ネットでニュースのチェックもしないし、彼らの声っていうのは上がってこないわけなんですよ、ぜんぜん。
茂木:それを今回拾ってくださって、ありがとうございました。
佐々木:(笑)。そういう意味では、やっぱり声が大きい人の声はどんどん拡散していくし、太地町の漁師さんのように声が本当に上がってこない、そういう人たちの声っていうのはどんどん消されてしまう。
茂木:僕に言わせるとね、一番声が小さいのはイルカなんですけどね。
佐々木:ははは(笑)。
(会場笑)
茂木:いいんですよ、太地町の漁師さんの話も聞きたいんですよ。いい人たちだと思いますよ、すごいいい人たちだと思います。ただ、殺されていくイルカの声は一番聞こえないんだと思うんですよね。それは牛さんもそうで。よくレストランとか行くと、牛とか豚が、食べられるのにうれしそうにこうやってフォーク持って。おかしいでしょう? だって、食べられるんだから。
(会場笑)
茂木:だけど、屠殺場で殺されている牛とか豚の声は聞こえてこないんですよ、当然。だからなんて言うのかな、人間の声って、声小さいって言っても、まぁ人間だからそれなりに聞こえてるんじゃないんですかね。ちょっと変な言い方ですけど(笑)。
佐々木:聞こえてると思います。でもイルカの声っていうのは、すごく多くの人に代弁されていると思います。
茂木:そうかな? そうですか? イルカになって1日泳いだことないからわからない。
佐々木:ははは(笑)。
茂木:今日来る時に(読んだんですけど)、ディープ・エコロジーっていう、もともとレイチェル・カーソンの『沈黙の春』あたりから出ている(考え方で)。要するに地球上の生態系の中で人間が特別な地位にあるのではなくて、ワンオブゼムで、すべての生き物は有用性とかそういうこと抜きに、大事なホメオスタシスの中にあるということを主張した、アルネ・ネスっていう人がいて。
その人はもう死んじゃったんだけど、ディープ・エコロジーというわけじゃないですか。そういう視点から見ると、もちろん本当はイルカだけを特別視するのもおかしくて。ありとあらゆる生き物って、それなりの立場があるわけじゃないですか。立場というか、経験が。イカにはイカの経験があるし。
だからなんだろう、イルカの声を代弁してるって言うけど、それは代弁してる人たちが、自分が見たイルカの声を擬人化して言ってるだけであって、本当のイルカはどういう経験をしてるのかなんてわからないわけですよね。
佐々木:まぁ、わからないと思います(笑)。
茂木:だから、イルカがやっぱり一番『ザ・コーヴ』の中ではかわいそうだなと思った。殺されるからかわいそうっていうよりも、こいつら人間の言葉しゃべれないから。イルカにインタビューはないもんね?
佐々木:イルカのインタビューはないですけどね。
茂木:イルカのインタビューは今回検討されたんですか?
佐々木:いや、しませんでした。映像だけで。
茂木:ジョン・C・リリーに言わせると、イルカと会話できるということが、将来に宇宙の知的生命体と出会ったときに、我々が彼らを理解できるかどうかの1つの試金石であると……あの人ちょっといっちゃってる人ですから(笑)。
(会場笑)
佐々木:そうですよね(笑)。
茂木:まぁ、だけど、俺はあれは意外と好きな考え方なんですよ。
佐々木:なるほど。ただ、そう言ってしまうと、やっぱりさっきのタコの話じゃないですけど。タコの話もこの中で書いてあるんですけど、賢いし、やっぱり自己認識能力があると。鏡を見た時に「自分だ」ってイルカはわかるので、やっぱりそれはイルカの賢さを表す1つの指標だと言われてるんです。
でも、実は訓練すると、豚も自己認識能力を持てるし、カラスもどうもわかるみたいなね、そういう研究って次々と出てきていて。さっきもちょっと言いかけたんですけれど、じゃあ、賢い動物だけ保護していいんですか? っていうクエスチョンについてはどうですか?
茂木:自分が死ぬということについての意味を理解できて、苦痛を感じるということを避けたいという一般原理からっていうことなんだと思いますけどね。
だから日本のネット民が……。「ネット民の方」って言わないとまた怒られるんだけど。「賢い動物だから殺しちゃいけないっていう考え方をなぜするんだよ」っていうようなことを(言っていて)。いちいち僕は相手にしないんですよ、めんどくさいから。もう、ちょっと考えてみればそれはわかる、意外と単純な話なんですよ。小学5年生ぐらいでもわかる感じです。
(それは)メタ認知というもので、自分の死の意味を理解するということは、理解しないで死んじゃうということに比べたらきっと苦痛があるだろうから、それは避けようねという単純な話なんです。それは別に日本の伝統だとかそういうこととはまったく関係ないと思いますよ、僕は。それはまぁ、そうなんじゃないんですか?
佐々木:例えば、八百万神が、すべての万物、自然の中に宿るって考えて、すべての生き物をじゃあ平等に扱った方がいいんじゃないかと。賢い生き物だけ特別扱いするのはどうなんだっていうことはありますよね。
茂木:理念としてはわかるんですけど、現実的にはそれは不可能ですよね。だってそれを言うなら植物も、「キャベツさん、ごめんなさい」って言って、ねぇ(笑)。なんて言えばいいのかな。
俺、この話はあまりにも、適用される概念を細かく見て行かないと、どんどん流されていっちゃう話のような気がして。逆に言うと、佐々木さんの個人的なお考えは、なんとなくお話をうかがっていて伝わってくるんですけど、日本の中でもっと多彩な意見のダイアログがないということが、どっちかと言うと気になるんですよ。
佐々木:それはまったくおっしゃるとおりだと思います。
茂木:英語圏はわからないです。アメリカの方とこれについてあんまり議論したことがないんだけど、いろんな考え方の人がいると推定してるんですけど、そうでもないですか?
佐々木:意外とこのクジラ・イルカ問題については、議論がないんですよ。中絶問題でも銃規制にしても、なんでも賛成・反対をみんなガンガン言うじゃないですか。でもこのイルカ・クジラ問題に関しては、まずみんな反対する。
茂木:知らないんじゃないですかね?
佐々木:知らないんだと思います。なぜかと言うと、このあいだニューヨークで上映開始した時に、みなさんびっくりしてた。
茂木:どういう反応でした?
佐々木:「やっぱりこういうことをするからアメリカ人は世界中に行って嫌われるんだな」みたいな(笑)。うちのエディターもそういうふうに言ってたんですけれども、「この強引な感じはダメだよね」っていう。「シーシェパードに代わってごめんなさい」みたいなね。
茂木:でしょう? なんて言うかな、その傲慢さは嫌だなっていう感じは、アメリカ人、ありますよね。
佐々木:ありますよね。だけど、やっぱり強引にせざるを得ないというか。要するに、彼らは本当に自己主張をしないと生きていけない。なんて言うか、自己主張をしないと、何を考えてるかわからないみたいな。
茂木:それもご相談なんですけど……。
(会場笑)
茂木:そうじゃない側面もあるんじゃないんですか?
佐々木:いや、かなりつらいですよ。だって(私)向こうにずっと住んでて。
茂木:いや、わかるんですよ。でも、その捉え方が本当なのかなってずっと思ってるんですよ、ここ数年。だから、よくアメリカ人は自己主張が強いって言うんですけど、いや、すごいナヨナヨしてるヤツもいっぱいいるし。
佐々木:もちろんいっぱいいますよ。でも、自己主張する人の声がやっぱり通っちゃう。
茂木:そうなんですけど、通るっていうのは、みんな聞こえてますよ。ただ、オタクですごいプログラム書いて、「ワー」って(やっている人も)、いろんな個性があると思うんですけど。
佐々木:それを言ってしまったら、本当にもちろん……。
茂木:なので、アメリカが自己主張しないと(生きていけない社会)、とかいう構図自体が、このクジラ問題をややこしくしている気がするんですよ。そんな単純ではない気がするんですよ、物事や、事態は。わからないですけど。いや、だってナヨナヨっとしてるアメリカ人、ときどきいますよ。センテンスが途中で終わっちゃうとか。
(会場笑)
佐々木:もちろんいます。言語障害の人もいるし。
茂木:だから、どうなんですか?
佐々木:特にこの問題に関して言うと、もちろん全員じゃないんですよ。ただ、例えばアメリカに行って捕鯨のことがニュースになると、そうするとだいたいもうこれは、「また日本人がこんなことやってるよ」的な、そういうネガティブな行動しかない。
茂木:でもそれって、日本の地上波テレビがクソメディアになってる構図とほとんど同じですよね。つまり、ネット上ではいろんな意見があるのに、日本の地上波テレビが、「こういう構図からこういうふうにします」って。それはもうみんな、「あぁ、勝手にやってるわ」って。地上波テレビっていうのはもう参照されるべきメディアじゃなくなってきてるんですよ、ちゃんとした人たちの間では。
ネット上にもっとちゃんとした、ちゃんとというか、多様な意見があるから。アメリカも、僕がアメリカにときどき行くと、やってますよね、CNNとかFOXも、それぞれの立場で。だけどあれはもう終わったメディアじゃないですか、アメリカでも。いろんな都合であんなことやってるんだろうなとか思うんですけど。そこで日本の捕鯨がある描かれ方をしているからといって、それは別にアメリカの人がみんなそう思ってるわけではないと思うんですよね。
佐々木:例えばですよ、私のインタビュー記事が、ある英語新聞にポロッと出ちゃったんですね、2年前に。そこの下についたコメントっていうのが、全部攻撃でした。私に対する。
茂木:それはヤフトピ(Yahoo!トピックス)の下のクソリプの話みたいなのと、ほとんど同じで……。
(会場笑)
佐々木:いや、違います。例えばね、じゃあそれに似たケースで言うと、中国(広西チワン族自治区)に玉林っていう市があって、そこは犬鍋を食べるんですね、夏至の日に。「ライチと犬鍋を食べて精力をつけましょう」みたいな。そこもやっぱり犬を食べるっていうことで、同じように世界中から動物愛護の人たちが来て、「もう犬を食べないでくれ」「犬を殺さないでくれ」って言って、地元の人たちとすごい衝突になる。
これはニューヨークタイムズの記事にもすごく大きく出てるんですけれども、そのコメントを読むと、賛否両論いっぱい入ってるわけなんですよ。例えば、「自分たちだって牛を殺すんだから、犬を殺す人たちのことを何も言えないでしょう」とか、そういういろんな賛否両論があるわけですね。
ところが、捕鯨に関してはそういうことがほとんどないわけですよね。もう一方的。それはいろんな理由があると思います。でも、これは間違いなくそうなんです。まぁ、私が攻撃のターゲットにされているので(笑)。
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