2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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佐々木:はい、わかりました。すいません、では、もう1人質問を。
質問者2:えっと、映画も本も読みましたけども、クジラの問題っていうよりも、もうちょっと上のレベル、メタのところで、今日の話でもすごく気になったんですが、茂木さんが非常に多様な価値観からお話をされて、佐々木さんは声が大きいという話をされていて。
そこでちょっと絡んでくるのは、声が大きいほどどんどん増殖するというか、そういう話がITの力なり、最近のネットの発展というのが後押ししていて、声が大きいほど増殖するとか、あるいはそれに絡んで、「フィルターバブル」とか言ったりしますけれども、自分の考えのところだけを見るというか、そこの範囲だけを求めちゃうという傾向が強くなる。
当然、茂木さんが言っていたように、ある程度のリテラシーのある人は、かえってインターネットによって多様な価値観を知ることができて、そこで判断できるというのはあるんですけど、そうじゃないところで、かなりフィルターバブル的に、特に声が大きいものに誘導されるような、そういうパワーがすごく強くなっている。
その中で影響されて、獲るしかないのか? みたいな感覚に陥ってしまうという傾向が強くなっているという、そういうところの問題が、すごく映画を見て感じました。ぜひ、今日のイベントの中、本当はそこらへんが自分の中で気持ち悪いところだったんですけど、まぁあんまり話に出てこなかったというところだったので、気になりました。
佐々木:はい。そうですね、やっぱりネットでいろんな情報が拾えて、すごく自分の見識が広くなったって思うんですけど、私もネットですごくいろいろな情報検索ができていいなぁと思っていたんですけど、例えばこの映画を取材するようになって、逆に自分の興味のあることにどんどん、逆に狭くなっちゃっているというか、今おっしゃっているように。そういう部分はすごくあるんじゃないかなと思います。
本当にわかんなくなったのは、やっぱり「自分は正しい」って絶対言えない。本当に、「自分はきっと間違ってるんだろうなぁ」っていう。「これが正しいんだよ」って言うことがやっぱりすごく、私はできなくなりましたね、逆に映画の取材によって。
だから、「もしかしたら自分は間違っているかもしれない」っていう気持ちで、やっぱり情報収集したりとか、人の話を聞いたりということが、まずすごく大事なんじゃないかなぁと思いました。
茂木:本当にそれは本質ですよね。今すごく、立場を超えて理解し合うのが難しい時代になっていて。一応、僕もサイエンティストの端くれなんですけど、サイエンスは、そこをなんとかエビデンスに基づいて、橋をつなげたいと思っているわけで。
気候変動なんかもヒューストンで大変なことになっていますけど、「地球温暖化がない」って言ってる人もいらっしゃるし、「ある」っていう人もいるけど。だけど、科学者がデータを提供するので、そこでうまくブリッジできればいいなぁと思ってるわけですよ。
例えばね、佐々木さん、ゲイマリッジ(同性結婚)が日本ではなかなか認められないんですけど。男同士が夫婦になるじゃないですか。それで、子どもを養子にもらおうとするでしょ? それはどっちがお父さんでパパ・ママなのかわかんないんだけど、「そういうところの子どもって変な子どもになる」って言う人がいるじゃないですか。
でも、科学はちゃんと、男性同士のカップルのもとで育てられた子どもは、いわゆる典型的な家庭の子どもに比べて特に変わった発達はしないというデータを提供できるんですよ。だから、「結婚というのは男女の間のものだ」って考えてる人がいてもいいし、「いや、ゲイマリッジも認めてもいい」っていう人もいていいけど、子どもがどうなるのかっていうことについては、科学者は立場を超えたデータを提供できるわけですよ。
それが1つの役割だと思っているので、だからイルカとかクジラの話も、みなさん嫌かもしれないけど、膨大なリサーチがあるので、それをまずちょっとでもいいから調べてから考えてくれないかなっていうか。
佐々木:たぶん、その膨大なリサーチやデータの、解釈の仕方が違うんですよ。
茂木:いやいや、解釈はしないんですよ、科学は基本。だから、事実しかない。その結果……。
佐々木:でも、事実って見る人によってぜんぜん違う……。
茂木:いやいや、科学はそんな甘いものじゃないです。申し訳ないけど、科学はそんな甘いものじゃないです。だからイルカとかクジラは……。それは、ものすごくなんか文化相対主義的な人の科学のものすごい浅い見方で。
科学は単にデータを集めて……。例えばポッドっていうグループ(家族群)があるわけじゃないですか。それが、シャチの場合にはこれくらい続くっていうのが客観的な事実で。じゃあ、「シャチには家族というものがある」と、「家族を大事にする」と解釈するのは人間ですよ。
だから、シャチは家族を大事にするから、シャチを1匹殺すと家族がいなくなるから、かわいそうだって解釈するのは、それはおっしゃるとおり人間の価値観だけど、科学が提供するデータは、そんなことは一切論文には書いてないですから。シャチはファミリーバリューを大事にする、イルカは鯨類だなんてことは書いてないです。科学論文にあるのはデータだけです。それは、すいません、解釈とは関係ないです。ごめんなさい、どうぞ。
質問者2:膨大なデータがあるのはいいんですけど、それをちゃんと我々は見るべきなんだけど、そうじゃなくて、声の大きい人に影響されちゃうケースが多いとか、あとステレオタイプに考えている人が多いっていうのがそれが問題で。
茂木:おっしゃるとおりだと思います。だから例えば僕は、「日本人だからどうだ」っていうのは完全なステレオタイプだと思うし、「アメリカ人だからどうだ」っていうのもステレオタイプだし、「シーシェパードだからどうだ」っていうのも完全なステレオタイプだと僕は思いますけど。シーシェパードだっていろんな人がいるわけだから、きっと。俺は知らないけど。うーん、もっと科学を大事にしてほしいなって僕は思いますけどね、個人的には。
佐々木:いや、とっても大事にはされていると思いますけれども、クジラ・イルカ問題においては。もちろんいろんな科学のデータっていうか、ファクトがあって、それについて……またそういうふうに言うと怒られるかもしれませんけど、いろんな解釈をする人がいる。それが科学者じゃないかもしれない。科学者じゃない人がそれを利用し、解釈するわけですよね。
茂木:っていうか、そういう人がいて、そういうことをやる人がいるということ自体は、自由な世界なので誰も止められない。だから、シーシェパードとかグリーンピースとか、自分の信じるところに従って活動して、そこにお金が行くこともあるっていうのは、そういう人もいるっていうのはいいじゃないですか、別にいても。
彼らは別に政府でもないし、法律に基づく強制力もあるわけじゃないんだから。それが気に食わなかったら、別の、まぁこういう映画を作ってもいいし、やればいいわけで。だからそういう人たちがいるっていうことは別にたいしたことじゃない気はするんですよ。
彼らは単に自分たちがやりたいことをやってるだけなんで。これって、間違っているんですかね? だって法律で別に強制力あるわけじゃない。シーシェパードさんって、プーチンじゃないじゃないですか。プーチンだったら、こうしろって言ったらロシア国内ではそうするしかないけど、別に彼らは単なる民間団体だから。
佐々木:まぁ、そうですね。
茂木:自分たちの信じることで影響力を伸ばそうというのは、それはだって、ショービジネスの人たちだって。AKBの人だって、売れたいと思ってセンターに行きたいとかやってるのと、何も変わらない気がするんですけど。
佐々木:なので、シーシェパードみたいに、AKBもそうかもしれない、メディアの使い方が非常にうまいと。情報発信が強烈なかたちでできるという人たちがいる陰で、それをまったくできない人がいる。
茂木:わかります。今回本当に太地町の方にとっては、すごく助かったと思います。ただね、うまい方々に、「お前らうますぎるから、もっと下手くそにしろ」と言うことはできないじゃないですか。
佐々木:もちろんできないですね。
茂木:だから、こっちがもっとうまくなればいいだけの話。
佐々木:ですね。
茂木:だと思いません? なんか間違ってる? なんかすいませんね、変な感じになっちゃいましたね。
質問者2:いえ、ありがとうございます。
(会場笑)
茂木:今日は、おクジラさまの宣伝イベントです!
(会場笑)
茂木:ふたつの正義の物語。
司会者:ありがとうございます。
茂木:佐々木さん、ありがとうございました。すいませんでした、いろいろ申し上げて。
佐々木:ありがとうございました。楽しかったです。
茂木:楽しかったです。ありがとうございました。
(会場拍手)
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