2024.12.03
企業の情報漏えいで最も多いのは「中途退職者」による持ち出し 内部不正が発生しやすい3つの要素
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司会者:本日はお越しいただきましてありがとうございます。こちらまだできて間もないですが、8月25日に集英社から発行いたしました『おクジラさま ふたつの正義の物語』という書籍の刊行記念イベントで、「価値観が違う人とわかり合える? わかり合えない?」ということで、本日は著者の佐々木芽生さんと、脳科学者の茂木健一郎さんにお越しいただきました。
お二人は今日が初対面ということですけれども、対談を1時間ほどしていただきます。それではさっそくご紹介したいと思います。佐々木芽生さんと茂木健一郎さんです。よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
司会者:それではさっそくはじめます。茂木健一郎さんのことはみなさんよくご存知だとは思います。佐々木芽生監督は第1作『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』という、よくご存知の方もいらっしゃるかと思いますけれども、慎ましい夫婦が現代アートコレクターになったという(ストーリーの)、その大ヒット映画の監督でございます。日本ですごくドキュメンタリー映画の革新を起している方だなと思っています。
今回の『おクジラさま』も、とってもおもしろいストーリーですので、ぜひみなさん、9月9日から(渋谷)ユーロスペースで公開になりますのでよろしくお願いいたします。
それでは、佐々木さんにバトンを渡して進めていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
佐々木芽生氏(以下、佐々木):みなさんこんばんは。今日は本当にありがとうございます。
茂木さん、ありがとうございます。すごく楽しみにしてました。
まず私が『おクジラさま』という映画を撮るきっかけになったのが、『ザ・コーヴ』という映画だったんですね。みなさんの中で『ザ・コーヴ』を観られた方はいらっしゃいますか?
(会場挙手)
佐々木:けっこうみなさん観られていますね。茂木さんはあの時ずいぶんコメントされてたようなんですけれども、『ザ・コーヴ』を観てどうでしたか?
茂木健一郎氏(以下、茂木):えっ、そんなに書いてました? 僕。
佐々木:はい、拝見しました。
茂木:そうでしたか。いや、きっとでも、SNS上でうまいポジション取りをしたんじゃないかな? 本当に心に思ったことと違うことを書いたのかも。
佐々木:そうですか? 一言最後に「イルカ漁には反対です」とズバッと明言されていて。
茂木:あっ、そうなんですか。
(会場笑)
佐々木:覚えてない?
茂木:書いたかも。それもいろんな社会的配慮を含めたギリギリの表現だったかもしれないですね(笑)。(佐々木さんも映画を)撮っていてもわかったと思うんですけど、この問題ってすごいややこしくなっちゃってて、日本においても。その雰囲気自体が僕にとってあんまり心地よくない感じだったので、ものすごく気をつかって書いたのは覚えてます。ですから、今回おクジラさまを撮るのも、いろいろ気をつかわれたんだろうなということは想像してたんですけどね。
茂木:(ポスターを指しながら)これ、山口晃さん(が手がけたもの)なんですか?
佐々木:そうです。
茂木:このポスター、山口晃さんですって。すいません、大変だったでしょう?
佐々木:大丈夫です(笑)。山口晃さんにお願いするのも大変でした。それも含めて……。
茂木:えっ、そうなの? なんで? 「嫌だ」って言ったんですか?
佐々木:いえいえ、もう巨匠なので、こんな小さな映画のために大巨匠の山口先生に書いていただくなんて……。
茂木:これノーギャラで書いてくださったんですか?
佐々木:いえ、ギャラは一応、はい(笑)。
茂木:普通にギャラを渡すと高くなるんじゃないんですか?
佐々木:はい。もうゼロがちょっと、桁が違うようなお値段でお願いしました。
茂木:かなりお値打ち価格で。原画はどこにあるんですか? 今。
佐々木:原画はギャラリーにあります。私たちの手元にはないんですよ、残念ながら。
茂木:コヤマさんだっけ? 違ったかな、山口さんは……。
佐々木:ミヅマアートギャラリーさんです。
茂木:ミヅマさんのとこかぁ。じゃあ、所有権はミヅマにあるんですね。
佐々木:そうですね。原画のほうは。
茂木:わかりました。
佐々木:でもポスターはちゃんと販売しますので。
茂木:それは権利があるわけですね?
佐々木:はい、出していただくということで。
茂木:すいません、脱線しちゃって。
(会場笑)
茂木:なんかいろいろ大変じゃないですか、この問題って。
佐々木:大変ですね。やっぱり両極端なんですよね、賛成・反対っていうのが。「捕鯨」というのがひとくくりにされちゃっていて。捕鯨といっても南極海の「調査捕鯨」とか、「商業捕鯨」、こういう沿岸のちっちゃいイルカやゴンドウクジラを獲る太地町のような人たちが携わる「沿岸捕鯨」など、いろんな捕鯨があるじゃないですか。そのへんもごっちゃになってるし。
あとはクジラとイルカも全部で80種類以上いて、絶滅危惧種もいれば、そうじゃない、いっぱいいるものもいる。いろんな複雑な要素があるんですけれども、すごい単純化されてしまって、極論だけが、なんか……。
茂木:ちょっとすいません、少し予定調和になっちゃうとおもしろくないので、本でも書かれてたんですけど、僕はどっちかと言うとちょっと違う見方をしていて。
彼ら(捕鯨の反対派)が普遍的な原理だと思っているところから見ると、いわゆるイルカからはじまり、巨大なナガスクジラ類まで、何を基準にしてるのかなんですよね。(イルカ・クジラの)社会性なのか、インテリジェンス・知性なのか。いろんな種類のクジラがいて、いろんな獲り方があるから、それを一概に論じられないという立場よりは、どちらかというと、彼らの主張は、知性を持った生き物をああいうかたちで捕獲するのはどうなのかという1点に、僕は彼らの関心があるような気がします。
佐々木:反対の人たちですね?
茂木:そうです。だからそれはちょっと違う感じを持ってます。それは論としてどうかということは別として、それを全部乱暴にまとめているというよりは、その原理から見ると、いろんな異なる事象がある一定の評価がされるということだと僕は理解していますけれども。
佐々木:クジラとイルカって知性があるんでしょうか? 脳科学者の茂木さんから見て。
茂木:そこなんですけど、それについてはいろいろなオンゴーイング・リサーチ(注:ongoing research:継続中の研究)で、いろいろなコントロバーシー(注:controversy:議論、論議)があるんです。例えばジョン・C・リリーなんかがイルカの言語の研究をして、彼はもともとアイソレーション・タンクとかをやっていた人で、LSDとかもやっていて、人間が思っている、人間の知性とは違うタイプの知性なんだけど、イルカには知性があるということを科学的に発見しはじめた、最初のパイオニアですよね。
だからややこしい話、そうすると実はタコちゃんも、普通のタコも知性があるみたいな話になってきてて、そうすると「タコ焼きはどうなんだ」みたいな話になるんですけど(笑)。
(会場笑)
茂木:ただ、世の中の趨勢としては、人間中心的な知性観というよりは、イルカを含め、ひょっとしたらタコさんも、人間とはちょっと違うんだけど知性のスペクトラムの中にあって、それはできるだけ尊重しようねという流れが、なんとなく雰囲気としてあると理解してるんですけどね。
佐々木:そうですね、「人間に近い」とか、「人間みたいに社会生活を営む」とか、人間がやっぱり親近感を持てる動物っていうことがまず一番にあるんじゃないかなと思うんですね。そのジョン・C・リリーの研究なんかはやっぱり一番発端になっているんですけど、「イルカは賢い。」イルカは賢いから、いつのまにか「クジラも賢い」みたいになって。
茂木:だからマッコウクジラなんかは動物界で最大の脳の重量を持ってるわけですけど、あとは脳と体の比率とか、いろんな指標があるじゃないですか。だからそれ、本当のことはわからない。だって人間だってね、「我々は賢い」って言ったって、「証拠見せろよ」って言われたら、ねぇ、困るじゃないですか。
佐々木:IQテストだけじゃ「賢さ」は測れないしね。
茂木:「賢さ」って、そういう意味で言うとすごい主観的なものだし。ただ、ざっくり見てなんか賢い雰囲気の……。これってだから、科学的なエビデンス出せとか言ったってどうせ部分的なものなので、それがクジラとかイルカはなんか賢い雰囲気の動物さんだなみたいな雰囲気は、最近もう、まぁこの10年、20年、30年で出てきてることは出てきてるかもしれないです。
佐々木:たぶん、太地町の漁師とか日本人の多くの方が違和感を持つのは、じゃあ(イルカやクジラが)賢い動物だから……。
茂木:ちょっと、そこがちょっとおかしいと思うんですよ。日本人……。監督、そこからやっちゃいます?(笑)
佐々木:はい(笑)。
(会場笑)
茂木:「日本人の多くが」っていうのが……。僕、この議論が気持ち悪いと思ってる理由が、「日本人」という単位で語られるのがすごく違和感があるんですよ。
佐々木:はい。では、「漁師たち」に……。
茂木:いろんなタイプの方がいらっしゃるので。だから日本人の中でも、いろんな立場の方がいらっしゃるじゃないですか。なので、僕、『ザ・コーヴ』の(映画評の原稿を書く)時にすごく気をつけて書いたのは日本語か英語かというと、どっちも気をつけたんです。
日本語で書くと「日本の伝統」だとか「日本の伝統に外国から口を出すな」みたいなタイプの人に巻き込まれるのが嫌だし、今度は英語で書くとおもしろいんですよ、日本のSNSって。「コイツは日本の恥部を英語で発信している!」みたいなことを言う人が出てくるんですよ。
佐々木:すごいですね。誰がそういうこと言うんですか?
茂木:SNSの人たち。だから、日本語で書くのも英語で書くのもすごく気をつかうテーマだから、すごく慎重に書いた記憶あるんです。
とにかく、僕は個人的にはですよ、「イルカとかクジラの漁は日本の伝統だから、日本人はクジラ肉を食べるのが伝統だったのに、西欧的な価値観を押しつけてそういうことを何か言うのはなんなんだ」っていう文脈自体を僕は受け入れていないんで、「それを前提に共有して話しましょう」って言われると、「いや、俺は違うから」みたいに思っちゃうんですけどね。
佐々木:なるほど。はい。
茂木:ですから、すいません、ちょっと内輪の話になりますが、G1(注:一般社団法人G1)っていう日本の若手経営者の団体で、意外とどっちかって言うと「ちょい右」みたいなタイプの人が集まってるところがあるんですよ。
佐々木:ちょい右(笑)。
茂木:僕、そこに仲間がたくさんいるんですけど、そこで佐々木監督のクラウドファンディングの話が盛り上がってたのは、実は見てて。さっき俺、ごまかして「すいません、気づきませんで」って言ったんだけど、本当はちゃんと気づいてて。
その時も若手経営者の方々が、意外となんか、そういう「ちょいナショ(ちょっとナショナリズム)」みたいな感じで言ってたのが、俺はちょっと、「そこいいです」みたいな感じだったの、正直言うと。
佐々木:たぶん、私も出発点、正直言ってそこだったと思ったんですよ。
茂木:そこっていうのはどこですか? 「ちょいナショ」?
佐々木:ちょいナショというか、やっぱり『ザ・コーヴ』を観てすごいびっくりして、「こんなこと言われちゃっていいのかな?」みたいな。ニューヨークにいると、やっぱりすべてが反捕鯨的なネガティブなメッセージしかないわけですよね。メッセージどころか、情報がまずないと。
茂木:でも、C・W・ニコルとか、平気ではりはり鍋、おいしく食べてたよ。僕、一緒にC・W・ニコルとはりはり鍋食べたんですけど、食べちゃったんですよ、クジラ。
(会場笑)
佐々木:C・W・ニコルさんは、『勇魚』っていう小説を太地町で……。
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