2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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茂木健一郎氏(以下、茂木):だから僕、佐々木さんの話を先ほどからうかがっていて、一貫して人間界のことをお話しされてると思うんですけれども、やっぱりクジラは人間界の人たちじゃないんで、だから人間界の対立の構造とかがクジラにとばっちりを与えるということ自体が、僕は個人的にはどうなのかなと思うんです。
基本的に捕鯨とかイルカの追い込み漁については抑制的っていうので、全面禁止しろとは言わないけど、人間界でのあれこれを、とばっちりを受けている彼らに押し付けるということ自体は……。だから僕、そっち(クジラ・イルカ)の方にどっちかと言うと気持ちがあるんです。
僕、小学校の時に蝶々の研究をしてたんですよ。(蝶を)採るっていうことしか考えてなかったから、パッて出たらパッと採る。最近は、もう20歳ぐらいから採らなくなって、今はもう観察するだけなんですよ。
そうすると、採ろうと思って蝶を見てた時には見えなかった彼らの行動のニュアンスが、採ろうと思っているわけじゃないから、ずっと見てるわけですよ。そうするともっといろんなことが見えてくる。
なんか獲って利用してやろうとか、それは1つの商業行為としてはいいんだけど、それでは見えない、生き物としての存在感っていうか、生態の豊かさみたいなことを、もっと我々は学ぶべき時期に来ていることは事実だと思うんです。
だから太地町の話で言うと、映画の中でもありましたよね、ホエール・ウォッチングとかドルフィン・ウォッチングとかドルフィン・スイミングで、どれぐらい経済的に成り立つかわからないけど、そっちにシフトしていったほうが、太地町としても「クジラの町」っていう看板がそれでなくなるわけではないので。クジラの町というスタイルが変わるだけだから、僕はそっちのほうがいいと思うよ、個人的には。
でもそれは別に、太地町の人に押しつけようということでは(なくて)。(僕は)よそ者だし、個人的な考え方で。そういういろんな考え方の人が日本人でもいるんじゃないんですかね?
佐々木芽生氏(以下、佐々木):もちろんいろんな考え方があると思うんです。太地町の今の町長さんはそのへんはすごくよくわかってらして、昭和の三大町長と言われた庄司五郎さんという町長が、昭和44年ぐらいかな? そういう時に、本当にもうガンガンとクジラを獲ってる時に、「そのうちにクジラが獲れなくなる時代が来るんだ」っていうことをその町長さんが予言してるわけですね。
ただし、「太地町は決してクジラと生きることを諦めない」と。 ある時は獲って食糧として食べたかもしれない、ある時はイルカのショーみたいなかたちでエンターテインメントとしてクジラ・イルカを獲るんだと。今彼らがやろうとしているのは、世界的なクジラの学術都市として、そこでありとあらゆるクジラの研究ができるように、そういう施設・設備を整えていこうということを構想として、今、太地町は考えているわけですね。
茂木:あと俺、クジラとかイルカとかがとばっちり受けててかわいそうだなって思ってる側ですけど、だけども太地町に行って隠し撮りしたりとか、漁師さんたちに「何やってるんだ」って言おうとは思わないわけじゃないですか。僕のイルカへの共感の強さっていうのは、その程度かもしれないじゃないですか。
逆に言うと、あそこに行っている人たちって、ものすごくイルカちゃんの痛みとかを感じてる人たちなんだと思うんですよ。そのアプローチがもうファナティック(注:狂信的)になっちゃってるんだけど、共感する力はものすごく強い人たちなので。だからそういう意味では、僕よりもそこはいい人なんだと思うよ(笑)。俺、イルカやられてかわいそうだなと思うけど、わざわざ太地町まで行こうというパッションまではないんだけど、彼らは来るわけだから。
佐々木:シーシェパードも含めて、海外から来てる活動家の人たちが一番大きく誤解されているのって、なんかお金のためにやっていると。お金儲けのためにやっているんじゃないかということをよく言われるんですけど、彼らは決してそうじゃなくて本当に自腹を切って、はるばるやってくるわけですよね。太地町は本当に遠いところなんですよ。東京から行ってもすごい遠い。
茂木:どうやって行くんですか?
佐々木:私はいつも新幹線で名古屋まで行って、そこから(伊勢鉄道の)南紀1号というローカル線で、紀伊半島を4時間ぐらいかけて南下するんです。
茂木:4時間、その南紀1号というのは太地町まで行ってくれるんですか?
佐々木:太地町までは南紀は行かないので、隣町の那智勝浦で降りて。
茂木:那智勝浦からどうやって行くんですか?
佐々木:タクシーでとか、迎えに来てもらってとか。
茂木:タクシーで30分とか?
佐々木:15分から20分ぐらいですね。それか、大阪回りで来ると、特急「くろしお」という電車で太地町まで着くんですけど。それもやっぱり4時間ぐらいかかる。
茂木:佐々木さん、今回の作品でほら、イルカ漁をずっとやってたんだけど、本当はかわいそうだとずっと思ってたっていう人いたじゃないですか(笑)。
佐々木:(笑)。
茂木:だから太地町の漁師さんの中にもいると思うよ、1人か2人ぐらい。いつもこうやって「とどめ!」とかってやってたんだけど、本当はずっとかわいそうだなと思ってたんだよなぁみたいな(人が)。人間だから。
佐々木:書籍の中に出てくる人ですよね。
茂木:人間だから、そういう人もいるわけじゃない。だから、やっぱね、太地町の人はみんな「これからも伝統で獲って食うっていうのが俺たちの生きる道なんだ」って思ってて、一方アメリカの人が、「いや、それはもう本当に今の時代は許されないことなんだ」って、単純にそういう2種類の人間が日本とアメリカにいるっていう構図はきっと違うと思うんだよなぁ。
佐々木:もちろん違うと思います。そこが私のこの映画のテーマだし、本のテーマでもあって。いろんな意見を持つ人、いろんな考えを持つ人、太地町の中でも、やっぱり「クジラはおいしくないから食べない」という議員さんがいたりとか。なので、太地町の町民だからといって、全員クジラをおいしいと思って食べてるとは……。
茂木:だよね。
佐々木:追い込み漁を100パーセント支持してるとか、そういうことは決してない。
茂木:でもね、俺は本の中でその人が一番好きでした、人間として。イルカをずっと殺しまくってたんだけど、本当はかわいそうだと思ってたんですよって。でも、かわいそうだと思ってるんだけど、そういう中で生まれて育って、それが生きる道だからしょうがないからやってて、だけど本当はかわいそうだと思ってたっていう。あの人が人間的に一番、俺はこの人、いい人だなって。
佐々木:そうですね。あの漁師さんは、彼は(静岡県伊東市の)富戸っていうところの漁師さんなんです。やっぱり太地町の前には、富戸……。富戸って東京からも近いんですけど、ダイバーの方がすごく行くんですね。あそこは本当に太地町のように、『ザ・コーヴ』で描かれているように、(イルカの)血で(海が)真っ赤に染まるみたいな。
茂木:えっ、そうなんだ。
佐々木:昔はそうだったらしいんですね。そこは本当にバンドウイルカを獲って食べる風習があって、わりと最近までお肉屋さんがなかったみたいなところなんですね。
茂木:えっ、イルカで賄ってたの?
佐々木:はい。そこの漁師さんが、三代続く地元の漁師さんで、イルカを獲っていて。でも実は心の中で殺すときに、もう「ごめんなさい、本当にかわいそう」と思いながら殺してたっていう。それがある時、その漁師さんがまたすごく素敵な人なんですけれども、かわいそうだと思う気持ちを溜めてたバケツが、あるところから溢れ出しちゃったっていうふうに言うんですね。
茂木:いい人だよねぇ。
佐々木:だから、人間なのでそれぞれみんな思いは違うと思うし。
茂木:逆に言うと、シーシェパードの人がさぁ、クジラ肉をつい「うまい」と思っちゃうみたいな、そういうところも。もしそういうことがあったら、はりはり鍋、うまいよ、クジラの。C・W・ニコルと行った店、すごいうまかった。はりはり鍋食べたことあります?
佐々木:何回かあります。太地町で。
茂木:いや、うまいんですよ、これが。だからシーシェパードの人たちに「これ、ちょっと食べてみて」って言って、「うめぇ!」って言って。「はりはり鍋って言うんだけどさ」「うわー!」みたいな。
佐々木:ははは(笑)。
茂木:そこで、捕鯨はいけないと思いながらもおいしいと思っちゃう自分の罪深さ、みたいな。そういうところに僕はなんか人間の……。すいません、なんか本当に(笑)。
佐々木:いえいえ。すいません、じゃあパート2で撮らせていただければ(笑)。
茂木:みなさん、9月の6日。もうそろそろ時間的なものが、終わりですよね?
司会者:はい、そろそろ。
茂木:9月6日?
佐々木:9月9日です。
茂木:9日、みなさんぜひ見てくださいね。
佐々木:よろしくお願いします。
茂木:こういうのって口コミが大事なんですよ。かなりおもしろそうな映画だっていうことはわかってると思うので、ドラマやドキュメンタリーのヒットは口コミが。
佐々木:ぜひよろしくお願いします。どなたかがおっしゃってくれたのは、映画っていうのはすごいもつれた糸を解きほぐしたもので、書籍っていうのは1回解きほぐした糸をもう1回編み直したものじゃないかなっていうふうに言ってくださって。
茂木:いや、これすごいいい本ですよ。
佐々木:ありがとうございます。よかった。
茂木:私、最初から最後まで読みましたけど、いい本です。本当に。達者ですよね、ドキュメンタリーを撮るだけじゃなくて。
佐々木:苦しかったです、本当に。
茂木:集英社に、かなり缶詰めして?
佐々木:はい、外に出してもらえずに……。
茂木:追い込み漁で書いたという。
(会場笑)
佐々木:かなり追い込まれました。追い込まれてやっと、はい。
茂木:担当編集者の方もあそこにいらっしゃいますけれども。いい本ですよね?
司会者:もうすばらしい本です。みなさんもぜひ。
(会場笑)
茂木:そろそろ、それでは時間ですか?
司会者:はい、ありがとうございます。
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