2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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坪田朋氏(以下、坪田):次に行きます。「CXOに必要なマインドセットはなんでしょうか、どういった人材が向いてると思いますか?」。これは難しい質問ですね。先ほどCEOの分身的な……。
田川欣哉氏(以下、田川):たぶんね、会社のスケールによってちょっと違うと思うんですよね、ステージによって。たぶん1、10、100、1,000、万、10万みたいなクラスでいった時に、10万ぐらいの企業のCXOと100人ぐらいの会社のCXOではやることがぜんぜん違うはずで。メルカリは今社員どのぐらい? 1,000人超えているぐらいですか。DeNAはどのぐらいですか?
坪田:今1,600人ぐらいです。
田川:ですよね。坪田さんはDeNAで250人ぐらいのデザインチームを見ていたんですよね。だからたぶん、ステージによっていろいろ違うんじゃないですか?
坪田:あと僕、前職のBCGという会社で大企業のお手伝いをさせていただく時に、仮に業務体系にはすごくアセットを持っていて、「ここでユーザー体験を作りたいな」みたいなことを思っていた時があるんですよ。まぁ、今もやりたいんですけど。
その時に、もうすでにできあがっていてホールディングス型になっている会社に各取締役を置いて、そこに入ってそれを実行するのはものすごく難易度が高いんです。
そこで求められることはある意味政治や交渉力だったりするので、ぜんぜん違うというのは肌感としてもありますね。それがスタートアップと、メガベンチャーと、大企業などでいろいろ変わってくるのは、確かにそうかなと思います。メルカリに今求められるものはなんですか? 1,600人ぐらい……。
田川:1,000人ぐらいですね。今デザインチームが50人ぐらいで、ここから100人ぐらいを目指そうという感じで。
ちょっとステージによっても違うんですけど、1つ絶対に必要なのは、やっぱりボードのメンバーに「デザインはこういうふうに理解してね」「ブランドというのはこういうことだよ」みたいなことを、わかりやすくちゃんと説明していかなきゃいけないんですよね。
ブランドとかも、それこそ「ブランディングはこういう順番でやるんだよ」「やたらめったらやればいいわけじゃなくて」みたいなこととかを説明しなきゃいけない。「だからこういう順番で、ここにこんな投資が必要で」みたいに、その全体像みたいなものを構造化してしっかり言語化して話せるようなスキルが必要です。
たぶんボード……ちょっと汚い言葉で言うと、CXOはボードから舐められたら終わりだと思うんですよ。デザインとかエクスペリエンスの質は、量で語れないから。だから、けっこうその人自身がボードのメンバーから信頼されているかどうかがすごく大きくて。これはけっこう大事ですね。
難しいのは、経営言語とか、経営者から信頼されるその顔とは別に、現場のデザイナーたちからシンパシーを持たれなきゃいけないところです。その行ったり来たりを有限時間内で実行するのは、けっこう大変なんですよね。
やっぱり両方をやろうとするとどんなに優秀な人でも時間がかかるし、しかも最初に構造がなかったところからそれができるところまでが一番しんどいんですよね。できるようになったあとはプロトコルができあがるからあれなんですけど。
だから、けっこう具体も手も動かさなきゃいけないけど、すごく抽象度の高い話もできるみたいな。坪田さんもよく「手を動かすのをやめない」みたいなことを言っているじゃないですか。
坪田:そうですね。だってそうしないと現場の人たちがついてこないし、3年経った時に感覚が狂いますよ。意思決定をし続けられる人間であるためには、手を動かし続ける。もしくはそれに近い学習を続けないと「3年経ったら死ぬ」みたいなことがあるので、そのへんは意識しています。
田川:そうですね、だからその2つは……まぁCDOも近いですかね?
広野萌氏(以下、広野):そうですね。僕はこの質問に対して、前に田川さんと坪田さんと僕でポッドキャストでイベントをやった時に、例え話で「CEOが父性であるのであれば、CXOは母性である」みたいな話をしたと思うんです。
それは、フェーズが100人以上であればわりと合っているかなと。もちろん、その会社の役員の性格とか、スキルセットにもよると思うんですけど、CEOがある意味将軍なわけですよ。「者ども、かかれー!!」という。
(会場笑)
そういう1つの方向性を示す。それでメンバーみんな言うことを聞くんだけど、たまに「いや将軍、言ってることマジキツいっすわー」「俺、もうついていけねぇっすー」「なんか言ってくださいよー」みたいな、いるわけじゃないですか。はぐれ者とか、文句言うヤツみたいなのがいて。
「いや、そんなこと言ってもね、将軍が言っているのはこういうことだから」と諭したり、なんなら将軍がちょっと間違っている方向に行ったら「将軍、なんかそっちじゃないらしいよ」「こっちに行ったほうがいいよ」みたいな。
そうやって諭すというか、包み込む。みんなを包み込む。殿(しんがり)としてみんなを「こっちの方向だよ」というふうに包み込みながら……。
田川:安藤さん、すごく首を傾げているけど(笑)。
(会場笑)
坪田:違う意見か(笑)。
田川:特殊なケースなんじゃないの?
安藤剛氏(以下、安藤):いやいや、僕のイメージもそんな感じです。
田川:あっ、合ってます?
広野:あぁ、よかったです。そういう感じなんですよね。
坪田:キャリア的にはどうなんですか? 結局いろんなキャリアがあるかなと思っていて、僕のプロセスでいうと、やっぱり制作会社に3年いてスキルを覚え、事業会社で数字感覚を覚え、コンサル会社でエグゼクティブな人たちの立ち回りとか、説得プレゼンを覚えるみたいな。
僕のキャリアでいうとそんな感じだから、9年ぐらいかかるんじゃないか、みたいなのがあるんですよ。それが今の若者はけっこう情報を摂取しやすくなっているから、たぶん僕らよりもうちょっと短縮できる可能性もあると思うんですけど、そういう観点はやっぱり必要ですよね。
たぶん今のデザイナーのポジションにおいて難しくなっているのは、手を動かしてスキルはできるようになったけど、エグゼクティブとの立ち回り、もしくはビジネス感覚で立ち回るような話をするのが難しい状況ではあるのかなと思いますね。それを教えてくれと言ってもなかなか伝授できないじゃないですか。田川さん、どうやって伝授していったらいいですか?
田川:それはね、はじめちゃん(広野氏)に答えがありますね。
広野:えっ、なんでしょうか(笑)。
田川:先ほど堀江くんも言っていたけど、いわゆるデザイナーが1回経営者になる。
広野:あぁ、そうですね。
田川:そう、自分でスタートアップをやってみる。
広野:確かに。
田川:そうすると、数字感覚やお金の意味とか、組織の難しさとかがいろいろ入ってくるじゃないですか。たぶんそれを1回やると先ほどの話のCEOの分身みたいに、1回自分でCEOをやったことがあるけれど、デザインもちゃんとできるみたいな。
確かに「コンサルティング」「制作」「事業」の3つはすごく大事なんです。だからそれを踏むタイプか、そのどこかを1~2個経験したあとに自分でスタートアップをやってみて、それでCEOのつらさみたいなものもわかるようになるみたいな。
広野:そうですね。会社を興して事業をやってみるというのは、本に書いてあるようなことばっかりがマジで起こるというか(笑)。
もう定石と言われている「こういう課題があるから絶対ダメだよ」というアンチパターンが世の中に溢れているにもかかわらず、多くのスタートアップがそれを踏むじゃないですか。やっぱりそれは、経験しないと本当に自分の中で「これはダメなんだな」と染み付かないと思うんですよね。
田川:あと、経営者から見ると……これ、誰と話していたかな? とにかく経営者は、当てたことのあるやつの言うことしか信じないんですよ。
広野:あー、確かに。
田川:「君、何をやったの?」みたいな。やっぱりトラックレコードの中に「これをこのくらいやりました」みたいな、なにかを当てたことのある人だけが持てる特殊な感覚があるじゃないですか。
ジャッジには絶妙に微妙なジャッジがあるけど(笑)、それはどうやったら得られるのかなみたいなところで、自分でやってみるというのが1つありますよね。
坪田:それを自分でやるんですよね。安藤さんも自分でサービスをずっとやっていましたもんね。
安藤:私は7年前にTHE GUILDを作る前、実はiPhoneのインディペンデントのディベロッパーをやっていたんです。うちの深津もそうなんですけど、同時期に2人ともディベロッパーをやっていて、当時はiPhone黎明期で、有料のアプリがよく売れた時代なんですよ。
私はそれを始めた時に、「どうしても日本のApp Storeで1位を取りたい」という目標を掲げてしまったんです。それで「じゃあ1位を取るためには何が必要なんだ」というのを逆算して、プロダクトのデザインから最終的に100万人近いユーザーを抱えてしまったので、そのカスタマーサポートも自分でやらなければいけなくなって。
最初に作ったものが必ずしも完璧なわけではないので、ユーザーとインタラクションすることでどんどん改善していくこともやらなければいけない。いいものを作ったからといって、それが売れるとはぜんぜん限らないわけですよね。
ですから、その認知を広めるためにメディアとタイアップして仕掛けていくか、それでメディアの人に扱ってもらうには、わかりやすいブロガーとかの紹介が必要とか。そういうことを全部1人でやっていって、最終的に日本のApp Storeで1位になれたんです。
やっぱりCXOとしてすべてのビジネスプロセスを横断して意見をするには、入り口から出口まで1回は経験する必要があって。どんなサイズでもいいので、まずは自分で100パーセントコントロールできるビジネスをやってみるというのは、すごく必要なことなのかなと思っています。
その中で一番大事なのは、いかにして自分の中でフィードバックループをインストールできるかというところに限ると思うんですよね。
広野:一度抽象化が必要ですよね。
安藤:そうですよね。別に最初はビジネスじゃなくてもいいと思うんですよ。ダイエットとか、節約とかですらいいと思うんですね。
ただ、客観的に定量的な数字を見て、ちゃんと自分で比較をして分析ができるというフィードバックループをいかに自分にインストールするか。才能を伸ばしていく人は、これを早いタイミングで身に付けているんじゃないのかなと思います。
広野:すごいですね。ダイエットから始めるCXOという(笑)。
田川:本が……。
坪田:本のタイトルに(笑)。
坪田:あれですよね、当時iPhoneアプリが世の中で作れるようになった時、深津さんも最初はカメラアプリの人だったんですよ。そこからiOSアプリのディベロッパーになり、カメラアプリがヒットしたと。安藤さんも確か同じぐらいのタイミングですよね?
安藤:私はカレンダーです。
坪田:そうですよね。あれは確か有料ですよね。
安藤:有料です。
坪田:ですよね。あれはものすごく売上的にもバーッといって。当時の売上規模がすごかったな、みたいな印象があります。
田川:僕も有料で1位を取ったことがありますよ。
坪田:えっ、なにでですか?
広野:マジですか?
田川:無印が最初に出したカレンダーアプリを深津くんが作って、ノートアプリを僕が作ったんですよ。
坪田:へぇ~。
田川:で、両方、有料・無料で1位を4ヶ月ぐらい独占するみたいな。
田川・広野:へぇ~。
広野:そうなんだぁ。
坪田:そうなんですね。
田川:あんまり人に言っていないけど(笑)。
(一同笑)
坪田:やっぱり作ってみるプロセスでサイクルを回して、自分で一通りやってみるみたいなのは必要な素養かもしれないですね。
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