2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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データによる技術分析や未来予測などを提供するアスタミューゼ株式会社。今回、「事業を目利きする力を養う方法」をテーマとしたセミナーに、『起業の科学』著者の田所雅之氏と同社代表の永井歩氏が登壇。大企業が見逃している新規事業成功の「仕組み」や、大企業に多い新規事業の失敗パターンなどが語られました。
司会者:続きまして、永井さん、よろしくお願いいたします。
永井歩氏(以下、永井):では、私も資料を映します。情報量が多い内容になりますので、資料は後ほどご確認いただければと思います。重要な部分をまとめて、25分程度お話ししたいと思います。
まず簡単に会社についてご紹介します。私たちアスタミューゼは、20年近く事業を展開しており、オープンイノベーション、投資、新規事業の支援を行っています。データベースの会社で、世界中のファクトデータを集めています。
特にテクノロジー関連のデータは、企業に提供し、市場や価値、課題の分析に役立てています。最近では、これらのデータを「社会課題」や「地球環境」といったテーマに結びつけて定義し、提供しています。
私たちは世界中のテクノロジーデータを世界一多く保有しており、このデータを活用してさまざまなインサイトを生み出しています。
インサイトの生成には、アナリストやエキスパートだけでなく、AIも活用しています。
創業から最初の10年は、アルゴリズムとエキスパートが中心でしたが、最近では生成AIを含む高度なAIとコラボレーションして、より強力なインサイトを提供するかたちになっています。
私たちは、世界中のマーケットや将来有望な分野のデータを集計し、情報として提供しています。先ほどの田所さんのように投資を行う方々も、私たちのデータベースに登録されており、世界中のファンドやESG投資、ソブリン系ファンドからベンチャー投資まで、さまざまなお金の流れを追跡しています。
例えば、スタートアップや大学、大企業への投資を見ていくと、資金が正しくゼロから成長へと進むかどうかが可視化されてきます。お金が流れ込まなければ成長は見込めないため、私たちはこういった流れを蓋然性高く可視化しています。また、さまざまな企業が持つ強みを活かし、どの成長産業に取り組むべきかを支援しています。
永井:今日のテーマでは、新規事業創出や事業ポートフォリオマネジメントに特化してお話ししたいと思います。
弊社では過去にベンチャー投資も行っていましたが、現在は主に大企業の数十億円、数百億円規模の事業創出を支援しています。これまで食品、化学、機械、自動車など、さまざまな業界をサポートしてきました。
これから少しお話ししますが、私たちは投資家サイドにもデータを提供している点が特徴です。特に新規事業を生み出す人材や組織、強みをデータで可視化し、投資家に提供しています。
その中でも、ESGに関わる部分が重要です。ESGはリスクと見なされることもありますが、企業にとっては成長の機会でもあります。環境ビジネスやグリーンビジネスにおいて、いかにイノベーションを起こし、新規事業を生み出す能力や人的資本があるかが評価のポイントです。
これにより、バリュー投資ではなく、成長する企業をデータで見極めることが可能になります。私たちはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)にもデータを提供しており、企業や業界がどれだけ社会課題を収益化できるかを予測しています。
これを活用して、政府がどの企業に補助金をつけるべきか、未来を見据えてどのような規制を作るべきかを判断し、企業価値を高める支援を行っています。また、雑誌や書籍、新聞などにも情報提供を行っています。
永井:簡単に会社紹介をさせていただきましたが(笑)、今日のメインテーマである「新規事業の目利き」について、「位置づけ」「失敗パターン」「在り方・見極め」というかたちでお話ししたいと思います。先ほど田所さんから重要なエッセンスを多く共有いただいたので、それを踏まえてお話しします。
私は、大企業が持つべき知識や、理論はわかっていても意思決定が難しいケース、またスタートアップとは異なる強みをどう活かすかといった点について補足したいと思います。
私たちは、多くの大企業からこのような相談を受けています。
今日参加されている方々の中にも、ベンチャー投資や新規事業投資をされている方がいらっしゃるかと思いますが、成果を上げている中でも経営陣やステークホルダーとのギャップを感じている方も多いのではないでしょうか。
例えば、数億円から10億円程度の新規事業をいくつか立ち上げたものの、社内で「その規模では価値がない」と評価されたことはありませんか(笑)? 弊社のお客さまは、数千億円から数兆円規模の企業が多いので、「10億円規模の事業では経営陣が納得しない」というフィードバックを受けるケースがあります。
また、「新規事業に対して短期でROI(投資収益率)の説明を求められたことはないか」ともよく聞かれます。顧客の声を聞き、PMFを達成しつつも、成長がまだ立証できていない段階でROIを説明するのは難しいものです。バイアスがかかってしまうこともあり、「蓋然性が足りない」と指摘されることが多いのではないでしょうか。
新規事業開発の中で、スタートアップとの協業も含め、売上がまだ数億円規模のスタートアップと組むことがあります。その際、「オープンイノベーションをしても、数億円以上の新規事業を生み出すのは難しい」と感じている方もいるかもしれません。
しかし、これは多くの企業が抱える共通の悩みであり、「自分たちだけが抱えている問題」ではないということをお伝えしています。
永井:ここで、新規事業における位置づけについて少し整理したいと思います。まず、商品の新陳代謝やサービスの寿命、さらには企業の寿命もどんどん短くなってきています。そのため、新規事業やイノベーションのサイクルは、以前よりも頻繁に起こす必要がある状況です。
日本企業は特にこの点が苦手で、インクリメンタルな改善、つまり現在行っている事業の延長線上の改善が中心となる傾向があります。一方で、米国や中国の企業は新規領域、新商品、新サービスの開発に力を入れています。
日本企業は100年続く企業が多いという面もありますが、今後中長期的にそれが維持できるかどうかは不確かです。
事業ポートフォリオを見た時、新規事業の比率が低すぎる企業は、新陳代謝がなくサステナビリティが低いと評価されることがあります。しかし、「新規事業をやればいいのか」という問いに対しては、成功率の低さが問題です。
ベンチャー投資でもプロのキャピタリストが投資しても、高いリターンが得られることは当たり前ではありません。新規事業の経験がない方が取り組む場合、成功率はさらに低くなるのは間違いありません。しかし、積極的に新規事業に取り組む企業ほど成功率が高くなります。
これは、シリアルアントレプレナーのように繰り返し経験を積むことで、成功の再現性が高まるためです。スタートアップ経営者が何度も成功を重ねるように、大企業でも同じ人が新規事業を繰り返すことで、成功率が上がるのです。
ただし、大企業では一度失敗すると異動させられることが多く、別の人が新規事業に取り組むため、シリアルアントレプレナーが生まれにくい構造になっています。これが成功率を上げにくいジレンマになっているのです。
新規事業の成功は、内容そのものよりも、仕組みとチャレンジの回数に因果関係があります。そのため、会社としてもこの部分を重視する必要があります。
永井:残念ながら、日本企業では「本業が傾いた時に新規事業を始める」か「本業が好調な時に余剰資金で始める」というパターンが多いです。
これだと、単発で成功するかどうかに依存し、仕組みの議論に発展せず、個人の能力に依存しやすくなります。
先ほど、田所さんから個人か仕組みか、経営者か仕組みかという話がありましたが、大企業ほど仕組みで新規事業に取り組む必要があります。
しかし、業績不振がきっかけで「本業を補填できるような奇跡の事業を生み出したい」となり、結果的に誰もうまくいかず、外部のファンドが入ってくるというパターンがよく見られます。
「奇跡の事業」を期待する声が本業の厳しさに比例して高まり、「十億円の事業でもいいから立ち上げたい」と相談を受けることがありますが、結局何も始まらず1年が経過。そして、「今度は100億円の事業をやれ」と言われ、さらに何も進まず、最終的には「1,000億円をやりなさい」と言われる事態に陥る企業もあります。
このようなケースは、数千億円規模、数兆円規模の企業でも実際に見られます。しかし、本業の不振や余剰資金に頼らず、仕組みとして「新規事業で何割の収益を上げるべきか」「何千億円規模の事業を作るべきか」を明確にし、企業価値向上やステークホルダーへの説明も含めて取り組むことが、当たり前の経営戦略です。
日本企業では、特定の取引先からの受注のみで成長してきた経営者が新規事業に取り組んだ経験がなく、そうした仕組みを十分理解していないことも少なくありません。結果として、このような課題が根本的に理解されていないケースがあるというのが、私たちの実感です。
永井:先ほどの田所さんの説明にもあったように、大企業は新規事業を仕組みで成功させるだけでなく、そのプロセス全体を組織の仕組みとして取り入れる、2段階の仕組みが必要です。特に10億円や100億円の規模でも「小さい」とされる中で、どう先回りして考え、リスクとリターンを見極めるかが重要です。
ベンチャーキャピタルでは、企業価値を高めながらM&Aや広告投資を通じて一気にレバレッジをかける戦略がありますが、大企業は大胆な投資が難しく、成長戦略が制限されることが多いです。
さらに、大企業では、熱意を持った少数の人がコミットするのではなく、ローテーションで人員が変わったり、やる気のない人がアサインされることがあり、組織としての課題も多く見られます。
一方で、大企業が有利なのは、活用可能なアセットや知財を持っている点です。特に10から100へと成長させるフェーズにおいて、これらの資産は非常に重要です。しかし、ゼロイチを立ち上げる段階でつまずくことが多く、そこが課題となります。
ゼロイチ、イチジュウ、ジュウヒャクの各ステージの違いを正確に理解し、それに合わせて組織の構造や投資の判断軸を変えることが重要です。起業家から経営者へと変わるように、成長やスケール戦略を適切にシフトし、未来を見据えて先回りした意思決定が求められます。
永井:ここまでの話の中で、失敗パターンについても想像がつくかと思いますが(笑)、私たちのお客さまでも多くの失敗パターンが見られます。残念ながら、事業の内容が原因ではないケースも非常に多いのです。
例えば、事業の筋が良くても、PMFを達成しているにもかかわらず投資しない、優秀な人材をアサインしない、意思決定が遅すぎて良い事業が死蔵してしまうこともあります。また、既存の事業部や他部署が非協力的で、自前にこだわりすぎてスケールできないこともよくあります。
スタートアップは大企業と組むことに抵抗がない一方で、大企業同士での協業には営業部の力関係やパワーバランスなどがあり、「自前主義」を取り除けないケースが多いです。これにより、大きな需要やマーケットが見えているにもかかわらず、さまざまな理由で途中で止まってしまうことがよくあります。
ゼロイチやイチジュウまで進んでも、100に持っていけないということがないようにするため、私たちは最初にこうした問題点を強調し、重要視しています。
失敗を防ぐための対策、先回りして対応することが重要です。
特にゼロイチ、イチジュウのフェーズでは、スタートアップの手法を活かしつつ、10や100に成長する段階で必要な要素をゼロイチの中で埋め込んでいくことが大切です。
後になってからでは、ポジショントークに聞こえたり、「自分の事業を推進したいだけでは?」と疑われ、意見が否定されることがあります。そのため、M&Aや成功・失敗を含めた体験と知見を共有する仕組みを作ることが重要です。
オープンイノベーションという言葉はよく使われますが、社内のコラボレーションや巻き込みがうまく機能していない企業も少なくありません。
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