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第1429回 やさしい心理『仕事でつかえる"やさしい自己主張"』(全1記事)

仕事で「言いづらいこと」を伝える4ステップ 場の空気を壊さず提案する秘訣

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル『ちょっと差がつくビジネスサプリ』。今回は、仕事やプライベートで使える、場の空気を壊さず提案する方法についてお届けします。

場の空気を壊しそうで、会議で自分の意見を言えない…

鬼頭 巧実氏:本日は、「やさしい自己主張」についてのお話です。あなたは、こんな場面で悩んだことはありませんか?

「会議で自分の意見を言いたいけれど、場の空気を壊しそうで黙っている」「友だちや家族にお願いごとをしたいけど、『断られたら嫌だな』と思って遠慮してしまう」「我慢の限界で、相手に強く言いすぎてしまって、あとで自己嫌悪に陥った」。このような悩みを持つこと、ありますよね。

この悩みを解消するための心理学的スキルとして、「アサーション」があります。ポイントは、自分の気持ちや意見、相手の希望を、その場に合った適切な方法で率直に伝えることです。「アサート」は、「断言」「自己主張する」が語源ですが、ここで大切なのは、相手を尊重しながら自己主張をすることです。

相手を尊重しながら自己主張できる「アサーション」とは

アサーションの歴史を少しひもときます。1950年代に、心理学者ジョセフ・ウォルピが開発した「アサーショントレーニング」が語源となっています。初めは自己主張に苦手意識を持つ人を対象とした、心理療法として用いられました。

1960年代には、アメリカで人種差別撤廃や男女平等を求める運動が広がる中で、人々が平等な権利を認め合って、適切にお互いに主張するためのコミュニケーションスキルとして発展していきました。

日本に入ってきたのは1980年代です。しかし、日本特有の「阿吽の呼吸」とか「空気を読む」文化が障壁となって、当時は広まりませんでした。ところが2000年代以降、異なる価値観を持つ人々との協働が増えましたよね。そこで、アサーションの必要性が再び注目されました。

さらに、パワハラ防止法、育児・介護休業法の改正などに関連して、個人のセンシティブな問題に配慮するという社会的な環境も整い、またリモートワークの普及も追い風となりました。

学校教育でも、生徒指導提要というものにアサーショントレーニングが採り入れられていて、子どもたちの意思を尊重しながら、大人が自分の意見を率直に伝える手法としても推奨されています。

仕事の期限を守らない人を動かす伝え方

アサーションを実践する際、心理学の「DESC法(デスク法)」を使うと効果的です。「D」は「Describe」、ここでは事実の説明。「E」は「Explain」、ここでは感情を伝えること。「S」は「Specify」、提案すること。「C」は「Choose」、相手の選択と応答を促す。簡単に言うと、「事実」「感情」「提案」「選択」。この4つのステップで、物事をスムーズに伝えることができます。

では、職場での具体的な活用例を考えてみます。チームメンバーのAさんが、期限を守らず、プロジェクト全体に影響が出そうな状況を想像してみてください。ついつい感情的になりそうな場面ですが、DESC法を使えば、相手を傷つけずに必要な改善を伝えられます。

まず、「事実」ですね。「最近、進捗の遅れが出ていて、納期がぎりぎりになることが増えています」。続いては、「感情」ですね。「プロジェクト全体がスケジュールどおり進むためには、Aさんの協力は欠かせません。現状では、他のメンバーの負担が増えてしまうことが心配です」。

次に、「提案」。「次回から、『報告期限の2日前に進捗を共有する』。こんなルールを設けるのはどうでしょうか?」。最後に「選択」ですね。相手が「はい、守ります」と言った場合は、「ありがとうございます。これでみんなが気持ち良く仕事を進められそうです」。

もし、受け入れられないという「ノー」の返事だった場合は、「難しい場合は、じゃあどのタイミングが可能か教えてください。その上で、一緒に調整していきましょう」。

相手に配慮しながら主張を通す

このように、「事実」「感情」「提案」「選択」の順に伝えていくことで、相手への配慮を示しつつも、自分の立場やチーム全体の利益を守ることができます。私はこのステップを、「やさしい自己主張」だと思っています。

仕事以外でも活用できます。例えば家族に、「今日は仕事でクタクタになった。ご飯は、最近できた近所のパスタ屋さんに行ってみない? ずっと行ってみたかったし、ゆっくり話もできるしね」と。こんな感じで伝えるのも、アサーションの練習になりますね。

アサーションのいいところは、相手を思いやりながら、自分の気持ちを正直に伝えられる点です。ただ、相手を思いやるコミュニケーションといっても、実際はどういう発言が配慮になるのか、そしてそれが自分の負担になっていないかを考えるのは、意外と難しいものです。

その点、DESC法は、意識すれば必ず実行できるスキルです。ですので、「相手を思いやろう」の解像度を1つ上げて、「事実」「感情」「提案」「選択」のステップを踏む、アサーティブなコミュニケーション、やさしい自己主張を意識してみてはいかがでしょうか?

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