CLOSE

リーダーシップ3.0、そして4.0へ~関係性を起点とした自律型組織づくり~(全6記事)

組織に変化を起こすなら「強い上席の味方」は必須? トップへの「会社の将来がヤバいですよ」という直談判の効果

組織が直面する課題の複雑さが加速度的に増している、VUCAの時代。どんなに優れたリーダーでも、ひとりで答えを導き出すことが難しくなり、メンバーから多様な意見を引き出しチームで課題を解決していくことが求められています。そんな「リーダーシップ」の在り方は今、カリスマから新たなスタイルへと移行しようとしており、重要となるのが組織内の人と人の関係性です。そこで『リーダーシップ3.0』『起業家のように企業で働く』の著者であり、リーダーシップの専門家であるTHS経営組織研究所 代表の小杉俊哉氏が登壇されたイベントの模様を公開します。

1つ前の記事はこちら

トップへの「会社の将来がヤバいですよ」という直談判

斉藤知明氏(以下、斉藤):そんな中、いただいているクエスチョンですごくグッとくるものがあるなと思った、次の質問なんですけれども。

「冒頭、愚痴になり申し訳ありません。とはいえこの今の組織の中だと、自律型の活動をするように設立された組織……」これは例えば先ほどおっしゃっていただいたエンタープライズの中でも、一部の組織から変えていくというのもあるかなということだと思うんですけれども。

「その中でも結果、狭いフェアウェイでOBを認めようとしない結果、なかなか難しい。このツートップの声が強いなぁと感じてしまうし、けっこうブレちゃってるなと感じることもあります」と。

「僕自身が、成果を出すとか、変えるとか、変革を起こすにあたって『どうリソースを獲得できるのか?』について試行錯誤をしてるんですけど、強い上席の味方がいないと、なかなか変えづらいという思いも感じています」と。勇気を持つためにはどこからアプローチすべきなんでしょうか? ということでもあるなと思うんですけど、いかがでしょう。

小杉俊哉氏(以下、小杉):この難易度の高さは非常によくわかりますね。私もオーナー系の企業に以前は勤めてたんで。いかんともしがたいですね。

斉藤:いかんともしがたいですか(笑)。

小杉:いかんともしがたい。周りが、みんな取り巻きがイエスマンなんで、ものを言えない“文鎮型組織”だったので。これはいつも腹をくくってトップに直談判してましたね。トップが「やれ」って言われたら、みんなやるんで。

斉藤:なるほど。

小杉:申し訳ないですけど逆に言うと、オーナーに言ってだめだったら、もうどうしようもないですよ。そこでいかにイエスと言わせるか、というですね。

私が長らくキャリア自律コースをやっている、とある住宅メーカーですけど。そこはオーナー系じゃないですけど、やっぱりトップの人間に「このままだと会社の将来がヤバいですよ」と言って。少子化になって高齢化になって着工件数が減っていくと、会社は先細りになるわけですよ。それで若手のエースが「役員たちのアセスメントしましょう」というのが通ったんです。自分はやらないですよ。自分はやらないけど、自分以下の副社長以下役員全員のアセスメントをやった結果、みんな金太郎飴みたいに同じだったんですよ。

それはどういうことかと言うと「ビジョン構築ができない。合意形成ができない。部下育成ができない」と。みんな業績達成志向ばっかり強いので、たくさん売った人がどんどん偉くなっていくわけで、金太郎飴ですよ。

このままだとヤバい、と。新しい事業は起こらない、と。下の本部長クラスでアセスメントやっても、まったく同じだったんです。そこでトップの社長を焚き付けて「このままではヤバい」という、危機感を持たせることに成功しましたね。

その結果、最終的にはその下の支店長クラスは「『ビジョン構築、合意形成、部下育成』の3つができない人間は、どんなに業績を上げても昇進させない」という人事制度に変えさせちゃったんですよ。私もやったんですけど、当然、そこに対する研修もちゃんとやって。それに対してレポートを書かせて、面接もして。きちんとそれを体現している人間から昇格資格・要件を満たす、というふうに。

最終的には制度も変えたというところで、自律的な風土というのが長年かけてできていったんですけど。もちろん若い人には自律研修をやってるんですけど、下だけやっててもダメだし、上だけやっててもダメだし、この管理層ですよね。中間層は“ローム層”ってよく言われますけど。一番変わりにくい、水を通さない層ですね。

ここを変えるなら、最終的にはやっぱり制度を変えるしかないんじゃないかな? という、これは私の考えですけども。そう思うところです。

「意識が高い人」のほうが変わりやすい?

斉藤:僕も笑い話半分かもしれないんですけど。ご存知かもしれないですが『サルたちの狂宴』という本があるんですよ。ゴールドマン・サックスの社員が、Facebookに入った後に社内起業するみたいな。社内でイノベーションを起こそうとするんだけど、最終的にはFacebookから追い出されちゃうという物語を、その人自身が書いてる自叙伝みたいな。ちょっと皮肉な感じの本で。

小杉:なるほど。

斉藤:本の中では、Facebookの社内は「マーク・ザッカーバーグ帝国だ」と。そこを攻略して変えたんだけど、結果として失敗して辞めざるを得なくなった、というのを書いてらっしゃるのを見ると「こんなもんなんだな」と思って、勇気をもらえるなというのがあって。

小杉:なるほど。もう1つ言えることは、その住宅メーカーもそうなんですけど、自律意識の研修を受けて2割ぐらいの人が自律的に動くようになるんですよ。

斉藤:はい、はい。

小杉:その人たちは、辞めようと思ってる人たち。要は意識が高い人のほうが変わりやすいんですね。現状に疑問を感じてたり、今回質問にあったようなことを考えていたり。その人たちが動き出すとわかるのは「自分が変わると周りが変わってくる」ということ。少なくとも自分の周囲は変わっていくんですよ。そうすると、それが勢いを増していって部門がそういうふうになってくると、そこは自ずと業績が上がってくるんですよ。

業績が上がると、認められるようになるんです。さっきの富井(伸行)さんとか、まさにそうなんですけど。業績を上げないことにはダメなんですよ。でも自律型組織って多くの調査があるんですけど、業績は上がります。部署の雰囲気はいいですし、みんな自由にものを言えますし、自律的に動きますから。

そうすると変わってきますんで。そういったことをやって、たとえさっきの話で失敗したとしても、今すぐ辞めるよりもずっとその人にとって学びが多いし、経験値が上がってますよ。なので、それでその人の市場価値って上がるんです。

盛り上がりつつある「辞めた人間も大事にする」という機運

小杉:それから、その自律した人たち会社を辞めてもらって困るか? というと、その間、自律的に動くと周りに影響を与えて、それによって組織が活性化するんですよ。だからその人がたとえ辞めたとしても、その間に十分に会社に貢献するんで、辞めてもらってもいいんですよね。

最近そういう人は、辞めても(関係が)切れないです。辞めた後も会社となんらかのかたちでビジネスをやったりとか、同じコミュニティにいるので、会社側もメリットがあるということがだんだんわかってきたんです。

斉藤:アルムナイ(企業の退職者)コミュニティみたいなのもやってらっしゃいますしね。

小杉:そうです。アルムナイコミュニティをやったりとか。なので、積極的に辞めた人間ともつながっていようと、会社が変わってきてますよね。そういう人間は外でいろいろやって、最終的に出戻ってきて会社を変革してくれる例もいろいろ出てきていますし。けっこう「辞めた人間も大事にする」という機運が出てきているじゃないですか。

斉藤:変わってきてますね。

小杉:そんな流れがあると思いますね。なので、引っ掻き回してやるだけやってみて、たとえ辞めることになったとしても、それは特に失うものがないんじゃないですかって思いますね。

斉藤:こう回帰してしまっていいのかわからないですけど、やっぱり企業自体も多様性に対応・適応していっているということなのかな? と思いました。ニーズの多様性もそうだし、職業選択の自由というのも最近では言われ始めてきているし。かつ、一人ひとりの自律って、けっこう画一との対比もあるのかなと思うんですけれども。

「一人ひとりがこういうイノベーションを起こすべきじゃないか?」という同じ志・北極星があるにしろ「革新する」というその多様性を受け入れて、いかに資源を活用できるようにしていけるか? が企業の命題であり。そのためには、やっぱり「リーダーシップ4.0型」を実装していく。かつ、それを受け入れられる、育める組織になるべきだというところが、すごく腹落ちしました。

また「Unipos」という事業をやってる身としては、僕らも「最強のフォロワーを作るんだ」とか「組織を変える行動を増やすんだ」みたいなことを、ずっと掲げながらやってるんですけれども。一人ひとりが背中を押し合える社会というのを、あらためて作っていきたいなと思いましたし。こんな会社を日本に増やしていきたいなと、僕も思いました。

多様性は、タレントオンデマンドをやってない日本組織に必須

斉藤:最後になんですけれども、小杉さんから一言いただけますでしょうか。

小杉:そうですね。今、斉藤さんがおっしゃった多様性というのは、女性活躍推進とかLGBTQに対する「had better」(「したほうがよい」)とか、「世の中からの要請があるから」だけじゃなくって。さっきのタレントオンデマンドをやっていない日本の会社組織には「必須」で。いろんな多様なバックグラウンドを持った人が入ってきて自由にやる環境を作らないと、イノベーションは起こらないんですよね。

ヨーゼフ・シュンペーターが言ったように「イノベーションは遠いところからやってくる」と。ぜんぜん違うものの組み合わせでできるのが、新結合・イノベーションですから。新しいものを生むためには、多様な人材が必須なんですよね。

なので心ある経営者は、みんなそういうふうに考えるようになってきたと思うんですよ。ですから自信を持って、それが世の中の流れなので。今、目の前の上司がそうじゃないかもしれないですけど、そちら側(多様性を必須とする側)に向かって動いていくというのが、ご自身の価値を上げていくことになると信じてやってみるということじゃないかなと私は思います。

斉藤:金太郎飴じゃいかんと。

小杉:はい。

斉藤:ではあらためて小杉さん、ありがとうございました。

小杉:こちらこそありがとうございました。

「今更、男女の話かよ!」と言われるが、できていないのが日本

斉藤:でもそうですね。社会的要請。もう変化は必然ですね。

小杉:そうですね、もうヤバいですよ。従来のままでやってたら。

斉藤:(笑)。

小杉:逆にそういうふうに大丈夫だと思っている経営者がいる会社は、相当マズイいと思いますよ。

斉藤:そうですね。でも変わってきてるなぁって感じますか?

小杉:感じます。本当にトップはそういうふうに言ってますよね。地方の中小企業とか、そうじゃないところももちろんあるんですけど、やっぱりだいぶ変わってきたなと思いますよね。

斉藤:ある程度、遅かれ早かれ変わるんでしょうね。

小杉:それはESGとかSDGsみたいな、サステナビリティみたいなのと呼応するじゃないですか。

斉藤:はい。確実に呼応しますね。

小杉:そういう外的な圧力ね。「女性の管理職とか役員を増やさないと、もう株主が認めない」といった流れと呼応しますよね。なので、それがいいのかどうか? というのはあるんですけど、でも割り当て・クォータ制が促していくんで。それによって「多様性を結果的に担保するというのがいいんだ」とわかった人たちが、さらにそれを推進していくと思うので。そういうことをやっている企業って、人材も集まるじゃないですか。

斉藤:そうですよね。「今更、男女の話かよ!」って言われるかもしれないですけど、それができてないのが日本ですからね。

小杉:そうなんですよね。

斉藤:(男女は)脳みその作りが違うんだから、最強の多様性ですよね。

小杉:最強の多様性ですよね。もちろんその会社のプロダクトやサービスにもよりますけれど、ユーザーの半分が女性だとしたら「女性の視点入れないってどういうこと?」って思いますよね。

斉藤:なりますね(笑)。すみません、ちょっと延長トークをしてしまいましたが。あらためて小杉さん、ありがとうございます。今日もたくさんのチャットもいただいて盛り上がりましたね。みなさんね。

小杉:すごくたくさんの方が質問してくださって。あとすごくたくさんの方が最後まで残っていて、びっくりしました。

斉藤:そうなんですよ(笑)。いつも60分って言ってるのに、だいたい80分ぐらいやっちゃうんです。それでは、ぜひまたやりましょう! 

小杉:はい! ぜひまた呼んでください。

斉藤:ぜひぜひ。すごく楽しかったです。

小杉:楽しかったです。

斉藤:僕自身も思いっきりやっていきます! ありがとうございました。

小杉:はい。ありがとうございました。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 大企業の意思決定スピードがすごく早くなっている 今日本の経営者が変わってきている3つの要因

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!