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2025.02.06
ポンコツ期、孤独期、成果独り占め期を経て… サイボウズのプロマネが振り返る、マネージャーの成長の「4フェーズ」
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村上臣氏(以下、村上):残り時間が10分弱になってきて、あっという間なんですけれど。先程触れましたが、日本企業はまだまだ変わらなくてはいけないと。その流れの中でエリックさんから見て、企業変革の一番のポイントは、どこにあると見ていますか?
松永エリック・匡史氏(以下、エリック):日本企業は、すごく欧米化したと思っています。僕が入ってきた90年代から、MBA的な発想でコンサルが入って来た。コンサルは儲かったんですけど、一方で日本企業の良さがなくなってしまったと思っているんです。
日本企業の良さは何かといったら「あうんの呼吸」だと思っているんです。海外の外資系コンサルティングは「あうんの呼吸が日本の悪いところだ」と指摘するんですね。
要は「ディスクプリクションを書いて、明確に定義・管理すべきだ」ということなんだけど、僕は逆だと思っていて。ディスクプリクションなしで動く組織というのは、ロジックじゃなくてマインドセットの問題だと思っているんです。
僕は、日本企業は“昔の日本企業”に戻っていくべきだと思っています。評価も、個人のパフォーマンス評価は止めて、もっとチームで評価すればいいと思っています。
給与制度も、お金じゃなくてもっと新しい、日本ならではの給与制度ってあると思うんですよね。人事評価もそう。日本企業がよくないのが「自分たちはダメだ」という意識から抜けられない点ですね。自分たちを過度に卑下している一方「海外ってすごいな、アジアってすごいな」と思い込んでいる。
でもそんなことはないんです。日本は多くのイノベーションを実践してきたんです。まず、自信を取り戻すところからやらないといけないと思うんですね。では何ができるかというと、まずみなさんが自信を持つことだと思うんですよ。社長が自信を持つまで待っていたら、いつになるかわからないので、まず自分が自信を持つ。
一番オススメしているのは、自分の会社を好きになることだと思います。悪口を言うのは誰でもできるんですよ。でも自分の会社の良さ、例えば、今までやってきたことの偉大さを過去から探ってみる。偉大な人もいたりするわけじゃないですか。そういう人が、もし窓際族になっていたら、ちょっと声かけてみて話を聞いてみるとか。前向きに会社を捉えていく。
何か新しいものは、そこから始まると思うので。日本の企業に必要なのは、まず自信と、あとは自分たちの“日本ならでは”のかたちを作っていくことだと思います。
エリック:あとは、採用だと思っているんですよ。今までの日本の採用って、正直に言うと、大学がそもそも“代ゼミ化”していて「いい企業にどれだけ入れるか?」ということが、大学のKPIになっているんですね。企業も「どれだけ偏差値の高い学校から人が入るか?」がKPIになっているんです。
これを1回一掃すべきだと思います。最近だと、豊田章男さんがどんどん「トヨタってこんな会社だ」と発信しているじゃないですか。ああいう発信をすると、やはり自分の血が湧き踊るような感覚ってあるじゃないですか。「この会社で働きたい!」みたいな。
日本企業もそういうアピールをして、外見の偏差値が高い人ではなくて、一緒に楽しんで戦える仲間をどう集めるか? にフォーカスするべきだと思うんですね。
企業はこれからPRとかがすごく大事になってくると思います。コンサル会社に丸投げするわけではなく「自分たちは何をやっている会社なんだろう? 何を大事にしているんだろう?」ということを、より明確にすることです。それができると、僕は日本はこれからバーンと来ると思いますね。
だから、まず自分を好きになる。自分の会社を、もう1回見直すところから始めるといいと思います。
村上:日本のスタートアップでも、ビジョン、ミッション、カルチャー、バリューを、しっかり最初から作って、発信して、採用ブランディングを強化する傾向があります。
会社を好きになってくれる人を採ったほうが、会社の成長が絶対加速しますよね。スタートアップなんて「生きるか死ぬか」ですので、進むべき方向を一致させておくことは、とても大切ですね。
エリック:大企業のトップには「スタートアップを見習え」と言っているんですよ。スタートアップはすべてトップがやらないと動かない。メッセージを出していかないと、誰も製品を買ってくれないわけですよ。
PRもそうですよね。効率的にやらなかったら、誰も知ってくれないわけじゃないですか。全部ゼロから始めているわけですよ。だから、僕はスタートアップから変革が起きると思っているんです。だって彼らは必死ですからね。
村上:そうですね。
エリック:みなさんも、ぜひスタートアップに注目してもらいたいと思うんです。大企業の変革を見るんじゃなくて、最先端のスタートアップの動きを、リンクトインの情報を見ながらでもいいですし、ホームページを調べるのもいいですけど、常にチェックした見た方がいいと思います。
村上:最後に私からの質問です。変わるための第一歩として、何をすればいいですか?
エリック:僕がオススメしているのは、本当に自分が好きなものをもう1回見つめ直すことです。そのためには、自分に悪影響を及ぼしているものを、もう1回認識することです。
僕だったら父親だったり、すごく影響を受けた人がいるわけです。それを、頭の中で「仮にそれがいなかったとしたら、僕は何をやったんだろう?」と考えてみるんです。
すると、色々な思い込みがあることが分かってくる。変わるためには、まず自分にある“思い込み”を排除して。自分が本当に好きなものを見直すことだと思います。
村上:一旦、自分の中に戻って振り返りをして、そこを整理すると。
エリック:妄想力だと思います。
村上:妄想力。
エリック:妄想してほしいですよ。例えば、人気のコンサル会社に入ったとして、すごい働かされるワケですよ。徹夜も多い、競争もすごい。その環境にいた時「自分って幸せなのかな? そうなった時、誰が喜ぶのかな?」と妄想してほしいんです。
すると「あれ? それ、俺と違うよね」となるかもしれない。いろんなことを妄想するといいと思います。
村上:はい。
エリック:でも、人と自分の人生は違うし、同じことができるわけじゃない。そうやって思い込みを1個1個排除していけば、どんどん自分の好きなものが見えてくるはずなんですね。そこを真剣に考えたほうがいい。
エリック:もう1つはぜひ、歩きながら考えるといいと思います。
村上:歩きながら!
エリック:考え事は「歩きながら」がいい。
村上:おお。
エリック:音楽とか聴いてはダメです。音楽とか聴かないで歩きながらやっていると、脳が活性化するんですね。例えば営業先に行く時に、10分とか早く着いて歩きながらいろいろ考えると、いろんなことが頭で妄想できるようになります。ぜひ歩くといいと思います。
村上:確かに。米西海岸のベイエリアでも「歩きながらの1on1」って、数年前からけっこう流行っているんです。僕も上司が東京に出張してきた時にやっていたんですけれども。2人で歩きながら、同じ方向を向きながら横で話すんですよね。
エリック:うんうん。
村上:対面よりもちょっとリラックスするから本音も出やすいし、散発的ではあるんですけれども、ふだんよりもすごく濃い話ができたんです。
エリック:そうですね。
村上:確かに「歩きながら」というのは、1つポイントかもしれないですね。
エリック:IoTデバイスがすごくよくできているので、みなさん徒歩数もすぐカウントできると思うんです。消費カロリー数も出てきますので、例えばそれを前向きに考えて「歩かなかったらこの100カロリーはない」と思えば、100カロリーは歩いたことによってマイナスになったワケですよ。「だったらケーキ食べられる!」とかね。
村上:(笑)。
エリック:そう考えていけば、ただ歩くこともいろんなことに楽しいことにつながると思うんです。
村上:本当にそのとおりだと思いますね。
村上:歩くときは、音楽かけちゃダメなんですよね?
エリック:ダメ。
村上:音楽なしで。
エリック:音楽は真剣に聴きましょう。英語もそうですよ。僕は英語の先生なんで言いますけど、聞き流しなんかで英語は絶対うまくならないですから!
村上:(笑)。
エリック:やる時はやってください。とにかく全部集中。音楽も聴き流して聴いてほしくない。今、レコードが注目されているじゃないですか。あれってやはり、音質じゃなくて態度だと思うんですよ。レコードって「聴こう」と思わないと聴けないんで。
村上:面倒くさいですからね。
エリック:そう。
村上:拭いたり、針入れたりとか。
エリック:そう、そう。あれはたぶん、態度の問題だと思います。聴く姿勢だと思うんですよ。姿勢を整えないといけない。昔、レコードを擦り切れるまで聴いたじゃないですか。だから好きでしょうがないわけですよ。でもその感覚が今ないのは、聴き流しているからだと思うんですね。
村上:なるほど。
エリック:それをなくせば、もっと楽しい世界が出てくると思いますね。
村上:それぞれ、特に目の前のことに集中しきるというのが大事ですね。
エリック:いろんなこと発見できますよ。歩くと。「何も考えてない顔して歩いているな」とか「忙しそうに電話しているな」とか、いろんなこと気付きますんで。
村上:わかりました。本当にいろんな話、ありがとうございます。お時間なので、ここでお開きにしたいと思います。エリックさん、ありがとうございました。
エリック:ありがとうございました。
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