ベストセラー『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』著者で、デンマーク文化研究家の針貝有佳氏が登壇した本イベント。本記事では、のんびりした国でありながら国際競争力トップクラスのデンマークについて紹介します。
『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』著者が登壇
司会者:さっそくですが針貝さん、よろしくお願いいたします。みなさん、拍手でお迎えください。
針貝有佳氏(以下、針貝):みなさん、今日はよろしくお願いいたします。『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』の本の著者です。デンマークに住んでいて、今は深夜の3時45分です。深夜というか朝というか(笑)。
まず、私の自己紹介から始めさせていただきます。デンマーク文化研究家として活動しております、針貝有佳と申します。もともとはデンマークの労働市場政策に興味を持って、大学院で研究をしたんですが。
大学院では、頭では理解したんですけれども、いまいち腑に落ちないというか、よくわからない感が残っていて、ちょっと悔しい思い出があったんですね。そこから実際にデンマークに移住しました。
そうしたら、頭で理解してよくわからなかったことが、理論と実際がつながって、「あ、そういうことか」みたいな発見がたくさんありました。そこから15年間、現地からいろんなかたちで日本向けのデンマーク情報の発信をしてきました。
コロナの時には、テレビ局の方々が自分で取材できないので、私のスマホで映像を撮ってインタビューした様子が日本のテレビに流れていました。あとは、いろんな媒体で記事の執筆をしてきました。
あと、講義・授業もしています。商品開発とか都市開発のヒントになるような、デンマークの事例の紹介もしています。それから、こちらの『Forbes JAPAN』の北欧特集や北欧の写真集。こういったこともお手伝いさせていただいています。
のんびりしているのに国際競争力はトップクラス
針貝:2023年の11月に初めて自分で書いたのが、『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』という本になります。タイトルがキャッチーで気になるというのと、表紙のカバーもあって非常に興味を持っていただいて、今5万5,000部を突破しております。電子書籍も入れると6万部にいっています。『週刊文春』や『日経WOMAN』、『PRESIDENT』『Voice』、いろんな媒体に取り上げられています。
その中で、やはりみなさん「働き方」という足元にあるテーマに課題を感じていて、「何か変えたいな」と思っていらっしゃるんだなということをすごく感じました。
今日のプログラムですが、まず、デンマークとはどういう国なのかというところから入って、国際競争力トップクラスのデンマークをご紹介します。そして、その競争力を支えているデンマーク人の働き方・考え方、キャリア観をご紹介して、最後に質疑応答にしたいと思います。
なので、もし「こんなことを聞いてみたいな」とか「気になるな」ということがありましたら、その場でメモを取っていただければと思います。あとは、ちょっとクイズも入れていますので、ぜひよろしくお願いします。
まず、「デンマークはどういう国なのか?」。私はデンマーク研究を始める前は、デンマークがどこにあるかも知りませんでした。デンマークを写真で見るとこんな感じです。とってものんびりした国なんですね。
「競争力が高い」と聞くと、仕事をすごくテキパキこなしているのかと思うかもしれないんですけども、実際のデンマークは非常にのんびりした国です。デンマークを地図で見ると、ドイツの真上にあります。ドイツと陸続きで、面積は九州程度の大きさです。
グローバルに展開するデンマーク発の大企業
針貝:では、人口はどのぐらいでしょうか? この九州程度の面積に、どのぐらいの人が住んでいるでしょうか? ちょっとクイズにしてみました。デンマークの人口に一番近い県はどこでしょうか? 東京、大阪、千葉、沖縄。パッと思い浮かべて(笑)。
すぐに答えを言ってしまいますと、答えは千葉県になります。デンマークは兵庫県よりも人口が多くて、千葉県よりも少ないぐらいの規模感です。
本には人口590万人とありますが、今ちょっと調べたら、最新データでは600万人近くになっていました。それでも兵庫県より多くて、千葉県より少ないイメージになります。なので日本で言うと、1つの県が独立して国になっているようなイメージです。
それぐらい小さい国なんですが、グローバル企業が輩出されています。物流のDSV、風力発電のベスタス、製薬会社のノボノルディスク、レゴブロックのLEGO、ビールのカールスバーグ、海運業のマースク。
こういった企業が、グローバルに展開しているデンマーク発の大企業と言えます。この中で、みなさんにとって一番身近なのはLEGOじゃないかなと思います。こちらはレゴランドの写真で(笑)、我が家も家族で行ってきました。
では、首都のコペンハーゲンはどんなところかといいますと、世界三大がっかりの『人魚姫』がいます。(ハンス・クリスチャン・)アンデルセンという童話作家をみなさんもご存じかと思いますが、デンマーク出身です。
そして、デンマークの観光スポットといえば、このコペンハーゲンのカラフルな建物が並ぶ港、ニューハウンです。コペンハーゲンの風景は、けっこうモダンな建物もありながら、伝統的な雰囲気が残っています。建物もたくさんあります。
デンマークならではの環境対策 × エンタメ施策
針貝:そして、国としての特徴ですが、国民の環境意識が非常に高い国です。対策というよりも、みんなで楽しみながら取り組めるような活動にするのが非常に上手です。
首都のコペンハーゲンですが、こちらはコペンハーゲン市が環境対策のために自動車を減らして自転車を増やそうということで、自転車インフラの整備を進めてきました。自転車用の道路・信号は、私がデンマークに来た15年前からあったんですけども、最近、自転車用の橋とかインフラが充実しています。このように、通勤・通学では自転車に乗る人たちが非常に多いですね。
そして、こちらはコペンハーゲンにある廃棄物発電所「コペンヒル」ですが、デンマークの世界的に有名なBIGという建築事務所が設計を手掛けたものですね。上がスキー場になっています。ルーフトップがスキー場になっていて、歩けるようになっているんですね。ハイキングができるようになっていて、ジョギングをしている人もいます。

一番上に行くとベンチがあって、景色を眺めながらお茶ができたり、お酒が飲めたり。焼却炉なんですけど、焼却炉と言うと、みんなに嫌われる場所というイメージですが、そういう場所をみんなが集まってくる、みんなに愛される場所にしてしまう。こういったことがすごくうまいんですね。
そして、こちらも水害対策で、デンマークには今スケートパークがたくさんできています。なぜスケートパークなのかというと、大雨で浸水被害が多かったんですね。それを防ぐために、雨が降ったら雨がスケートパークに流れてくるようにして、最終的には池のほうに行くようになっています。
ここでもやはりポイントがあって、水害対策をただの対策にしないで、若者・子どもが集まってくる場所にするというところが、やはりデンマークだなと思います。
これはコペンハーゲンから離れた場所にある「フォレストタワー」というタワーなんですが、これも森を壊さずに、そのまま使って活かしている。おもしろいのが、散策のスロープがあるんですね。長いスロープなんですけども、これをずっとたどっていくと、タワーのてっぺんまで行き着くというかたちになっています。
スロープなので、私が行った時に電動車椅子の方がタワーの一番上まで上っていらっしゃって、すごく感動したんですね。そういったかたちで、社会にいいこと・環境にいいことを、さりげなくみんなが喜べる・楽しめるかたちで行うのが、デンマークの自治体もそうですし、企業も非常にうまいところです。
こちらはコペンハーゲンの一部、島なんですけれども、もともと造船所の跡地だったんですね。廃墟みたいになっていたところを再開発したんですが、再開発の仕方がまた良くて。
廃材を使って屋台を作って、多国籍の料理を提供して、みんなが集まる場所にして、よく夏にはイベントも行われています。こういうふうに、人が集まってくる場所にするのが非常にうまいです。こんな感じですね。
「ビジネス効率性」5年連続1位のデンマークと日本の差
針貝:というのがデンマーク紹介(笑)。ちょっと長くなりましたが、こんなデンマークは、いろんな国際的な指標で評価されています。「幸せな国」「ビジネス先進国」「DX先進国」「SDGs先進国」。どれも世界トップクラスなんですね。この中で、私の本は「ビジネス先進国」に焦点を当てて書きました。こちらの本(『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』)ですね。
では、本の内容をちょっと説明させていただきます。まず、この本を書いた理由なんですけれども、2022年、2023年、デンマークは2年連続で国際競争力1位に選ばれたんですね。しかしながら、デンマーク人は4時に帰るんですよというところから、「なんで4時に帰るのに、国際競争力が高いんだ?」ということで、その働き方を明らかにしたのがこちらの本になります。
国際競争力の比較を見てみましょう。デンマークは2022年から、1位、1位、3位。2024年で3位に落ちたのは、経済状況の悪化が理由です。それでもトップ3に入っている。日本は2022年から、全体の対象国60数ヶ国の中で、34位、35位、38位という結果になっています。

この国際競争力なんですけれども、4つの指標から測られます。「経済状況」「政府の効率性」「ビジネス効率性」「インフラ」。この4つの指標の総合評価によってランキングが決まっているんですね。
では質問です。国際競争力を測るこの4つの指標の中で、デンマークが強いのはどれでしょうか? 答えをちょっと想像してみてください。いいでしょうか? では答えを言いますね。答えは「ビジネス効率性」。デンマークはビジネス効率性が圧倒的に強くて、5年連続で1位に選ばれています。

非常に興味深いのは、日本が一番弱いのが、この「ビジネス効率性」なんですね。60数ヶ国の中で51位という結果になっています。これを見ると、さすがに「デンマークに何かヒントがあるのではないかな?」と感じられるかなと思います。
デンマーク人には「先見の明」がある理由
針貝:では、デンマークはなぜ、ビジネス効率性が1位なのでしょうか? これをものすごく簡単に要約すると、デンマーク人は「先見の明」があって、「生産性が高い」ということになります。
「先見の明」についてはどういうことかと言いますと、未来を予測するのが早いんですね。「その理由は何なのか?」というのが、私がデンマークで暮らし始めて、「あ、そうだよね」とすぐに気がついたことなんですけれども。
デンマークの人たちは、自分の心の声を聴くのが非常に上手なんですね。「自分が何を求めているのか」ということに非常に自覚的です。また、「社会が今何を求めているのか」「社会がこれから何を求めていくのか」、こういったことに対して常に自覚的なので、そこに気がつくのが早いんですね。
自分の心の声を聴く、他人の心の声を聴く。そして、未来の子どもの声を聴く。こういったことをふだんからしているから、当たり前のように「未来にはこれが求められる」ということに気がつくことができる。そして、求められる未来に対してスピーディに行動していくから、さまざまな指標において世界をリードしていけるんだということがわかりました。
では、「なぜビジネス効率性が高いのか?」。本の中で出てきますが、実際にいろんなデンマークの人たちに取材をして、話を聞いて、ポイントをまとめたのがこの本です。