新刊『仕事の「整理ができる人」と「できない人」の習慣』の著者・大村信夫氏が旬なテーマでゲストと語り合う対談シリーズ。今回は、大村氏と同時期に新刊『ポートフォリオ型キャリアの作り方』を出版した染谷昌利氏が登場。費やした時間を無駄にしない仕事術や、自分の“武器”を見つけて相手にわかりやすく伝える方法などが語られました。
時間を作るコツは、「ボール」を手元に置かない
染谷昌利(以下、染谷):時間を作るという話で言うと、僕は完成度を求めすぎないようにしています。
大村信夫(以下、大村):完成度。
染谷:ずるい言い方かもしれませんが、クライアントがどこまで求めているかは最初はわからないので、まずは6割の完成度で提出するんです。
大村:及第点を狙うということですね。僕もそうですね。
染谷:ですよね。昨日も原稿を出したんですが、「こういう点に留意してください」と書いて、「ひとまず読んでください」と送る。6割で出して、それで満足してもらえれば、10割にする必要はないんですよ。
大村:それで終わりですもんね。何かあればフィードバックが来ますし。
染谷:そうです。みんな真面目すぎるんですよね。突き詰めすぎると時間がかかるので、「どこまで求められているかわからないなら、とりあえず出してみよう」と。そうすれば、手元にタスクを抱え続けることもない。僕は「ボールを手元に置かない」というのを意識していて、早く投げ返しちゃうんです。
この間、ある原稿の仕事で、2月28日にイベントがあって、そのレポートを書いてくれと依頼されたんです。「納期はいつですか?」と聞いたら、「3月7日」と。
大村:1週間ですね。
染谷:1週間。でも、そのあとクライアントさんが「その編集スケジュールだと納期に間に合わないです」と関係者と僕も参加しているSlack上でやり取りしているのが見えて(笑)。
大村:あえてやっていたとか?
染谷:いや、どうなんでしょうね(笑)。でも、今はツールが発達しているので、昔なら自分で文字起こしして整えていたところを、今は「Google Pixel」の文字起こし機能やAIを使えば数分で作れるんです。それをChatGPTに「台本に合わせて生成して」と投げれば、それなりに整う。それを確認しながらイベントの録画をチェックすればいい。
提出が遅くなることのデメリット
染谷:3月2日の時点で、1万2,000字のフルレポートと、7,500字の簡易版が完成しました。「納期は7日だけど、5日には出せるな」と思い、「3月5日には提出できます」と伝えたら、「巻いてくれてありがとうございます」と感謝されて。でもクライアント側はまだスケジュールの調整をしているようだったので、3日に「できたので送ります」と1万2,000字と7,500字を提出しました。「あとはお任せします」と。
そうしたら7日に「充実しすぎているので、もっと簡素にしてください」と言われて、「わかりました。納期はいつですか? 週明けでいいですか?」とこちらでコントロールして聞いて。「もちろん週明けでいいですよ」と言われて、ChatGPTを使ってさらに短縮し、5,000字にして日曜日に提出しました。
「あとは確認お願いします」と送った感じですね。もちろん、ChatGPTから出たものをそのまま使うのではなく、それをベースに僕のほうで修正します。
ただ、クライアントがどこを求めているのかはわからないので、そこをこちらで悩みながら調整するぐらいなら、一度投げてみて、あとは自由な時間に別のことをやろうと考えています。クオリティコントロールは意識しながら、あえて低めで出している感じです(笑)。
大村:はいはいはい。でも、いったん形として見せられるのって、クライアントにとっても大事なことですよね。
染谷:そうなんです。これはちょっとずるいやり方なんですけど、早ければ精度が多少低くても許されるんです。
大村:そうですよね。
染谷:逆に遅れると。
大村:完成度を上げなきゃいけなくなる。
染谷:そうなんです。遅れれば遅れるほど、相手の期待値が上がるんです。
大村:はいはい。
染谷:だから、早く出しちゃったほうが、お互いにとって得なんです。
大村:僕も納期より2日ぐらい前に提出することが多いですね。「いったんこれで送りますね」と。
染谷:そうそう。留意点もちゃんと伝えて出して、それでよければ終了です。
大村:そうですよね。
染谷:そうやって、時間を捻出するようにしています。
相手の期待から30度ずれたら時間の無駄
大村:完璧を求めるといくらでも時間をかけられますけど、それが相手にとってのオーバースペックだったら、かけた時間がもったいないですもんね。
染谷:そうなんです。しかも、ずれている場合もあるんですよ。もしその「オーバー」が正しい方向でのクオリティならいいんですが、30度ぐらいずれていたら、それに時間をかけたのは無駄だったということになります。
大村:わかります。こういうのを減らしていくだけでも、だいぶ違いますよね。
染谷:本当に楽になります。あとは、事前に「こうしています」と説明しておくことですね。そうすると、クライアントの方向性も定まりやすくなるので、あらかじめそういう準備をしておくといいと思います。
大村:「ブログを書いたらいいじゃないですか。発信したらいいじゃないですか」と言うと、けっこうそれでみなさん手が止まってしまうんですよね。完璧な文章を書こうとして。でも、そこまでこだわらなくてもいいんです。
染谷:もう1つ言うと、そもそも細かいところまで読まれていないですから(笑)。
大村:読まれていない?
染谷:はい、細かい部分はあまり見られていないんです。まずは自分の練習として書いていくことが大事で、読者が増えてくれば、自然と広がっていきます。YouTuberも最初はゼロから話し始めていますよね。
大村:そうですよね。
染谷:僕、最近ゲーム実況をよく聞いているんですけど、あの人たちって、視聴者ゼロでもずっとしゃべっているんですよ。それって普通はできないですよね。でも、もし最初の視聴者が1人、2人来た時に無言だったら、すぐに離脱されてしまう。
大村:そうですよね。
染谷:だから、まずは練習しておくことが重要なんです。読んでくれた人や見てくれた人に刺されば、そこから広がっていく。だから、まずは自分の得意なことや好きなことを発信することが大事なんです。
大村:アウトプットをしていくということですね。
染谷:ですね、はい。
大村:気軽にやればいいんですよね。
染谷:そうです。みんなハードルを上げすぎなんです。「新しいことを始めました!」みたいな大げさな発信は不要で、もっと気軽にやればいい。
大村:まったく同感です。
対談というアウトプット形式の力
大村:そういえば、染谷さんの話を聞いて、僕もブログをやっていたんですよ。2018年にお会いしてから3年間、毎日ブログを書いていました。そのおかげで、アウトプットに自信がついた気がします。
染谷:それが文章の上達にもつながるんですよね。話す時もポイントを押さえて話せるようになるし、考えを整理する力もつく。だから、外に出す練習は大事です。
大村:『仕事の「整理ができる人」と「できない人」の習慣』。
染谷:はい、それですね(笑)。
(一同笑)
染谷:アウトプットの練習は、いろんな場面で活用できるので、とても有効です。
大村:あとね、アウトプットするからにはインプットもしなきゃと思って、ネタ収集をけっこうするようになるんですよね。
染谷:僕、さっきオンラインサロンを2016年からやっているって言ったんですけど、そのベースが「毎月セミナーをやります」っていう約束なんですよ。もう8年間、毎月。
大村:何らかのテーマで開催するわけですね。
染谷:でも、もうネタがカッサカサなんですよ(笑)。新しいネタが本当にない。2年前にやったものを現代版にアップデートするという手はありますが、それを毎月やるのは難しいんです。
大村:そうですよね。
染谷:だから、新しいネタを仕入れるという目的があることで、人から聞いた話とか、何でも吸収しようというモードになります。
大村:実は僕も、同じようにセミナーを続けていて、講演のテーマもいくつかあったんですが、ネタ切れしちゃったんですよ。
染谷:切れます、切れます。
大村:やばいなと思った時に思いついたのが、この「片付けパパ対談」なんです。
染谷:ずるいなぁ(笑)。
大村:対談だと、化学反応で新しいネタがどんどん生まれてくるじゃないですか。そういう形式も全然ありですよね。
染谷:はい、ありです。視聴者が何を求めているかって、本当にわからないですから。もし評判がよければ続ければいいし、ダメならやめればいい。
そういえば、イベントが始まる前に誰かが「失敗したら、できなかったってことがわかったから良かったんじゃない?」って言ってたのを小耳に挟んで。それ、僕もよく言ってることなんですが、この場で使いづらくなっちゃいました(笑)。
大村:(笑)。
染谷:でも今それを使わせてもらうんですけど、やってみてダメだったら、ダメだとわかっただけでも成功なんですよね。
大村:ダメだったっていうのがわかったら、それは成功ですよね。
染谷:はい。さっきのフレーズ、ちょっとパクりました(笑)。
(一同笑)
頭のいい人の授業がおもしろくない理由
染谷:でも、それってすごく重要で、みんな誰かに伝えようとする時に、先生になろうとするんですよね。でも、そんな必要はなくて。先輩でいいんです。
大村:ちょっとだけ経験している先輩。
染谷:そう。極端な話、半年前の自分にどう教えるか、なんですよ。例えば僕、会社員時代に「Excel」オタクだったんです。いろんな式を作るのが好きで、そうすると「染谷さん、Excel詳しい人」って噂になるんです。
「これできる?」と頼まれて、「あぁ、いいっすよ」って返すと、「うわ、超助かる」って言われる。こっちは大したことじゃないんですけど、「助かった。飯おごるわ」みたいなやりとり、日常でありますよね。コーヒーでもいいんですけど。それがスキルだったり、独自性だったりするんです。
それをいかにわかりやすく伝えるか。頭のいい人の授業がおもしろくない理由の1つは、「何を言っているのか分からない」こと。つまり、わからない人の気持ちがわかってないからなんですよ。
でも、Excelを苦労して身につけた人は、わからない人の気持ちがわかる。「ここでつまずくよね」とか、「あぁ、あるある」って。
大村:共感できますよね。自分が通ってきた道だから。
染谷:そう。だから「ここでミスるんだよ」って。それって、先生じゃなくて“先輩”なんですよ。それを伝えればいいのに、「自分にはそんな力はない」とか、「経験も能力もないから」って、もったいないですよね。
大村:「恥ずかしくて無理です」っていう声もありますよね。
染谷:それ、すごく謙虚でいいことなんですけど、「大丈夫、あなたより詳しい人はあなたの動画もブログも見ないから」と。「あなたより詳しくない人が見に来るんだから、それでいいじゃないですか」って思うんです。そういうことを、僕はすごく意識しています。「もっと詳しい人がいる」とか思うと、恥ずかしくなるんですよね。
でも、学術的にやるのがすべてじゃなくて、「この人の言葉が好き」とか「話し方が好き」とか、「この人から学びたい」って人もいる。特にオフラインだと、接点は半径500メートルとか関東圏とか限定されがちだけど、オンラインだったら、北海道の人が見ているかもしれないし、沖縄の人もいるかもしれない。
その分、はまる可能性のある人の“母数”が大きいんですよ。だから意識せずに、まずやってみたらいいと思うんです。
先生になろうとしなくていい
大村:先生にならなきゃっていう“症候群”みたいなのが、ありますよね。
染谷:あります、あります。
大村:それが、行動のストッパーになっている気がします。
染谷:「ちゃんとしなきゃいけない」って。
大村:「ちゃんと」ね。「ちゃんと」はね、僕はすごいマジックワードだと思っていて、ちゃんとしなきゃいけないとか、ちゃんとやらなきゃいけない。
染谷:でも、ちゃんとした格好はしているじゃないですか(笑)。
大村:いや、中身はちゃらんぽらんですよ(笑)。でも、そういう意識をまず変えるのが大事ですよね。「先生になろうとしなくていいんだよ」っていうのが、今日の1つのキーワードかなと。
染谷:まずはハードルを下げる。
大村:そうですね、下げる。あとは、とにかくやってみることが大事ですよね。
染谷:そう、やってみるのが一番。さっきも言いましたけど、やってみてうまくいったらラッキーだし、うまくいかなかったら「あ、これはダメなんだ」ってわかるだけでも収穫です。
大村:ダメだったってわかることが成功につながるんですよね。エジソンでしたっけ、フィラメントの実験で。
染谷:そう、2万回。
大村:「私は2万回の実験をしたんだ」っていうやつですね。
染谷:そうそう。やってはいけないことがわかった。
大村:やってみたからわかったわけですよね。だから、そういうポジティブさというか、楽天的な考え方も大事なんですかね。
染谷:言葉の選び方が難しいんですけど、「ポジティブであるべき」とも言い切れないんですよ。ただ、やってみてわかることがあるだけで。
大村:なるほど。
染谷:ネガティブすぎるのはよくないと思いますけど、「自分はダメだ、失敗した」って思う必要はない。実は僕、そんなにポジティブじゃないんですよ。
大村:えっ、そうなの(笑)?
染谷:淡々と作業をして、「あ、うまくいくんだ」「これはダメなんだ」って慣れていくのが重要。だから、やることへのハードルを限りなく下げる。例えば「バンジージャンプやれ」って言われたら僕はやらないですけど(笑)、やれることなら、まずやってみたらいいんじゃないかなと。
手段よりもゴールを決めることが大事
大村:さっきも言いましたけど、例えば電車の駅を変えるとか、通勤経路を変えるとか、本当に些細なことでもいいんですよ。僕はよく「ペットボトルの飲み物をいつもと違うのにしてみましょう」って言うんです。
例えば、150円のペットボトルの選択すら変えられない人が、人生の大きな決断やチャレンジができるのかって話ですよね。だから、普段からそういう小さな練習を積み重ねることが大事だし、何かを発信する時も先生になろうとしなくていい。半年前の自分より少しでも成長していたら、その差分を伝える。それくらいリラックスしてやればいいんじゃないですかね。
染谷:ここ、水道橋じゃないですか。僕、大学が水道橋だったんです。だから、水道橋から来ればわかるんですよ。でも、今日は後楽園から来てみようと思って。
大村:あえて変えてみた?
染谷:そう。電車もたまたま池袋方面のほうが都合が良かったんで。ちょっとしたハプニングやアクシデントがあったとしても、その時の状況でルートを変えてみるのもいいなと。
大村:なるほどね。
染谷:でも、「こうなりたい」というゴール、旗のようなものは決めておかないと迷うんですよ。ナビゲーションと一緒で、大阪に行くって決めたら方向が定まるけど、決まってなければ動けない。
大村:そうですよね。
染谷:大阪に行くと決まれば、新幹線で行こうとか、夜行バスで行こうとか、自分で運転しようとか、手段はいくらでもある。
大村:富士山も登ろうとしたら、登り口が4つありますもんね。
染谷:そう、それが決まっていれば、あとはどのルートでもいいんです。
大村:じゃあ、ある程度ビジョンというか、目指す方向は明確にしておいたほうがいいということですね。
染谷:そう。小さくてもいいんです。「これをやりたい」「毎日違うことをやってみたい」っていうだけでもいい。それだけで行動の経路が変わりますから。
大村:……ですって、みなさん。
(一同笑)