DX=デジタルエクスペリエンス?

沢渡あまね氏:私は「DX」という言葉を、(スライドを指して)よくこういうふうに説明しているんですね。(一般的には)DX=「デジタルトランスフォーメーション」ですが、デジタルトランスフォーメーションよりも「デジタルエクスペリエンス」。

Slackもそうです。このようにオープンにつながって、オープンに答えを出せるデジタルツールを使いこなす経験を、まず社内に作っていって、そこからこんなことができる。こんな人たちとつながって、こんな新しい、例えばマーケットを開拓できる。ここにどんどん目を向けていく必要があると思うんですね。

日本の旧態依然の組織は、デジタルエクスペリエンスが圧倒的に足りていない。まずデジタルワークシフト。そんなメッセージアウトをしていきたいと思います。

組織・企業は異なるがライフステージが同じ人たちの、つながり

さあ、今日はSlackのセミナーですが、Slackがもたらすデジタルエクスペリエンス。そこからどんな景色の変化が生まれていくか? こんな話を1つ紹介したいと思います。静岡県浜松市に本社があります、NOKIOOという会社があります。この会社はオンラインスクール「育休スクラ」。育休期間中にある方がオンラインに集まって、ビジネススキルを学ぶ。そんなオンラインスクールがあるんですね。

私も特別講義というかたちで関わっているんですが、この世界がものすごいんですよ。ぜひみなさん体感いただきたいんですが、同じライフステージ「育休」にある人たちが集まって、復職後、どうやって仕事をよくしていくか? あるいは、マネジメントを強化していくか? 同じテーマで学ぶ。

そうすると、同じライフステージにある人たちが、会社を超えて悩みを共有できるんですね。さらに、学びを得ることによって、今までの仕事のやり方、あるいは組織の問題点に気付いて、それをここで学んだスキルを活かして、復職後どうやって時短勤務、制約条件がある中で価値を出していくか?

あるいは、このようにデジタルでつながって、限られた時間の中で生産性高く仕事をしていくか? こういうやり方を身に着けて、最後には復帰したくてウズウズする。あるいは「私、今まで興味がなかったけれども、こういったマネジメントを活かして管理職にチャレンジしたくなりました」。こういう人がどんどん増えていくんですね。

この世界、ぜひ体感していただきたいんですが、こういった場所に制約がある、時間に制約がある人たちが、Slackを使ってヨコでつながって。(スライドを指して)画面のキャプチャーをご覧ください。「今、お子さん生まれました」とか、あるいは「こんなことを学んでいます。今日の講座から私は自分の職場に持ち帰って、こういうような価値を発揮したいと思います」。こういったやりとりがされているんですね。

まさに、ライフステージが同じ。しかしながら、組織が違う・企業が違う人たちがつながって、コラボレーションして、オープンな学び合いや動機付けが行われている。こんな新しい世界観がまさに今、この瞬間も生まれているんですね。これこそが、デジタルツールを使って、コラボレイティブ、コラボレーションできるツールを使って、生まれた新しい景色の変化だと私は実感しています。

ナレッジワーカーの“勝ちパターン”

もう1つ別の観点で、オープン型のコミュニケーション、コラボレーション型のコミュニケーションの価値を説明したいと思います。

ナレッジワーカーの勝ちパターン。DXも組織変革もそうですね。何か新しいものを生む。ビジネスモデル変革もそうですね。“新しき”を生んでいくためには、ナレッジ・知識を使っていかなければならない。さらには、ナレッジ・知識を使って新しきを生む人たちが「正しく勝ちパターンで仕事をする環境」を作っていかなければならないわけですね。

過去50年、60年間の日本の反省点は、人海戦術、固定的な働き方、同じような人たちを集めて勝っていくやり方に、最適化され過ぎてしまったところにあると思うんですね。繰り返しになりますが、ピラミッド型・統制型のやり方と、オープン型のやり方では、勝ちパターン・成功法則が違って当然なんですね。なぜなら特性が違う。専門性も違う。スキルセットも違うからです。

では、ナレッジワーカーの勝ちパターンとはなんでしょうか? 同じく組織変革Lab、5月の講義資料から抜粋です。(スライドを指して)こんな絵で私は説明しています。この絵のサイクルをいかに回すことができるか? その環境を提供できるか? これがナレッジワーカーの勝ちパターンだと思うんですね。

左から行きます。「テーマを投げ込む」。考えるテーマ、あるいは例えば「若年層に響くサービスを作りなさい」という命題が上から与えられたとします。これも1つのテーマですね。テーマをまず投げ込む。投げ込まれて、そのキーワード、キーフレーズ、あるいは考えるためにフレームワーク、思考を促す枠組み、論点、観点。こういうものを持つわけですね。

このフレームワークだとか、観点、論点、キーワード、キーフレーズを常日頃、意識していて。ある日突然、まさに思考のアンテナが立った状態。「若年層向けのサービスってどういうことだろうな?」と考えて、さらに真ん中に行きます。ある日、閃くわけですね。それはオフィスで仕事をして、かもしれない。あるいは、同僚と社外の人と雑談していて閃くという経験、みなさんもあると思うんですよね。

遊んでいて、家事していて。私の知り合いで、テレワーク中にお皿を無心に洗っていると、そこで閃くという人がいます。家事しながら。ボーッとしていて、朝起きた時、お風呂入っている時。私はダム際にいる時が多いんですけれどもね。

これは、仕事をしている“だけ”ではダメで、リフレッシュも大事。リフレッシュもプロセスなんですね。そして「そうか!」と閃いて「調べる。深く考える。まとめる」。そのための余白や余力が大事ですね。自分で答えを出せなければ社内の人と、社外の人とつながる。

まさに一番右。「行動する。解決する」。組織内の人。組織外の人。まさにコラボレーションで話をすることによって、あるいはチャットをすることによって、そこからそのテーマの解像度を上げていく。あるいは次なるテーマを見つける。答えを出していく。

このサイクルをいかに回せるかが、イノベーションできる。あるいは既存の問題課題を解決できる人たち、職種の人たちの勝ちパターンです。

統制型とナレッジワーカーでは、勝ち法則はまるで違う

そして、固定的な環境では、9時から17時、みんな同じ場所に集まって同じメンバーとだけ顔を合わせて。昼休みもわずか45分で、社員食堂でかき込むように食事をして戻ってくるというやり方では、回りにくい。すなわち、統制型のやり方とナレッジワーカーのやり方で、まるで勝ちパターン・勝ち法則は違うよという話なんですね。

例えば、Slackのようなチャンネル型。チャンネルで同じテーマを元に複数の人、場合によっては社外のメンバーもアサインして、そこで離れているメンバーを巻き込みながら、物事を解決していく。議論できるやり方というのは、まさにこの勝ちパターンを支えるコミュニケーションのインフラストラクチャー、基盤であると私は確信しています。

「メールでいいだろう」という話もあるんですけれども、メールってさまざまな弱点があるんですね。今日は時間がないので細かく語りませんけれども、メールはクローズで限定的です。さらに、その場にいる人たちだけではCCで共有できますが、新たな人が入ってきた時に引き継ぎしにくいですね。過去のやり取りが見られないですね。いわゆる「新しい人を仲間にして、そこから解決していくオンボーディングには不向きなツール」と考えることができると思います。