2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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佐藤将史氏(以下、佐藤):はい、ありがとうございます。こういうったSFの話で、まず私が良かったと思ったのが、みなさんのアンサーが、なんとかわかる作品ばかりで、一応全部拾えるので良かったんですけど(笑)。こういったSFの発想ってもちろんその個人の趣味、子どもの頃からの夢だったりとか影響というのはあると思うんです。
だけどなかなか大人になると、これを仕事に活かしたり、リアルな人生に反映するって難しいと思っていて、お四方はそれをこう胸を張って表でしゃべれるような活動をされているのはすばらしいことだなと思うんです。他方で、オーディエンスの方の中には大企業にお勤めの方だったりとかいらっしゃると思いますし、私も妻に「いい歳していつまでもアニメを見てるんじゃない」とか言われるわけですけれども(笑)。
そういう中で、SFってどうして大事なの? というのをここに今日いるみなさんとやはりシェアして家に帰ってもらえるとうれしいなというふうに思っているんですが。やはり今日はIVSなのでビジネスとのつながりというのは、ちょっと考えていきたいと思うんですけど。このSFがこれまで現実にどれぐらいインパクトを及ぼしてきたんだろうかと。確実にこの4人に対しては人生上の影響を与えてきたわけなんです。
ちょっとそれを、改めて再現性を持って考えたいと思うんですね。資料の画面切り替えをお願いしてもいいですか? これは三菱総合研究所さんが整理されていらっしゃる「SF思考とは?」というチャートがあってですね。ビジネスとか社会をこれから創設、いろいろとイノベーションを考えていく上でこういう考え方があるよねということをまとめたやつです。
よくあるのはロジカルシンキングとか言ったり、シナリオプランニングとか言って、今これは軸で整理されているのが左と右で言うと、あ、縦ですね。縦で上と下で言うと、確実な今ある既存なものから延長線上で考えたらこうなるよねという話と、頭を1回吹っ飛ばして不確実なところで断続的な未来を描いたらどうなるかという軸があります。
そうするとSFって当然上のほうになるんですけど、よくシナリオプランニングも同じようなことを言われるんですね。未来を描いてどういうことが起きていくかをシナリオとして書いていきましょうと。それでSFって、これは自分もこれを見て初めて理解したんですけど。SFって物語なので主人公の目線とかキャラクターが出てきて、その技術をどう使うかみたいなことがシナリオ……。
シナリオというと語弊があるな。ストーリーで書かれているので人間中心でわかりやすいんですよね。安野さんの小説の冒頭とかも読ませていただきましたけど、どういうふうに10年後のテクノロジーで使っているかが確実に書かれていて、「あ、こういうふうに使うんだ。こういうふうな社会なんだ」ということが、なんとなく客観的にまとまっているシナリオプランニングよりわかりやすい。
というのがSF思考学で、最近これがビジネスの業界でもSF思考とか、SFプロトタイピングという言葉が出てきているんです。
佐藤:じゃあこれが本当に使えるのか、大事なのかというところをみなさんにおうかがいをしていきたいと思っているんですが。まずは阿部さんにおうかがいをしたいと思うんですが、これからその社会作りの中でSFの思想みたいなものもこれから訴えていかれるんじゃないかと思うんですけど、これはいかにして重要なんでしょうか?
阿部圭史氏(以下、阿部):やはりそうですね。SF思考というのは一番代表される単語としては「バックキャスティング」というのがあると思うんですね。今の現在がこうなっているから次はこうなるかもねと考えていくのは「フォアキャスティング」と言いますけれども、それだと50年後、100年後の社会・未来をどう作っていくかが非常に難しいと思うんですよね。
やはりバックキャスティングで、こういう社会を作ろうじゃないか。こういう未来を作りたいなというビジョンがまずあって、そこで現在に立ち返って何をやらないといけないかというのがSF思考かなと思いました。今後の社会を作っていく企業のみなさん、リーダーになられる方々がたくさんいらっしゃると思いますので、そういった方ですとか、政治家とか、そういったリーダーになる方々はやはりSF思考が重要なんじゃないかなと、私は思っています。
佐藤:やはりこのリーダーだからこそ持てる、持つべき考え方というところですかね。
阿部:そうですね。
佐藤:はい。安野さんにもちょっとおうかがいしたいんですけど。実際にSF小説も書かれていらっしゃいますが、やはりああいうのを書く時というのは、あそこで込められたメッセージをいろんな社会、経営者とかビジネスの人にも使ってもらいたいなみたいな、そういう思想もあったんですかね?
安野貴博氏(以下、安野):そうですね。自分が書く時はもう楽しんでもらうことを第一に最適化にしているんですけど。それでもですね、SFだからできることってやはりたくさんあるなと思っています。最近私が思ったのは、今の社会を見た時に技術が進化するスピードってどんどん増えて、スピードが速くなっているじゃないですか。今までって社会が変わるボトルネックって、その技術が発明されるという技術の進化スピードがボトルネックだったと思うんです。
だけどなんか、たぶんこの10年ぐらいでそのボトルネックが移り変わって、人間の社会が新しくいろんな出てきている技術を取り入れる、受け入れるスピードに変わってきたと思うんですよね。なので、ある意味技術のスピードじゃなくて、我々の社会が変わるのは我々が新しい技術を受け入れるスピードがこの社会の変化を規定している時代だと思っています。
そういう意味でSFというのは個人の目線で技術がどう使われるのかというのをたくさんの人に、頭の中でシミュレートさせる機能を持っているので、なんか社会を加速させるのに一躍買っている気が私はしています。
佐藤:ありがとうございます。
佐藤:そういう意味では、あれですね。受け入れるってすごく重要なキーワードだと思うんですけれども、だからありものの技術もそうかもしれないけど、やはりリーダーのような方がちょっと進んだものを提唱して、それをみんなでやっていこうぜという空気を作れるかどうかということですかね。
石井啓範氏(以下、石井):個人的にSFが産業にどう貢献しているかというところの最たる例は、私はやはり宇宙産業というのがあると思います。もともとジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』というSF文学があって、それに影響を受けたゴダードでしたっけ? そういう研究者がそういうロケットを打ち上げようというところからスタートして、すごく長い年月を経て今はこれだけ宇宙産業を先ほどスライドを見せていただいたぐらい発展していると思うんです。
そのゴダードなりは、そこまで宇宙産業が広がるというのは考えていなくて、やはりSFの影響を受けて「宇宙に行ってみたい」みたいな、このチャレンジ、ロマンを大切にしたところからスタートしていって、それがつながっていってこれだけの大きな産業になっていっていると思うので、このグラフがそのままだと思うんです。
人間中心に、人間がロマンとしてやりたいことというのをもちろんその社会起点で、その社会課題を解決するというのも重要なんですけど、人間がそうじゃない面でなんか純粋に夢を追い求めるというところもやはり大切にしていけば、その中の何かが50年後、100年後につながれるのかなというふうには考えていますね。
佐藤:そうですね。そうすると最初にそのビジョンとか技術の根幹を発した人だけじゃなくて、その思いを継承してインプリメントする人たちの理解とか、協力ってすごく重要になってきますよね。そうするとやはり受容度ってすごく重要になってくると思うんですけど。岡島さんにもまさに、今宇宙の話が出たので、宇宙業界の仲間として聞きたいんですけど、どうでしょう?
このあたりは、インプリメントするってビジョナリーの言ったことが、必ずしも実装されるとは限らないと思うんですけど、宇宙業界とかはどうですかね?
岡島礼奈氏(以下、岡島):そうですね。やはりジュール・ヴェルヌの話になると人間が想像したことはだいたいできるみたいなのをすごくヒシヒシと感じますね。特に先ほども例であったように、SF作品と宇宙ってすごく密接に関わりがあって、例えばNASAが映画監督の、前はスピルバーグとか、ジェームズ・キャメロンだったりとかをアドバイザーにやっていたりとかするぐらい、そういう宇宙と密接にSFが関わってるんです。
けれどもそれをインプリメントする上で、最近でも見ていて思うのはイーロン・マスクを見ていればだいたいSFだなみたいなのをけっこうヒシヒシと感じていて、なんか先ほど「週に一度の打ち上げ」とかというのもスライドで出ていましたけど、最近「毎日打ち上げるぞ」みたいなことを言い出していたりとかするので、なんかイーロン・マスクが1人SF思考している世の中みたいなふうに、今は若干見えていたりとかします。
佐藤:すごいですよね。宇宙をやっていて、脳の改造をするやつをやっていて、地面を掘っていて、もちろん電気自動車をやっていてと、もう全部ですよね。
岡島:あとAIも確か巨額の投資をしていますよね。
安野:OpenAIを最初に作ったのもイーロン・マスクですもんね。
佐藤:そうか。そういうことですね。いや、すごい。
佐藤:ああいうリーダーが出てきたらいいと思うんですけど、阿部さんはいかがでしょう。こうやってリーダーがビジョンを発するってとても重要なことだと思うんですけども。
阿部:そうですね。やはりリーダーは、何ていうんでしょう。ビジョンの種というかですね、もう本当にどういう方向に組織を持っていくか、社会を持っていくかって常に考えなきゃいけないと思いますので、リーダーこそSF作品をいっぱい見て読むべきだと思いますね。
石井:リーダーはすごい、やはりなんか発想が飛んでいる必要性はすごくあると思っていて、私はどちらかというとエンジニアなので、リーダーの発想をどう実現するかみたいなポジションですね。そのエンジニアってわりと真面目なので、どうしても積み上げ型で考えてしまうので、そうすると飛ばないんですね。
佐藤:そこをうかがってもいいですか? まさに大企業のエンジニアでもあられた石井さんに聞きたいのが、こういうSFの話ってその大きな企業とかだとイノベーター的な役割の人が最近でこそ認められるようになりましたけれども、やはり最後に事業開発をする人とかエンジニアとの間で絶対に摩擦が生まれると思っていて、先ほどの妻に怒られた私の話じゃないんですけど、社内でも怒られるみたいなケースはあると思うんですよ。そういうのって実装するために何が必要なんですかね?
石井:そういう意味で言うとやはり技術が当然必要になってくるんですけど、だからそこは難しい。常々難しいところだと思っているんですけど、うちの代表とかがけっこう飛んでいることとかを言うんです。だからそれをやはり全部否定してしまうと終わってしまうので、なのでアンテナを張って、どこまでだったらできるかみたいなところの線引きですよね。
次の開発の狙いどころをどこに持ってくるかというのは、すごいポイントだと思います。先ほどの動くガンダムの話も、あれもサンライズの宮河さんという社長をやられた方が「ガンダムを動かそう」ということを言い出して、そのどう動かすとかが何もないんですけど、なんか「5年後に動かそう」ということを言い出してプロジェクトが立ち上がって、それでエンジニアが試行錯誤した結果が横浜のあの形に落ち着いたんです。
だからそこは、そのそれぞれのポジションがあって、その役割が2つ明確になるかなと思います。
佐藤:まぁ、そういう意味では「動かそう」というトップダウンも重要だし、もう1個感じたのは見せたということですかね。
石井:そうですね。
佐藤:動かしてみせたということによって変わったというのはありますよね。
石井:なので、そうですね。それがだから最初から「自立しないじゃないか」みたいなのは当然わかっている話なんですけど、今ある技術で動かすというとここまでできますよというのを見せることによって、特に子どもたちがあれを見ることによって、じゃあそれを見た彼らが次に何を目指すかというところに先ほどのその宇宙開発と同じなんですけど、次の世代につながっていけばいいかなというのも1つの大きなミッションだなというふうに考えています。
佐藤:阿部さんにもおうかがいしたいんですけど、おそらくこれからその政策を作っていく時とかにもやはりテクノロジーとか、こういうSF起点のものに投資をしようとか、予算をつけようとかという時に絶対にその反対派とか国民の理解が難しいとかってあると思うんですけど、そういうのはどう乗り越えていくものなんですかね?
阿部:そうですね。SFの世界を考えて進めていく上で今技術の話がありましたけれども、2つの制約があると思っています。技術的制約を解除していくという話と、あと社会的制約をどういうふうに乗り越えていくかという話ですね。例えば私が好きなガンダムSEEDの世界でもナチュラル対コーディネーターってありますけど、普通に生まれた人間と遺伝子操作して生まれた人間と、その対立が描かれているんです。
そういった新しい技術に対して社会的な需要って非常に大事だと思っていて、生命倫理をアップデートするとか、そういったことも議論になるのかなと思うんですが。社会的な基盤、条件をアップデートするというのは、やはりこれは時間がかかるんですよね。なのでこれは国民的な議論がもちろん必要になってきますし、最終的には臓器移植法の改正って昔にあったんですね。
佐藤:臓器?
阿部:臓器ですね。脳死肝移植とかですね、そういう関係がありますけれども、やはりこういう生命倫理のところについては議員一人ひとりの良心に基づいて投票しようじゃないかとか、そういったことになってきます。なのでやはり本当に政界の中でも非常に大きな議論になるんじゃないかなと思います。
佐藤:そういう時にSFを見て育った世代が多いかどうかでいろいろ変わったりします?
阿部:それはけっこうあると思いますね。SFを見て育った人だと「あ、こういう世界観ね」というのはすぐに思い浮かぶんだと思うんですよ。それはもちろんいい点もそうですし、それに伴う負の側面もそうですね。
佐藤:安野さん、なんかこのへんの、まさにSFの伝道師たるお一人としてどうでしょう?
安野:まさにSFで見ていたことがあるからスッと入ってくる概念ってたくさんあると思っていて、今の日本ってけっこうAIに対して親和的な国だと言われているんですけど。それがなんでかというのをいろいろと議論されている中で1つあるのは、アメリカとかヨーロッパとかだと、AIとかロボットと聞いた時に『ターミネーター』のことをまずは思い出すんだと。だけれども日本だと、『鉄腕アトム』とか『ドラえもん』を思い出す。
佐藤:おもしろい。
安野:これによって、なんかこう親和性みたいなことがけっこう変わってきているんだという話があって、それはすごくあり得る話だなと私も思いますね。
佐藤:おもしろいですね。受けたカルチャーによってイメージするものがぜんぜん違うということですよね。そういう意味では岡島さん、我々がいる宇宙業界も、アメリカの場合は確かあれですよね。『スターウォーズ』と『スタートレック』に影響を受けていて、日本の宇宙業界の人はガンダム派が多くてみたいなのはありますよね。
岡島:本当にありますね。あと『スターウォーズ』と『スタートレック』で、たまにエヴァの人もいます。
佐藤:エヴァ?
岡島:たまに『新世紀エヴァンゲリオン』好きの宇宙好きがいる気がしますね。私が一緒に研究してもらっている大学の先生が、エヴァンゲリオンの映画版の最初、宇宙空間からの戦闘でスタートするじゃないですか。
安野:「エヴァQ」ですよね?
岡島:そうです。「エヴァQ」のあれの科学考証をやっていたりとか、佐原先生(佐原宏典氏)ですね。
佐藤:そうなんですね。4月に行ったコロラドで行われている宇宙業界最大のSpace Symposiumという、行政とか、防衛省とかが集まるイベントがあるんですけど、そこでやっていた一番注目を集めたセッションが「宇宙業界『スターウォーズ』ファン対『スタートレック』ファン」というセッションをやっていて、普通にNASAの幹部が激論をかましているんですよ。こういうのはすばらしい文化だなと思って。
石井:海外ではすごく『スタートレック』が人気ですよね。
佐藤:そうなんですよ。
石井:日本は圧倒的に、私の認識では『スターウォーズ』なんですけど、海外では本当に『スタートレック』が人気ありますよね。
佐藤:そうなんですよ。けっこうこういうカンファレンスにいいシニアの方が映画のシャツを着て現れるみたいな。でも、ああいうのがあるからやはりね、すごく理解度が深まるし、いろんな人に宇宙の理解が示されているんだろうなというふうには感じましたね。じゃあちょっと次のトピックに移りたいと思うんですけども、SFで未来をちょっとみなさんに描いていただきたいなというふうに思っています。
(次回につづく)
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