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第二部「Z世代マネージャーの登用で何が変わるのか」(全5記事)

1年で業績13倍…V字回復へと導いたZ世代マネージャー 「北の達人」流・マネジメントの3つのポイント

ログミーBusinessリニューアル記念として、二部構成で開催されたイベント「これからの時代の組織マネジメント:ジョブ型雇用とZ世代のマネージャー登用」。第二部ではZ世代のマネージャー登用についてのセッションが行われ、人事コンサルタントの曽和利光氏、北の達人コーポレーションで管理職を務める高橋一雄氏、ログミーBusinessアンバサダーの篠田真貴子氏の3名が登壇。本記事では、北の達人をV字回復へと導いたマネジメントのポイントについて明かします。

「管理職になること=幸せ」とは限らない

篠田真貴子氏(以下、篠田):さっき曽和さんも言ってくださいましたが、当然ながら高橋さんお一人がZ世代代表ということではないわけなので。高橋さんご自身のご経験、ご自身の感じるところ、プラス周りのお知り合いの方を見ながらお感じになるところを、少しお話しいただければと思います。ある意味、Z世代の中では年上になるんですかね?

高橋一雄氏(以下、高橋):真ん中よりちょっと上ぐらいかなと。

篠田:真ん中よりちょっと上ぐらい(の年齢)でいらっしゃって、もうチームを率いていらっしゃるわけなんですが、まずは今の曽和さんのお話を聞かれていかがでしたか?

高橋:おっしゃるとおりです。

曽和利光氏(以下、曽和):良かったです。

(会場笑)

篠田:X世代、やりましたよ。

曽和:「違いますよ」って言われるんじゃないかなって。

(会場笑)

篠田:ぜひ詳しく、ご自身の感じるところをおうかがいしてよろしいですか?

高橋:そうですね。(Z世代は)デジタルネイティブなところもあるので、自分も含めて、情報としていろんな価値観やライフスタイルがすごくインプットされている人が多いのかなと思っています。キャリアに関しても、一概に「入った会社で管理職になること=幸せ」みたいなことではないのかなとは思っていて。

管理職になることが当たり前ではない時代

高橋:あとは「(仕事をやる)意味を求める」というところも、まさにすごくそうだなと思ったんです。Z世代とか若手で管理職になるといった時に、それが当たり前ではないので。「じゃあ、なぜこの会社の中核に入っていくのか?」というところはちゃんと握っておかないと、(管理職を)ぜんぜん目指さないということも往々にしてあるのかなと思います。

篠田:今、おっしゃった「握る」というのを、もうちょっと言っていただいていいですか?

高橋:男だったらって言うのはちょっとあれかもしれないんですが、昔だったら「普通に働いていたら管理職になっていくよね」というのがベースだったと思うんです。

ただ、「じゃあ、あなたにとって管理職になることにはどういう意味があるのか?」という納得感が必要だったり。(管理職になることが)当たり前じゃないので、主体的になりたいというところのすり合わせと言いますか、握り合わせがすごく重要なのかなとは思います。

篠田:多様だということは、逆に言うと全員が管理職を目指すことに関してはちょっと「ん?」ってなるけれども、「自分のキャリアプランとして管理職をやってみたいな。なりたいな」という方も一定いらっしゃるんでしょうか。

高橋:それはぜんぜんいると思っています。これは、だいぶ会社の風土によるのかなというふうには感じています。自分たちの会社だと、基本的にはちゃんと成果を出して、出世というかどんどん会社の中核に入っていくのがベースだったりはするので。

ただそれって、そもそも会社選びの段階で、価値観に基づいてどんな環境に行くのかを選んでいるから、そういう人間が集まっているというのはあるとは思うんですが、(管理職になりたいZ世代は)いることはいるっていう感じかなと思います。

曽和:学生起業家とか、けっこうマッチョなZ世代っていますよね。

篠田:確かにそうですよね。

曽和:ある意味でガツガツしていて、昭和感がすごく漂っている。めちゃくちゃ少ないですが、飲みにもすぐ来る人もいますよね。

篠田:そこも含めて「多様」だし、ということですね。

書籍『チームX』内に登場するキャラクターのモデルに

篠田:今、お話があったように、北の達人さんという会社に集まるみなさんは、わりと「ビジネスパーソンとして力をつけていきたい。仕事をがんばりたい」という方々が集まっている感じですね。

高橋:そうですね。そういう人を集めたいというのもあってメッセージングを打ち出しているところもあって、そういう人間が集まっているのかなと思います。

篠田:なるほど、ありがとうございます。じゃあ、ここのパートは入り口なのでこれくらいにして。次に、高橋さんが北の達人コーポレーションさんで、実際にどんなマネジメントをされていらっしゃるのかをうかがっていきたいなと思います。

北の達人の社長の木下(勝寿)さんが『チームX』という本を出されているんですね。その中に登場する100人の部署の統括マネージャーとして、V字回復を引っ張ったキャラのモデルが、実は高橋さんでいらっしゃるということです。

ご本はある程度デフォルメして書いてあると思うんですが、実際にどういうふうにチームを引っ張ってこられているのかをお話しいただいてよろしいでしょうか?

高橋:ちなみに、本はめちゃくちゃリアルに書いているので、ぜひ。

(会場笑)

篠田:デフォルメじゃないんですね(笑)。失礼しました。

1年間で新規集客人数を13倍まで回復

高橋:もしかしたら、これは「Z世代だからどう」というのは関係ないのかもしれないんですが、どんなことをやったのかをお話しさせていただければなと思います。

先ほど申し上げたように、(北の達人は)BtoCの「北の快適工房」というブランドを運営している会社です。前提になる部分をちょっとお話しさせていただくと、Web広告経由でお客さまを集客することをメインのルートにしております。

会社として、なかなか不調な時期があったというところだったんですが、先ほど申し上げたとおり2023年から自分が管理職になってチームを率いているところです。

結果としては、Web広告経由の集客は我々のビジネスモデルにおいてはかなり生命線ではあるんですが、こちらの新規集客人数を1年間で13倍にまで回復させることができました。これによって、業績に関しても年間売上146億円ということで、最高業績を達成できたところがあります。

篠田:前年比で50パーセントアップぐらいですよね。

高橋:そうですね。100億円ぐらいだったところから、1年間で(前年比50パーセントアップ)という感じですね。

篠田:劇的な成長を(遂げている)。

高橋:先ほども申し上げたように、本にはめちゃくちゃ具体的にリアルに書いているので、見ていただけたらうれしいなとは思うんですが、概要としてどういうことをやったのかをお話しさせていただければと思っています。

V字回復のポイントの1つは「ギリギリ無理な目標設定」

高橋:大きく3つに分けてお話しさせていただければと思っています。1つ目が「ギリギリ無理な目標設定」。2つ目が「『理論上こうやればいける』戦略設計」。3つ目が「乖離と要因の見える化」です。

1つ目、まずここは大前提で重要かなと感じているんですが、目標設定の部分で「どこに置くのか」がめちゃくちゃ重要かなと考えています。

どういうことをやったかというと、これは社内でよくある会話の紹介なんですが、けっこうみなさんも「この目標に向かってやります」みたいな話があると思うんです。ただ、その時って基本的には「そのために何をやっていくのか」ということを話されると思います。

うちの会社だと「目標は○○で、これに向けてこうやってやっていったら達成できます」と言うと、「それはもう見えているから『予測』だよね」と言われる文化というか、風土がありまして。

先ほどは新規集客人数で言いましたが、今回のチームXも目標設定をする際に「今の状態からデイリー2,000人だったら、3,000人だったらどう感じる?」というところをけっこう壁打ちしながら、「ギリ無理そうなところでやろう」ということをやっていました。

この「ギリギリ無理だろう」みたいなところに目標を置くのは、会社全体としてもそうですし、私としてもすごく意識をしているところです。

これは実際に社内でメンバーに話した資料そのままなんですが、(売上)13倍になった4ヶ月前の目標設定の頃に、「北の達人の歴史を創ろう」という話をしていました。

北の達人の過去最高(売上)のことを社内では「ギネス」と言っていたんですが、「ギネスを塗り替えよう」「ギネスいけそうだよね」となったんですね。「それを目標にしたら微妙じゃない?」ということで、最終的に目標設定したのは「ギネスの倍いこう」。「これは無理そうだよね」という目標設定をしたところがございます。

これを設定した時は(デイリーの集客人数が)だいたい900人ぐらいだったんですが、「4ヶ月で4倍いこう。いけるかというと、たぶん無理そうです。まずはいってみよう」みたいなスタートを切ったところがございます。だいたい4倍という感じですね。

無理そうに見える目標を自分ごと化するには?

高橋:2つ目にすごく重要だなと思っているのが、「まずは理論上こうやればいける」という戦略設計をすることがすごく重要かなと思っていて。今みたいな目標を掲げると、「普通に考えると、まず無理だよね」と感じるかなと思っているんです。ただ、難しくはあるものの、「理論上こうやったらいけるよね」と描くことはすごく重要かなと思っています。

理由としては、やはり壮大すぎるとイメージができずにメンバーがついてこないところがあるからです。初めに「理論上こうやったら達成できる」という絵を描いて、そこに対してちゃんと細分化していって、メンバーの目標に落とし込んでいって、進捗管理していくことはすごく重要かなと感じています。

この話の「4倍にしていく」というところも、若干専門的なところがあって申し訳ないんですが、要するに4倍の成果を出すとなった時に何をしたらいいのかを端的に言うと、「購入率を倍にさえすればいけるよね」ということです。

ここに(目標を)絞り込んで、「理論上こうすれば、計算上いける」ということをまずは描くことは、すごく意識してやっておりました。それを個々人の役割に落とし込んでいくということですね。

そうやっていくことによって、どんどんやることの具体がイメージできるところがあります。目標だけを見ると「めちゃくちゃ壮大で無理そうだな」というところから、しっかりと自分ごと化できて、目標達成に向かって動き始められるところがあったのかなと思っています。

デイリーで緻密に進捗状況を確認

高橋:もう1つ。最後にめちゃくちゃ細かくやっているのが、「乖離と要因の見える化」です。これは会社の特徴でもあるかなと思うんですが、かなり細かくデイリーで「進捗どうなの?」というところと、あとは乖離がある時に「どこの要因がネックになっていて達成できていないのか?」というところを、常に見える化して手を打っていっています。

そこから施策の内容を決めていきつつ、デイリーで進捗会議を見ながら個々の施策内容を変えていくという感じでやったり、あとは(アイデアが)枯渇してきたらこういうコンテストをぶち込んで、施策を回収するという感じでやりました。

概要としてはこんな感じでやりましたというところと、最後にめっちゃ余談なんですが、期末が2月28日なのでそれで目標設定をしたんですよね。1月はまだ目標達成してないんですが、先に祝勝会を予約するということをやって(笑)。

「300万円で予約しました。未達だと反省会になります」という追い込みをかけて、最後はなんとか達成したところもあったりします。すみません、ちょっと長くなってしまったんですが、概要としてはこんな感じでした。

篠田:ありがとうございました。おうかがいすると、極めて緻密で論理的です。「まずはマネジメントの戦略を立てて、それを一人ひとりが動けるアクションにまで落とし込むんですよ」と、教科書どおりのことを愚直にビシッとやっていらっしゃるのが印象的で、すばらしいなと思いました。

一方で今のお話に入ってこなかったのが、やはりピープルマネジメントと言うんでしょうかね。先ほどの曽和さんのお話ではないですが、論理的にはそうなんだけど、人が100人もいればそれぞれ受け取り方も違うでしょうし、中でも世代差で難しさがあったりしないのかな、なんてことを考えてしまったりします。

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