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2025.02.06
ポンコツ期、孤独期、成果独り占め期を経て… サイボウズのプロマネが振り返る、マネージャーの成長の「4フェーズ」
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篠田真貴子氏(以下、篠田):曽和さんにおうかがいしたいです。高橋さんの個性はもちろんあるんですが、Z世代の若い方々がマネジメントとして力を発揮できる環境が、やはり北の達人さんにあるのかなというふうにも思いました。
社名は出しませんが、例えばメガバンクで今みたいなプレイスタイルって、ちょっと想像しづらいなと思いながらも聞いていたんですよね。それで言うと、北の達人さんだからできたことなのか。
もう少し視野を広げていただいて、「こういう職場だと、20代のZ世代のみなさんがマネジメントで力を発揮できるんじゃないの?」ということがもしあれば、ぜひおうかがいしたいです。
曽和利光氏(以下、曽和):まず、そもそも社会という単位で見るとバラバラなわけです。よく「カルチャーフィット」というふうに言いますが、それを入り口のところでだいぶやっておかないと、たぶん今の施策はド外しする組織もあると思いますね。
篠田:そうですよね。これだけ「みんな、ゲームやろう!」と言っても、「つら……」みたいな人たちが集まっていたら成立しないと。
曽和:ゲームが嫌いな人というか、ゲーム的なものが嫌いっていう人もいるじゃないですか。だから、たぶん(北の達人は)採用にすごく力を入れられているんじゃないかと思うんですが、そこでの選抜をきっちりやっているんだろうなと思いました。
篠田:なるほど。
曽和:僕はいろいろな人事コンサルをやる時に、どんなパーソナリティの人たちからできているのかをけっこう見るんですね。やはりマネジメントしにくい組織って、バラバラの組織というか。
例えば「社交性」という観点から見ても、めちゃくちゃ社交性が高い人と、ぜんぜん高くない人が同じくらいいたとします。じゃあ施策を打つ時に、運動会と言ったら「イエーイ」という人と、「いや……めっちゃ嫌や」という人がいて、どうすればいいか? みたいな感じになるじゃないですか。
そういうことを考えると、別に北の達人さんのようなマネジメントがいいとか悪いというよりは、(組織に)集めた人に合ったマネジメントをしている感じがすごくしました。
篠田:なるほど。
曽和:ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、昔のリクルートっぽい感じがすごくした感じがしました。そういうカルチャーフィットを感じずに普通に人を集めていたら、このマネジメントはうまくいかなかったかもしれないですね。
篠田:確かにね。
曽和:だから逆に言うと、そういう能力だけじゃなくて、価値観やカルチャーを見てやる採用がすごく大事な世代なんじゃないのかなと思いますね。
篠田:本当ですね。今のお話は本当にすごく大事だなと思ってうかがっていました。なんとなく今は「カルチャー」とか「カルチャーフィット」というのが、ちょっと流行り言葉的になっている傾向があるかと思うんです。
それって今日のお話の切り口から言うと、これからみなさんが働いている企業の仲間にどんどん入ってくるZ世代の方々は、まさにそこを見ているわけです。対応する側も人材の志向性の差がすごくあるから、会社としても「こういう人に来てほしい」という明確な打ち出しをしないと、ミスマッチになっちゃうよということなんですね。
曽和:30年前の僕らだと、もうちょっとボーっとしていたような気がするので、適当に入ってもその会社に染めてもらえたみたいな感じがあるんです。今の場合は、きちんとマッチングしないとまずいような気はしますね。
篠田:ありがとうございます。
篠田:マッチングという観点で、今日のテーマが「マネージャーになっていく」というところなんですが、あらためてZ世代の方々がマネージャーになっていくことに関して(お話をうかがいたいと思います)。
やはりここも(志向性に)ばらつきがあるから、「ちゃんとそういう人を採りましょうね」という意味合いになっていくのか、入ってから育成のような機会を差し上げるところで何か工夫があるのかというと、どうなんですかね?
曽和:例えば希少性は高いんだと思うんですが、「マネージャーや管理職になって人を率いてみたい」みたいな人を、採る時に一定数入れておかないといけない感じはするんですね。
カルチャーフィットといっても、マジョリティとしてどういう人を採るかということと、率いていく人はまたちょっと違う。だから、そこはポートフォリオで採用も考えないといけない感じはしますね。
だから、この施策に乗せる人と乗せられる人がいるとしたら、乗せられる人を8〜9割採る。高橋さんは「乗せられるほう」でもあったかもしれないんですが、たぶんどっちかと言うと「乗せるほう」じゃないですか。
篠田:ゲームを作っている側、みたいな。
曽和:狼みたいな。
篠田:(笑)。
曽和:羊の人と狼がいるみたいな感じで、多少そうやって複線で採っていくことはしておかないといけないかもしれませんね。
篠田:ここまで聞かれて、高橋さんはいかがですか? ご自身は初めからわりとマネジメントにご興味があって「やりたいな」と思っていましたか?
高橋一雄氏(以下、高橋):どちらかというとそうかなと思いますし、先ほどおっしゃられたような「組織の中での割合」はめちゃくちゃ重要だなと思っています。私たちもめっちゃテストをやっているんですが、性格のテストとかをやって、部署ごとにリーダーとして引っ張っていく素質のある人間の割合を、けっこう定量的に決めています。
篠田:なるほど。
高橋:「これ以下の場合は、薄めるようには入れない」ということをやりつつ、ちゃんと組織として推進力を落とさないようにする。
必ずしもリードしていく人間がいいということではないんですが、「そことセットになって大きく活躍できるよね」という特性があったりすると思っています。そこの割合は実際に自分たちもすごく重視しているので、間違ってなかったんだなと思わされました。
曽和:だから、けっこう能力は見ますよね。ただ、パーソナリティの割合まで最適なのかどうかを気にして採っているところって、まだまだ少ない感じはあるなと思うんです。
徐々に「Aというタイプ、Bというタイプ、Cというタイプは、何割ずつぐらいいるのがいいんだ」ということを決めて、常にその割合を組織でモニタリングして、先ほどおっしゃったように「これは増えすぎだな」と思ったら、ちょっと薄めるようにしてみるとか。というのが、実際に多くなってきていますね。
多くなってきているというか、(やっているのは)先進企業なので、マジョリティとして多いかというとそんなことはないですが。
篠田:でも、科学的にパーソナリティまである程度見てアプローチして、その配分を考えるところから組織設計をするということですね。
曽和:そうですね。
篠田:お二人のお話をうかがっていて、あらためて今のような発想が出てくるのも、「マネージャーや管理職って役割の1つですよね」というところが出発点のように聞こえるんですよね。ちょっと古い価値観だと、管理職がすごく偉くて下々、みたいな。(高橋氏が)笑っていますが(笑)。
この世界観で「Z世代のマネージャーはどうなの?」という問いに向かってしまうと、ちょっとズレるというか、間違うのかなって感じたんですが、いかがですか? 今、笑ってくださっていたんですが、「その『下々』って何?」という感じなんですか?
高橋:いえいえ(笑)、そういうわけじゃないですが。Z世代の中のマネージャーになりたい層の中でも、「そういうポジションになりたい」みたいな欲を持っているとか、そういう動機は少ないんじゃないかなとは思います。
篠田:ポジションに惹かれるという人は少数派であると。
高橋:どちらかというと、まずは組織やチームにいる意味を見いだしつつ、そこにしっかりと意義を感じているので、「より中核で、より影響力の高いポジションでやろう」みたいな感覚の人のほうが多いのかなって。僕はそういう感じなんですが。
篠田:結果としての仕事の中身という、そんなイメージなんでしょうかね?
曽和:そうですね。だからむしろ「偉くなってうれしい。イエーイ」みたいな感じというよりは、やらなきゃいけない評価をするとか。ある種のおじさんというか僕ら世代だったら、『半沢直樹』とかを見ていたら、権力を持つことに対してうれしいみたいな。あれはだいぶ盛っているとは思うんですが。
篠田:あれは歌舞伎みたいなものですよね。
曽和:僕ら以上の世代の人だと、(権力を持つことに対するうれしさが)あったような気もするんですね。
篠田:そうですね。
曽和:なんですが、むしろ彼ら(Z世代)にとってはそれはちょっと恐怖というか。
曽和:指示を出したり、命令したり、評価をすることは、マネージャーみたいな人の面倒を見る観点で言うと、貢献欲求もすごかったりするので「やってみたいな」というのはけっこうあるんです。
ただ、評価はもちろんいい評価だけじゃなくて、ネガティブフィードバックをしなきゃいけないわけですし、先ほどの高橋さんみたいに「こんなの予測だよね」と言われることもある。
篠田:(笑)。
曽和:「じゃあ2倍いこうぜ」というのがつらい人がけっこう多いといいますか。そのあたりが管理職になりたくない原因につながる。今、確か(管理職に)なりたい人が2割ぐらいしかいないんですね。ただ、なれる人は1割ぐらいなので、そんなものでいいかなと(笑)。
篠田:2割でいいかなと、そういう感じですね。
曽和:いい倍率かなと思ったりもするんです。でも、なんでなりたくないかといったらそうなるし。Z世代の人をマネージャーに登用した落とし穴の1つとして、僕がよく見るなと思うのは、マネージャーになる質的変化というよりは、「俺はマネージャーになったけれども、これからも先輩みたいな感じでいてくれよな」という感じです。
でも、向こうから見たら評価を付ける人になるし、指示をしてくる人になるし、決める人だし、責任を取る人なので、「いや。なんでこっち側の人のふりをしているんだよ」みたいな。それで失敗するというのが、Z世代の方々を管理職登用した時の落とし穴としては多いパターンのような気はします。
だから、「これからも兄貴だと思ってくれよな」では、やはりダメだと。それで一度失敗して、管理職然として、マネージャー然としてやっていって、要望するものは要望する。
ちょっと寂しいかもしれないけど一線を引いて、みんなで仲良くじゃなくて、みんなで今までは飲みに行っていたのを独りでバーに飲みに行く、みたいな。孤独感とかを乗り越えないと、マネージャーになっていく時になかなか難しいという人もいるような感じがしますね。
篠田:なるほど、ありがとうございます。
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