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第二部「Z世代マネージャーの登用で何が変わるのか」(全5記事)

疲弊した組織を変え、若手をやる気にさせたKPI設定とは 「北の達人」のZ世代管理職が明かす、メンバーを巻き込むコツ

ログミーBusinessリニューアル記念として、二部構成で開催されたイベント「これからの時代の組織マネジメント:ジョブ型雇用とZ世代のマネージャー登用」。第二部ではZ世代のマネージャー登用についてのセッションが行われ、人事コンサルタントの曽和利光氏、北の達人コーポレーションで管理職を務める高橋一雄氏、ログミーBusinessアンバサダーの篠田真貴子氏の3名が登壇。本記事では、マネジメントにおいて「ゲーム性を持たせる」ことが大切な理由について語ります。

Z世代管理職、メンバーとの年の差は「あんまり関係ない」

篠田真貴子氏(以下、篠田):まずは大きくピープルマネジメントという観点で、特に留意されていたことがあればということと、年下・年上(の比率)はどうでしょう? 年上の方のほうが多い?

高橋一雄氏(以下、高橋):基本的には同年代・年上という感じで、かなり離れているメンバーもいますね。

篠田:高橋さんから見て、年代が違うことが何か課題になったのか・ならないのかという、このあたりをうかがってよろしいですか?

高橋:そうですね。ピープルマネジメントで言うと、さすがに1対99みたいな感じになっちゃうので、ちゃんと目の届く範囲で階層を作っていくということはやりつつ。

そこをめちゃくちゃ細かくやっているというよりかは、「ここでこうがんばると、チームにこう跳ね返る」とか、大枠の部分で100人の役割をちゃんと説明していくことはやっていたかなとは思います。

それによって、一人ひとりが「自分がどうがんばれば、チームの成果にどれぐらいインパクトがあるのか」を握りながらできるところがあります。そこをしっかりとすり合わせができれば、あとは基本的には建設的な議論に基づいて進めていくところかなと思っています。

世代間みたいなものは、あんまりないかなというところがあります。先ほどの話とも近いんですが、基本的には世代間とか、自分が年下でマネージャーで年上のメンバーとかは、あんまり関係ないかなとは思っていて。

マネージャーというのも1つの役割でしかないですし、一人ひとりのメンバーに役割があって、自分は自分でマネージャーとしての役割を全うする。メンバーはメンバーで自分の役割を全うするというところで、互いにリスペクトを持って事業成長にコミットしていくことはできていたので、「やりにくい」みたいなことは特になかったかなと思います。

篠田:今のお話を聞いていて、ピーター・ドラッカーが「組織というものでは、とにかく人は位置と役割がわかると、みんなそこに所属感を持ってやっていけるんだ」と書いていたのを思い出して、まさにそれをやっていらっしゃるのかなという印象を持ちました。

30年前と現在で若者はどう変わったのか

篠田:曽和さん、ここまで聞いてくださって、いかがですか?

曽和利光氏(以下、曽和):別にZ世代とかはあんまり関係なく、経営とチームマネジメントのすごく好例を見せていただいたなと思うんです。たぶん高橋さんみたいな希少な方もいるので、平均を取るとああなるんだと思うんですね(笑)。そうじゃない方々もたぶんいっぱいいる。だから、すごく幅広いなって思いました。

僕は30年前に入った頃のリクルートを思い出したんですよね。目標も変な言葉がいっぱいあって、「ハイ達成」とか。「達成」って100パーセントなんですが、それは普通なので150パーセントぐらいまでいってようやく褒められる、みたいな。ちょっと同じ匂いな感じがしたわけですが、それは30年前ですからね。

そういうこともあったりして、だから本当に振れ幅が広いなって思いました。先ほど言ったようにうちのメンバーはZ世代なんですが、高橋さんみたいな人はほぼ1人もいないので。

うちはコンサルティング会社なので予想や推測はあるんですが、目標がないんですよ。目標というか、数字的な目標。でも、ちゃんと真面目にやるんですが、本当に振れ幅を感じました。

篠田:なるほどですね。繰り返しになりますが、その振れ幅の幅感ってZ世代だから広いんでしょうか? 定点観測されていてどうですか?

曽和:昔のほうが、それぞれの世代ごとに幅はもうちょっと狭かったような気がするんですけどね。

篠田:なるほど。

曽和:先ほどの博報堂さんのやつとかを見ていると、データ的にはそうなっていると思うんです。それぞれの世代がある点に集約して、だから世代ごとで見るとバラバラということなので、そんな気はするんですけどね。

篠田:曽和さんはずっと新卒の定点観測をされているから、30年前の22歳と今の22歳ではこれだけ違う。ただ、30年前の22歳はもうちょっとばらつきが少なかった。今の22歳のほうがばらつきが大きいよ、という話ですね。

「就職人気企業ランキング」が今はあまり機能していない?

曽和:例えば僕ら(の世代)は一学年で200万人近くいますから、言葉で言うと当時は「受験戦争」とか、とにかく競争、競争、競争で、中に入ったら「お前の代わりはいくらでもいるんだよ」と言われる。

篠田:あー、つらいわ。

曽和:つらい感じです。こういう環境もあったから、やはり勝ち残ろうと思ったらがんばらなきゃいけない。もちろんその中でも幅はあったんですが、そこから外れる人ってよほどじゃないといなかったと思うので。

ところが今は自分の意思で選べるというか、北の達人さんみたいな会社に入ろうという人もいる。たぶんオープンハウスもそうだったんですが、めちゃめちゃ厳しい会社だけど、ぜんぜん入ろうという人がいっぱいいるんですね。一方で「絶対に嫌だ」という人もいっぱいいる。

だから、就職人気企業ランキングみたいなものが昔はもうちょっと機能していたというか、「確かにみんなそうだな」というランキングだったのが、今はけっこう上のほうに引っ張られてああいうランキングになるんです。

だから、ある人から見たら「なんでこれがこんなランキングなの?」という人もけっこういる。傍証でしかないですが、いろいろと見ていると、やはり振れ幅が広がっている。

篠田:ランキングがだんだん意味をなさなくなってくるというのも、うかがっていてなるほどなと思いました。

曽和:平均値を取っちゃうと、あんな感じになるので。

篠田:分散が広いから、平均値とかランキングはそこまで意味を持たせないで見たほうがいいなという感じですね。

曽和:そう思います。ちょっとデータは見ていないのでわからないですが、仮説で言うと、先ほどの「消齢化社会」のようなものはみんな分散しているんですが、上の世代は分散がちっちゃいんじゃないかなと。

篠田:なるほど。

曽和:下の世代は(分散が)大きいです。そんな気がしますけどね。

篠田:ありがとうございます。

マネジメントのカギは「ゲーム性を持たせる」こと

篠田:じゃあ、高橋さんにお話を戻してもう1個聞きたいんですが、北の達人さんは、先ほど見せていたKPIを中心にドライブされているようにお見受けしたんです。

これを使ってマネージするというのは、特に同世代や若手、Z世代の方があのやり方でやる気を持って嬉々としてやっているというのはどういう感じなのか、具体的にもうちょっと解像度を上げたいんですが、もう少しお話しいただいてよろしいですか?

高橋:ゲームっぽくやるという感じです。先ほどの「過去の2倍いくぞ」というのも、ちょっとゲームっぽいんですよね。

篠田:そうか。「やるぞオラ!」みたいな、そういう怖いプレッシャーやトーンではないんですね。

高橋:そうではないですね。「これ、(目標達成まで)いったらおもしろくない?」みたいな感じのテンションでいくというのはけっこうあるかなと思っていて。「これ、いったらおもしろいね」「すごいよね」とか、ちゃんとビジョンを描けるというか、目標自体をワクワクするものにする。

あとは先ほどあったように、ゲーム性を持たせるにあたって定量化していくことはすごく大事かなと思っていて。「もうちょっとでいけそう」とか、逆に「やばいやばい」みたいなところがあると思うので、そこをちゃんと定量化していく。

これも先ほどあったんですが、「いけそう感」をどうやってちゃんと作っていくのかはすごく重要なのかなと思っています。「どうしたらいいんだろう?」とか、ステージ1でいきなりラスボスが来て死んでしまうのはおもしろくはないと思うんですよね。

「こうやったらいけそうだよね」という感覚を、メンバーがちゃんと認識をできる状態を常に作ることは、ゲーム感を設定した上で日々すごく重要なことなのかなと感じます。

篠田:へぇ。じゃあ、高橋さんはいわばゲームマスターみたいな役割で。

高橋:本当にそうですね(笑)。

篠田:ゲームの設計をして、みんなにプレイさせる。

高橋:でも、本当にそんなイメージです。

「北の達人」におけるKPI設定のポイント

篠田:でも、当たり前ですが、ゲームはゲームの世界ですけどこれは現実のビジネスなので、思ったとおりにいかないことだらけだと思うんですよね。そういう時って、どうマネージされているんですか?

高橋:そうですね。これはいいか悪いかはわからないんですが、けっこう壮大な目標を掲げてやるところがあるので、会社として明確な答えがあって、シンプルに動力を発揮すれば達成できるというものでもなかったりするので。

行き詰まったら一緒に考える感じでやりながら、自分で目標設計しつつ自分で攻略しながら、そこにメンバーを巻き込んでやっていくという感じでやっていますね。

篠田:事前に教えていただいたお話で、だんだんとKPI設定を工夫しながら、まさにゲームとしてのおもしろみを探っていったというお話をちょっとうかがったんですけど、そのお話をしていただいてよろしいですか?

高橋:先ほど申し上げたとおり、クリエイティブディレクターは自分で作った広告から注文してもらうという、新規のお客さまから注文をいただく仕事をやっているんですが、そこで個人KPIのPDCAをめちゃくちゃ回していたところがございます。

最初は、個人KPIはシンプルに「広告から何人注文されたか」でやっていたんです。これをやっていると最初の2ヶ月ぐらいはばーんと伸びたんですが、3ヶ月目ぐらいからめっちゃ鈍化してきて、4ヶ月目くらいからじわじわ落ちていったんですよね。

目的としては、みんなが個人でちゃんと自分の注文の数を追うということで、「合っていそうなのにな」というのがあったんです。ただ、蓋を開けてみると、みんなが効率的に成果を出そうとして、他の人がいい広告を当てていたらそれをパクっていたんですよね。

篠田:なるほど(笑)。

高橋:「マネして効率的に成果を出す」みたいな感じで動いたので、最初は伸びたんですが全体で疲弊して沈んでいったことがあって、「このKPI設計はダメだな」みたいな。

成果を出すまでには「めっちゃ失敗」したことも

高橋:次にやったことが、これまでは「1注文をもらったら1ポイント」みたいな感じだったんですが、「オリジナリティの高い、新規性のある広告で取ったら3ポイント」という感じにしたんですね。

篠田:ゲームルールをちょっと変えたんですね。

高橋:これによってオリジナリティに重み付けをする感じでやったんですが、これもめっちゃ失敗して。3ポイントにするとみんな3ポイントを取りにいくんですが、大振りになって誰も当たらなくなって、「またダメだ」みたいな感じになりました。

最終的にやったのは、(広告の)新規性の部分を担保しつつ、当たった時に自分のものが誰かの参考元になったら、本の印税的に点数が入るかたちにしたんですよ。

当てた時に、他の人に「これはこういう要素で当たったから、あなたがやっているこの商品をこういうふうにアレンジしたらうまくいくと思うよ」というやりとりが生まれるようになって。最終的にはホームランとヒットがバランス良く打てていきつつ、安定的に上がる感じの成果を出せました。

そんな感じで個人のKPI設計をして、それに対してメンバーがどう動くのか。それに対して、またさらに売上利益がどうなっていくのかを見ながら、「あ、間違えた」とか考えながらやっているという感じですね。

篠田:本当にニコニコしながらお話しされているので、ゲームを攻略して「あ、これは違ったな。じゃあこっちかな?」というのをやっていらっしゃるお話ぶりに聞こえてきました。ありがとうございます。

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