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Agenda2「AIをプロダクトに実装する」「AIでPMをブーストする」(全4記事)

コモディティ化が進むAIの「競争優位性」とは何か 有識者たちが語る、これからのAIの在り方

「PM Club」が主催した「【Notion × PM Club】AI時代のPM、どうハックする?」。Agenda2では、有識者たちが生成AIの発展とその活用について議論しました。全4回。4回目は、視聴者からの質問に答えました。前回はこちら。

AIのトレンドをキャッチアップするために意識していることは?

西勝清氏(以下、西):では、いったんここでパネルディスカッションは終わって、次のセッションに進んでいければと思います。ここからは質問に随時答えてもらえればと思っています。では私がどんどん拾っていくので、どなたか答えられる方にお答えいただければと思います。

1個目は「AIに関するトレンド変化をキャッチアップするのに、使い倒す以外に隙間時間などで意識していることを教えてください」ということです。

木村俊也氏(以下、木村):みなさん基本的には会社に所属されていると思っていて、各社が「ChatGPTの有料版の利用を全社で開始しました」みたいな話が出てきていると思います。やはり興味がある方はなるべく会社に仲間を作ってほしいと思います。

今は本当に始まりに過ぎないので、Twitterとかでもいろいろな情報が流れては来るとは思うんです。だけど、やはり今は会社で仲間を作って議論をして、プロダクトに活用するための温度感を上げるというか、モメンタムを保つというのはけっこう重要かなと思っています。各社もやっているのですが、社内で情報収集をしてサービス活用をより着実なものにしていくのが今のフェーズで重要かなと思っています。

西:ありがとうございます。

小笠原智氏(以下、小笠原):使ってみて身近にするというのが多くて、社内でもSlackの中で「こういうふうに使ってみた」とか「これとこれを組み合わせてAIボットを作ってみた」とか、そういった小さなプロダクトをどんどん作って検証していくのが一番いいのかなと思っています。

佐々木真氏(以下、佐々木):そうですね。僕は最近友人とのプロンプトが楽しいんですよね(笑)。PMは具体的に成果物を出すのがけっこう大事だと思うんですよね。そうなった時にAIも同じなんですよ。指示が曖昧だとアウトプットも曖昧。具体的に(指示)すればするほどいいんですが、要はその具体的な仕方にハックのし甲斐があって、それが個人的にはおもしろいなと思っています。

それこそ先ほどの木村さんの話にもありましたが、言語モデルなので「エンジニアがわかるように」とか「子どもがわかるように」とか「主婦にもわかるように」とか、そういうのがけっこうおもしろいんですよね。そのへんのハックを触ってみると、これはメチャクチャおもしろくて、それこそ僕はPM SchoolのコンテンツでデモのPREを全部Notion AIやChatGPTで作ってもらっているんですよね。

こういうシチュエーションで、こういう文体でPREを作ってとか、ロードマップを作ってと言うと、サンプルを一瞬で出してくれるので、「マジで怖い」とか「マジで便利」とか思ったりします。会社のデータを直接入れると怒られるので、自分のプロジェクトやデータの機密が入らない範囲でそういうのをハックしていくと、結果的にAIの特徴もわかっておすすめです。

先ほど言ったように大規模言語モデルと言われる所以がたぶんわかると思うので、そういうプロンプトを工夫するのはけっこうおすすめですね。僕は今すごく楽しんでやっています。

AIを活用したプロダクトを開発する時の開発プロセスは?

西:かなりSNS上にもプロンプトの話が多いなと感じる昨今ですが、そこに関係するところとして、開発にも関わるところで質問をいただいています。「AIを活用したプロダクトを開発する際の開発プロセスの事例を知りたいです。納得できる品質になるまでひたすらプロンプトの改良を繰り返すイメージでしょうか?」という質問ですが、これは木村さんが詳しいのかな? どうですか?

木村:答えるにはまだ少し検証が足りていないと思っていて、確実な答えはまだ出ていないので、各社検証中かなと思っています。少なくとも僕のまわりではそうです。今、プロンプトエンジニアリングという言葉が出てきましたが、品質保証という意味ではまだ世界的にも結論が出ていないし、検証中だという認識です。

西:なるほど。ありがとうございます。それにさらに関連して「課題解決をAIが実現するために、AIの回答への評価は必要だと思いますか? 必要な場合はどう対応すべきでしょうか?」という質問もあります。

木村:これも方法論がまだ確立されていないと思っています。ただ、ある程度プロンプトエンジニアリングで解決できる部分はあって、やはり最初の文章で前提を作っておいて、お客さまの質問を当てはめて、下にまたさらに文章で閉じることによって、ある程度の答えの内容が一定化されるというやり方もあったりはするんですね。

だけど「評価する」というのは、あくまでまだ言語モデルなので、どんな答えをするのかは予想がつかないところが多いんですね。なので、あくまでサンプリングをして、その精度を計測するぐらいしか今はできないと思うので、これに関してもまだ方法論が確立されていないものだと僕は思います。

西:ありがとうございます。なんかメチャクチャ勉強になっちゃいますね。

内部データを加味したアウトプットが出せるAIも組み込めるようになる?

西:次の質問にいきますね。「GPTを使っていて、一般的に物知りな人のようなものとして活用することは容易ですが、社内の情報だったりプロダクト内のデータを加味したアウトプットを出すのはプロンプトなどを工夫しないとうまくいかない認識です。こういった内部データを加味したアウトプットを出せるAIも、容易に組み込める仕組みが出てくると思いますか?」という質問ですね。

木村:多少はもうできる状態になっていると僕は思っていて、Open AIでもSource of Truthみたいなかたちで、例えば社内の規約をGPTに与えた状態で質問すると、なるべくその内容に沿った答え方をすることができます。だけどその文章量がまだ限られているので、法律のように長いものは入力できないと思うけど、そういった意味では僕はできるようになると思っていますという答えですね。

西:ありがとうございます。木村先生にいろいろと教えてもらえてよかったなと。

木村:いや、ぜんぜん僕は先生と呼ばれるような(笑)。

佐々木:なんか「Salesforce」の「Einstein」は確かすでにそれをやろうとしているんですよね。ごめんなさい、Einsteinってわからないですよね。Salesforceという営業のCRMツールの付随でカスタマーサクセス用のツールがあるんですけど、あれがけっこうセールスのデータを基にカスタマーサクセスの傾向や、解約レートを予測するというのを今やっているはずです。

僕もEinsteinをしっかりと使ったことがないのですが、そういうことをやろうとしているMAツールは特にマーケティングの領域だとけっこうある。というか理屈ではできるはずなので、要はこれからそれがプロダクトに組み込まれていくだけですね。

先ほど言ったように、再学習されないとかの配慮は必要ですが、理屈上はできるので必ずそうなるし、それはけっこう速いんじゃないかな。たぶん今この瞬間にやっている会社はあると思いますよ。

木村:ただ、ちょっとそこはまだエンジニアリングが必要な領域だなとは思っています。

佐々木:そうですね。

西:ありがとうございます。

モデルの動作における品質を非専門家がどう担保していくのか?

西:次の質問にいきますね。「今後あらゆるサービスがAIを導入していく中で、AIの非専門家が自作のモデルを評価する難しさがあると思います。この点についてどう課題を乗り越えていくべきでしょうか? 補足として、モデルの動作はかなりブラックボックスの箇所が多く、非専門家がどう品質を担保していくのか? という観点です」。

佐々木:難しいですが、僕はSaaSとソフトウェアとAIは同じになると思っています。要は部分特化のAIが出てくるし、増えていくんじゃないかと思うんですよね。それこそソフトウェアは会計、法律、不動産などあるので、AIもあんな感じになるんじゃないかなって思っているんですよね。

今はChatGPTやNotion AIだけですけど。そうなっていくし、そういうのを作ってくる会社が増えてくるし。最近ちょうどAWSが日産のAIの作成支援に補助金を出すとか、支援するというのがあるのですが、たぶんそういうのが活発的になるんじゃないですかね。DMMの亀山さん(亀山敬司氏)が、この間「国際AIを作るぞ!」と息巻いていましたが、僕もそうなっていくと思いますよ。

ChatGPTやGPTが先行しているように取っていますが、日本でもそういうのが出てくるんじゃないかなと思います。部分最適の強みを持った特化型のAIが増えてくると僕は思っているし、それだったら勝機があるんじゃないかなと思っています。

ただAIには再学習が大事なので、そこが結局ソフトウェアと組み込む最大の理由かなと思います。結局AIの問題は、それ単体では語れなかったりするんですよね。データとソフトウェアと、いろいろな複合があって、そのへんのハウツーも個人的には興味があるのでがんばっていきたいなと思いますけどね。小笠原さんと木村さんは、そのへんはどうですか?

小笠原:そうですね。AIにリードは渡さないというのが一番かなとは思っていますけどね。AI先行でAIが作ったものをどう判断したらいいんだろうというよりかは、やはり自分が最終的な判断をして、セキュリティやコントロール配下に置くことです。あくまでもツールなので、その意識があれば間違うことはないかなと思っています。

佐々木:ですよね。

木村:たぶんアカデミックの世界でも、この評価方法は今後議論されていくとは思っていて、ある程度今の方法論でもできることはあるのですが、それに関してはまだ専門家じゃないと評価の指標を作るのは難しいのが現状だと個人的には思っています。なので、サービスに組み込むのであれば、やはりお客さまのフィードバックをいただくのが今だと現実的かなというのが個人的な見解です。

AIはブレストやドキュメント作成を楽にしてくれる

西:では、どんどん次の質問にいきます。これは、先ほどのディスカッションにもあった、みなさんの業務への影響の質問だと思いますが「実際の業務に活用してみて、もっとも効率化された業務内容や活用するにあたって押さえておくべき概念というかポイントをおうかがいしたい」。

佐々木:AIで一番使っているのは、僕は壁打ちですね。「自分はこういうアイデアを持っているんだけど、これに反対して」とか、先ほど言った「これを悪意ある使い方をして」とか。どういうものが考えられるか網羅するとか、ブレストを一緒にするパートナーとして一番よく使います。これはメチャクチャ楽になりました。

昔は同僚を誘って時間を決めて「ここでブレストをやっちゃおうぜ」と言っていたんですが、マジでいらないみたいな(笑)。AIのほうが出してくれるし、打ち方も良くも悪くも偏りがないんですよ。偏らせたいなら人とやるべきですが、偏りがなくて網羅してくれるのでマジで便利ですね。

だからNotionで作ったドキュメントに対して、こういうパターン、ああいうパターン。「そっか、このパターンがあったわ!」みたいな考慮漏れってけっこうあるんですよね。特にアジャイルだと設計をそこまでやらないで進むスタイルだったりするので、考慮漏れがあるのですが、そういうのは使うようになってから減りましたね。だからそういうところを個人的には一番使っていますが、お二人はどうですか?

小笠原:僕も同じですね。ChatGPTの一番良いところは、対話型というところ。ディスカッションをしてどんどん高めていくのもありますし、話しているうちに先ほどの遊びじゃないですが、ちょっと自分が方向転換して「こっちの話ってあるんじゃないの?」みたいなところからいろいろな進化を見ていくのが多いですね。

壁打ちが多いのと、やはりずっと言っているドキュメントの作成コストがものすごく下がったところが今は大きいですね。

木村:僕もブレストは使っていて、そこはいいなと思っています。個人的には会議の準備をする手間がすごく面倒なので、最近はけっこう具体的なキーワードを入れてドキュメントを予め生成してもらった上でドキュメントを作っています。もうすごく便利なのでみなさんも試してほしいです。

本当に具体的に入れちゃうんですよ。例えば「4月5日 参加者は木村、小笠原、西、佐々木で10時から11時まで予算について会議をする。途中でブレストをするので、それぞれのパートを作ってください。最終的にみんなの意見を収集して結論を出します。そのための議事録を作ってください」とやると、時間や日にちや参加者が全部入っている議事録を作ってくれるので、そこらへんが本当に手間が省けたなと思っています。

他にもいっぱいあると思いますが、本当に面倒な作業は最近ChatGPTにお願いしていますね。

西:ありがとうございます。僕も頷きながら聞いていました。僕も社内のドキュメントを本社向けにけっこう書いたりするのですが、書いたあとにサマリーするんですね。

佐々木:わかる。

小笠原:そうですね。

西:「終わりー!」みたいな感じはありますね。

佐々木:僕は良くも悪くもアシスタントを雇う気がなくなっちゃったんですよね。

(一同笑)

佐々木:「AIでいいや」ってなって。今はAIの重課金勢ですけど、ぜんぜんペイしていますね。

木村:日程の調整もいつかできるようになりますよね。

ビッグテックのAI分野の戦いは、今後どう進んでいく?

西:ではちょっと時間もあるので、最後の質問にしたいと思います。最後にちょっとおもしろい質問です。これは大きなテーマだな。「今後のビッグテックのAI分野の戦いは、どう進んでいくと思いますか?」

佐々木:これはけっこう経営者界隈で言われていることで僕も同意しているところでお話しすると、AIは実は事業、ビジネスモデルとしては稼ぎにくいんですよ。なぜかというと、コモディティになっていくに連れて競争優位性が失われていくんですよね。そうなった時にAIがどう競争優位性を築くかというと、オリジナルのデータしかないんですよ。

要は誰でも得られるデータだけだと使えないので、いかに自分たちしか持っていないデータを得るかがやはり大事で、それに対してフィードバックをどうもらうかが、データ量が大事なのは変わらないかなと思っています。

結局それができるのはソフトウェアで、例えばGoogleでいうと「Google マップ」のレビューもそうだし、DeepLだったらコピーボタンがフィードバックになっているんですよね。あれで良かったのか悪かったのかをフィードバックしているんですが、そういう仕組みを作るところが大事かなと思っています。ビッグテックの戦いだろうが、結局そこに尽きるかなと思っているんですよ。

自分たちがソフトウェアを作り、そこにAIを組み込むことは必ずセットになっていくんですよ。AI単品だと、3年とかで必ずきつくなっていくはずです。なので、結局ソフトウェアで勝負なんじゃないかなと思うし、今はAI単品で取り上げられるんですけど、ソフトウェアありきのAIになってくると思うんですよ。

ビッグテックも必ずそうなってくると思うし、その中でやはり自分たちのプロダクトで作れるPM全盛期が来ているんじゃないかなって、ポジショントーク満載ですが、個人的には思っていてがんばっています(笑)。PMは楽しいぞという宣伝と、Notion AIを使おうぜということで、最後アレですが。お二人はどうですか?

木村:個人的には、ビッグテックのAI分野の戦いは、そこまで注目しなくてもいいのかなとは思っています。今後はけっこう同じような言語モデルを提供していくかなと思っていて、品質もやはり似たようなかたちになってくると思っています。

ただ、このモデルを作るのにはメチャクチャお金がかかるので、ビッグテックにしか作れないという課題はあります。なので先ほど議論に出てきましたが、付加価値をどうつけていくかが今後のポイントになってくると思っていて、先ほど僕が話したところの、画像と組み合わせたり、音声と組み合わせたりというのもきっと今後のポイントになってくるかと思います。

例えば法律分野に強いものだったり、オペレーションに強いものだったり、もしかしたらいろいろな特色が出てくるんじゃないかなと思っています。あとはいかに私たちユーザーが簡単に私たちのサービスにあったモデルを作れるかが今後のポイントになってくるかなと思っています。

小笠原:僕も短く言うと、便利なツールが出てきたなという印象なので、その時間が浮いた分、ユーザーの課題にコミットするのに尽きるかなと思っています。以上です。

西:ありがとうございます。では名残惜しいのですが、今日は時間が来てしまいましたので、こちらで終了とさせていただければと思います。みなさんありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

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