2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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司会者:皆さん、おはようございます。百度(バイドゥ)の会長兼CEOのロビン・リーと申します。今回のパネルディスカッションの司会を務める機会をいただきまして、とても光栄に思っております。
中央にいらっしゃるのがビル&メリンダ・ゲイツ財団の共同会長、そしてマイクロソフトの前CEO、会長でいらしたビル・ゲイツさん。
現在もマイクロソフトの技術顧問を務めていらっしゃいます。そして、その隣にはイーロン・マスクさん。スペースXのCEO兼CTO、テスラのCEO兼最高技術責任者、そしてソーラーシティの会長でいらっしゃいます。おふたりとも、本日はようこそ。
(会場拍手)
司会者:2週間ほど前、こちらのパネルディスカッションの司会をさせていただくことになりました。それにあたり、百度貼吧(バイドゥティエバ)のユーザーから質問を募りましたところお二方に対し500件以上の質問が集まりましたので、お二人それぞれに1問ずつ選びまして、ユーザに代わり質問したいと思います。
まずはビルさんにお尋ねします。かなりの野心的な考えをお持ちの方からの質問ですね。
「私はまだ年は若いですが、いずれゲイツさんに取って代わって世界一のお金持ちになりたいと考えています。そんな私に何か具体的なアドバイスを、そしてどのようなビジョンを持てばいいか教えてください」
ビル・ゲイツ氏(以下、ビル):一番になると一口に言っても、色々なアプローチがあると思いますよ。質問者の方はなにか次世代的な考えを持っているといいですね。私の場合、コンピュータの利用が一元的で、ソフトの必要性がかなり低い時代だったという点で恵まれていたと思います。システムにおけるソフトの役割がまだ私の頃は重要視されていませんでした。
ハード面を動かすこと、購入すること、そして管理すること、こういったことが当時のコンピュータ産業の中心でした。ちょうどマイクロプロセッサが出てきたくらいの時期でね。私はコンピュータやストレージなどの無料利用の実現ですとか、他のソフトとは全く違う個人用のソフトツールを思い描いていました。
確かそのころ、業界では1万コピーほど売れたソフトには賞が与えられていたと記憶しています、大きなトロフィーをもらって晩餐会を開いてね。私たちの作ったBASICは600万コピーほど売れましたので、「600万売れた場合は何がもらえるのか」と電話しましたら、一体どんなソフトを作ったんだと聞かれて……とにかく、その当時の常識とはだいぶ違うことをしたわけです。
ですから質問者の方は若いうちにロボットやアシスタントロボットの作り方を学んだり、ソフト開発を今よりももっと効率化する方法を考えてみてはいかがでしょう。これまで様々なものが変化を遂げてきました。例えばウェブサイト定義のコードですとか、ビジネス用アプリケーションのコードですとか。
40年前の私にビジネス用ソフトや信頼性の高いコードの開発がどうなるのか予想させたとしたら、現状のものよりももっと進歩したものを想像するでしょうね。ですからこうした分野はまだまだ伸びしろがあると思いますよ。
ビル:ソフトに限った話でもありません。例えばエネルギーのコストを下げる、CO2排出をゼロにする。そういった方法を考えるのもいいですよね、テクノロジーをうまく応用して。これができたらかなり意義のあることを達成したことになりますよ。今の時代はイノベーションの可能性、そしてイノベーションのための材料はいままでになく多いと思います。
私自身は「IBMより成功してやるぞ」とか、そういったことは考えていませんでした。質問者の方のような自信はありませんでしたね(笑)。ソフト関連のものが好きで、いろいろやってみたくて。その結果会社を作ることになっただけです。思うに会社の経営がうまくいったのは、「ひょっとすると会社の規模を倍にできるかもしれない、準備しておこう」といった具合に考えていたからでして……会社が巨大になるとは思っていなかったわけです。そのほうが段階を踏んでステップアップしていく努力を怠らないからいいんですよ。
私が考えていたのは、5000人に対応できるような経営システムを作ろう、ということ。まだ10人しかスタッフがいなくて、ちょっとしたコードを書くだけの仕事をしていた時期の私に「いずれ社員は10万人になるよ」と言ったとしても、きっと笑って信じなかったと思います。10万人もいたらバグもそれだけ増える、そんな大人数いらない、と言うでしょうね(笑)。とにかく、質問者さんがこの先うまくいくといいですね。
司会者:つまり成功するために野心は特に必要ない、と?
ビル:イーロンの話もぜひ聞きたいところですが……彼も私も、こんなにいろいろなことがうまくいって、成功を手にするなんて想定外だったと思います。リスクを気にせず進んでいたら、成功できなかったでしょうね。
司会者:成功する起業家にはどんな特徴があると思われますか?
ビル:そうですね、うまくいく人は自分のやりたいことに対してこだわりを持っていることが多いですかね。ある討論会で、確か7人くらいの人数だったと思いますけれども……議題はコンピュータのインターフェイスはキャラクターユーザーインターフェース(CUI)かグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)か、どちらが主流になるか、といったものでして。
その当時GUIはとにかく重くて、話にならないレベルのものでした。確かウインドウズ1.0の時代で、ソフトの質も悪かったですし。パネリストたちもGUIなんてとんでもないといった調子でしたが、そんななか私だけがひとりGUIを推しましてね。
そうしたらあるパネリストに「ビルの考えは間違っていると思う。でもビルは他の人よりも一生懸命働く人だから、選択が間違っていたとしても結局はうまくいくんじゃないか」と言われましてね。これまでいただいた褒め言葉の中でも一番印象に残っていますね(笑)。時間を惜しんで働くだけで、君なら業界の流れを作れる、ということ言ってくださったわけですから。
とにかくそのころは一心不乱に働いていました。休暇も週末も無くて当然。自分にとってはそれでよかったと思います。会社を速いペースで動かしていけたので、他よりも早く失敗を経験して修正することができましたのでね。
当時は単一生産型の会社が多くてね。会社の仕組み自体もそれを前提としたもので、売上も米国内だけで出していくと考える企業がほとんどでした。一方で私たちは、はじめから多品種型の企業を目指していたわけです。
それでうちのBASICが……みなさんBASICをご存知かわかりませんけれども、私たちが初めて発表した製品はBASICインタプリタでした。今もありますが、当時BASICでやっていたことはほとんど現在ではJavaScriptで処理される方が多いですね。
とにかくうちは会社を大きくしたいと考えていて、ソフト開発を扱うという方向性も定まっていました。だからソフト関係の人材をたくさん雇用して、ソフトをひとつに絞らずたくさん作りました。この点もよかったと思います。「世界一効率のいいソフト生産工場を作る」と目標を定めてね。
イーロンはギガファクトリーを作るために実際に建物を建てたり機材を購入されたわけですよね。うちの場合はシンボリックデバッガやシミュレーター、コンパイラでソフト版のギガファクトリーを作ったというイメージですかね。他にも同じような取り組みをしている会社もありましたが、本気で高品質のソフト開発に取り組んでいるという点で私たちは他よりも一枚上だったと思います。
司会者:なるほど。ではイーロンさんに、同じくバイドゥユーザーから質問です。
「気になって仕方ないことがあります。イーロンさんはこれまで素晴らしいことをたくさん成し遂げられていますが、そのエネルギーと情熱はどこから出てくるのでしょうか? 本当に信じられなくて。イーロンさんは何かをするとき、段階を踏んで進めていくのでしょうか。それとも、思いついたプロジェクトに対して、はじめから大きな目標を設定してらっしゃるのでしょうか?」
イーロン・マスク氏(以下、イーロン):そうですね。ビルも先ほどおっしゃっていましたが、最初はどれだけの規模になるかわからないものです。むしろはじめは失敗するだろうと思っていました、うまくいかない可能性のほうが高かったですから。スペースXがうまくいく確率は10%くらいで、テスラも似たようなものかなと。
これまでの宇宙関連や自動車関連企業の立ち上げの実績を見てもわかることですが、ほとんどが失敗に終わるんですよ。仮に会社を立ち上げるとしましょう。投資に対して高い成果が得られるビジネスに順位を付けていくと、車や宇宙関係は底辺ですよ。
ほとんどがうまくいっていない。まだまだ僕も安心するには早いです。スペースX、テスラ、ソーラーシティ、いずれも2008年の終わり頃にはもうだめか、というくらいの状況になりましたし。
それでもどうしてはじめたのかというと、問題が目の前にあるのに誰も向き合っていない、と思ったからです。テスラとソーラーシティのテーマは、持続可能エネルギーの発展を進めること。
ソーラーシティでは持続可能エネルギーの生産、そしてテスラはその消費です。テスラをはじめた頃、電気自動車なんて馬鹿にされていたんです。そもそも自動車会社を始めること自体非常識でしたから、電気自動車をやるとなったら非常識の極みですよ。
(会場笑)
本当に何度も経営が危なくなりました。なので、特に大きなプランを持っていたわけではないんです。期待感は持っていましたがね。
司会者:もう少し伺いたいのですが、どうやってそんなにたくさんのことを同時に処理していらっしゃるのでしょうか。会社を3つも経営してらっしゃるわけですよね。
イーロン:お勧めはしませんよ(笑)。生活の質も下がりますし。
(会場笑)
イーロン:それと、スペースXとテスラの経営は担当していますが、ソーラーシティについては経営ではなく会社戦略のアドバイスを担当しているんです。ソーラーシティにはとても優秀なチームがいますので、アドバイスも月に一度程度ですね。テスラとスペースXは毎日、毎週末ですね。祝日もです。
司会者:CEOだけでなく技術面も担当されていますよね? 細かい部分まで注意されるのでしょうか。
イーロン:チームが本当に優秀でしてね。僕の功績だと思われたり、僕に注目が集まることが多すぎるだけでね。外の人は僕を見ているわけですが、会社がどれもうまく行っているのはどの分野にも優秀な人が揃っていて、仕事に取り組んでくれているからです。
繰り返しますがおすすめはしません(笑)。毎日が忙しいですが、やるべき仕事だと感じたからやっているまでですね。
司会者:なるほど。さて、500件質問が集まったわけですが、ひとつ気づいたことがありまして。実はビルさんに対する質問のほとんどがマイクロソフト関連。ですが、最近のビルさんはゲイツ財団の活動が中心ですよね。
ビルさんは財団の活動を通して、マイクロソフトにいたときよりも世の中に大きく貢献していると感じてらっしゃいますか? 例えば今から100年後、マイクロソフトの創始者として名を残したいか、それとも慈善家として名を残したいか、どちらでしょう?
ビル:まずは100年後も生きていたらいいなと思いますね(笑)。
(会場笑)
ビル:今楽しく仕事できていますけれども、これさえ続いていれば忘れられても構わないかな。
経済において一番力があるのは民間部門ですよね。20年、30年先はさらに発展した世の中になっていると思いますけれども、そこに大きく貢献するのは民間部門です。まだ始まったばかりのデジタル革命ですが、バイドゥ、グーグル、アップル、マイクロソフトといった企業が大きな流れを作っていますよね。このなかから生まれたツールは本当に多くの分野で使われていて、例えば教育もそのひとつ。
いずれはこれが教育の内容や、教育を受ける人の夢や目標をつなげていくことになると思います。この流れを作っている人たち、特に会社を作って貢献している方はみなさんとても意義のあることをされているわけですよ。
50歳を迎える頃、財団にフルタイムで関われたら面白いかなと思いましてね。マイクロソフトには安心して後を任せられる優秀な人材がいましたし……20代や30代の頃、マイクロソフトにいた時代は45歳以上の人にCEOを任せてはいけないと思っていたんですよ。大変な仕事ですからね。でも気づいたら自分が50代。こんな年まで会社にいたらダメだって思っていたはずなのに、何をやっているんだと。話が逸れました、財団についてでしたね。
ビル:これは妻のメリンダと一緒にやっているもので、とにかくこちらの活動のほうに興味が傾いていったわけです。「誰かがマラリアの問題と向き合わないといけないだろう」といった具合にね。あまり注目の集まっていない貧困国での問題に科学や政府の目を向けよう、と思いまして。
貧困国に実際出向いて、栄養失調をはじめ様々な病気の問題がどれだけ深刻か目にする人が少ないと感じて、これまで私がソフト開発を通じて学んできた人材のやりくりや支援のスキルを別の分野に活かせる機会だと思ったわけです。チーム運営、科学者の選定、ブレイクスルーを迎えるまでに10年や15年辛抱して待つ……私もそういうことはできますから。
だから今、私は財団を通じて世の中に貢献できていると思っていますし、同時に楽しみながら活動に取り組めています。ここが両立しているのは本当にいいことですよね。ですが20代の頃の私だったら、おそらく財団の活動には満足できなかったでしょう。
きっと中国では財団の活動があまり取り上げられることもなくて、それで私にマイクロソフトのイメージを強くお持ちの方が多いんじゃないかと思います。財団の活動は主に貧困国で行われていますからね。
中国とはもっとつながりを作らないといけないなと思っています。今この国では大きなイノベーションが起きているわけですが、これはアフリカの支援にも確実に役立つはずですし。医療関連、食料関連、あとは携帯電話関連の分野ですとか、いろいろ可能性がありますよね。中国との関係はこれからの課題だと思っています。
司会者:ぜひもっと中国にいらしてください。
ビル:ええ、実は来ることも多いんですよ。
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