2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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南壮一郎氏(以下、南):僕らもいろいろな会社を参考にさせていただいてます。たぶん皆さんより少し社歴が長いのと、かなりの人数を採用してきたところから言うと、シリコンバレーの会社さんにもかなりヒアリングをしました。
一番衝撃的だったのは、社員紹介の比率が50%を下回ったら採用担当者がクビになるというようなことを、大手のシリコンバレーのIT会社さんに言われて。
僕が3、4年前からずっと言っていたのは、とにかく全員が1人、周りにいる自分より優秀な人を連れてきたら、組織が倍になるだろうと。さっき『How Google Works』の本の話が出ていましたが、本の中にも同じことが書いてあって。
鈴木健氏(以下、鈴木):書いてあったよね。
南:結局、これは全部、考え方は一緒なんだなと。
鈴木:あそこに書いてあることも結局グーグル流もあるけれど、たぶん60%、70%はシリコンバレーの標準的なやり方を書いているよね。
南:そうなんですよね。たぶんグーグルが言っているから説得力があるっていうのはあると思うんですが、結局は自分たちで探さないといけないっていう意識が常時あると思います。
ただ、エンジニアにも頑張ってもらうのは、なかなか苦労するんですが。鈴木さんのところはどうですか?
鈴木:そうですね。うちの場合、オフィスにすごい力を入れているんです。エンジニアの人たちって基本的に、あまりお金とか報酬とか、そういうものではなくて、やっぱりいい仕事をしたいんです。しかも一流のエンジニアほど、もっといい仕事をしたいと思っているわけです。
いい仕事をするときに、その環境が大事なわけです。その環境って2つあって、1つは周りに優秀なエンジニアがたくさんいるっていうことなんです。周りにたくさん優秀なエンジニアがいると、変なプログラムを書く人はいないから、自分が生産的になれるわけです。わからないことがあったら聞ける。切磋琢磨できる。
そういうまさにアスリート的な環境です。お互いどんどん自分たち同士が競り合っていってレベルアップしていこうみたいな。もっと上を目指すぞみたいな、そういう職人的な人たちがすごく多いので、道を極めようとするんです。こうした求道者たちを集めると、ものすごい勢いで道を極めていこうっていう意識が高まってくるんです。
その空間を1回作ってしまうと、新しく入ったときに、そこをやっぱり感化されるというか、ここのみんなと働きたいっていうふうに思うようになります。面接のプロセスで先ほどありましたけれども、結局、うちは8回から12回なんですけれども、ちょっと少ないんですけれども(笑)。
小野壮彦氏(以下、小野):十分多いですよ。
鈴木:十分多いですよね。十分多いんですけれども、もう30回言われちゃった後なんで、もう少ないなと思って。帰ったら20回にしようとか言って、たぶんすごい怒られたりすると思うんですけれど。
もう1つはオフィスです。やっぱり働く環境ってすごい大事で、うちは靴脱ぎスペースがあるんです。そこがすごいみんな好きで、要は働く姿勢なんです。
みんな椅子に座ってプログラム書くだけじゃなくて、人を駄目にするソファーってあるじゃないですか。知っています? 無印で売っているやつ。
あれが靴脱ぎスペースに大量に置いてあって、そこで寝そべったり、腹這いになったりとか、横になったりとか、すごい何か、何でこんないろんな恰好でコーディングできるんだっていう、すごいクリエイティブな恰好でみんな仕事しているんです。
それが大人気で、本当に溢れかえっちゃうぐらい大人気になっているんですけれど、そういう、何か意外とその働く姿勢? 姿勢っていうのは別に精神的態度ではなくて、本当に物理的な姿勢なんですが、すごい採用に役立っているなというふうに思いました。
南:なるほど。freeeさんではどうですか? 何かそういう、特にエンジニア採用に力を入れられていると思うのですが、何か特徴はありますか?
東後澄人氏(以下、東後):そうですね。うちもまさにさっきの話じゃないですけれど、エンジニアの比率は社員で言うと半分ぐらいなんです。今の鈴木さんの話に1つ付け加えるとすると、すごく大事だなと思っているのは、会社全体の、エンジニアに対する思いというか、環境みたいなところはすごく大事かなと思っていまして。
やっぱりグーグルもまさにそうなんですが、うちもエンジニアリングオリエンテッドな会社なんです。なのでエンジニアに対するリスペクトが全体としてすごく強いですし、そのエンジニアのリソースを使うということが、どれだけ会社にとって大事なリソースを使っているのかっていうことを、みんなが共通認識として持ってやっているので。
逆にエンジニア側としても、そこに対してすごくモチベーションが高くて、そういった会社全体の環境づくりみたいなところは、すごく大事にしていて、やっぱり入ってくるエンジニアの人も、そういうところをすごく見るんです。
入って、どういう環境で仕事ができるのかとか、そういった視点で見たときに、誇れる環境を作っておくっていうことはすごく大事なんじゃないかなと思います。
南:うちも非常に似たようなことをやっているのですが、あえて補足すると、たぶんいろいろな役割の人材を雇っていると。エンジニアだけでなく、事業開発もいれば、マーケティングも管理もいるのですが、僕らってやっぱり職種別にCPA(Cost Per Acquisition)で見ています。
職種別に採用単価を変えて。やっぱりどう考えても、さっき慢性的に足りないと小野さんおっしゃっていましたが、ITエンジニア、もしくはプロダクトマーケティングの人材は慢性的に足りないので。
であれば、明らかに管理や営業に比べて、裁量をたくさんかけるべきであって、それはエンジニアの皆さんに良い椅子をあげるのも、ひょっとしたらそのコストを上げるという意味だと思っていて。一人ひとり、その職種によって採用単価をコントロールして、どんどんパイプラインを管理していく。
これは、営業の考え方とあまり変わらないと思うんです。ライフタイムバリューが高いお客様を取るためにはCPAを高めに張ってもいいというのと、全く同じだと思っていて、採用を科学していくと、どんどんより本質的な採用ができるんじゃないかなって。
特に僕らもエンジニアの採用に苦労しているのでコストを変えています。いくつか質問の中に経営者採用というのがあったのですが、まさに適任の小野さんがいらっしゃいますけれども。
ベンチャー企業、もしくは成長企業、曽山さんの場合は大きい成長企業が、経営幹部の人材を採用するときのコツ、もしくは大事にしていることや、受け入れる側の心構えがあると思うのですが、何かアドバイスはありますか?
小野:会社の局面によってたぶんちょっと違うと思っていまして、絶好調のときに幹部を採用して定着させるのって意外と難しい。ちょっと踊り場だったりとか、皆さんが苦しくなってきて、このままだとうちの会社爆発しちゃうみたいな。
「もう自分これ以上仕事できない。何とかして」っていう状況があるときかそうじゃないかで、まず大きく変わります。
そこのある種のバーニングプラットフォームっていうのがあって、そこで新しい人が来ると、救世主みたいな形になるじゃないですか。そうじゃないときっていうのはとても大変なんです。
そうじゃないときのまず1つ重要なことっていうのは、やっぱり社長なのか、株主なのか、ステークホルダーが、とにかく守ることだと思うんです。最初の最低1年間は、新しく来た新経営陣を、何が何でも全力でかばう、守る。
これは世界中でやっぱり言われていまして、First 90 Daysって言うんですけれど、最初の3ヵ月間は、とにかく愛情とサポートを注ぎまくる。それに尽きますと。
その1年間は、とにかく成果が出なくてもいい。どれだけ高いお給料で、それだけ高いランクで入ったとしても、そういう覚悟を雇う側のステークホルダーが団結できるかということが実はとても大事だと思っています。
これは意外と最初の採るときの、採るまでのプロセスとディスカッションの濃密さによって変わってくるかなというふうに思います。
付け加えると、もうちょっと緊急事態のときに採用する場合をお話しますと、そういうときっていうのは、要は早く効果を出してくれないと困るわけです。
何が起きるかっていうと、新しく入ってきた方が焦るんです。周りが困っているんで、何とかしないと。自分は高い職位で入ったから、すぐ成果を出さなきゃいけない。であるが故に焦る。
焦ると、「何かあの人空回りしていますよね」みたいなことになりがちなので、そういうときは、いわゆるエクスペクテーションを下げてあげるっていうことが、すごく有効かなというふうに思います。
小野:ちょっと前後しちゃったんですけれど、「そもそもいい人を見つけるの大変ですよね」って話があると思っていて、おっしゃる通り日本にはそのプロの経営人材層っていうのが、とても少ないです。
ITなのかビジネス側なのかに関わらずなんですけれども、企業がある程度のフェーズを超えて、いざIPO、もしくはIPO後のタイミングで本当に成果を発揮できる人っていうのは、まずそもそも少ないです。
その少ない人をどれだけ口説けるかっていうところは、やっぱりそれもたぶん他の職種の採用と全く変わらなくて。先ほど南さんが営業力っていうふうにおっしゃいましたけれど、採用は営業だっていうのはまさにその通りだと思っていまして。
やっぱりそのプールが限られていますから、経営人材層っていうのは。その人にどれだけ効果的に営業をかけていくかっていうことに尽きるのかなっていうふうに思います。
南:ありがとうございます。次の質問として、鈴木さんが採用担当者をどう採用すればいいのかと。
鈴木:いやー、難しいですね、これ。
南:曽山さんみたいな方はどうですか?(笑)。
鈴木:いやーもう、口説いていいですか?(笑)。
南:人事は肩書きであって、実際、経営者は全員採用担当者だと僕は思っていますが、それをメインにされている曽山さんから見ると、特にこの3社のような成長ベンチャーの場合、良い採用担当者、もしくは人事担当者は、どんな人ですか? 過去を振り返ると。
曽山:すごい難しい。私たちも人事本部で本部長になったのが400人ですからね。なので、それまでは私たちの採用活動、第1期から新卒採用を中心にやっていましたけれど、やっぱり社長が出るしかないんです。
なので、そこが最前線に出て、採用活動をやっていたっていうのがあって、人事はどっちかっていうと、本当にオペレーションを回す。履歴書を回してチェックして、社長見てくださいっていう型の方が、要は戦略的に採用社員よりは取りやすいので、それでやっていたのが私たちの実績ですよね。
なので、そこよりはむしろ、採用担当のプロっていうと、やっぱり人数がすごい少ないので。現場のキーマンとか、もしくは人事の幹部として採って、採用も見てっていうのが1つあるのかもしれないですけれど。
私は営業出身で営業活動ができる人事だったので、採用活動もその中で頑張るっていうのができたっていう感じで。すいません。やっぱり明解な答え持っていない感じですけれど。
南:小野さんの場合はその採用担当の方々がお客様だと思うのですが。エグゼクティブレベルの採用の場合、ほとんどのお客様がひょっとすると経営者なのかもしれませんが、小野さんから見ていて、グローバルでも構いませんが、優秀な採用担当、もしくは人事の責任者の素養やポイントは何ですか。
小野:まず営業出身の方がいいと思います。職種的には採用担当は、人事のゼネラリスト人事よりも、営業職に近いと思っていますので。もしそういう採用担当の方が採用だけを特化する人を置きたい場合は、トップクラスの営業マンをコンバートするっていうのが、1つおすすめだなと思っています。海外でも結構そういうケースが多いです。
そのときの見極め方なんですけれど、単に人が好きだとか、やる気がありそうだからこの人っていうふうに営業の方々の中で選ぶだけだと、ちょっと実は駄目でして。
営業力が高くて、頭がいい子が必要だと思っているんです。ここで言う頭の良さっていうのは、ちょっと独特な頭の良さでして、採用は結構連想ゲームみたいなところがあって、例えば、要はピッタリはまる人ってなかなかいないんです。
だけど、「この方のこういう部分の根っこは、我々が求めているこれの根っこに実質近いですよねっ」ていう、結びつけが発想としてできる人って、そういう頭の構造を持っている人って、わりと少ないんです。
偏差値が高い云々の頭の良さじゃなくて、AとBを繋げられる発想力の豊かさみたいなところがある方は、採用担当者に向いていると思います。
南:ありがとうございます。僕らも、小野さんのところも、人材領域でサービス業を提供しています。僕らのお客様が約4,000社なのですが、いろいろな会社の採用を見ているなかで、採用が強い会社ってやっぱり、一番いいところは、リクルートさんが採用が強いのと同じですよね。僕らも初期の頃に言われたのが、「南君、営業のトップを採用のトップにしなさい」と。
「なぜですか?」と聞いたところ、「君ね、求職者はやったことあるだろう。求職者が会社Aに行きました。面接を受けました。面接を受けたら、出てきた面接官が、そんなにイケてなかったとする。そうだったら、君はそこの会社に行きたいか、行きたくないか、どっちだ。
会社Bに行きました。面接官が出てきました。とてもイケていて、夢を語って、ビジョンがあって、その会社に君は行きたいか」と。僕の返事は「まあ、それは興味ありますよね」と。
要は、最後は人間対人間だと。面接に誰が出てくるかが重要で、その誰かが、その採用担当者なのか、もしくは採用担当者が、この人にはこの人を会わせないといけないというのを決める必要があるだと。
ですので、その誰が誰に会うかを決めるのは、とても難しいわけです。たぶん小野さんが言ったことだと思います。その発想力が大切なのです。結局はそこに優秀な人材を置かなきゃいけない。そして最後にクロージングできる。手を握れる。
誰もが転職するのは怖くて、不安でいっぱいです。だからこそ、そこをクロージング。つまり、手を握って一緒に崖の上から飛べるような、まるで営業の契約を取るような。
お客様と信頼を分かち合って、「一緒に行きましょう」って言えるような人が出て行かないと、どんどん人は採れないよという話は、本当に採用が強い会社は皆さん共通して言います。
ですので、今、ビズリーチは中途採用と新卒合わせて、たかが350人の組織ですが、約15人採用チームにいて、全員営業出身です。元人事はいないです。1人も。人事部で。組織設計はまた別にしているのですが、採用担当者は営業出身です。
だから毎月面接を150人から200人面接をして、全てのプロセスの合格率を見ています。何人が1次面接を合格して、2次面接を通過して、3次面接を通過して、内定出しする割合です。
毎月10人から15人中途採用したいので、そこから逆算して、そうするとやっぱり150人から200人、毎月面接しないといけないっていうふうに、採用が強い会社がみんなやっていると教えていただいたので、うちはやらせていただいています。
鈴木:スマートニュースの採用力が弱いところがわかりました。営業力が弱いんです、うちの会社。これからでも広告営業やっていくので。
南:そうかもしれませんね。
鈴木:強くならなきゃいけないですね。
南:まさに広告のトップだった曽山さんが人事になっている。
鈴木:そうですよね。説得力がすごい。今の話。
南:本当に数千社見ていると、やっぱり強いところってパターン化されてきますよね。採用は本当に確率論だっていう会社さんもたくさんいて、特に外資は皆さん同じこと言うんです。
毎月パーティーをやることも、母集団をいかに増やすかという、1つの母集団形成のツールなんです。社員紹介もそうですし。『How Google Works』に全部書いてありました、それも(笑)。
鈴木:いい本ですね。あれ(笑)。
南:いい本です。僕ら何か、日経さんの回し者みたいですけれど(笑)。
鈴木:(笑)。
東後:それはそれを読みましょうということ(笑)。
南:全員読んだ方がいいと思うんです。あの本は。曽山さん、他にもいくつか質問があったと思うのですが、何かカバーしていないものありますか?
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