2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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(会場笑)
今日はIVSでベンチャー経営者のみなさんに何か話をしてくれ、ということですので、こういったタイトルで話をさせていただきます。「ベンチャー企業は大企業を倒せるのか」。結論から言うと、私は倒せると思います。その話をさせていただきます。「川邊健太郎なんだから、自己紹介なんて必要ないだろう」と思ってたんですけれども。
(会場笑)
IVSの小野さんに事前に資料を見せたところ、「川邊さん、若い経営者がけっこう来るので、自己紹介とかしてくれませんかね?」と、婉曲に知られてないということを教えていただきましたので、一応自己紹介をさせていただきます。
インターネット黎明期の1995年、大学3年生だったんですけれども、「電脳隊」というインターネットベンチャーを創業いたしました。主にモバイルインターネットのソリューションを展開していました。そして、iモードによって、1999年にモバイルインターネットの大爆発がおきたんですね。
「これはサービスが必要になるだろう」ということで、当時渋谷にあったビットバレー系の企業4社とジョイントベンチャーで、ピー・アイ・エムという会社を作りました。懐かしい人たち、いっぱいいますね。WiLの松本(真尚)さんですとか、enishの安徳(孝平)さんですとか。あるいはこの間、LinkedInの日本代表になった村上(臣)ですとか。いろんな人が一緒にベンチャーをやっていました。
伸び盛りのベンチャー4社でジョイントベンチャーをやるとどういうことになるか、みなさんわかりますか? みんなまったくコミットしません。
(会場笑)
困ってしまいました。そこで、電脳隊とピー・アイ・エムを2000年の4月に合併させました。そしてその上で、2000年の8月にその会社がヤフー・ジャパンと合併いたしました。ちなみに、ヤフーはこれが最後の合併でした。
以来17年、ヤフーで働いております。途中でUSENから、大赤字の事業であるGyaOを買い取りました。なぜかこの企業の社長になって、年間ウン十億円の赤字を、いろいろやってターンアラウンドさせました。疲れました、非常に。
疲れているときに、今度は孫さんから言い渡されまして、2012年に「そろそろYahoo! JAPANはPCからスマートフォンに移行しなきゃいけないから、体制全取っ換えするから、お前今から戻って副社長やれ」と言われまして、以降はヤフーで働いています。
みなさん一度はYahoo! JAPANお使いいただいたことがあると思います。こういった数字を持っている、超大企業だと思います。
どれぐらい大企業かというと、日経ビジネスの今月号で特集されるぐらい、大企業ということです。
(会場笑)
その大企業のCOOの観点から、ベンチャー企業の強さと、それを活かした大企業の倒し方、つまり、他社にやられて嫌だったことを、これから話をしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
3つ、倒し方を話します。共通しているキーワードは、非対称性です。
1つ目、リソースを局地戦に集中特化するのが、ベンチャーが大企業を倒すときにやるべきことです。みなさん、写真撮りましたか? もういいですか?
(会場笑)
これが、大企業のリソースです。
年間の販促費350億円。先ほど岩瀬さんのプレゼンを聞いてて、すごくいろんな苦労をして二百数十億円を集めたんだと。我々は年間で350億円、販促費を使っています。そしてリソース5,800人、エンジニアは3,000人おります。だから、敵いっこないですよね、これだけで見たら。ベンチャーは絶対敵わないです。
ただし、大企業はいろんなことをやっている。やりすぎている。とくに日本の企業はやりすぎているんです。ヤフーもご多分にもれず、100個サービスがあります。100個サービスがあるとどういうことになるかというと、このように、みなさん平等の思想の中で、だいたい同じようにリソースが分配されてしまうわけです。
そうすると、あの大きなYahoo! JAPANの各サービスですら、年間のプロモーション費用はここに書いてあるようになるわけです。
それに対してベンチャーです。ベンチャーは1つのサービスしかやっていません。それに対してリソースを供給できます。とくにこのお金の面、最近ものすごい変わってきていますよね。大型資金調達というものが出てきています。例えば、スマートニュース。38億円調達して、累積の調達額91億円ですよ。戻ってみます。Yahoo! JAPANの各サービスは3.5億円しかありません。
(会場笑)
これで勝てますか? という話になるわけです。1個1個のサービスで見れば、これぐらい、ベンチャーやエンジェルの大型資金調達は、大企業に対して脅威なんです。そして近年、この多対一極集中の戦いをさらに助長させる仕組みがどんどん充実してきています。1つは、やはり資金の供給源であるVC、エンジェル投資家です。シリアルアントレプレナー、これがたちが悪いです。
(会場笑)
お金を供給する上に、やり口まで知っている。山田進太郎(注:メルカリの代表取締役)なんか、ほとほと困っているわけです。そしてシステム開発。これも昔は、1から作るからリソースが必要なので大企業が有利だったんですが、ご存知のとおりAWSですとか、買い切りにしてもいろんなものが出てきてます。それを前提にしたスピーディな開発。
さらに、何かサービスを流行らせるときに、今はスマホのアプリ時代ですけども、これをグロースハックさせるマーケティングの手法が確立しています。つまりベンチャーのみなさんは、巨人の肩の上に乗って大企業と勝負ができるということですので、もう一度振り返りますと、大企業はこのようにリソースがばらけてますので、一極集中。1つのことに集中すべきだと思います。これが1点目。
2点目です。大企業に気づかれず、情報を隠しながら成長することが、ベンチャー企業がやるべきことだと思っています。あるいは我々がそれを嫌がっています。
大企業の新規事業、あるいは事業の拡大のさせ方はどうしてもリアクティブです。なぜならば既存事業は重たいからです。なので、リアクティブに「競合はこういうことやり始めましたよ」という話を聞いて、「それはどういう感じなんだろう?」と。
しかも小さいと「うちの会社だったら、それだと営業利益には足しにならないじゃないかな」という感じで、情報の分析もゆっくりです。そしてある程度大きくなってから対抗策を意思決定します。いずれにしても情報がないと、これに対する分析や意思決定ができません。ということは、ベンチャーはどうやればいいかと言うと、すべて気付かれないようにすることです。
まず、「我々は成長していますよ」なんて言わない方がいいです。そしてさまざまな成長の情報、こういうものも取材は受けない方がいいです。大企業がこれに対抗しようという意思決定まで、なるべくたどり着かせないようにするのが、ベンチャーのやるべきことです。こちらをご覧ください。事例です。
(会場笑)
メルカリの情報です。メルカリは今非上場です。したがって、年にいっぺんこの官報でしか情報は出ないわけです。正直、全然わかりません。
(会場笑)
KGIしか書いてないんです。我々はKPIを見て分析して対抗の仕方を考えなければいけないのに、KGIしか出ていないから「ああ、メルカリもうかっているんだな」というただ感想にしかならないんですよ。
(会場笑)
困ってしまいます。KPI早く出せ! これはIPOするとさまざまなKPIが出てくるので、我々は分析ができるんです。つまりまとめますと、こういうことです。当面の間、その分野でのシェアが7割か8割くらい取れるまでは、非上場すべきだと思うんです。非上場だと(競合の分析は)無理です。なので、非上場にした方がいいですし、メルカリはとっとと上場してほしいですし。
(会場笑)
(スライドを指して)ここに画像ありますけれども、これはたまたま画像検索でIPOと検索したらたまたま(マネーフォワードの)辻(庸介)さんのが最初に出てきただけで。
(会場笑)
ただベンチャーは当面の間、非上場がいいんじゃないかなと、大企業から見ると思います。
そして最後、3点目。「尖った人材を採用して仲間に加える」ということです。1人の起業家が世の中に影響を与える時代です。まずそもそもこの人たちが尖った人材です。さっきもスダックスが言いましたけれども、ベンチャーにはおかしな人がいっぱい来ます。このおかしな人たちが最初の事業を作るわけです。空気を読めない人じゃないと、いろんな競合なぎ倒したりですとか、既存のユーザーに対して「そんなもんじゃなくて、こっち使え」なんて言えないわけです。
そういった尖った人材がベンチャーを作るわけですが、こういった人たちが入ってくるのがベンチャーの強みです。なぜかと言うと、主に3つあるんじゃないかなと。1つはやっぱりこれです。ストックオプション。いつか一獲千金。サラリーマンで普通に過ごしたら得られないようなストックオプションが、得られるかもしれないということです。
あとはやっぱりゼロイチに挑戦するというのは魅力的ですよね。やはり大企業は既存事業が大きいので、自分は部分でしかないと。裁量ないということになると、全然挑戦したくなりません。そして何よりもこういった人たち、起業家のオーラで持ってそういった尖った人たちを採用できるという強みがベンチャーにはあります。ベンチャーの間にどんどん変な人を採用して、その人たちが時代を変えていくと。
大企業にはいない尖った人材にはこういう事例があります。ラーゲリン氏、メルカリにいきましたよね(注:Facebookの幹部、ジョン・ラーゲリン氏)。その他普通の会社じゃ取れないような金融系の人が、どんどんベンチャーにCFOに入っていると。こういうことができるのは、ベンチャーのうちなんですよ。
普通の上場企業ではなかなかできないんですよ。なので、ベンチャーの間にやってもらえればなと。
ただし1点注意がございます。尖った人材の起用というのは時限的です。尖った人材は大組織にいられなくなったり、魅力を感じなくなったりするんです。
だから一定期間の間だけですから、小さいうちに尖った人材で大いにやっていくと、やはり大企業も倒していけるのではないかなというように思います。
なのに、自ら共有した理由は、インターネットが大好きだったからです。正直言って、95年にインターネットに目を付けてやったから、ここまでになれたわけで。これがもう少し私が生まれるのが遅ければ、私の能力的に言うと、おそらくはどこかのやしゃご企業のそのまた末端くらいしかやれなかったと思うんです。
(会場笑)
だから、単にインターネットによって私は育てられてきたという恩を感じているんです。ともにベンチャーのみなさんと、インターネットでこれからも世の中を盛り上げていきたいから、私はこのような話を差し上げているわけです。これは有名な図です。
10年前の世界の時価総額トップ10の企業と現在の世界の時価総額トップ10の企業。がらりと変わっています。
10年前はIT・ネット企業は10社のうち2社しかありませんでした。それが今、時価総額が10年前より上がるかたちで7社入っているわけです。Appleはこの間、時価総額を史上初の100兆円超えました。みんなベンチャーなんです。ベンチャーが10年後、大企業になっているんです。なので、今のベンチャーのみなさんは未来の大企業です。そのときにどうやって戦うのかというのは、ぜひそれぞれ考えてもらえばなと思います。
未来というものは、昔は予測するものだったと思います。非常に安定した時代、技術の進歩がゆっくりだった時代は未来を予測した上で、逆算で何かをやっていっていました。実際我々も未来予測会議というのをやっていて、来てもらった方から「いや、やっぱりヤフーさん大企業ですね。金曜の午前中からこんな未来予測をやっているんですか」と言われたわけですけれども。
(会場笑)
その後やっぱり僕は本当に時代が変わったと思います。世界がフラットになって、技術の進歩が起きて、そして個人がエンパワーメントされた結果、未来は間違いなく予測するものから作るものになったと考えていますし。(スライドを指して)この7社の方々は、まさに「未来なんて予測するんじゃないよ。自分たちの感性で起業して、そして未来をつくるんだ」ということでやったから、こういう結果が生まれたんじゃないかなと思っています。
私もみなさんと一緒に未来を作っていきたい。引き続きインターネット大好きで、インターネットを使って未来を作っていきたいと考えていますので、ぜひ一緒にこれからもがんばっていきましょう。ご清聴ありがとうございました。
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